彼女は黙った。
俺の説明を聞いて、少し考える顔をしている。疑っているわけではない。だが受け入れているわけでもない。情報を整理している顔だ。
彼女たちが知りたいのは、あの原種が何だったのか。そして、俺たちが何者なのか。
そのうち前者には答えた。後者は、まだ答えていない。
女がもう一度口を開こうとした。
「…まさか、他の世界の怪人のDNAが混じっている存在だとは」
外から音が聞こえた。
足音だ。だが人の足音ではない。重い。規則的だが、一歩ごとに地面が震えるような重さがある。
俺は搬入口の隙間から外へ目を向けた。
シイナも気づいた。散弾銃を構え直し、同じ方向を見る。女もまた、音の方へ顔を向けた。後ろの二つの影が動いた。壁の陰から出て、音の方向へ視線を向ける。
見えた。
工場の外。崩れた壁の向こう。駐車場だった場所の残骸の向こう。
巨大なものが立っていた。
さっき倒した原種とは違う。あれはアルビノジョーカーとフォーティーンを模していた。外殻があって、目玉があって、怪人の輪郭があった。
だが、今目の前にいるのは、それとは違う。
輪郭が不規則だ。人の形ではない。だか獣の形でもない。ましてや怪人の形でもない。歪な体が、ただそこにある。表面に外殻はない。だか原種特有の目玉はある。全身に散らばっている。だが、その目玉が怪人のそれを模しているわけではない。原種そのものの目だ。
巨大な体がゆっくりと動いている。一歩踏み出すたびに地面が揺れる。瓦礫が踏み潰される音が響く。だが速くはない。速さを持たない代わりに、質量がある。
俺は剣を握る手に力を入れた。
この原種は、今まで相手にしてきたものとは違う。
メガヘクス型でもない。ドラス型でもない。ゴルトフェニックス型でもない。グレムリン型でもない。グリラスワーム型でもない。サジタリウス型でもない。アークオルフェノク型でもない。アルビノジョーカーフォーティーン融合型でもない。
どの怪人の能力も持っていない。どの怪人の姿も模していない。
ただの原種だ。
だが、ただの原種がこれほど巨大な姿をしている。
「ツカサさん。あれは」
「ああ。見えてる」
シイナの声が緊張で引き締まる。だが怯えていない。銃口が動かない。あの巨体へ向いている。
女が横で息を呑んだ。
「あれは…どうやら、元々の原種のようだな」
「…どちらにしても、倒す事には変わりないなぁ!」
それと共に、未だに待機していたキングオブアーサーも、そのまま巨大な原種に合わせて、さらに巨大化する。