巨大な二体の原種が並んでいた。
一つはさっきまで見ていた歪な原種。もう一つは工場の裏手から現れた。さっきのよりさらに大きい。だが形は似ている。どの怪人の姿も模していない。純粋な原種の巨大化だ。
二体が同時に動いた。
地面が揺れる。二体の足音が重なり、瓦礫が跳ねる。駐車場の残骸が踏み潰される音が響く。
俺はキングオブアーサーを展開した。
さっきの戦いで一度消した巨像が、再び光の中から形を成す。脚が出る。胴体が組み上がる。腕が伸びる。頭部が光る。着地。振動。瓦礫が舞い上がる。
二体の原種と巨像が向き合う。
原種が左右に分かれた。挟み撃ちの構えだ。左右から同時に来る。一対一なら巨像の質量で押し切れる。だが二対一なら、一方を攻撃している間に背後を取られる。
火炎剣烈火を握る。刃に炎が灯る。だが、これだけでは足りない。二体を同時に倒すには、もっと広範囲の斬撃が要る。
俺はネオディケイドライバーへカードを装填した。
『FINAL ATTACK RIDE! SA SA SA SABER!』
音声が響く。力が流れる。全身の装甲に熱が走る。
巨像の手が動く。俺を掴む。抵抗はない。足が地面を離れ視界が上がる。空が近くなる。
俺の体が剣に変わる。火炎剣烈火の刃と全身の装甲が重なり一つの刃となる。巨像が俺を振り上げる。
二体の原種が同時に腕を振り上げた。巨大な拳が左右から迫る。巨像の腕が両方を防ぐ。だが押し合いになる。質量は拮抗している。いや、二体分の力の方が上か。巨像の足がわずかに後退する。
押し込まれる前に、抜く。
巨像が俺を縦に振る。上段から下段へ。右側の原種の頭部を狙って振り下ろす。
刃が原種の表面に触れる。抵抗が来る。硬い。だが外殻ではない。ただの肉体だ。厚い。分厚い肉の層を刃が裂いていく。原種が吠える。声ではない。空気が震える音だ。
斬撃が原種の頭部から胸へ走る。表面の肉が裂け内部の組織が露わになる。黒い筋と目玉がごちゃ混ぜになった層。だが核までは届かない。深さが足りない。
左側の原種が巨像の背後へ回り込もうとしていた。巨像が俺を振り切る前に、もう一つの攻撃が来る。
巨像が腕を変えた。縦振りから横振りへ。右の原種から左の原種へ刃を振り抜く。二体の間を一閃する。
右の原種の胸に深い亀裂が走る。左の原種の肩が裂ける。二体が同時に怯む。だが倒れない。
再生が始まった。裂けた肉の隙間から新たな組織が盛り上がり傷を塞ぎ始める。速い。さっきの融合型原種よりも速い。純粋な原種だからか。余計な能力を持っていない分、再生に全振りしている。
再生を許すな。
巨像が踏み込んだ。右足を一歩前に出し体を捻る。遠心力を利用して俺を再度振る。今度は横から。二体の間を再度薙ぐ。
一閃目で裂けた傷をさらに深く裂く。右の原種の胸の亀裂が広がる。内部の組織がさらに露出する。黒い筋が断たれ目玉が弾け飛ぶ。だがまだ核には届かない。
左の原種が巨像の腕を掴もうとしてきた。巨腕が俺を握る手に伸びる。巨像が腕を引く。だが完全には避けきれない。原種の指が巨像の腕に触れる。
重い。巨像の腕が押される。だが崩れない。巨像の足が踏ん張る。瓦礫が砕ける音が下から聞こえる。
このままでは押し合いになる。時間がかかる。再生が追いつく前に二体同時に核を砕く必要がある。
俺は火炎剣烈火に意識を集中させた。刃の炎を強める。熱が上がる。刀身が赤く発光する。炎が俺の全身の装甲を包み始める。剣となった体全体が炎を纏う。
巨像が俺を両手で構え直した。縦ではなく横。そして上段へ。頭上に掲げる。二体の原種の間に狙いを定める。
二体が同時に腕を振り上げる。巨像へ同時に叩きつけるつもりだ。だが遅い。振り下ろされる前に、俺を振り抜く。
巨像が一歩踏み込む。地面が揺れる。瓦礫が吹き飛ぶ。踏み込みと同時に、掲げられた剣を振り下ろす。
炎を纏った刃が、二体の原種の間を裂く。
右の原種の胸へ。左の原種の胸へ。二つの軌道を同時に描く。刃が二体の肉を裂き内部の組織を焼き断ち核へ届く。
右の核が砕ける。銀色の光が弾ける。
左の核が砕ける。同じ光が弾ける。
二体の原種が同時に吠えた。空気が震える。巨体が揺らぐ。表面の肉が裂け内部の組織が溢れ出す。目玉が一つずつ光を失い砕けていく。
二体の巨体が崩れ落ちる。瓦礫の上へ。地面が揺れる。粉塵が舞い上がる。
俺は剣を下ろす。巨像の手が離れ足が地面へ戻る。視界が低くなる。
二つの巨体が瓦礫の上で動かない。残った組織が蠢いている。だが再生は始まらない。核が砕けたからだ。
静かになった。
風が吹き、粉塵が薄れる。灰が舞う。二体の残骸の上に積もり始める。動くものはない。
そして、再び見つめた先には、既に魔人狩りは撤退していた。