悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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地下の脅威

地下への階段は、地上よりも静かだった。

 

非常灯の緑色の光が、薄暗い通路を等間隔に照らしている。足音がコンクリートに反響し、ヴィータのグラーフアイゼンが階段の角を擦る金属音が時折混じる。二人の呼吸だけが、規則的に続いていた。

 

「この先だ」

 

ヴィータが短く言った。階段を下りきると、広い通路に出る。天井が高い。壁には避難誘導の標識。床には泥と煤の跡。ここを通って住民が地下へ逃げ込んだのだ。

 

通路の奥に、搬入口が見えた。重い防護扉が半開きになっている。その向こうに、避難施設の光が漏れている。

 

だが、扉の手前で何かが立っていた。

 

人型。だが人ではない。

 

黒い外殻。肩や胸の継ぎ目から、原種特有の目玉が覗いている。長い腕。無骨な拳。アークオルフェノク。ファイズの世界に現れた最強のオルフェノクを模した姿だ。

 

だが本物じゃない。中身は原種だ。これまでの個体と同じ。

 

「来たか」

 

ヴィータがグラーフアイゼンを構えた。

 

「避難民は奥にいる。ここを通さねぇ気だ」

 

「なら通す」

 

俺はライドブッカーに手をかけた。だがその前に、ヴィータが踏み出した。

 

「先に行かせろ。あたしが叩く」

 

「分かった。俺は後ろの住民の保護に回る」

 

「ああ」

 

ヴィータが駆け出した。グラーフアイゼンを振り上げる。アークオルフェノク型原種が腕を上げて構えた。金属音。拳と鉄槌がぶつかる音が通路に響いた。

 

だが、敵は動かなかった。

 

ヴィータの全力の一撃を受けても、一歩も後退していない。むしろヴィータの方が反動でわずかに後ろへ下がった。

 

「なっ——」

 

ヴィータが呻く。敵の足元を見た。足裏から根のような組織が伸び、床のコンクリートへ突き刺さっている。ただそれだけではない。背中からも同じ組織が伸び、壁と天井へ食い込んでいる。身体を地面と壁に固定しているのだ。

 

「踏ん張ってやがる」

 

ヴィータが歯を食いしばる。もう一撃。だが敵は動かない。鉄槌が拳を叩く音だけが響く。

 

その時、頭上で音がした。

 

天井から破片が落ちてくる。さっきの衝撃でひび割れたコンクリートが剥がれ落ちたのだ。大きい。俺の頭上から。だが俺は動けない。背後には住民がいる。避難させようとしている最中だ。

 

「伏せろ!」

 

俺が叫ぶ。だが声より早く、鉄槌が横から飛んできた。

 

ヴィータが振り返らずにグラーフアイゼンを投げた。鉄槌が空中で回転し、落下物を砕く。砕けたコンクリートの破片が散る。その間に俺はライドブッカーを抜き、ソードモードで敵の腕を切り払った。

 

金属音。敵の腕が弾かれる。だが敵は動かない。根が地面と壁に食い込んでいる限り、ここからは一歩も動かない。

 

「根を切る」

 

俺は剣を下ろし、敵の足元を見た。床に突き刺さった根状の組織。これを断てば踏ん張りが崩れる。

 

だが、敵もそれを分かっているのだろう。片腕を俺に向け、拳を振り下ろしてきた。

 

俺は横へ避ける。拳が床を砕く。衝撃で通路が揺れる。天井のひび割れが広がった。ヴィータがもう一つの破片を叩き落とす。

 

「下がれ! これ以上やると崩れるぞ!」

 

「分かってる。だが根を切るには近づく必要がある」

 

「じゃああたしが引きつける。あんたが根を切れ」

 

「了解」

 

短いやり取り。それで十分だ。

 

ヴィータが再び正面に回った。グラーフアイゼンを回収し、敵の胸へ叩きつける。敵が拳を上げて迎え撃つ。金属と金属がぶつかる音。だが敵は動かない。根が支えている限り、ここに留まる。

 

その隙に、俺は敵の横をすり抜けた。足元に回り込む。根状の組織が床に突き刺さっている。太い。だが剣で斬れる。

 

ライドブッカーを振り下ろした。根が断たれた。敵の体が揺れる。踏ん張りが崩れた。

 

「今だ!」

 

俺が叫ぶ。ヴィータが横から鉄槌を叩き込んだ。踏ん張りの失った敵が通路の奥へ弾かれる。外殻の継ぎ目が開き、内側の筋が収縮するのが見えた。

 

だが倒れない。壁に手をつき、体勢を立て直そうとしている。

 

まだ終わっていない。

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