悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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時空管理局への疑い

俺はそのまま、オーロラカーテンでその場を去った。

 

俺は変身を解いたまま、人気のない裏道を歩いていた。少し遅れて、デルタ、ゼータ、イータが合流してくる。

 

「ボス……じゃなくて、ツカサ。終わった?」

ゼータが小走りで並びながら聞いてくる。

 

「終わった。とりあえずな」

 

短く答えながら、俺は振り返らなかった。後ろでデルタが無意味に地面を蹴って、イータが静かに周囲を観測している気配がする。

 

さっき現れた連中――管理局、だったか。

正直、胸の奥に引っかかる感覚が、消えてくれない。

 

「さっきの連中……組織?」

イータが、いつもの実験報告みたいな口調で言う。

 

「ああ。時空管理局、とか言ってたな」

 

口に出してみても、やっぱり違和感がある。

“時空を管理する組織”。

そんなもの、これまで何度も聞いた。

 

世界を渡るたび、似たような連中は必ずいた。

“世界の秩序を守る者”。

“均衡の番人”。

“観測者”。

 

だが、そのほとんどが、現場では何もしなかった。

いや、正確に言えば、何もできなかったんじゃない。

“やらなかった”。

 

「測定不能、とか言ってたね」

ゼータが肩をすくめる。

 

「ああ。俺のことをな」

 

イータが少しだけ眉をひそめる。

 

「危険分類……排除対象……そういう言葉……聞こえた……」

 

それを聞いた瞬間、胸の奥で何かがはっきりと形を持った。

 

――ああ、やっぱりそういう連中か。

 

さっき、なのはたちが拘束されていたとき。

あいつらは、助けるより先に測定していた。

報告して、分類して、危険度を算出していた。

 

人質が目の前にいるのにだ。

 

「なあ、ツカサ」

デルタが珍しく真面目な声で言う。

「悪い奴?」

 

俺は少し考えてから、首を横に振った。

 

「……悪じゃない」

 

それは本音だ。

あいつらは、世界を壊そうとしているわけじゃない。

むしろ、守ろうとしている側なんだろう。

 

でも。

 

「信用できるかって言われると……別だ」

 

デルタが不満そうに鼻を鳴らす。

ゼータが興味深そうに俺を見る。

 

俺は歩きながら、ゆっくりと言葉を選んだ。

 

「俺は今まで、いろんな世界を回ってきた。

そこでな、“管理してる側”って連中を山ほど見てきた」

 

誰も口を挟まない。

続ける。

 

「で、そういう連中ほど決まって言うんだ。

“全体のために仕方ない”ってな」

 

なのはの顔が、脳裏に浮かぶ。

フェイトの必死な目。

クロノの焦った声。

 

「目の前の一人を切り捨てるのに、都合のいい言葉だ」

 

イータが小さく頷いた。

 

「……統計……最適解……人は……部品……」

 

「そういうことだ」

 

俺は足を止めて、夜空を見上げた。

星は普通に瞬いている。

この世界は、今のところ、壊れていない。

 

「それにさ」

少し苦笑する。

 

「時空管理局なんて名前、聞いたことない。

俺、世界渡りは長いけど、そんな連中に会ったこと、一度もない」

 

ゼータが目を丸くする。

 

「じゃあ……新しい組織?」

 

「か、隠れてたか、だな」

 

どっちにしても厄介だ。

 

「しかも、俺のことを“未登録”“分類不能”って言ってた」

肩をすくめる。

「嫌な予感しかしない」

 

デルタが即答する。

 

「じゃあ、ぶっ飛ばす?」

 

「今はやめとけ」

 

目だけで制する。デルタは素直に黙った。

 

「現状は様子見だ」

 

俺は三人を見回した。

 

「敵でも味方でもない。

協力もしないし、正体も明かさない。

なのはたちに手を出すなら、その時は容赦しない。それだけだ」

 

イータが少しだけ笑う。

 

「観測対象……逆転……」

 

「そういうこと」

 

管理する側を、こちらが観察する。

皮肉な話だが、それが一番安全だ。

 

俺は最後に、低く呟いた。

 

「世界を守る組織が、世界の一番大事な部分を切り捨てるなら……

その時は、俺が止める」

 

誰も反論しなかった。

夜風だけが、静かに吹き抜けていった。

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