悪魔と呼ばれ慣れて 3rd   作:ボルメテウスさん

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ドラゴンが集う時

黒い影から生まれた魔物たちは、倒されるたびに床のひび割れへ沈み、そのまま終わるどころか、次の瞬間には別の場所から這い出してきた。

牙を剥いた獣の影が低く唸り、翼を持つ黒い塊が天井のない空を円を描いて巡り、蛇のように細長いものが足首を狙って石床の上を走る。数が多いだけじゃない。噛みつく、絡め取る、上から潰す。役割を分けて、こちらの動きを削るためだけに配置されている。

 

ライドブッカーを逆手に持ち替え、最初に飛び込んできた獣の顎を下から断つ。

その反動を殺さないまま身体を流し、左から絡んできた蛇の胴を斜めに裂き、着地の膝を曲げたところで、頭上から落ちてきた翼持ちの影を横一文字に払った。

切った感触はあるのに、手応えは薄い。黒い影が砕けて散るたび、アンダーワールドの底に滲んだ闇が脈打ち、次の怪物を押し上げる。

 

「斬っても供給が止まらないなら、話は別だ」

 

息を落としながら、周囲の流れだけを見る。

数で押してくるんじゃない。俺を奥へ行かせないために、転生者本人がこの世界の景色ごと使っている。

だったら、こっちも段階を上げるだけだ。

 

右手のドラゴタイマーへ手をかける。

黒い魔物たちが、その動きだけで一斉に距離を詰めた。止めるべきものだと、本能で分かった顔をしている。

遅い。

 

『ドラゴタイム!セットアップ!』

 

音声が響いた瞬間、ウィザードの赤い装甲の内側で、熱が段階を変えた。

火が燃え上がるんじゃない。四方へ走り、別の色を呼び込むために脈打ち始める。

最初に現れたのは、水の気配だった。

 

『ウォータードラゴン!』

 

右側へ、もう一人のウィザードが立つ。

青を纏った分身体は同じ姿で、同じ視線を持ちながら、剣筋だけが静かだった。

押し寄せた獣影の群れへ一歩で踏み込み、斬るのではなく流すようにライドブッカーを振るう。

刃の軌跡に沿って水の帯が走り、前列の魔物たちをまとめて横へ押し流した。足場ごと崩された影が、石壁へ叩きつけられて崩れる。

 

『ハリケーンドラゴーン!』

 

今度は左に、風を纏った分身体が現れる。

緑の輪郭はわずかに浮き、着地より先に移動の軌跡が残った。

囲い込もうとしていた蛇の群れの真ん中へ飛び込み、高速で回転した刃先が風圧を生み、黒い包囲網そのものを切り裂く。

散らされた影が互いにぶつかり合い、空を巡っていた翼持ちの怪物まで巻き込んで軌道を狂わせた。

 

『ラーンドドラゴン!』

 

最後に、土の重さを纏った分身体が正面へ進む。

黄色い光を宿したその姿は一歩ごとの踏み込みが重く、迫ってきた人型の怪物の腕を受け止めると、そのまま真正面から押し返した。

ライドブッカーが振り下ろされるたび、石床ごと砕くような衝撃が走り、前にいた魔物が二体、三体とまとめて潰される。

逃げ道を開くんじゃない。正面突破のために、壁を消していく戦い方だった。

 

三つの分身体が並び立つと、アンダーワールドの景色そのものが押し返され始めた。

黒く侵食されていた床の模様が一瞬だけ元の輪郭を取り戻し、頭上の歪んだ空も、熱と水と風と土の圧に耐えきれず揺らぐ。

それでも、底に沈んだ本体はまだ笑っている。だから終わらない。

 

「まだ奥で余裕ぶってるなら、まとめて引きずり出す」

 

四方向で戦っていた三つの分身体が、同時にこちらを見る。

別々に動いていた力が、次の瞬間には本体へ還ってくる。

水が流れ込み、風が巻き戻り、土の重みが骨の芯へ沈み、最後に火がすべてを繋ぐ。

身体の中で四つの属性がぶつかり合うのではなく、一つの竜の息として噛み合った。

 

『ファイナルタイム!オールドラゴン、プリーズ!』

 

赤い装甲の上へ、さらに竜の力が重なる。

両腕には鋭い爪が装着され、肩から背へと伸びた意匠が、翼の名残みたいに揺れ、腰の後ろでは尾の気配が熱を引く。

黒、赤、青、緑、黄の力が混ざり合っているのに、姿は濁らない。

むしろ、今この世界の中心に立つためだけに研ぎ澄まされた輪郭になっていた。

 

爪をゆっくりと構える。

その先、黒い影の海が大きく割れ、遺跡を裏返した空間の奥から、角のような輪郭がゆっくりと持ち上がる。

獣とも神ともつかない巨きな顔の一部だけが闇の中で形を取り、底なしの悪意を湛えた眼だけが、こちらを見返した。

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