悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

299 / 299
魔法使いの天敵

眼前にいる原種に対して、俺の頭の中にある数多くの怪人達の特徴が合わせるように。

 

前回のゴルドフェニックスのように変化しているのだと理解する。

 

だからこそ、見つめる。

 

「・・・ツカサ、何か心当たりはあるの」

 

ゼータはゆっくりと構えながら、聞いてくる。

 

「まぁな、色々とな」

 

だからこそ、まず見つめたのは、その原種の身体の色は緑だった。

 

怪人の身体の色も特徴であるが、あまりにも歪である。

 

だが、その怪人の右腕と一体化した物に眼を向ける。

 

「ボスボス!あいつの腕、変だよ!まるで笛じゃない?」

 

「笛」

 

それを聞いて、理解する。

 

「・・・なるほど」

 

「分かった?」

 

「あぁ」

 

イータからの言葉に頷きながらも、俺は奴の正体を言う。

 

「グレムリン、それも賢者の石と一体化した姿だな」

 

グレムリン。ウィザードの世界に現れたファントムの中で、唯一人間だった頃の記憶と理性を残していた個体。賢者の石を手に入れ、その力で自らの身体を作り替えた最後の怪物。

 

だが、目の前にいるのは本物じゃない。緑色の身体。右腕と一体化した笛。原種の目玉が全身に散らばっている。模倣体だ。だが、どの個体もそうだった。メガヘクスもドラスもゴルトフェニックスも。中身は原種で、外側は怪人の姿を模している。

 

グレムリン型原種が動いた。

 

右腕の笛が振り上げられる。刃だ。笛の側面が刃として機能している。単なる楽器ではない。武器だ。

 

速い。

 

地面を蹴る音が響く前に、緑色の影が目の前に来ていた。右腕の笛が横薙ぎに振られる。俺はライドブッカーをソードモードに切り替え、一瞬で構える。

 

金属音。笛の刃とライドブッカーの刀身が噛み合う。重い。だが弾いた。

 

弾いた瞬間、グレムリン型原種の左腕が動く。左手が握っているのは——何もない。いや、掌からエネルギーが漏れている。緑色の光が掌に集まり、弾丸として撃ち出された。

 

「散れ!」

 

俺が叫ぶと同時に全員が動いた。デルタが右へ、ゼータが左へ、イータが後方へ跳ぶ。エネルギー弾は俺のいた場所を通り抜け、背後の車両のドアを吹き飛ばした。

 

グレムリン型原種が追ってくる。右腕の笛を振りながら、左手からエネルギー弾を連射する。近距離と遠距離を同時に。厄介だ。

 

俺は横へ滑り、エネルギー弾の軌道から外れる。ライドブッカーをガンモードに切り替え、二発撃ち込む。弾丸はグレムリン型原種の肩に当たったが、緑色の装甲が火花を散らすだけで貫通しない。

 

硬い。賢者の石の影響か。

 

グレムリン型原種が右腕の笛を構え直した。今度は振るのではない。笛の先端をこちらに向けている。

 

口の部分に当たる構造——吹き口のような部位が、笛の側面に開いている。

 

そして、原種が笛を吹いた。

 

音が響いた。

 

笛の音色。低く、湿った音。金属が震える音と生物が唸る音が混ざった、不快な旋律。それが通りの空気を震わせた。

 

「——あっ」

 

デルタの声が上がった。

 

俺は振り返った。デルタが通りの右側で立ち止まっていた。いや、止まっているのではない。止まっているのだ。

 

足が動かない。腰が落ちたままの姿勢で固まっている。尻尾が止まった。耳が止まった。目だけが動いて、自分の身体を見下ろしている。

 

「動けない——!」

 

ゼータもだった。左側の建物の陰から出ようとした体勢で止まっている。片足が地面についたまま、もう片足が浮いた状態で固定されている。猫の耳がピンと立ったまま動かない。

 

イータは後方で端末を握ったまま固まっていた。指が画面の上で止まっている。入力途中の文字が光ったまま点滅している。

 

三人の動きが止まった。

 

笛の音が続いている。低い旋律が通りの空気を支配している。

 

俺は自分の手を見た。動く。ライドブッカーを握る指に違和感はない。笛の音が聞こえているが、身体は動く。

 

なぜ俺は効いていない。

 

答えはすぐに出た。俺は魔法を使っていない。ライドブッカーは物理的な武器だ。ディケイドライバーの変身も魔法ではない。だが、三人は違う。

 

