キバへと変身する事に成功すると共に、眼前にいるグレムリンへと向けて、ゆっくりと構える。
「キシャァァァァァ」
グレムリンは、これまでにない叫び声と共に迫ってきたのは腕と一体化したハーケイン。
そのハーケインによる一撃に対して、俺は素早く地面に避けると共に蹴り上げる。
キバへと変身する事によって、他のライダーに比べても身軽な動きを行う事が出来た。
同時にハーケインから鳴り響く音を躱しながら、そのまま素早く蹴り上げる。
その蹴り上げた勢いと共に両手でハーケインを掴む。
両手でハーケインを掴んだまま、俺は体を回した。グレムリンの腕ごと振り回す。遠心力を利用して体勢を崩す。グレムリンが踏ん張り、爪先が地面を削る。だが引いてはいない。押してきた。
グレムリンが体を寄せ、左腕の掌から緑色のエネルギー弾を放つ。至近距離。避ける暇がない。だがハーケインを掴んだままなので俺の盾になる。
エネルギー弾がハーケインの側面に当たり火花が散る。衝撃で手が痺む。だが離さない。離せば次の弾が胸に来る。
グレムリンがハーケインを引いた。力が強い。引かれるままに体が前に滑る。だがそれでいい。前へ出るつもりだった。
グレムリンの足元に蹴りを入れた。右足の蹴りがグレムリンの左膝を捉える。関節が曲がる。痛みで一瞬力が緩む。その隙にハーケインを離し、バックステップで距離を取る。
グレムリンが体勢を立て直す前に、俺はカードを取り出した。
『FORM RIDE』
ネオディケイドライバーへ装填する。
『KIVA DOGABAKI FORM!』
キバの赤い装甲が震えた。炎が全身を包み、重なり合う。ガルルの青。バッシャーの緑。ドッガの紫。三つの力が一つに溶け合い、赤い装甲の上から別色の装飾が順番に浮き上がってくる。腕が太くなり、胸の装甲が厚くなり、足裏の感覚が重くなる。
ドカバキフォーム。キバの四つの形態を統合した強化状態。
最初にバッシャーマグナムを構えた。右手に握る。銃口が緑色の光を帯びる。
グレムリンがハーケインを振り上げた。先端の刃が光る。だが俺は正面から撃った。
バッシャーマグナムの射撃。緑色の弾丸がグレムリンの胸へ向かって飛ぶ。グレムリンがハーケインを正面に回し、刃で弾丸を弾く。金属音。弾かれた弾丸が横へ飛び、通りの壁を砕く。
次。胸部を狙う。今度はグレムリンが体を斜めにして避けた。弾丸が肩の装甲を掠める。
三発目。左腕を狙う。グレムリンが左手を引いて回避する。だが引いた左手からエネルギー弾が放てなくなる。
射撃は当てるためだけじゃない。敵の防御を動かすために使う。
四発目。再び胸部。グレムリンがハーケインを正面に回す。弾く。だがその一瞬、ハーケインが胸部から離れる。
その隙だ。
バッシャーマグナムをしまう。代わりにガルルセイバーが出現する。青い刀身。狼の牙を模した刃。
踏み込む。グレムリンがハーケインを振り下ろす。速い。だが振り下ろす軌道は読んでいる。ガルルセイバーを斜めに構え、刃の腹でハーケインの軌道を受け流す。金属音。火花。刃同士が噛み合わず、ハーケインの刃がガルルセイバーの表面を滑る。
受け流した勢いでグレムリンの右腕が外側へ流れる。体の中心が開く。
返す刃で斬る。ガルルセイバーの切り上げがグレムリンの胸を捉えた。刃が緑色の装甲を裂き、その下の黒い生体組織を切り裂く。原種の組織が飛び散り、ハーケインを持った腕が外へ開いたまま戻らない。
グレムリンが反応した。残った左腕と、胸の組織が動く。切り裂かれた部分を塞ぐように、黒い膜が胸の表面へ集まり始める。再生だ。ドラス型と同じ。損傷した部分を組織で覆い、修復する。
だが速くない。ドラス型ほどの再生速度はない。賢者の石の影響で装甲は硬いが、再生は遅い。
グレムリンがハーケインを引こうとした。右腕を戻そうとしている。だが俺は待たない。
