矢が割れた。
空中で。俺がトリガーマグナムで撃ち落とした矢の破片が、宙で二つに分かれた。分かれた破片がそれぞれ光を帯び、新たな矢として再加速した。
六本だった矢が十二本になった。
「増えた」
ザフィーラが呻く。十二本の矢が防衛線へ降り注ぐ。俺はトリガーマグナムを連射する。黄金色の弾丸が空中で弧を描き矢を追う。だが十二本を同時に落とすには手が足りない。
ザフィーラが正面四本を腕で弾く。俺が右三本を撃ち落とす。だが左五本が防衛線を越えた。
路面が砕けた。交差点の遮蔽板が裂ける。守備隊の兵士が住民を庇って倒れ込む。
「怪我人は!」
「出た! 二名!」
守備隊の声が飛び交う。だが死んではいない。良かった。だが次はどうだ。
俺は空を見上げた。北東の崩れたビルの屋上。影が見える。人型だ。だが輪郭が揺らいでいる。左手に弓を構えている。
サジタリウス・ゾディアーツ。フォーゼの世界に現れたゾディアーツの一つ。弓使いの怪人。だが本物じゃない。中身は原種だ。これまでと同じ。
問題はあの矢だ。
分裂する。一本が二本に、二本が四本になる。空中で砕いても破片が新たな矢になる。つまり落とせば落とすほど数が増える。
「あいつの矢は分裂する。落としても増えるだけだ」
ザフィーラが歯を食いしばる。
「ならどうする。防ぎ続けるしかないのか」
「いや」
俺はトリガーマグナムを下ろした。
防ぐだけでは勝てない。落とせば増える。だが矢を放つ本体を止めれば全部消える。本体を狙う。遠距離から一撃で決める。
これまでの矢の軌道と間隔から敵の位置を逆算する。北東の崩れたビル。屋上付近。距離は約四百メートル。
四百メートル先の ターゲット を一撃で仕留める射撃が必要だ。Wのルナトリガーは軌道を変えられるが威力が足りない。分裂した矢を撃ち落とすには適しているが本体を貫くには別の力がいる。
遠距離。一撃必殺。
俺はネオディケイドライバーへ手を伸ばした。
「ツカサ、何をする気だ」
「あいつの本体を狙う。ここから一発で届かせる」
カードを取り出す。
黒い背景に白い文字。クウガ。
『KAMEN RIDE KUUGA!』
黒と金の装甲が体を覆った。クウガの姿。マイティフォーム。だが今使うのはこの形ではない。
フォームライドのカードを装填する。
『FORM RIDE KUUGA PEGASUS FORM!』
全身の装甲が緑へ変わった。ペガサスフォーム。超感覚特化の形態。視覚、聴覚、触覚が鋭敏になり遠距離の標的を正確に捉える。
だがこれだけでは足りない。
ネオディケイドライバーへもう一枚。
『ATTACK RIDE RISING PEGASUS!』
緑の装甲に金色のラインが走った。ライジングペガサス。電気を帯びた強化形態。超長距離射撃を可能とする雷の弓。
右手にライジングペガサスボウガンが出現した。
金色の弓。弦に電気の光が走る。握る手に静電気が弾ける感覚が伝わる。重い。だがこの重さは届けるための重さだ。
俺は弓を構えた。
左半身を前に出し右半身を引く。狙いは北東。崩れたビルの屋上。影が見える。人型。左手の弓。
超感覚が働く。風の速度。空気の密度。標的までの距離。全ての情報が感覚として体に入ってくる。
四百メートル先の影が鮮明に見える。サジタリウス型原種の輪郭。左手の弓。右肩に原種の目玉。全身に散らばる瞳孔。
弦を引く。電気の光が弦から弓へ流れ金色の矢が形成される。雷を纏った光の矢。
狙いは定まった。