悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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生れ出る軍勢

空が、埋まった。

 

地面を這う幼体はなのはと俺の掃討で数を減らしていた。だが、油断していた。湖面から湧き上がる胞子の霧の中から、羽化した個体が現れたのだ。トンボに似た形の侵略種。透明な翅が朝日を反射してぎらぎらと輝き、長い腹部の先には毒々しい針が突き出している。そいつらが、まっすぐこちらへ降下してくる。

 

「なのは、下だ!」

 

俺は叫ぶより早く、なのはの背中を押して回避させた。直後、さっきまで彼女がいた空間を毒針が貫く。地上の幼体より速い。それに、足場がない。ディケイドのままでは、跳べど届かない相手だ。

 

「空中か。面倒な奴らだ」

 

俺はライドブッカーを腰に戻し、新しいカードを指に挟んだ。空を飛ぶ鳥を落とすには、やはり空へ行くのが一番だ。

 

「変身」

 

『KAMEN RIDE GAIM!』

 

オレンジ色の装甲が全身を包む。鎧のようなメイスプレート、頭上の戦国武将を模した前立。そして背中から展開するオレンジ色の果実型アームズ。鎧武だ。着地と同時に地面を蹴り、一気に跳躍する。

 

空へ。

 

だが、これだけじゃ足りない。奴らは速い。追いつくだけじゃダメだ。群れごと落とす。

 

「来い!」

 

背中のアームズから大剣を引き抜き、鎧の側面に装着されたロックシードを回す。

 

『ICHIGO ARMS!』

 

シャリリリリン!という軽やかな音色と共に、オレンジの装甲が弾け飛び、鮮やかな赤へと塗り替わる。イチゴアームズ。空中で着替えるという奇妙な行為だが、今はその不可思議な機構に感謝する。肩にイチゴ型のアームズが乗り、手には無双セイバーと、新たに呼び出されたイチゴクナイが握られる。

 

可愛らしい名前と裏腹に、この武器は凶悪だ。

 

迫りくる羽蟲の群れ。俺は無双セイバーを振りかぶり、最後のカードをドライバーへ叩き込んだ。

 

『FINAL ATTACK RIDE G-G-G-GAIM!』

 

足元にスイカ状のエネルギーが展開するが、俺はそれを蹴り捨てて加速する。無双セイバーの刀身が赤熱し、斬撃の軌跡が半円を描く。

 

「喰らえ!」

 

振り下ろされた刃から、無数のイチゴクナイが迸った。赤い閃光の雨。それが空中に広がる羽蟲の群れへ降り注ぐ。貫かれた個体が次々と爆散し、黒い粒子の花火が朝空に咲く。逃げ場はない。上からも横からも、鋭いクナイが襲い掛かるのだ。

 

「これで、全滅だ」

 

俺はイチゴアームズのまま着地し、無双セイバーを肩に担いだ。周囲の空は、もう羽蟲の翅の光で埋め尽くされてはいない。

 

空はクリアになった。だが、地上はまだ地獄だ。

 

イチゴアームズのまま着地すると、足元で幼体たちがわらわらと湧き出している。キモい。踏み潰す感触も嫌だが、放っておけばシイナたちの足元へ流れていく。

 

「掃除はまだ続くか」

 

俺は無双セイバーを消し、ドライバーのカードを入れ替えた。空の敵を落とすなら鎧武、地面を薙ぎ払うなら別の奴だ。

 

『KAMEN RIDE BUILD!』

 

赤と青の装甲が左右非対称に合体する。仮面ライダービルド。物理法論を無視したその姿は、いつ見ても奇抜だ。だが、今はこの「実験」が欲しい。

 

更にカードを重ねる。

 

『FORM RIDE BUILD HAWKGATLING!』

 

右半身に鷹の羽、左半身に重厚なガトリング砲。ホークガトリングフォームだ。

 

背中に展開したバトルスケールクローグが翼のように広がり、俺の身体を宙へ浮かび上がらせる。

 

「いい眺めだ」

 

湖面を見下ろす。原種の巨体と、それに群がる無数の幼体。さっき羽蟲を落とした時より、ずっといい見晴らしだ。

 

翼を翻し、幼体の群れが密集しているエリアの真上へ滑空する。ガトリングガンの回転音が、低いうなりを上げていた。指先一つで、弾丸の雨が降る。だが、ばら撒くだけじゃ味気ない。それに、周囲に飛び火しても困る。

 

「ここで終わりだ」

 

最後のカードをドライバーへ叩き込む。

 

『FINAL ATTACK RIDE B-B-B-BUILD!』

 

ホークガトリングフォームのガトリング砲が唸りを上げ、高速回転を始める。同時に、ターゲットとなった幼体の群れの周囲に、幾何学的なパイプ状の光が展開した。

 

ビルドの創る特殊なフィールド。進化計算によって導き出された、絶対の殺戮領域。

 

光のパイプが球形に閉じ、中の敵を外の世界から隔離する。逃げ場はない。

 

「フルバーストだ」

 

引き金を引いた。

 

ドドドドドドドド!

 

ガトリング砲が火を噴く。百発、いやそれ以上の弾丸が、瞬きする間に撃ち込まれる。フィールドの中で弾丸が跳弾し、反響し、逃げ場を失った幼体たちをミンチにしていく。

 

断末魔すら聞こえない。ただ、ガトリングの轟音と、フィールドの内側で何かが砕ける音だけが響く。

 

発砲が止まると同時に、フィールドが霧散した。

 

後に残ったのは、黒い粒子となって消えゆく幼体の残骸だけ。百発の弾丸が内側から尽くを貫いたのだ。綺麗な仕事だ。

 

「さて、雑魚処理は終わりだ」

 

俺は翼を畳み、原種のいる湖面へと降下していく。次は、あのデカい木だ。

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