ガルルセイバーを引き、代わりにドッガハンマーを構えた。紫色の槌。雷鬼の腕を模した武器。
グレムリンの脚へ蹴りを入れる。右足の蹴りがグレムリンの左膝を捉える。前と同じ場所。同じ場所を二度蹴れば、流れの中で同じ痛みが重なる。グレムリンが膝を折り、体勢が崩れた。
そこへ振り下ろす。
ドッガハンマーがグレムリンの胸部を捉えた。再生中の黒い膜ごと叩き潰す。重い。衝撃が腕から肩へ伝わり、さらに腰へ流れる。グレムリンの体が後方へ押し出される。足が地面を削り、爪先が火花を上げる。
胸部の膜が砕けた。再生しかけた組た組織が弾け飛び、胸の奥が覗く。そこに、原種の核がある。赤い光。脈動している。
だがグレムリンは倒れない。ハーケインを振り上げ、横薙ぎに払う。反撃だ。だが体勢が崩れている。軌道が高い。
俺は下から潛り込む。ハーケインの刃が頭上を通過する風圧を感じる。だが当たっていない。
下からバッシャーマグナムを構える。再び右手に呼び出す。銃口を上へ向ける。グレムリンの腕を狙う。ハーケインを持った右腕が振り切った直後、腕が伸びきっている。
撃つ。弾丸が右腕の付け根を捉える。装甲が砕け、腕の角度が変わる。ハーケインの先端が地面に突き刺さる。
グレムリンが左腕で体勢を立て直そうとした。左掌を地面について、押し上げる。
ガルルセイバーを呼び出す。左手に握る。グレムリンの左腕の外側を斬る。刃が腕の装甲を裂き、地面に付いた掌を外す。
グレムリンが倒れ込む。左腕が地面から離れ、体が傾く。
倒れた体の上から、ドッガハンマーを振り下ろす。今度は胸部の核を狙う。だがグレムリンが残った組織を胸へ集める。黒い膜が核の上に重なり、ハンマーの衝撃を受け止める。
硬い。だが膜が割れる音がした。一枚、二枚。全ては砕けないが、層が薄くなっている。
グレムリンがハーケインを引き抜いた。地面から抜いた刃が俺を狙う。だが体勢が崩れたままでは振りが浅い。ガルルセイバーで刃を外へ弾く。金属音。火花。
弾かれたハーケインがグレムリンの右側へ流れる。体の中心がまた開く。
バッシャーマグナムで右腕を撃つ。今度は肘を狙める。弾丸が関節に当たり、腕が曲がる。ハーケインの軌道が変わる。
その隙にガルルセイバーで胸を斬る。核を覆う膜の端を切り裂く。膜が剥がれ、核の光が漏れる。
グレムリンが吠えた。全身の目玉が一斉に俺を向く。右腕のハーケインが振り上げられ、同時に左掌からエネルギー弾が放たれる。二方向の攻撃。だがどちらも体勢が崩れたままでは精度がない。
俺は右へ滑る。エネルギー弾が左を通り抜け、ハーケインが空を切る。
ドッガハンマーを構える。グレムリンの胸の核が覗いている。膜は薄い。あと一撃。
だがグレムリンは膜を厚くしなかった。代わりにハーケインを胸の前に構えた。刃で核を隠す。
剣で守るか。なら、剣ごと叩き潰せばいい。
俺はバッシャーマグナムをハーケインの刃に向けた。撃つ。弾丸が刃に当たり、グレムリンの腕が後ろへ弾かれる。ハーケインが胸から離れる。
その隙にガルルセイバーで腕の内側を斬る。刃が腕を外へ誘導し、胸が開く。
ドッガハンマーを振り上げた。
だがグレムリンは動かなかった。動けなかったのではない。動かなかった。
核の上に残った最後の膜が、わずかに脈動している。グレムリンの全身の目玉が、俺を見ている。だが攻撃してこない。
「・・・」
俺はハンマーを振り上げたまま、グレムリンの胸の奥を見た。核が覗いている。膜が薄い。あと一撃で届く。だが——
グレムリンの姿が変わったわけではない。変わったのは動きだ。攻撃が止まった。逃げようともしない。核を守るための膜を厚くもしない。
待っている。
俺はハンマーを下ろさなかった。だが振り下ろしもしなかった。
ドカバキフォームへの素早い攻撃での対処を行う。同時にグレムリンの核となる部分をゆっくりと睨む。
「さて、どうするか」