【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度が限界突破!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~   作:月城 友麻

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95. ――狂うか、死ぬか

 王立図書館――それはこのクーベルノーツが誇る知の聖域だった。

 

 白亜の石壁が朝日を受けて輝き、荘厳な佇まいで街を見下ろしている。尖塔にはクーベル公爵の紋章が刻まれ、正面の階段は大理石で作られていた。

 

 重厚な扉を押し開けると、目の前に圧倒的な光景が広がった。吹き抜けの天井まで続く巨大な書架には、何万冊、いや何十万冊もの書物が壁一面を埋め尽くしている。静寂の中にかすかな紙の擦れる音、学者たちの小声、ページをめくる音、羽根ペンが羊皮紙を走る音が混ざり合い、まるで図書館全体が一つの生き物のように静かに呼吸しているかのようだった。

 

(すごい……)

 

 レオンは思わず息を呑んだ。空気が違う。古紙の匂い、革の匂い、乾いたインクの匂いが混ざり合い、知識の重みを感じさせる。天井近くの窓から差し込む朝の光が書架の間に幾筋もの光の柱を作り出しており、その神々しさにレオンは一瞬、自分が神殿に立っているような錯覚さえ覚えた。

 

 レオンは禁書庫へ入れてもらおうと、足音を抑えながら静かに受付へと向かう。禁書庫とは図書館の最奥部にある特別な許可がなければ入れない場所で、危険な魔術書、禁じられた知識、失われた古代の文献といったものが厳重に保管されているという。ギルドマスターに頼み込んで紹介状を書いてもらったのは、ここに入るためだった。

 

「こ、こんにちは……」

 

 受付には一人の老人が座っていた。まるで蜘蛛の巣のような白く長い眉毛、分厚い眼鏡の奥からチラッと鋭い視線を向けてくる。皺だらけの顔は何百年もの知識を蓄えてきたかのように深い刻みを刻んでおり、その存在感だけで周囲の空気が重くなるようだった。

 

「……なんだ?」

 

 老人は書物の頁に目を落としたままぶっきらぼうに答えた。

 

「ギルドマスターからの紹介状です」

 

 レオンは懐から羊皮紙を取り出して差し出す。老司書はそれを一瞥すると、眼鏡をずらして値踏みするようにレオンを見た。その視線はまるで魂の奥底まで見透かすかのように鋭く深く、レオンは背筋に冷たいものが走るのを感じた。

 

「ふん。冒険者風情が禁書庫じゃと……。冒険者なぞ武具を磨いておけっちゅーんじゃ!」

 

 嫌味な口ぶりだった。明らかにレオンを試している。けれどレオンは臆することなく、まっすぐに老人を見返した。仲間たちに支えられて立ち直った自分には、引き下がる選択肢などなかった。

 

「知識を求める者に貴賤の差はないはずです。それともこの図書館は、肩書きで知識を売る場所になったのですか?」

 

 その言葉に一瞬、館内の空気が凍りついた。周囲の学者たちがレオンをチラッと見ながら何かをひそひそと話し、老司書の眉がピクリと動く。

 

「……ほう。ならば聞こう。小僧、何を調べに来た?」

 

 レオンは深呼吸をして答えた。

 

「……失われた古代呪術。特に『魂魄への干渉』と『スキル論』に関する禁書を閲覧したい」

 

 その言葉に眼鏡の奥の瞳がギラリと光る。

 

「呪術……じゃと?」

 

 レオンは拳を握りしめた。その拳が小刻みに震えているのを、自分でも分かっていた。

 

「僕自身の――運命の、解き明かし方を」

 

 その言葉を聞いた瞬間、老司書の表情が一変した。まるで破滅へと向かう者を見るかのような眼差しで、しばらくレオンを見つめている。その沈黙は重く、永遠のように感じられた。

 

 やがて老司書は重い溜息をついた。

 

「……ついてこい」

 

 そうだけ呟くと立ち上がり、腰に下げた鍵束から一本の重厚な鉄の鍵を取り出す。その鍵には複雑な魔法陣が刻まれており、微かに青白い光を放っていた。

 

「小僧」

 

 歩きながら老司書が呟いた。その背中は小さいが、どこか重い存在感を放っている。

 

「『運命』に挑んだ者を、ワシは数多く見てきた」

 

 その声が静かに響く。足音だけが、長い廊下に木霊していた。

 

「誰一人として――無事では、済まなかった」

 

 レオンは何も答えなかった。ただその背中を追いながら、胸の奥で覚悟を固めていた。

 

 

       ◇

 

 

 ギィィィ――と重い音を立てて禁書庫の扉が開かれた瞬間、レオンはまるで別世界に足を踏み入れたかのような感覚を覚えた。

 

 外の世界とは時間の流れが違う。空気が違う。天井の高窓から差し込む光の筋がまるで金色の川のように幻想的な光景を作り出しており、革と古紙、そして乾いたインクの匂いがより濃くレオンの鼻腔をくすぐる。それだけではない。何かもっと別の、言葉にできない禍々しい気配のようなものが空気に混じっている。書架は天井まで届き、無数の書物が眠っていた。その一つ一つが禁じられた知識であり、危険な魔術であり、失われた真実なのだ。

 

「好きにせい。ただし――」

 

 老司書の声が低く響く。

 

「深入りはせんことだ。禁書は、読む者を選ぶ。選ばれなかった者は――」

 

 そこで言葉を切り、肩をすくめる。

 

「――狂うか、死ぬか、だ」

 

 レオンはキュッと口を結んだ。その警告の重さを、全身で受け止めていた。

 

 ギィィと扉が閉まる音がして、レオンは一人きりになる。

 

「さて……」

 

 深呼吸をして書架へと向かう。片っ端から関連書物を手に取り、『古代呪術大全』『魂魄干渉論』『スキル体系と魔力循環』といった書物を次々と開いていった。ページを開き、読み、次の本へ。また開き、読み、次の本へ。

 

 

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