EVIL LIVE   作:烏丸英

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ブライト/妹が魔法少女?

「っっ!? 何だ!?」

 

 突如として激しい振動が響き、爆発音が耳に飛び込んでくる。

 明らかに何か事件が起きていると察知した俺へと、アモンが言った。

 

『相棒、どうやら魔人が近くにいるみたいだ』

 

「相棒って言うな。昨日、こっちの世界に呼び出された連中か?」

 

『いや、多分違う。あいつらはまだ()()()()()の最中だろうからな』

 

 アモンの言う通り、力を得たばかりの俺たち異世界人がいきなり外で暴れるというのは少し不自然な気もする。

 ただ、完全にそうじゃないと断定できない俺は確認のために騒ぎの中心部へと向かおうとしたのだが……そこで何かがものすごい勢いで吹き飛んできた。

 

「はっ!? なんだぁ!?」

 

「くっそ~……っ! あいつ、思いっきりふっ飛ばしてくれちゃって……!」

 

 飛んできた赤い何かは、そのまま近くの店の壁に叩きつけられた後でそんなことを呻きながら立ち上がった。

 燃える炎のような長髪を靡かせ、派手なデザインのドレスのような服を着ているそれが女の子であることに気付いたタイミングで、あちらも俺の存在に気付いたようだ。

 

「さっさと逃げて! すぐに魔人がここに――!」

 

「はっはっは~っ! どうだ、ブライトフレア! 俺のパンチは効いただろう!?」

 

 赤い女の子が俺にそう言い終わるよりも早く、どこからかファンシーなゴリラのような怪物が跳んできた。

 そのゴリラに煽られた女の子は顔を真っ赤にすると、大声で叫び返してみせる。

 

「なめんじゃないわよ! 力だけの取り柄の脳筋魔人なんて、ちゃちゃっと浄化してやるんだから!!」

 

「むっほっほ~! やれるもんならやってみろ~!」

 

 どこかコミカルなやり取りを繰り広げた女の子と怪物が激しい戦いを繰り広げ始める。

 炎を操る女の子が果敢に怪物に殴り掛かる様を唖然と見つめていた俺は、アモンに説明を求めた。

 

「アモン、あれはなんだ? ゴリラは魔人だろうが、あっちの女の子は……?」

 

『あれは()()()()、魔人と対を成す存在……いわば、正義の魔法少女ってやつだな』

 

「魔法少女ぉ!?」

 

 あまりにも予想外だったその答えに俺が間抜けな声を漏らす中、アモンは至って真面目な様子で説明を続けていく。

 

『言っただろ? この世界には人間界と魔界、そして天界があるって。二つの世界を侵略すべく動いてる悪魔たちに対して、それを阻止しようと天界の連中も動いてるんだよ』

 

「つまり、悪人が悪魔と契約して魔人になるみたいに、天使みたいな存在と人間が契約するとブライトっていう魔法少女が誕生するってことか?」

 

 正解、と頭の中で声が響く。

 そこで改めて魔法少女ことブライトの戦いへと注目していった俺だが、なんとも言い難い状態になっていた。

 

「このっ! このおっ! 無駄に頑丈なんだから! さっさと倒れなさいよっ!」

 

「グボオッ!? ま、まだまだぁっ! この程度で俺様が倒されると思うなよ!」

 

 ブライトフレアとか呼ばれた女の子はゴリラの魔人と互角の戦いを繰り広げている。

 ただ、炎をところ構わず放っていたり、相手をかく乱すべく動き回っているせいで、周囲に甚大な被害が出ているように見えた。

 

 何て下手くそな戦い方だ! と言って説教するのは簡単だが、あの子だってたった一人で必死になって戦っているのだから、そんなことを言うのは酷な話だろう。

 とにかく、これ以上被害が出る前に手助けしなければと考えた俺が魔人に変身しようと考えたところで、慌てたアモンがそれを止めてきた。

 

『待て待て待て! ストップだ、相棒!』

 

「はぁ? なんで止めるんだよ? 特別犯罪者じゃないとはいえ、あいつだって魔人だろ!? だったら、あの子を手助けしてやらねえと……!」

 

『気持ちはわかるけど忘れたのか!? 俺たちも魔人! ブライトにとっては討伐対象なんだって! ここで俺たちが出てったら、話がややこしくなる上に面倒なことになっちまうよ!』

 

「うっ……!?」

 

 アモンの言う通りだ。ブライトにとって俺は敵である魔人……仮に共闘を申し出たとしても、素直にそれを受け入れるだろうか?