デルタの拳。ゼータの隠密と魔力斬撃。イータの魔力制御と解析。三人とも体内の魔力を使って動いている。

 

笛が、魔力を無力化している。

 

グレムリン。ウィザードの世界で、魔法を無効化する能力を持っていた個体。笛を吹き鳴らすことで相手の魔法を封じる。その能力まで再現されている。

 

「イータ! デルタ! ゼータ!」

 

叫んでも返事がない。三人の目だけが動く。聞こえている。だが身体が動かない。魔力で動いている部分がすべて止まっている。

 

グレムリン型原種がこちらを向いた。全身の目玉が一斉に俺を捉える。笛の音色が変わった。低い音が高くなり、鋭い旋律になる。

 

右手の笛が振り上げられた。刃が光る。今度は俺を狙っている。三人が動けない今、標的は一人。

 

俺は後ろへ跳んだ。

 

笛の刃が俺のいた場所を薙ぐ。空気を切る音が耳を掠める。だが当たっていない。

 

グレムリン型原種が追撃する。左手からエネルギー弾が放たれる。三発。縦に並んで迫る。

 

横へ回避する。一発目が肩を掠め、二発目が空を切り、三発目が足元の地面を砕く。

 

だが、笛の音は止まらない。旋律が続いている。三人はまだ動けない。

 

このままではジリ貧だ。笛を止めない限り、三人は動けない。俺一人でグレムリン型原種を抑えながら、三人の拘束を解く方法を探さなければならない。

 

笛を止める。あるいは、笛の効果を打ち消す。

 

グレムリンの笛は魔法を無力化する。なら、魔法以外の力で対抗すればいい。

 

だが、それだけじゃない。笛を吹き続けながら戦う相手を、どう近づくか。

 

グレムリン型原種が再び笛を振った。今度は突きだ。刃の先端が俺の胸を狙っている。

 

「ツカサ!」

 

デルタの声が届いた。動けない体で、それでも叫んでいる。

 

俺は後ろに飛びながら、その手には既にカードを握っていた。

 

「笛を相手にするんだったら、音楽で対抗してやるよ」

 

そのまま、既にネオディケイドライバーに、カードを素早く装填する。

 

『KAMEN RIDE KIVA』

 

鳴り響く音声と共に、俺は空中で笛の音と共に、キバへと姿を変身する。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

悪魔と呼ばれ慣れて(作者:ボルメテウスさん)(原作:陰の実力者になりたくて!)

『悪魔』と、『世界の破壊者』と呼ばれ、旅を続けたディケイド。▼彼が行き着いた先には『悪魔憑き』と呼ばれる存在がいる世界。▼その世界でディケイドは、何を見るのか。▼その先で、何を行うのか。


総合評価:594/評価:7.31/完結:209話/更新日時:2025年06月05日(木) 00:00 小説情報

悪魔と呼ばれ慣れて 2nd(作者:ボルメテウスさん)(原作:僕のヒーローアカデミア)

『世界の破壊者・ディケイド』の力を偶然手に入れた青年・ツカサ。▼彼は、その身に数多くのライダー達の力を受け継ぎながらも、様々な世界を超えながら、ハンドレッドと戦いをくり広げていた。▼そんな戦いの最中、彼らはある世界へと来ていた。▼『個性』と呼ばれ、『ヒーロー』が職業となった世界。▼その世界において、彼の瞳は、何を映す。▼「俺はヒーローじゃない。通りすがりの仮…


総合評価:464/評価:7.46/完結:193話/更新日時:2025年12月15日(月) 00:45 小説情報

四番隊の一般隊士、実は卍解持ちの激強死神でした(作者:獅子論)(原作:BLEACH)

ほんの思い付きでとりあえず書いてみたものです。▼皆さんの目に少しでも面白いと思ってくれたら幸いです。


総合評価:888/評価:5.12/短編:53話/更新日時:2026年08月29日(土) 20:11 小説情報

久瀬家の居候(作者:セツナは幸せになるべきである)(原作:魔法少女リリカルなのは)

▼久瀬家に一人、居候あり。▼


総合評価:51/評価:-.--/連載:7話/更新日時:2026年10月06日(火) 18:00 小説情報

海女取島への漂流者(作者:粗茶Returnees)(原作:魔法少女リリカルなのは)

 ひょんなことから海女取島に流れ着いた主人公は、そこで出会った久瀬姉妹に厄介になることに。侵略種と呼ばれる脅威を払いながらの共同生活が始まった。▼


総合評価:861/評価:8.86/連載:22話/更新日時:2026年10月05日(月) 17:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>