悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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勢いと共に

デンガッシャーをソードモードで握り直す。

手に伝わる重さがちょうどいい。軽すぎず、鈍すぎない。振り抜いた時に、相手のガードごと姿勢を崩せる重量だ。電王の型は理屈より勢い。だが、勢いだけじゃない。勢いに見せた“組み立て”だ。

 

踏み込む。

 

一撃目は大振りに見せた。ゼロの姿をした転生者は即座に反応し、両手のゼロスラッガーを交差させて受ける。金属音じゃない、光同士の軋みが弾けた。

 

「そんな雑な——!」

 

言い終わる前に二撃目。

今度は逆袈裟。軌道を途中でねじ曲げる。防御の角度が一瞬遅れる。火花が散る。

 

三撃目。四撃目。

止めない。考えさせない。守らせ続ける。

 

「くっ……!」

 

ゼロスラッガーが回転し、防御面積を広げる。悪くない判断だ。だが、完全に“受け”に回っている。攻撃の主導権は全部こっちだ。

 

「どうした、壊しに来たんじゃないのか」

 

「うるさい!」

 

振り下ろし。

受け止められるのを前提に、さらに押し込む。力比べに見せて、足運びで角度をずらす。接触点が滑り、ゼロの体勢が半歩崩れる。

 

電王の戦い方は、喧嘩だ。

綺麗な型じゃない。だが、実戦ではこっちの方が強い。

 

「オラオラオラッ!」

 

モモタロスを思わせる荒い勢いで連撃を叩き込む。リズムは崩さないが、間隔はわざと不規則にする。相手の学習を無意味にするためだ。

 

縦。横。突き。柄打ち。

剣術と乱打の中間。読みづらい暴力。

 

ゼロの転生者はゼロスラッガーを盾のように使い、完全防御に切り替えている。攻める余裕がない証拠だ。

 

「さっきの威勢はどうした」

 

「防御を崩せないなら同じだ!」

 

「崩れてるさ。もうな」

 

次の一撃は振らない。

代わりに踏み込み、至近距離でデンガッシャーの柄を叩き込む。鳩尾。光の装甲越しでも衝撃は通る。

 

ゼロの身体がわずかに浮いた。

 

そこへ追撃。

下からすくい上げる斬撃。防御が間に合う。だが腕ごと跳ね上がる。ゼロスラッガーのガード位置が開く。

 

「がっ——!」

 

「守るのは上手い。だがな」

 

剣先を喉元で止める。

一瞬の静止。間合いの支配。

 

「守るだけの戦い方は、守る理由がある奴の型だ。お前のは違う。壊すための防御だ」

 

蹴りを入れて距離を取る。

転生者はよろめきながらも体勢を戻すが、呼吸が乱れている。さっきまでの余裕がない。

 

テンポは完全にこっちだ。

ゼロの動きが変わった。

 

押され続けていた防御の型から、ほんの一瞬だけ刃が前へ出る。ゼロスラッガーが円を描かず、一直線に伸びた。狙いは喉元。さっき俺が作った間合いを、そのままなぞるような軌道だった。

 

悪くない。

守り一辺倒から、隙狙いへ。だが遅い。

 

「取った!」

 

転生者が笑う。

ゼロスラッガーの光刃が、空気ごと切り裂きながら迫る。

 

その瞬間、俺はデンガッシャーを引かない。

代わりに、空いている手を反転させる。

 

ライドブッカー――ガンモード。

 

構える動作すら最小限。

引き金だけを引く。

 

光弾が至近距離で炸裂した。

 

「なっ——!」

 

ゼロスラッガーの軌道が弾かれる。直撃じゃない。刃の根元を叩いて、角度を狂わせただけだ。だが、それで十分だ。狙いは命中じゃない。リズム破壊。

 

爆ぜた光に反応して、転生者は反射的に後ろへ跳ぶ。

防御優先の後退。攻めの流れが完全に途切れる。

 

「距離、空けすぎだ」

 

入る。

 

踏み込みと同時に、ライドブッカーを戻す。

銃から剣へ。無駄のない切り替え。

 

デンガッシャーを振り抜く。

 

横一閃。

 

勢い任せに見せて、軌道は正確にゼロスラッガーの防御ラインの外側を通す。受ける角度が作れない位置。光の装甲をなぞり、火花が一直線に走った。

 

衝撃が遅れて届く。

 

ゼロの身体が横へ弾き飛ばされ、地面を滑った。

装甲の一部が砕け、光が漏れる。

 

呼吸が乱れている。

もう余裕の笑みはない。

 

「……くそ……!」

 

「隙は悪くない。だがな」

 

デンガッシャーを肩に担ぐ。

 

「俺の前で、“一回だけ”の勝負を狙うのはやめとけ」

ライドブッカーをソードモードへ戻す。

銃口が折り畳まれ、刀身が展開する。黒い刃が月光を細く弾いた。

 

ゼロの姿をした転生者が、わずかに間合いを取り直す。呼吸が乱れている。視線が忙しい。デンガッシャーとライドブッカー、二つの刃を交互に見ている。

 

理解が追いついていない顔だ。

 

「なんだよ、その戦い方……! データにない!」

 

「そりゃそうだ。今、組んだ」

 

型にない動き。

世界の外から持ってきた癖。

ライダーの力に、俺の戦歴を混ぜる。それだけだ。

 

カードを抜く。

迷いはない。

 

ネオディケイドライバーへ叩き込む。

 

『FINAL ATTACK RIDE DE DE DE DEN-O!』

 

空気が震える。

足元に赤いラインが走り、電車の軌道のようなエネルギー導線が展開される。時間感覚が一段、加速する。

 

ゼロが身構える。

だが、読み切れていない。何が来るか分からない防御は、必ず遅れる。

 

俺は二刀で構えた。

右手にデンガッシャー・ソードモード。

左手にライドブッカー・ソードモード。

 

「俺の必殺技ディケイドバージョンっ!」

 

踏み込む。

 

同時に、二振りの刀身にエネルギーが走る。

赤とマゼンタの光が刃を覆い、像がぶれる。残像じゃない。斬撃の位相を一時的に分割している。

 

一振りが、数太刀に見える。

 

「分身だと!?」

 

違う。

斬撃そのものを増やしている。

 

最初の交差斬。

ゼロスラッガーで受けに来る。だが接触した瞬間、刃が“増える”。一本のはずの軌道から、複数の斬線が同時に走る。

 

火花が連続して弾けた。

 

「ぐっ……!」

 

二撃目。三撃目。四撃目。

間を空けない。テンポを与えない。

 

ゼロの防御は正確だ。

だが対象が一本前提のガードだ。複数同時の斬撃には追いつかない。

 

「そんな――」

 

後退しながらスラッガーを回転防御に切り替える。判断は早い。だが遅い。もう圏内だ。

 

俺は体を沈め、最後の一歩を滑り込ませる。

 

二刀同時――横薙ぎ。

 

増幅された斬撃群が重なり、ゼロの防御ごと貫通した。

光の装甲が耐えきれず、線になって裂ける。

 

一拍遅れて、衝撃が爆ぜた。

 

ゼロの姿が吹き飛ぶ。地面を跳ね、転がり、動きが止まる。変身が維持できず、光が崩れた。

 

静寂。

 

俺は刃を振ってエネルギーを払う。

残光が夜に溶けた。

 

「知らない組み合わせには、知らない答えが来る」

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