悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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炎の鳥

湖面に着地すると同時に、ビルドの装甲を解除した。

変身を維持したままでは、次の一手が遅れる。物理法則を弄ぶ実験は、ここまでだ。

 

水面を揺らす爆音。フェイトのバルディッシュが金色の雷を叩きつけ、デルタが原種の太い根を爪で引き裂いている。だが、状況は芳しくない。

原種の傷口が、泡のようにブクブクと再生しているのが見えた。斬られては塞がり、焼かれては盛り返す。ジリ貅だ。こいつの生命力は、まるで沼地だ。力を込めれば込めるほど、沈んでいく。

 

「くそっ、全然効いてない!」

 

シイナの叫びが聞こえる。彼女の左手から放たれた炎の矢が、原種の樹皮に突き刺さる。だが、それはあくまで「針」だ。突き刺さるだけで、幹そのものを崩すには至らない。熱量が足りないんじゃない。広がりがないんだ。

 

俺はドライバーへ手を伸ばした。

言葉で教えるのは簡単だ。「針じゃなくて、羽のように広げろ」と。

だが、今のシイナに余裕はない。頭で理解するより、体で覚えさせる方が早い。

 

「オーズ」

 

呟きと共にカードを装填する。

 

『KAMEN RIDE OOO!』

 

赤と緑と黄の装甲が重なり合う。タカ・トラ・バッタのコンボ。だが、これじゃ足りない。

空を覆うような、圧倒的な「広がり」が必要だ。

 

更にカードを重ねる。

 

『FORM RIDE OOO TAJADOR!』

 

装甲が弾け飛び、赤と金の羽衣へと塗り替わる。

タジャドルコンボ。天空を統べる鳥の王。

背中に巨大な翼が展開する。孔雀の羽のように、あるいは燃え盛る陽炎のように、鮮やかな赤と金の羽が夜空に広がった。

 

「ほら、見ろシイナ!」

 

俺は原種の頭上へ跳躍した。

背中の羽が、一本一本が独立した矢のように震える。そこに魔力と炎を込める。俺の持てるすべての熱量を、この翼に預ける。

 

「行けぇッ!」

 

翼を大きく広げ、一気に叩きつけた。

数百の火弾と光弾が、まるで散弾のように空から降り注ぐ。一発一発が小さくても、数が揃えば暴風になる。原種の幹、枝、根、そのすべてを赤い豪雨が叩き潰していく。

 

「えっ…?」

 

シイナが驚きの声を上げたのがわかった。彼女は見ている。俺の放った火弾の軌跡を。ただ一点を狙う針ではなく、空間ごと埋め尽くす弾幕を。

 

「なるほど…そういうことか!」

 

シイナの顔が、ぱっと明るくなった。

彼女は左手を掲げた。エンゲージリングが、タジャドルの翼に呼応するように激しく輝く。

 

「あたしにも…できる!」

 

シイナの炎が変わった。

これまでの鋭い槍のような炎じゃない。花火が弾けるように、あるいは鳥が羽を広げるように、彼女の炎が空中に散らばった。無数の火の粉が、まるで意志を持った生き物のように舞い、そして一斉に原種へと降り注ぐ。

 

俺の火弾と、シイナの炎弾。

二つの豪雨が、原種を完全に包み込んだ。

 

「あぁぁぁぁぁッ!」

 

原種が悲鳴のような音を立てた。再生が追いつかない。焼かれる速度が、傷を塞ぐ速度を圧倒している。幹がひび割れ、枝が崩れ落ち、根が湖底から引き抜かれていく。

 

「これで終わりだ!」

 

シイナが叫ぶ。

赤い炎が、巨木を灰に変えていく。黒い粒子が、朝日に照らされながら空へと舞い上がっていった。

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