悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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三つ巴の結末

路地の空気が、もう何度目かも分からない銃声で震えた。

青い閃光が俺の肩口を抜け、その直後にマゼンタの光が海東の足元を抉る。互いを撃っている。狙いは最初からそこだ。だが、その間に赤いオーラをまとった馬場が滑り込み、追加戦士の残骸みたいに散った火花の向こうで、強引に間合いをこじ開けようとしていた。

 

「まだやる気か」

 

吐き捨てた声に、馬場は笑う。笑っているが、呼吸は浅い。

カリブレードを返し、低く沈んだ体勢のまま一気に踏み込んでくる。速い。踏み込みの一拍が消える、あの嫌な加速だ。

 

ライドブッカーをソードモードのまま差し込む。

受け切る気はない。刃の角度だけを当て、切っ先を外へ流す。金属が擦れ、火花が散る。押し込まれた重みが腕へ来る前に、膝を入れて距離を剥がした。馬場の体が半歩浮く。その半歩へ、横から青い一発が刺さる。

 

「っ!」

 

ネオディエンドライバーの射撃。

海東の弾は、いつもそうだ。倒すためじゃない。動きを壊し、次の被弾位置へ押し出すための一発。馬場の脇腹が捻れ、体勢がぶれた。

 

そこへ、俺は海東へ撃つ。

マゼンタの光弾は本来、海東の胸を撃ち抜くはずだった。だが、海東は読んでいたみたいに身をずらす。外れた射線の上に、馬場がいる。避けきれない。光が肩を掠め、赤いオーラが一瞬だけ薄くなる。

 

「……趣味が悪いな」

「君にだけは言われたくないね」

 

海東がカードを抜く。

俺も同時に、腰へ手をやった。最悪だ。呼吸が合っているわけでもないのに、こういう時だけ噛み合う。

 

馬場もそれに気づいたらしい。

笑みが消える。ラッパラッターを鳴らそうとした指が、わずかに迷う。その迷いは致命的だ。俺と海東、二人分の視線が、同じ一点に落ちた。

 

カードを滑らせる。

ベルトが低く唸るように応じる。

 

『FINAL ATTACK RIDE DE DE DE DECADE』

 

音声が夜道に響いた瞬間、マゼンタの光が足元からせり上がる。

それはただの発光じゃない。路面に散った火花も、砕けた破片も、街灯の白まで巻き込んで、一直線の圧に変わる。撃ち抜くための色だ。

 

ほぼ同時に、海東の側でも青が走った。

ネオディエンドライバーが持ち上がり、銃口の周囲に冷たい光が集束する。

 

『FINAL ATTACK RIDE DI-DI-DI-DIEND』

 

青い音が、路地の空気を一段細くする。

海東は笑っていた。いつもの、あの腹の立つ顔のまま。けれど、銃口だけは一切ぶれない。撃つ。奪う。そこに迷いがない。

 

俺は前へ出る。

海東は半歩だけ横へ滑る。

本来なら、俺の必殺は海東を裂くためのものだ。海東の一撃も、俺を撃ち抜くためのものだった。

 

その真ん中へ、馬場が赤いオーラをまとったまま突っ込んだ。

抜けるつもりだったのだろう。二つの必殺の、わずかな隙間をこじ開けて逃げるつもりだった。だが、遅い。

 

マゼンタが走る。

青が重なる。

 

二色の光が、交差した。

その交点にいた馬場の身体が、まとめて呑まれる。衝撃は一拍遅れて腹へ来た。爆ぜる音、押し返す熱、焦げた匂い。爆煙が路地いっぱいに膨らみ、街灯の光を塗りつぶす。

 

腕で顔を庇う。

熱が引く。煙が流れる。視界の向こうで、何かが崩れ落ちる鈍い音がした。

 

煙が薄れる。

馬場は倒れていた。カリブラスターも、カリブレードも、濡れた路面に転がっている。赤いオーラはもうない。追加戦士の気配も消えていた。

 

「まぁ、良いか。今回は、これだけ貰っていこうか」

 

それと共に既に奴の姿は消えていた。

 

「……やっぱりか」

 

爆煙の残り香だけが、そこに残っていた。

海東大樹は、もういない。好き勝手に場を荒らして、決着の瞬間だけを持っていく。昔から、最後まで気に入らない男だ。

 

それでも、家の方を見れば灯りはまだ消えていなかった。

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