デブリベルト内に速度を落としたアークエンジェルと播磨の二隻の先行する数機の機影があった。
アークエンジェルからはキラの駆るストライクとムウの駆るメビウス・ゼロ。播磨からはシルヴィアの駆る零とセルベリアの駆る零・ジャグラー、そして数機のSF-9“疾風”とP‐VF-00“烈風”が直掩機として就いていた。
「まもなく、デブリベルト中心部です」
播磨の操舵士がそう言うと、播磨艦橋に映し出されたのは荒れ果てた大地であった。
「これは、まさか⁉」
「ユニウスセブン………プラント初の核ミサイルの被害を受けた唯一のプラント………なぜこの様な場所に」
「判らん。だが、宇宙に漂う墓標だ。亡くなった民間人の方々に対して黙祷を捧げなくてはならんだろう。嘗てまだ世界が多くの国家が存在していた時、大きな戦争で核の被害を受けた我々と同様に、核で亡くなった人々の魂を慰めなくてはならんだろう」
伊吹の言葉に播磨の艦橋にいた者たち全員が頷く。
「アークエンジェルへ通信を繋げろ」
アークエンジェル艦橋でも播磨同様に動揺が広がっていた。
「まもなくデブリベルト中心部です」
アークエンジェル艦橋ではノイマンが報告すると、宇宙ゴミを抜けた先に大きな大地が広がっていた。
「これって………まさか………」
「ユニウス………セブン………」
マリュー達の間の前に広がる大地は、嘗て、プラントの農業用プラントの一つ。ユニウスセブンの残骸であった。
C.E70、2月14日。地球軍が放った一発の核ミサイルがユニウスセブンへ命中し、ユニウスセブンは住民24万3271人の命を一瞬で奪い去った。その亡くなった住民の一人には、現プラント評議会国防委員長に就任しているパトリック・ザラの妻であり、キラの友人であり、今はクルーゼ隊の一員としてザフトに身を置くアスラン・ザラの母、レノア・ザラが眠っている場所でもあった。
「なぜ、ユニウスセブンがデブリベルトに…………」
艦長席に座っていたマリューは驚きのあまり立ち上がって、モニターに映るユニウスセブンの残骸を見つめる。
「艦長、播磨から通信です」
「つ、繋いで頂戴」
マリューはハッとすると、すぐに艦長席に座る。
「マリュー・ラミアスです」
『福本伊吹だ。君たちにも目の前の光景が見えているだろう。そこで提案なのだが、亡くなった魂に慰めの為、黙祷を捧げたい。良いかな?』
「はい、これは私たち地球軍が起こしてしまった愚行の結果。異論はありません」
「艦長、それなら私からも提案、宜しいでしょうか?」
「ミリアリアさん?」
CICに座るミリアリアがマリューに提案をする。その内容を聞いたマリューも伊吹も頷いて了承するのであった。
「ここはこうして、こうすれば……できた」
「うわぁ、鶴だ‼ 私も作りたい‼」
アークエンジェル艦内では手の空いているクルーを始め、乗り込んでいる民間人もこぞって折り紙で鶴や花等を作っていた。
「いけねぇな、綺麗に折れねぇや」
格納庫内ではマードックをはじめとする整備員たちも作業の手を止めて鶴や花を折るが、手先が器用な者は綺麗な鶴を折るが、不器用な者は鶴の様に何とか見えるような見えないような物が出来上がっていた。
「はははは‼ 親方でもできないもんあるんですね‼」
「うるせぇ‼」
ひと時の平和な時間がそこには流れていた。
「むっ‼ 鶴というのは難しいな」
「おいおい、モビルスーツを扱っているのに、折り紙は扱えないってか?」
「う、うるさいぞ正人‼」
「ここをこうして、こうすれば」
「できた‼ ありがとう、セルベリア」
「いえいえ、これぐらいの事で宜しければ幾らでも」
播磨艦橋では夫婦の違いでこうも現れるのかと見せられるクルーたちであったが、いつもの光景な為、誰も気に留める者はいなかった。
だが、一人だけ異常な速度で鶴や花を作る者がいた。
「事務次官の手の動き、きめぇ」
「それな………流石、行動が誰も読む事の出来ない男だわ」
「な、なぁ……俺たちもやれって言われて出来る奴、いるか?」
一人の質問に全員が頭を振る。
「だよなぁ」
福本伊吹の手元を見ていた全員がドン引きする程の素早さで鶴や花等を折っていた。
それから暫くした後、ユニウスセブン跡地にアークエンジェル並びに播磨の手の空いているクルーたちは降り立つと、全員で折った鶴や花などの折り紙を
「総員、黙祷‼」
アークエンジェルと播磨の二隻に乗艦するクルーや民間人たちが一斉にユニウスセブンで亡くなった人々に対して黙祷を捧げる。
「これより、デブリベルトを抜け地球軍月本部へと向かう。警戒は厳に」
「先行中の疾風より入電‼ “我、撃破された民間船を発見す。付近に偵察型ジン一機の姿有り”です‼」
「こちらが発見されて応援を呼ばれる危険性がある。対処しろ」
「はっ‼」
山城が指示を出すと、一つの爆発の光が朧気に見える。
「偵察型ジンがいるということは、もしかしたら張っている可能性は高いですね」
山城はオブサーバー席に座る伊吹を見る。
「クルーゼ隊なのか、はたまた、先の戦闘で遭遇した部隊なのか………まだ情報が足りないな」
「疾風より再度入電‼ “救命ポッドを発見す。持ち帰りの許可を”とのことですが、どうしますか?」
「流石にそのままにしておくのは、忍びない。持ち帰ってくるように通達しろ」
「了解」
「警備隊を格納庫に集合させろ」
戦闘機である疾風では救命ポッドを持ち帰ることは出来ないので、可変機である烈風がガナウォーク形態で救命ポッドを播磨に持って帰ってくる。
「さて、撃破された民間船からなのか、それとも………」
播磨の格納庫に鎮座する救命ポッドを前に山城が呟く。
「開くよ」
にとりがタブレットを操作して救命ポッドを開けると、中から球体の何かが飛び出してくる。
「ハロ‼ ハロォ‼ ラクス‼ ハロォ‼」
「ラクスだと………まさか⁉」
「ありがとう、ご苦労様です」
凛とした声と共に一人の少女が救命ポッドから出てくる。
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