【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度が限界突破!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~   作:月城 友麻

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217. 神の草むしり

「いやいやいや、準備にはそれなりに時間がかかるので……」

 

 レオンは必死に説得を試みた。これは無理だ。今すぐ大陸征服など、どう考えても不可能だ。兵站も、戦略も、何も整っていない。そもそも、自分はそんなことをしたくない。平和的に、対話によって、少しずつ世界を変えていく。それが、自分の選んだ道なのだ。

 

「何?」

 

 シアンの目が、すっと細くなった。

 

 その瞬間、空気が変わった。

 

「創造者である熾天使(セラフ)に口答えすんの? アンタ?」

 

 全身からブワッと青いオーラが噴き出した。

 

 それは可視化された殺意だった。周囲の空気が凍りつくような、圧倒的な威圧感が津波のように押し寄せてくる。レオンは呼吸すらできなくなった。肺が縮み上がり、心臓が握り潰されそうだ。

 

 これが、神の怒りというものか。

 

「わ、分かりました。早速検討に入ります! はい!」

 

 反射的に、そう答えていた。生存本能が、抵抗を許さなかった。

 

「検討?」

 

 シアンの目が、さらに冷たくなった。

 

 その碧眼には、もはや対話の意思などなかった。ただ純粋な怒りと、失望と、そして破壊衝動だけが渦巻いている。

 

「いいからそこにいる各国の王様ふんじばって宣戦布告しなさい!」

 

「へ? い、今すぐ実力行使ですか?」

 

「はぁっ? いつやるの? 今でしょ?」

 

「いや、準備は必要ですって……」

 

 レオンはブンブンと手を振り、何とかこの無茶苦茶な命令をかわす方法を必死に考えた。しかし、何も思いつかない。頭が真っ白だ。恐怖で、思考が凍りついている。

 

 シアンの要求を呑めば、自分の信念を裏切ることになる。「誰もが笑顔で暮らせる世界」を作るという夢を、自ら踏みにじることになる。

 

 かといって、拒否すれば――。

 

「あーーそう……」

 

 シアンの声が、ぞっとするほど冷たく響いた。

 

 さっきまでの苛立ちは消えていた。怒りすらも、消えていた。

 

 そこに残っているのは、純粋な殺意だけだった。

 

「口答えするような奴は、私の世界には要らないわ」

 

「……え?」

 

 その言葉の意味を、レオンは一瞬理解できなかった。

 

 要らない? この世界に? それは、つまり――。

 

「こんな国、ぶっ潰してやる!」

 

 シアンはバッと右手を高々と掲げた。

 

 シュォォォォ……。

 

 空気を焼き焦がすような音とともに、その手の上に真っ青な輝きが生まれてくる。

 

 最初は小さな光の粒だった。蛍火ほどの、儚い輝き。

 

 しかしそれは、見る間に膨れ上がっていく。拳大になり、頭ほどになり――やがて、新たな太陽が現れたかのような激しい輝きを放ち始めた。

 

 空気が焼ける。熱気が立ち上り、陽炎のように景色が歪む。湖面の水が蒸発し、白い蒸気が天高く昇っていく。

 

 その熱量は、まさに世界を終わらせるに足るものだった。

 

 十五年前、この湖を作った時と同じくらいのエネルギー。いや、それ以上かもしれない。あの時は、山を一つ吹き飛ばした。今度は、王国全体を消し飛ばすつもりなのだ。

 

「海のような湖にしてやるわ! きゃははは!」

 

 シアンの笑い声が、高らかに響いた。

 

 その声には、狂気が滲んでいた。いや、これは狂気ではない。神にとっては、これが日常なのだ。世界を創り、世界を壊す。人間にとっては終末でも、神にとっては庭の草むしり程度の行為に過ぎないのだ。

 

「みんな吹っ飛びなさい!」

 

「止めてーー!」

 

 エリナが叫んだ。

 

 ボロボロの体を引きずりながら、それでも立ち上がる。膝が笑い、視界が霞み、全身が悲鳴を上げている。それでも、倒れるわけにはいかなかった。

 

「ダメぇ!」

 

 ルナが炎を纏いながら、最後の力を振り絞った。魔力はほとんど枯渇している。しかし、心の奥底から、怒りの炎が湧き上がってくる。こんなところで終わってたまるか。

 

「お待ちを!」

 

 ミーシャが光の魔法陣を展開しようとした。聖女の祈りを込めて、最後の奇跡を起こそうとしている。しかし、手が震えて、魔法陣がうまく描けない。

 

「ごめんなさい!」

 

 シエルが矢をつがえながら、涙声で叫んだ。何に謝っているのか、自分でも分からなかった。ただ、このままでは民が死ぬ。家族が死ぬ。それだけは、絶対に許せなかった。

 

 四人は、もはや立っているのがやっとだった。

 

 全身が痛み、魔力は枯渇し、武器は砕かれていた。普通なら、とっくに戦闘不能だ。

 

 それでも、諦めるわけにはいかなかった。

 

 民を、家族を、この国を守らなければならない。

 

 たとえ相手が【神に連なる者】であっても。

 

 たとえ勝ち目がゼロでも。

 

 最後の瞬間まで、戦い続ける。

 

 それが、王妃としての矜持だった。

 

 シエルは渾身の力を込めて弓を引いた。銀閃の矢――全魔力を込めた最後の切り札。

 

 ルナは残る全魔力を注ぎ込んで炎の槍を形成した。「竜殺し」の名に恥じない、最後の一撃。

 

 ミーシャは両手からホーリーレイを放った。聖女の光が、シアンへと放たれる。

 

 エリナは砕けた剣の柄を握りしめ、タックルをかまそうと突進した。素手でも、歯でも、爪でも、何でもいい。とにかく、あの光球を止めなければ。

 

 

 

 

 

 

 

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