【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度が限界突破!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~   作:月城 友麻

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87. はまった無数のピース

 その晩――レオンはベッドに寝転がりながら、天井を見つめていた。

 

 白い漆喰の天井には、窓から差し込む街灯の明かりが淡い模様を描いている。それは、かつて【運命鑑定】が見せてくれた選択肢のウィンドウに、少しだけ似ていた。時折、女の子たちがパタパタとスリッパの音を響かせながら廊下を通っていく音がする。ミーシャの軽やかな足音、エリナの規則正しい足音、ルナの少し急ぎ足な足音、シエルの優雅な足音――四人それぞれの足音が、レオンの耳に届いていた。

 

 そろそろ寝る時間だ。

 

(いい夢見て欲しいな……)

 

 レオンはごろんと寝返りを打って胸に手を当てたが、そこにはもうスキルは宿っていない。かつては運命を監視し続けてくれている頼もしい存在の気配を感じることができた。けれど今は、沈黙だけがある。全てが消えてしまったのだ。

 

 レオンは深いため息をつき、枕に頭を沈めた。羽毛の柔らかさが頬に触れるが、心は少しも安らがなかった。

 

(どうして……あの呪いを見抜けなかったんだろう?)

 

 セリナが放った【スキル破壊の呪い】は、明らかに運命を大きく変える事象だったはずだ。自分の人生を根底から覆すような出来事だったはずなのに、【運命鑑定】は何も警告してくれなかった。あの禍々しい紫のドクロがセリナの手から放たれた瞬間まで、レオンには何も見えなかったのだ。

 

(なぜ……?)

 

 その疑問が、夜の静寂の中でぐるぐると頭の中を回り続ける。

 

 【運命鑑定】はこれまで重大な転機を全て伝えてくれていた。賞金首ゴードンの馬車を予知した時も、スタンピードの時も、全て完璧で一度たりとも外れたことはなかった。それなのに、こんな重大な事態を【運命鑑定】が見落とすなんてことがあるのだろうか?

 

 レオンは目を閉じ、あの時の光景を思い返す。セリナの手から放たれた禍々しい紫のドクロ。エリナを庇ってその身に受けた瞬間、全身を貫く焼けるような痛みと、骨の髄まで染み渡るような冷たい呪いの感触が襲ってきた。そして胸の奥で何かが砕け散る感覚――あの瞬間、ガラスが割れるような甲高い音が確かに聞こえた。それは【運命鑑定】が壊れる音だったのだ。

 

(【運命鑑定】自身のことだから……見えなかった?)

 

 そんな可能性も頭をよぎる。【運命鑑定】は未来を視るスキルだが、もしかしたらスキル自体に関わる事象は予知できないのかもしれない。それは鏡がなければ自分の顔は見えないように、【運命鑑定】もまた【運命鑑定】自身の運命を視ることができない――。

 

(うーん、それはあるかなぁ……?)

 

 しかし、どうにも腑に落ちない。直感が囁いている。何かがおかしい、何かが引っかかると。

 

 レオンは寝返りを打ち、窓の外を見た。街灯の明かりがカーテンの隙間から細く差し込んでいるが、月は雲に隠れて星も見えない。静かな夜、平和な夜だ。クーベルノーツの街はスタンピードの混乱からすっかり立ち直り、人々は笑顔で暮らしている。けれど、その静けさがかえって不安を掻き立てる。嵐の前の静けさ、何かが起こる前の不気味な静寂のように感じられてならなかった。

 

(待てよ……)

 

 その時だった。ある可能性がレオンの脳裏を、まるで稲妻のようにかすめた。

 

 【運命鑑定】を無効にするスキルが、存在するのでは――?

 

 それはほんの思い付きで、根拠のない直感に過ぎず、夜の闇が見せた妄想かもしれない。けれど、考えれば考えるほどその可能性が現実味を帯びてくる。

 

「まさか……?」

 

 心臓がドクンと大きく跳ねる。

 

(そうだ……そうだとしたら、全ての辻褄が合う……!)

 

 【運命鑑定】は未来を視る強力なスキルだが、この世界には無数のスキルが存在する。もしそれ以上の力を持つスキルが存在したら? 【運命鑑定】を破壊するように運命そのものを導くことができるスキルが、この世界にあったとしたら? 運命を「読む」のではなく運命を「書き換える」スキル――そんなものがもし存在したら、【運命鑑定】はそれを見破れない。より上位の力によって運命そのものが書き換えられていたなら、【運命鑑定】が見る未来は既に改竄された偽りの未来かもしれないのだ。

 

「くっ……」

 

(まさか……いや、でも……!)

 

 レオンはガバッと起き上がり、両手で頭を抱えた。思考が恐ろしい速度で加速し、脳内で無数のピースが組み合わさっていく。

 

(考えろ……冷静に考えるんだ……!)

 

 セリナが【スキル破壊の呪い】を持っていたこと自体が、そもそもおかしかった。あれは禁忌の呪具で、教会法で所持するだけで死罪に値する代物であり、闇市場でも滅多に出回らない極めて希少な品だ。なぜあんな厳しく禁じられている物をセリナのような小娘が持っていたのか? なぜあんな危険な代物をカインとの決着の場で持ち出し、なぜあんなリスクを背負って呪いを放ったのか?

 

(誰かが……セリナをうまく利用したんだ)

 

 セリナは駒に過ぎない、操り人形に過ぎない。本当の敵は別にいる。そして、その「誰か」はレオンの【運命鑑定】を恐れていたからこそ、排除しようとしたのだ。

 

 

 

 

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