EVIL LIVE   作:烏丸英

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オー○カリバーみたいな四人組が誕生したんだが?

『なあなあ相棒! 働いたら余った売り物とか貰えるかな!? 俺、甘いもん好きなんだよ!』

 

「相棒って言うな。あと、菓子なら後で食わせてやるから安心しろ。だからしばらく黙っててくれ」

 

 そうして迎えた週末、バザー当日……俺はエプロンを身に着け、洋菓子店の売り子として用意されたスペースで働いていた。

 どうやらこの店は地元でも人気らしく、用意された焼き菓子は飛ぶように売れている。

 ただまあ、風花と火蓮の美少女コンビに接客してもらう人たちに対して、俺の顔を見たお客さんたちは明らかに警戒と怯えの表情を浮かべているのが気になったが……ここは仕方がないと割り切ることにした。

 

(悪魔が()()()()()好きって言うと完全に別の意味に聞こえるよなぁ……まあ、関係ないんだろうけどさ……)

 

 結構忙しく仕事をしながらもちょっと余裕が出てきた俺は、そんなことを考えながら接客をしていた。

 俺の倍以上に忙しくしている二人を見て、申し訳なさを感じつつも次の客を捌こうとした俺は、前に立つ人物を見て少し驚いてしまう。

 

(着物……? め、珍しいな……)

 

 おそらく高校生くらいと思わしき二人組の少女たちは、どちらも着物を着ていた。

 青と黄色の着物を纏った彼女たちの姿に驚く俺へと、青い方の少女が言う。

 

「マドレーヌとクッキーの詰め合わせ、二つずつください」

 

「あっ、追加でドーナツもお願いします~!」

 

「は、はい。少しお待ちくださいね」

 

 俺の顔を見ても一切動じない二人だが、微妙にその理由が違うことがわかる。

 青い着物の女の子はクールというか、感情が平坦な感じだ。対して黄色の女の子はおっとりしていて、天然っぽいからか細かいことを気にしていないように見える。

 

 まあ、びくびくされるよりかは何倍もマシか……と思いながら注文の品を用意していた俺の耳に、火蓮の超爆音の叫びが突き刺さった。

 

「あ~~っ! あんたたち、何しに来たのよ!?」

 

「うぐえっ! うるさっ!!」

 

「ちょっ、ちょっと、火蓮ちゃん! 大声出し過ぎだよ!」

 

 俺が相手をしていた少女たちを指差した火蓮は、どこか敵意のようなものを彼女たちに向けているようだ。

 なんだなんだと思う俺の前で、青い着物の女の子が蔑むような視線を火蓮に向けながら口を開いた。

 

「手伝いに駆り出す人間を間違ったみたいね。バザーとはいえ、まともに接客もできない馬鹿を使うのは失敗じゃない?」

 

「誰が馬鹿よ! この陰キャむっつり女!」

 

「まあまあ。火蓮ちゃんも水希ちゃんも落ち着いて。仲良くしましょうよ~」

 

 ぎゃいぎゃいと騒ぐ二人を黄色の着物を着た女の子がやんわりと止めに入るが、効果はないみたいだ。

 俺も風花もどうすればいいのかわからずに見守る中、二人の言い争いはヒートアップしていく。

 

「向かい側にある私たちのお店は完売したのに、こっちはまだ売れ残ってたのね。店に立つ人間の差かしら?」

 

「あんたみたいな無表情女が店先に立ってても売り上げマイナスにしかならないわよ! プラスに働いてるのは土筆さんだけ!」

 

「土筆さんがかわいいのは当然として、私もかわいいのは間違いない。二対二の勝負でこっちが先に売り切れてるのがその証拠」

 

「いや、用意してた商品の数とか、他にも要因はあるんじゃないか……?」

 

 小声でボソッと突っ込めば、火蓮も水希と呼ばれた少女も揃ってこっちを見てきた。

 その反応に俺が圧される中、火蓮はムキになった様子で俺の顔を掴み、着物の少女たちに見せつけながら言う。

 

