【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度が限界突破!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~   作:月城 友麻

42 / 217
42. 肉の焼ける音

「本当さ、僕を信じて……」

 

 レオンはそっとルナをハグした。

 

「!? な、なに……!」

 

 ルナの顔が真っ赤に染まる。だが、次の瞬間、不思議な感覚に包まれた。

 

 暖かい――。

 

 安心する――。

 

 そして何より――魔力が穏やかに流れ始めている。

 

 レオンの腕の中は、どうしてこんなにも安心するのだろう。

 

 戦闘力ゼロの、ひ弱な軍師。剣も振れない、魔法も使えない。それなのに、この腕の中にいると、世界中の何からも守られているような気持ちになる。

 

「レオン……」

 

 涙が、止まらない。でも、今度は恐怖の涙じゃない。

 

 信じてくれる人がいる。

 

 支えてくれる人がいる。

 

 自分を、必要としてくれる人がいる。

 

(私は……一人じゃない)

 

 初めて、心の底からそう思えた。

 

「……うん。やる。私、やってみる!」

 

 ルナが決意を固めた瞬間、彼女の全身から紅蓮の魔力が立ち上った。

 

「ありがとう……」

 

 レオンはにっこりとほほ笑んだ。まるで、全て分かってたとでも言うように。

 

「やってみる。みんなのために……やってみる!」

 

 ルナはグッと気合を込めると、噴気孔の方へと杖をブンと振った――――。

 

 杖の先端に埋め込まれた紅玉(ルビー)が、彼女の決意に応えるように真紅の輝きを放ち始める。

 

「我が内なる力よ、今こそ目覚めよ――封印解除(ラグナ・リベレイト)!」

 

 瞬間、小さな体から信じられないほどの魔力が噴出する。

 

 大気が歪み、大地が震える。

 

 周囲の温度が、一気に上昇する。

 

「こ、これは……」

 

 ミーシャが息を呑む。これほどの魔力を、こんな小さな少女が秘めていたとは。

 

紅蓮(ぐれん)の龍よ――」

 

 魔力が渦を巻き、炎の粒子が激しく踊り始める。まるで、太陽の欠片が地上に降りてきたかのような、圧倒的な熱量。

 

咆哮(ほうこう)せよ!」

 

 グォォォォォォ!

 

 深紅の炎が湧き出して、巨大な龍の形を成して天に昇る。

 

 全長三十メートルを超える炎の龍が、薄明の空を真昼のように照らし出した。その威容は、まるで神話の時代から蘇った古代龍のよう。

 

「す、凄い……これが、ルナの本当の力……」

 

 ミーシャが畏怖の念を込めて呟く。

 

 ルナ自身も、自分の生み出した炎龍の姿に息を呑む。いままで龍の形を取ったことなどなかったのだ。

 

 これが、私の力。

 

 これが、私の中に眠っていたもの。

 

 美しい、と思った。同時に、恐ろしい、とも。

 

 直後――。

 

「あ、あれ? ちょ、ちょっと待って……」

 

 炎龍が制御を離れ、狂ったように暴れ始める。灼熱の尾が岩壁を溶かし、炎の息が大気を焼き尽くしていく――――。

 

「こ、このぉ! 言うこと……聞きなさいって……」

 

 ルナが必死に杖を振るうが――――。

 

「ダメ! 言うことを聞かない!」

 

 炎龍はあちらこちらに飛びまわり、その暴走は激しさを増していく。

 

(また……また同じことが起きてる……!)

 

 あの日の悪夢が、鮮やかに蘇る。

 

 制御を失った炎。逃げ惑う人々。親友の悲鳴。

 

「やっぱり無理だったのよぉぉぉ!」

 

 絶望の叫びが、火山に響き渡る。

 

 炎龍が、ゆっくりと首をもたげる。その瞳が、三人を見下ろす。まるで、創造主である少女すらも焼き尽くそうとするかのように。

 

「みんな、逃げて! 私から離れて!」

 

 ルナが涙声で叫ぶ。

 

(お願い……私のせいで、もう誰も傷つけたくない……!)

 

 しかし、レオンは一歩も動かなかった。

 

 むしろ、ルナに向かって歩み寄る。

 

「レオン!? 何してるの! 死んじゃう!」

 

「大丈夫だ」

 

 レオンは微笑む。その表情に恐怖はない。

 

「君を、信じてるから」

 

 その言葉に、ルナの心臓が大きく跳ねた。

 

(信じてる……? こんな、暴走してる私を……?)

 

 その時――。

 

 レオンがすっとルナの背後に回り込み、優しく後ろから抱きしめた。

 

「大丈夫……落ち着いて……君なら、できる」

 

 ジュゥゥゥ!

 

 ルナの全身から溢れ出す炎の魔力が、容赦なくレオンの肌を焼く。服が焦げ、皮膚が赤く腫れ上がっていく。焼けた肉の匂いが、硫黄の臭気と混じり合う。

 

「えっ!? ダメっ! 離れて!」

 

 ルナがパニックに陥る。振り返ろうとするが、レオンの腕がしっかりと彼女を支えている。

 

「レオンが焼けちゃう! 死んじゃう!」

 

 あの日と同じだ。

 

 また、大切な人を傷つけてしまう。

 

 また、自分の力で、誰かを――。

 

「大丈夫だ」

 

 レオンは激痛に顔を歪めながらも、決して手を離さない。額から汗が滝のように流れ、それすらも蒸発していく。

 

「ルナ、君は炎龍を操れる。焦らず、ゆっくりと……心を鎮めて」

 

「やってるけど、言うこと聞かないのよぉ!」

 

 涙と汗で顔がぐしゃぐしゃになりながら、ルナは必死に杖を振るう。

 

「深呼吸してごらん……本当の自分を取り戻そう……」

 

 ジュゥゥゥ……。

 

 肉の焼ける音が、より一層激しくなる。レオンの腕は、もはや真っ赤に腫れ上がっている。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。