五本の矢が空中で弧を描いていた。
拡散している。一つは正面から俺たちの防衛線の中心を狙い、二つは左、二つは右。防衛線の幅を広く叩いて一箇所を守れないようにしている。ザフィーラが正面の一本を腕で弾く。光の粒子が散り衝撃が地面を震わせた。残り四本が降り注ぐ。
左の二本は守備隊の遮蔽板へ突き刺さる。金属が裂ける音。右の二本は路面を砕き瓦礫が跳ね上がる。
「来るぞ」
ザフィーラが言う。七秒。いや、今回は五秒だった。
また五本。今度は軌道が違う。防衛線の左右の端を狙っている。中央を避けて両側を叩き、逃げ場を狭める打ち方だ。
「……数が多い」
ザフィーラの声に疲労が滲む。長時間防いでいる。だが休ませるわけにはいかない。俺が来たのはそのためだ。
イータが交差点から声を上げる。
「矢の芯に生体反応! 有機物の痕跡がある! 詳細はまだ——」
「分かった。触るな」
俺はザフィーラの隣で次の矢を見上げた。空を裂く光の筋。北東の崩れたビルの屋上から放たれている。距離は数百メートル。だが矢の速度は速い。避けるよりも防ぐ方が速い。
問題は数だ。一度に五本。間隔は五秒から十秒。不規則。だが一度に来る本数は増える可能性がある。
ライドブッカーで斬り払うことはできる。だが一本ずつだ。五本同時に来れば防ぎきれない。
ザフィーラが正面を受け止める。俺が左右をカバーする。だがそれでも三方向同時に来れば抜かれる。
避難経路がまだ開いていない。デルタとゼータが住民を誘導している最中だ。防衛線が破れれば住民へ届く。
なら、ここで防ぐだけでなく落とす必要がある。
俺はネオディケイドライバーへ手を伸ばした。
一枚のカードを取り出す。
緑と黒。二つの色が一枚のカードに並んだデザイン。
仮面ライダーW。
風の都の探偵。二つの記憶を持つライダー。
「ツカサ、何をする気だ」
ザフィーラが矢を弾きながら聞いてくる。
「数が多いなら、一発ずつ落とすより面で払う」
カードを装填する。
『KAMEN RIDE W!』
緑と黒の装甲が体を覆った。右半身が緑、左半身が黒。二つの色が一本の線で分かれている。サイクロンの風が左半身を駆け、ジョーカーの力が右半身に宿る。だが今使うのはこの形ではない。
フォームライドのカードを取り出す。
『FORM RIDE! LUNA TRIGGER!』
右半身の緑が黄金色へ変わった。ルナ。変幻自在の光。そして左半身の黒はそのままトリガー。射撃に特化したフォーム。
左手にライドブッカー。右手にトリガーマグナム。
二つの武器を両手に構えた。
空を見上げる。北東の方向。崩れたビルの屋上。あそこから矢が来る。
次の矢が放たれた。
五本。いや、六本だ。増えた。
俺はトリガーマグナムの引き金を引いた。
黄金色のエネルギー弾が銃口から飛び出す。だが直線には飛ばない。ルナトリガーの弾丸は軌道を変える。空気中の光を操り、弾丸の進路を曲げる。
一発目が右の矢の一本を捉えた。空中で弾丸が矢に当たり光が弾ける。
二発目。引き金を引くと同時に手首を返す。弾丸が空中で弧を描き左の矢へ向かう。当たった。三本目。四本目。
俺はトリガーマグナムを連射しながらライドブッカーで残りを斬り払った。ソードモード。一閃。二閃。空中で矢が砕け光が散る。
全部落とした。六本とも防衛線を越えさせなかった。
「……落とせるのか」
ザフィーラが隣で言った。俺の目を見ている。だがその視線に敵意はない。驚きがあるだけだ。
「落とせる」
俺は答えた。だが油断はしていない。
次の矢が来る。七秒。いや八秒か。
その間にイータの声が届く。
「ツカサ! 矢の芯に目玉がある! 有機物だ、原種の組織だ!」
壁に突き刺さった矢の芯から目玉が開いた。
俺はその目玉を見た。
濡れた球体。瞳孔が動く。俺を見ている。
その目玉が矢の芯に埋め込まれている。矢そのものが原種の一部だ。矢が視ている。矢が狙っている。あの目玉が、避難する住民の動きを読んでいる。
「……矢が目で見てる」
「矢、まさか、今回の原種は」
「分かるのか?」
「・・・サジタリウス・ゾディアーツだろう」