悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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なのはとイータ

ジュエルシードの事件が終えた後、なのはの立場は複雑だった。

胸の奥に残るのは達成感ではなく、静かに沈んだ石のような重さだった。確かに多くを守れたはずなのに、手のひらからこぼれ落ちた何かが、どうしても気になってしまう。

 

彼女は、ジュエルシードの事件を解決に導いた功労者だった。

そして、事件を通じて出会う事が出来たフェイトと友達になる事は出来た。

しかし、全てのジェルシードは謎の人物に持ち去られた。

 

「・・・結局、私は何も出来なかったのかな」

 

声に出した瞬間、胸の奥にあった小さな棘がわずかに疼いた。褒められても、誰かに感謝されても、心のどこかが納得していない。笑おうとすればするほど、言葉の裏に薄い影が残る。

 

「何を悩んでいる」

 

「ひゃぁ!?イータさん!?」

 

背後に立つ気配に、思わず肩が跳ねる。なのはは慌てて振り向き、見慣れた白衣の姿に目を丸くした。

 

そこには、何時もは店で見かける常連であるイータだった。

 

「何か悩み?」

 

淡々とした声音。けれど、その距離は近すぎず遠すぎず、逃げ道を残す優しさがあった。

 

「えっ、いや、悩みは」

 

言葉を選びながら視線を落とす。話したい。でも、全部は話せない。胸の奥で迷いが揺れる。

 

「最近、少し捜し物の手伝いをしていました。それを通じて、友達が出来たんですけど。その」

 

言葉が途中で止まる。楽しかった時間と、守れなかったものが同時に思い出されて、喉が詰まる。

 

「捜し物が見つからなかった?」

 

「えっ、はっはい!そうなんです」

 

言い当てられたことに、なのはの肩がわずかに震える。否定されると思っていた心が、拍子抜けするほど軽くなる。

 

「まぁ、そういう事もあるよ。なのはがやれる事はやったんでしょ」

 

責めるでも励ますでもない、事実を置くだけの言葉。なのはは少し考えてから、小さく頷いた。

 

「はい」

 

その返事には、迷いが混じっていた。けれど嘘ではない。

 

イータはゆっくりと手を伸ばし、なのはの頭を撫でる。

優しく、しかしどこか観察するような手つき。撫でられた瞬間、なのはの肩から力が抜けていく。誰かに「頑張った」と認められることが、こんなにも温かいのだと知る。

 

「頑張った、今はそれだけで良い」

 

その言葉は大げさな慰めではなく、ただ事実を肯定する響きだった。

 

「・・・ありがとうございます。それだけで少し元気が出ました」

 

笑顔を作ろうとして、なのはは少しだけ目を細める。完全に晴れたわけじゃない。でも、前を向ける気がした。

 

イータはそんな様子を静かに見つめる。

小さな背中。守るべき年齢のはずの少女が、誰かを守ろうとしている姿。そのアンバランスさに、胸の奥がわずかに痛む。

 

(それに、こっちの面倒事に巻き込んでしまったから)

 

表情は変えないまま、心の中でだけ呟く。

研究者としては観測対象。けれど、大人としては――守りたい存在。

 

なのははまだ知らない。

目の前の出来事の裏で、もっと大きな流れが動いていることも。

 

けれど今は、それでいい。

 

風が少しだけ吹き、木漏れ日が揺れた。

なのはは顔を上げ、さっきよりもまっすぐ前を見る。

イータはその変化を確かめるように一歩だけ後ろに下がり、距離を戻した。

 

見守る位置。

干渉しすぎない位置。

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