悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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姿が似ていても

オーロラカーテンを抜ける寸前だった。

 

色の層が重なった膜の向こうに、次の座標が見えている。半歩踏み出せば切り替わる――その瞬間に、空気の密度が変わった。

 

来る。

 

長年の戦闘で染みついた直感が、理屈より先に警鐘を鳴らす。俺は足を止めず、体だけを半回転させた。視界の端で光が走る。斬撃。ゼロの手刀。光の粒子を引き裂きながら、カーテンそのものを叩き割るつもりの軌道だった。

 

「逃がすと思った?」

 

声は軽い。だが殺気は濃い。遊びの延長で人を壊せる種類の圧だ。

 

オーロラの縁が裂け、世界の境目が歪む。普通の攻撃ならすり抜けるはずの位相層に、無理やりねじ込んできた。力任せに境界を殴っている。だからこそ荒い。だからこそ読める。

 

俺はライドブッカーを反転させ、柄で受けた。金属音じゃない。光同士が噛み合った鈍い振動が腕を伝う。重い。だが勢いだけだ。芯がない。

 

半歩ずらし、そのまま受け流す。斬撃は俺の肩をかすめ、背後の岩を真っ二つにした。

 

「通路に手を出すな。危ないぞ」

 

忠告のつもりで言ったが、相手は笑うだけだった。

 

「壊れるなら、その程度の道ってことだろ?」

 

やっぱりだ。使っている力の出所はヒーローでも、思想が怪人側だ。

 

オーロラカーテンが不安定に揺れる。座標が崩れる前に決める必要がある。観察は終わっている。分類も済んでいる。

 

強い。だが、雑だ。

ヒーローの姿をした、アナザー寄りの存在。

 

「何を見てる?」

 

「ズレてるって話だ」

 

「は?」

 

「お前の戦い方。守る側じゃない」

 

言葉の意味が通じていない顔だった。ますます確信が強まる。力を選んだ理由と、力の使い方が一致していない。

 

だから、伸びない。

 

俺はカードを抜いた。指先で回す。次の手を決める。

 

真正面から付き合う相手じゃない。テンポを壊す。主導権を奪う。人格ごと戦闘を乱すタイプがちょうどいい。

 

「次は何だ?」

 

ゼロの姿のまま構え直す。さっきよりも一歩深く。焦りが混ざった証拠だ。

 

カードを押し込む。

 

『KAMEN RIDE DEN-O!』

 

赤い電車のラインを思わせる光が走り、装甲が連結するように全身へ展開される。重心が変わる。感覚が切り替わる。スピードではなく“テンポ”で戦うフォームだ。相手のリズムを奪い、間合いを壊す。

 

目の前のゼロが、わずかに眉をひそめた。

 

「……また別の力か。節操がないな」

 

節操で戦場は生き残れない。

 

俺は肩を回し、剣先を軽く振る。空気の手応えを確かめる。オーロラの残滓が刃に絡んで、火花みたいに散った。

 

「俺、参上!」

 

言葉と同時に踏み込む。宣言は合図だ。自分へのスイッチでもあるし、相手へのノイズでもある。戦いは技術だけじゃない。リズムと心理の取り合いだ。

 

ゼロが迎撃に腕を振るう。光の打撃。真正面からなら重い一撃。だが俺は半歩ずらし、刃の腹で滑らせる。受けるんじゃない。通す。流す。空振らせる。

 

「さっきより軽いな」

 

「戦い方を変えただけだ」

 

「ヒーローの力で小細工か?」

 

「壊すだけが能じゃない」

 

足元の地形、カーテンの歪み、相手の癖。全部まとめて利用する。電王の戦い方は直線じゃない。崩して、誘って、叩く。

 

ゼロが連撃に切り替える。速い。だが素直すぎる。攻撃の“意味”が全部同じだ。だから崩せる。

 

俺はわざと一発、浅く受けた。火花が散る。相手が押し込んでくる。その瞬間に柄で弾き上げ、体を入れ替える。位置が逆転する。

 

「なっ——」

 

驚きが遅い。

 

「次、行くぞ」

 

剣を構え直す。オーロラカーテンの残光が背後で閉じる。逃げ道は消えた。舞台は固定された。

 

ここから先は、テンポ勝負だ。

 

電王の間合いで、試合を始める。

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