【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度が限界突破!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~   作:月城 友麻

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149. 終焉の合唱

「エリナ!」

 

「レオ――」

 

 エリナの声が、水の轟音にかき消される。

 

 渦は、容赦なく彼らを引き離し、それぞれを奈落へと引きずり込んでいく。次々と仲間たちの姿が視界から消えていった。ミーシャの金髪が。ルナの赤髪が。シエルの銀髪が。そして、エリナの黒髪が。全てが、濁流の中に飲み込まれていく。

 

 視界が、激しく回転する。

 

 上下の感覚が失われる。

 

 息ができない。苦しい。肺が、悲鳴を上げている。もう限界だ。

 

 意識が、徐々に、徐々に遠のいていく。

 

 みんな……ごめん……。

 

 レオンの心の中で、謝罪の言葉が響く。

 

 守れなかった。

 

 また、守れなかった。

 

 僕は、結局……何もできなかった……。

 

 世界どころか仲間も守れなくて。

 

 僕は、一体何のために……。

 

「はーっはっはっはっは! ごきげんよう、小鳥たち! また、すぐに会いましょう! その時は、貴方たちも私の可愛い(しもべ)になっているでしょうけれどねぇ! きゃははは!」

 

 イザベラの狂的な笑い声が、遠く、遠く、遠ざかっていく。

 

 水の轟音も全てが、遠くなる。

 

 闇。

 

 深い、深い闇だけが、レオンを包み込んでいく。まるで、母の胎内に戻るような、冷たい闇。

 

 そして――完全な沈黙。

 

 意識が、途切れた。

 

 

        ◇

 

 

 次に意識が戻った時、全身を襲う激痛に、レオンは呻き声を上げた。

 

「う……ぐ……っ……」

 

 体中が痛い。打撲だらけだ。頭が割れるように痛む。肋骨も、何本か折れているかもしれない。息をするたびに、鋭い痛みが胸を貫く。まるで、内側から刃物で抉られているような。

 

 目を開けると、そこは冷たく湿った石造りの空間だった。

 

 牢獄。

 

 天井は低く、圧迫感がある。今にも落ちてきそうな重さで、頭上にのしかかっている。壁は黴と苔に覆われ、長年放置されていたことを物語っていた。緑色に変色した石壁から、冷たい水滴が滴り落ちている。床は凍てついた石で、所々に黒い水たまりができていた。

 

 空気は淀み、湿気と腐敗の臭いが鼻を突く。肺が拒絶反応を起こし、吐き気が込み上げてくる。ここは、人が生きる場所ではない。死者を葬る場所だったのかもしれない。

 

「みんな……!」

 

 レオンは必死に体を起こし、周囲を見回した。痛みで視界が霞む。

 

 少し離れた場所に、仲間たちが倒れていた。

 

 エリナ。ミーシャ。ルナ。シエル。

 

 全員が意識を失ったまま、冷たい石床に転がされている。まるで、捨てられた人形のように。

 

「みんな! しっかりしろ!」

 

 レオンは這うようにして、仲間たちに近づこうとした。腕が震える。足に力が入らない。指先が石床を掻き、爪が剥がれそうになる。

 

 その時だった。

 

 ガシャン!

 

 頭上から、重く、絶望的な音が響き渡った。

 

 天井の鉄格子が閉まる音。

 

 レオンは顔を上げた。天井にぽっかりと開いた大きな穴。おそらく、排水口のようなものだろう。自分たちは、あの穴から水と共に流され、この牢獄に幽閉されたのだ。

 

 牢獄の入口にも、太い鉄の格子が降ろされていた。錆びついた鉄格子の向こうには、暗い通路が続いている。松明の光すら届かない、深い闇。

 

 脱出は――不可能に近かった。

 

「くそっ……!」

 

 レオンは、力なく拳で床を叩いた。石が、手のひらに冷たい。骨に響く痛みが走る。けれど、心の痛みに比べれば、そんなものは何でもなかった。

 

 無力だ。

 

 何もできない。

 

 また、守れなかった――。

 

 その時、遠くから、何か異様な音が聞こえてくる。

 

 ゴゴゴゴゴ……。

 

 地響き。まるで、大地そのものが呻いているような音。この世の終わりを告げる、不吉な鳴動。

 

 いや、それだけではない。

 

 キィィィィ……。

 

 ギャアアアアア……。

 

 グルルルルル……。

 

 無数の、おぞましい声。それらが重なり合い、不協和音を奏でている。高く、低く、うねりながら、闇の底から這い上がってくる。

 

 それは――十万の魔物が殻を破り、産声を上げる、終焉の合唱だった。

 

 レオンの顔から、血の気が引いた。

 

 始まってしまった。

 

 イザベラの計画が、動き出してしまったのだ。

 

 この牢獄の外で、今まさに、世界を滅ぼす軍勢が目覚め始めている。あの咆哮の一つ一つが、一つの命を刈り取る刃。十万の刃が、王都へと向かっている。人々が、街が、この国が――全てが蹂躙される。

 

「……嘘だろ……」

 

 レオンの声が、震えた。

 

 絶望が、心を覆い尽くそうとしてくる。

 

 もう、終わりなのか?

 

 僕たちは、何もできずに――ここで朽ちていくのか?

 

「う……レオン……?」

 

 か細い声が聞こえた。

 

 エリナが、目を覚ましたのだ。

 

「エリナ! 無事か!?」

 

 レオンは這うようにしてエリナに近寄った。彼女の顔は青白く、唇が震えている。けれど、生きている。それだけで、レオンの心に小さな光が灯った。

 

 

 

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