悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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炎と炎

銀色のコアが、黒い膜に覆われようとしていた。

 

生体組織だ。金属ではない。磁力では引き剥がせない。粘液のような黒い層がコアの表面にまとわりつき、脈動するたびに厚みを増していく。銀色の光が膜の向こうで滲み、まだ完全には消えていない。

 

「シイナ」

 

「分かってる」

 

紅蓮の炎が、コアへ向かって放たれた。

 

シイナの掌から放たれた炎は一直線に伸び、黒い膜の表面を舐める。焼ける。生体組織が焦げ、縮み、炭化する。だが焼いた端から新しい層が盛り上がる。再生ではない。守りだ。コアを守るため、本体が持てる最後の組織を集めている。

 

「焼き切れない。次から次へと」

 

「それでいい。押さえていてくれ」

 

俺は両肩のマグネットキャノンをコアへ向けたまま、ネオディケイドライバーへ手を伸ばした。

 

マグネットステイツで金属は剥がした。エレキステイツで電子分解は済ませた。残っているのは生体組織とコアだけ。磁力ではどうにもならない。なら、焼く。

 

フォームライドカードを取り出す。赤い炎のマーク。フォーゼのもう一つの形態。

 

「そっちは任せる。俺が火を集める」

 

『FORM RIDE――FOURZE FIRE STATES!』

 

青と赤の装甲が燃え上がった。

 

マグネットステイツの重装甲が内側から赤く発光し、炎を纏う。肩の砲身が消え代わりに腕と脚に炎を噴出する機構が実体化する。腰のベルトはネオディケイドライバーのまま。装甲の色が青から赤へ変わり、全身が炎を纏った。

 

ヒーハックガンが右手に出現する。銃口から炎が溢れ、周囲の空気を歪ませる。

 

シイナが横で叫んだ。

 

「こっち来るぞ!」

 

ドラス型原種が最後の生体組織を伸ばした。コアを守るための膜とは別に、攻撃用の触手をシイナへ向ける。黒い粘液の鞭が三本、四本と伸びる。

 

俺はヒーハックガンを触手へ向けた。

 

小さく火炎を噴く。放射というほどではない。短く鋭い炎が触手の根元を焼き、伸びる先を遮る。触手が怯んだ隙にシイナが後退し、体勢を立て直す。

 

「射線を開け。コアへ一直線に通せ」

 

「やってみる」

 

シイナの紅蓮が四方から集まった。コアを守る黒い膜へ向け、四方向から炎が押し寄せる。膜が焼かれ、内側から押し開かれるように裂ける。

 

隙間ができた。

 

銀色のコアが覗く。脈動が遅い。もう再生の力は残っていない。守るだけの膜も、シイナの炎で焼き払われつつある。

 

俺はファイナルアタックライドのカードをネオディケイドライバーへ装填した。

 

『FINAL ATTACK RIDE――FO FO FO FOURZE!』

 

ヒーハックガンの銃口にシイナの紅蓮とファイヤーステイツの熱が集まる。二つの炎が重なり、銃口の先で巨大な火球になる。赤い光が施設内を満たし、周囲の瓦礫の影を消す。

 

コアへ狙いを定める。銀色の球体。露出している。守る膜は焼け落ち、金属もなく、逃げ場はない。

 

「シイナ今だ」

 

シイナが炎を押し出した。コアの周囲に残った生体組織を左右へ押し開き、一直線の射線を作る。

 

俺は引き金を引いた。

 

ライダー爆熱シュート。

 

巨大な火炎砲撃がヒーハックガンから放たれる。一直線に伸びた炎が銀色のコアへ到達し、球体を包み込む。コアが白く発光し、表面から亀裂が走る。内部から光が溢れ、球体全体が膨張する。

 

爆発した。

 

銀色の破片が四方へ飛び散るが、炎がそれらを包み込み空中で焼き尽くす。生体組織が灰になり、金属片が溶けコアの欠片が消滅する。

 

再生は、始まらなかった。

 

何も残らない。

 

銀色の光が消え、黒い組織が焼けドラス型原種の輪郭が崩れていく。灰が舞い、炎が収まり施設内に静けさが戻る。

 

俺はヒーハックガンの消火機能を作動させた。銃口から二酸化炭素の白い霧が噴き出し、周囲へ延焼していた火を抑える。瓦礫の隙間でくすぶっていた炎が消え、煙だけが残る。

 

「終わった…のか」

 

シイナが呟いた。銃を下ろし、肩で息をしている。

 

床に散った灰を見る。銀色の粒は一つも残っていない。コアは完全に消滅した。再生する力も、金属を吸収する力も何も残っていない。

 

「ああ」

 

短く答えた。ヒーハックガンを下ろし、ファイヤーステイツの熱を収める。装甲から炎が消え、元のディケイドの黒と赤に戻る。

 

施設内は煙たい。だが、動くものはもう何もない。

 

シイナが灰の上を歩き、コアがあった場所を確認する。

 

「核、消えたな」

 

「消えた」

 

「じゃあ、終わりだ」

 

シイナは振り返らずに言った。声に疲れがあったが、安堵も混じっていた。

 

俺はネオディケイドライバーのカードを戻し、周囲を見渡した。瓦礫の山。焼け焦げた鉄骨。消火の白い煙。その中に、もう敵の姿はない。

 

ドラス型原種との戦いは、終わった。

 

だが、これで終わりではない。

 

財団Xの影はまだ残っている。次の敵が来る前に、追わなければならない。

 

煙の中、俺はシイナの隣へ歩み寄った。

 

「帰るぞ」

 

「うん」

 

二人で施設を後にする。背後では、まだ煙が静かに立ち上っていた。

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