 見た感じ、あの子は熱くなりやすい性格みたいだ。魔人への敵意も強そうだし、信用してもらえる気がしない。

 

 足並みの揃わない状態で共闘しても上手くいかないだろうし、逆に周囲への被害も増えてしまうだろう。

 だが、やっぱり女の子を一人で戦わせるのは……と考える俺の頭の中に、アモンの声が響く。

 

『大丈夫だ、ブライトは一人じゃねえ。すぐにあの子の仲間が駆け付けてくれるはずだぜ』

 

「そうか、だったら……!」

 

 援軍が来るのならば、被害が拡大するかもしれない選択肢を取るのは止そう。

 代わりに、逃げ遅れている人たちの救助を優先しようと考えた俺は、近くの路地から聞こえる声に反応し、駆け出す。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「ああ、すまん……! 悪いが、この瓦礫を持ち上げるのを手伝ってくれ」

 

 路地には、瓦礫に足を挟まれて動けなくなっている親子と、それを助けようとしている初老の男性の姿があった。

 彼らへと駆け寄った俺は、大きな瓦礫に手を伸ばすと共に腕に思い切り力を込める。

 

「お、おおっ!? お前さん、すごい力だな!」

 

「そんなこといいから、早くその人たちを!」

 

 アモンと契約したおかげなのか、俺の身体能力は格段に上昇しているようだ。

 大きな瓦礫を悠々と持ち上げた俺を賞賛した男性は、その俺からの言葉にはっとすると共に親子連れに手を伸ばす。

 

「大丈夫か!? しっかりしろ!」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

 近くにいた母親の手を引っ張った男性は続いて子供へと手を伸ばしたのだが、そこで近くから戦っている二人の声が聞こえてきた。

 

「ホントしぶといっ! さっさと倒れなさいよ!」

 

「そう簡単にやられて堪るか! ウホホ~ッ!」

 

「ちょっと待てって! 嘘だろ!?」

 

「ヤバいぞ、おい!」

 

 ブライトフレアが放った炎を拳で弾くゴリラの魔人。

 その内の一つがこちらへと飛んでくる様を見た俺は、焦りと驚きに目を見開きながら呻いてしまった。

 

 今、瓦礫を支える手を離して逃げるのは簡単だ。しかし、そうなれば子供と初老の男性はただでは済まない。

 もう変身するしかないと、覚悟を決めた俺がアモンに合図を出そうとした、その時だった。

 

「えっ……!?」

 

 突然、吹き荒れた突風がこちらへと飛んできていた炎を掻き消す。

 偶然とは思えないその出来事に戸惑う俺の目の前に、ゆっくりと一人の女の子が舞い降りてきた。

 

「大丈夫ですか? 怪我は……?」

 

「っっ……!?」

 

 ブライトフレアによく似たデザインの服を着た、だけど明らかに違う部分もある女の子。

 緑色のショートヘアと装飾が特徴的な彼女が、アモンの言っていた援軍なのだろうと理解する俺であったが……そこで不思議な現象に襲われる。

 

(ふう、か……?)

 

 目の前に立つ新たな魔法少女に、死んだ妹の姿が重なって見えた。

 そんなはずはないと、俺が混乱する自分自身を叱責している間に飛び立った彼女は、魔人と戦う仲間の助太刀に入った。

 

「フレア! もっと周りを見なくちゃダメだよ!」

 

「やっと来てくれたのね、ウインド! こっちも必死だったんだから、大目に見てよ!」

 

「ふ、二人目……! これはマズい……!!」

 

 親子連れを助けた俺は、路地から飛び出してブライトと魔人の戦いを見守る。

 焦る魔人の前で手を繋いだ二人は、生み出した炎と風を重ね合わせ、巨大な炎の渦を作り出してみせた。

 

「食らえっ! ブライト・バーニングスクリュー!」

 

「うっ、うおおおおおおおおっ!?」

 

 風を送り込むことで炎の勢いを増させ、その炎が生み出す気流が風をより強くする。

 お互いを高め合うようにしながら繰り出された炎の渦がゴリラの魔人を飲み込む様を目にした俺は、彼が死んでしまうのではないかと焦ったのだが……どうやら杞憂だったようだ。

 

 炎の渦が消え去った後、中には多少傷付いてはいるが命に別状はなさそうな大柄な男性が跪いており、ブライトたちはそんな彼へと声をかける。

 

「大丈夫ですか? 私たちのこと、わかります?」

 

「うっ……お、俺は……?」

 

「悪魔に憑りつかれて魔人になってたのよ。まったく、これだけの被害を出したんだから、反省しなさいよね?」

 

 それはブーメランだと思う……とブライトフレアの発言に心の中でツッコミを入れる。

 ただ、彼女たちの奮闘のおかげで魔人は倒されたことも確かで、それは間違いなく感謝すべきところだ。

 

「あとは警察にお任せします。間もなく到着するでしょうから、あったことを正直に話してくださいね」

 

「あっ……!」

 

 そう言い残して、ブライトたちは飛び去ってしまった。

 ブライトウインドのことが気になっていた俺は、小さくなっていく彼女の背中を見つめ続ける。

 

『……相棒、どうかしたのか?』

 

「いや……なんでもない」

 

 俺を気に掛けるアモンにそう答えながら、深く息を吐く。

 何かの勘違いだと、自分自身にそう言い聞かせながらも、俺はどうしても自分の中で渦巻く感情を鎮めることはできなかった。

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