「そうよ! こっちはねぇ、この悪人面っていうハンデを抱えんのよ!? この怖い顔のせいでどれだけのお客さんが逃げたと思ってんの!?」

 

『相棒、散々言われてるな。慰めてやろうか?』

 

「止めてくれ、もっと惨めになる」

 

 心の中でアモンにそう言いつつ、俺は死んだ目で空を見る。

 とても綺麗な青空なのに、どうして俺の心はこんなにもどんよりしているんだろうな……と考える俺へと、青い着物の女の子が声をかけてきた。

 

「……可哀想に。こんなデリカシー皆無の猿に馬鹿にされるだなんて、屈辱でしかないでしょ? 良ければ私たちのお店に遊びにくる? お団子とお茶、ご馳走してあげましょうか?」

 

「はっ、はぁ!?」

 

『えっ! マジ!? 相棒、お言葉に甘えようぜ! 俺、和菓子も大好き!!』

 

「アモン、本当に頼むから黙っててくれ」

 

 予想外のお誘いに大喜びのアモンへとツッコミを入れる俺であったが、その直後に火蓮に胸ぐらを掴まれ、ぶんぶんと揺さぶられ始めた。

 

「ちょっとあんた! 裏切るつもりじゃないでしょうね!? マスターと私たちから受けた恩を忘れたの!?」

 

「いや、私たちは別に大神さんに恩を売ったりしてないと思うよ……?」

 

 気が付けば、不毛な言い争いを続けているせいでお客さんたちは散ってしまっていた。

 慌てて他の従業員さんたちが売り子を担当する中、強引に休憩を取らされた俺はため息を吐いた後で言う。

 

「いや、そもそも状況についていけてないんだが? まず、この子たちは誰なんだ?」

 

「ああ、ごめんなさい。自己紹介がまだでしたね~! 私は岩本土筆(いわもと つくし)っていいます。それで、こっちは青柳水希《あおやぎ みずき》ちゃん。今日は私の実家の和菓子屋がバザーに出店したんで、手伝ってもらってたんですよ~!」

 

 おっとり系の女の子、土筆が自己紹介しながら簡単に事情を説明してくれたおかげで、俺も色々と理解できた。

 着物を着ているのもそういうことかと、ようやく状況を把握し始めた俺は、もう一つ質問を投げかける。

 

「あのさ、もしかしなくてもこの二人って仲が悪いのか?」

 

「ええ、まあ……仲が悪いというか、ライバル視してるっていうか……」

 

「あら~! 私はそうでもないと思うわよ? ほら、喧嘩するほど仲が良いっていうじゃない!」

 

「良くない! 全っ然良くない!」

 

「それは土筆さんの思い違い。猿と人間は仲良くなれないもの」

 

「ムッキーッ! 私が猿ならあんたは無表情のっぺりウーパールーパーよ! 爬虫類が霊長類に逆らうな!」

 

「ウーパールーパーは両生類よ。まあ、猿には難しい話だったかもしれないわね」

 

 余計なことを聞いてしまったなと、俺は強く後悔した。

 火蓮と水希の言い争いはヒートアップし続けており、しばらく止まる様子はなさそうだ。

 

 これをどう止めるか……と考える俺であったが、そんな二人を全く意に介していない様子の土筆が言う。

 

「風花ちゃんと売り子のお兄さん、休憩に入ったんですよね? だったら、うちのスペースに来ませんか? さっきも言いましたけど、お団子とお茶をご馳走しますよ~!」

 

「え……? で、でも、こいつらはどうするんですか……?」

 

「大丈夫ですよ~! いつものことだから、しばらくしたら治まります! その間、私たちはのんびりしてましょう!」

 

「ええっと……まあ、土筆さんがそう言うなら、私はいいかな……」 

 

 この女の子、結構大物だ。完全に火蓮と水希のことをスルーしている。

 ついでに自分の中で『団子! 和菓子!』と騒ぐもう一匹の大物の存在を感じながら、俺もまた言い争う女の子たちを無視して、土筆の和菓子屋に向かうのであった。

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