【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度が限界突破!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~   作:月城 友麻

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40. 伝説の神弓手

 お互いの間合いが、急速に縮まっていく。

 

 五十メートル。

 

 シエルは矢を引き絞る。

 

 三十メートル。

 

 まだ(くちばし)は開かない。

 

 二十メートル――――。

 

 パカッとコカトリスの(くちばし)が大きく開く。喉の奥で、灰色の死の光が激しく渦巻いた。

 

「アルカナを――めくる!」 グゥオォォォォ!

 

 同時だった。

 

 破魔矢が虹色の軌跡を描いて解き放たれ、石化ブレスが灰色の津波となって噴出される。

 

 二つの力が空中で激突し、破魔矢は石化ブレスを切り裂き、浄化していく――――。

 

 灰色の霧が、キラキラと光の粒子に変換されていくのだ。まるで、闇を払う流星が、死の海を割って進むように。

 

「行けぇぇぇ!」

 

 シエルの魂の叫びが、矢に最後の力を与える。

 

 ズブッ! と湿った音と共に、破魔矢が(くちばし)から喉の奥深くへと突き刺さった。矢は更に奥で延髄を貫通する。

 

 ゴホォォォ!

 

 コカトリスの瞳から光が消えた。巨大な翼が力を失い、巨体が重力に引かれて落下していく――――。

 

 監視塔をかすめ、大地を揺るがす轟音と共に、森の奥へと消えていった。

 

「おぉぉぉ!」

「シエル殿ぉぉ!」

「すげぇ! コカトリスを倒しやがった!」

 

 歓声が夜空に響き渡る。石化していた兵士も、魔獣の死と共に元の姿を取り戻していく。

 

 その瞬間――。

 

 ボゥッ! とシエルの全身が、虹色の光に包まれた。

 

 レベルアップ。

 

 神々の加護が降り注ぎ、存在そのものが一段階上昇する奇跡。魂が震え、肉体が生まれ変わっていく。

 

「えっ!? お、おぉぉぉ……」

 

 体が熱い。力が、全身の奥底から溢れ出してきた。

 

 視界が驚くほどクリアになり、闘の奥まで昼のように見通せる。筋力が増し、愛弓が羽のように軽く感じる。指先の感覚が研ぎ澄まされ、風の流れ、空気の密度、全てが手に取るように分かる。

 

 そして何より――自信が、心の奥底から湧き上がってくる。

 

(ボクは、やれる。みんなを守れる!)

 

 銀髪が風になびき、月光を受けて輝く。その姿は、まるで戦女神が地上に降り立ったかのような、神々しい美しさだった。

 

 覚醒した視界が、新たな脅威を鮮明に捉える。

 

「まだよ! 敵襲! 二時の方向! 鳥女(ハーピー)の群れ!」

 

 醜悪な鳥女たちが、耳を劈くような不協和音を響かせながら迫ってくる。その歌声は呪いを孕み、聞く者の精神を蝕んでいく。

 

 シエルは深く息を吸い込んだ。今までなら届くはずもない、二百メートルを超える距離。だが、今の自分なら――。

 

 ヒュン! と矢が、音を置き去りにして飛翔する。

 

 空気を切り裂き、風を味方につけ、まるで意志を持っているかのように、ハーピーの心臓に吸い込まれた。

 

 タンッ!

 

「す、凄い……」

 

 自分の成長が、全身を駆け巡る力として実感できる。血管を流れるエネルギーが、稲妻のように煌めいている。

 

 もう、怯えて震えていた公爵令嬢ではない。

 もう、顔を隠して逃げ続ける逃亡者でもない。

 

 弓手シエルとして、新たな境地に達した瞬間だった。

 

 この夜、シエルは襲来する魔物を次々と撃ち落とす。

 

 翼を持つ者は空から墜とし、地を這う者は頭を射抜き、闇に潜む者は心臓を穿つ。矢は止まることなく、まるですべての魔物を殲滅せんとするかのように放たれ続けた。

 

 一射必殺。

 百発百中。

 神業の連続。

 

 兵士たちは、もはや言葉を失っていた。ただ、畏敬の念を込めて、その月光を浴びて輝く銀髪を見つめるばかりだった。

 

「あれが……人間の技なのか」

「いや、もはや神の領域だ」

「俺たちは、伝説の誕生を目撃しているんだ」

 

 夜明けまでに、シエルは千を超える魔物を屠り、幾度もレベルアップの光に包まれた。その度にさらに力は増し、技術は研ぎ澄まされていく。

 

 東の空が白み始める頃には、もはや怯えていた令嬢の面影は微塵もなかった。

 

 そこに立つのは、伝説の神弓手(しんきゅうしゅ)へと覚醒しつつある、一人の誇り高き戦士だった。

 

 血と煙の匂いが充満する戦場で、シエルは静かに弓を構え続ける。

 

 その瞳に、もう恐怖はなかった。

 

 あるのはただ、仲間を守り抜くという揺るぎない決意と――。

 

 遠く離れた場所で戦っているはずの、一人の軍師への想い。

 

(レオン……ボクは、もう大丈夫)

 

 夜明けの光が、銀髪を黄金色に染め上げる。

 

(だから……必ず、生きて帰ってきて)

 

 祈るように呟いた言葉は、朝風に溶けて消えていった。

 

 

        ◇

 

 

 時は少しさかのぼる――――。

 

 月明りの中、火山への道を急ぐ三人の姿があった。

 

 レオン、ルナ、そしてミーシャ。彼らもまた、運命の分岐点へと向かう。

 

 岩肌から立ち昇る白い蒸気が、まるで地獄の吐息のように三人を包み込む。地面が灼熱を帯び、靴底越しにも焦げるような熱が伝わってくる。

 

 火山の中腹に盛り上がる小高い峰に登ると、眼下に巨大な噴気孔が見えて来た。硫黄の匂いが、肺を焼くように鼻腔を突き刺す。

 

 

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