EVIL LIVE   作:烏丸英

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動揺/妹は魔法少女

「あの、ごめんなさい。ほむらちゃん、ちょっと過敏になってるみたいで……」

 

「ああ、いや……あんな事件があった直後なわけだし、気持ちはわかるから……」

 

「ありがとうございます。お兄さん、優しい人ですね」

 

 ……奇妙な感覚だった。死んだはずの妹が俺の目の前にいて、あの頃と何ら変わりない笑顔を俺に見せてくれている。

 ふわりと微笑む妹の姿に懐かしさを感じる中、改めて風花は自己紹介をしてきた。

 

「私、亜門風花っていいます。こっちは赤阪火蓮(あかさか かれん)ちゃん。この店の近くにある学校に通ってるんです」

 

「二人とも常連客だからな、これから顔を合わせる機会も多くなるだろうよ。ほむらは見ての通りのじゃじゃ馬だが、悪い奴じゃあねえから慣れてくれや」

 

「うっさいわね……! 誰がじゃじゃ馬よ」

 

 問題児じみた火蓮が、立花さんからの評価に不満気な反応を見せる。

 そうした後、こちらを向いた彼女は俺に対して怒りの矛先を変えながらこう言ってきた。

 

「んで? こっちは自己紹介したのに、そっちは名前も教えないわけ?」

 

「あ、ああ……悪い……」

 

 突然の妹との再会に困惑し、平常心を保てなくなっていた俺は、火蓮からの言葉を受けて動揺する心を鎮めにかかった。

 そうした後、名前を告げようとしたのだが……そこでアモンから待ったがかかる。

 

『相棒、正直に名前を言うのは止めた方がいいんじゃねえか? この場に()()()が二人と一匹いるとか、不自然でしかねえだろ?』

 

 確かにここで俺が亜門怜仁という本名を明かせば、偶然にも同じ苗字の人間がいることを訝しがられるかもしれない。

 特に火蓮は俺を警戒しているようだし、苗字は変えた方が無難かと考えた俺は、アモンが宿る腕輪を見つめた後、口を開いた。

 

「怜仁……大神怜仁だ」

 

「大神さん、ですね。これからよろしくお願いします!」

 

 偽名を名乗ることに多少の罪悪感はあったが、仕方がないと割り切る。

 風花は笑顔で応えてくれたが、火蓮の方は未だに俺への警戒の眼差しを止めずにいた。

 

「あんた、なんか怪しくない? さっきからどうして風花のことをじろじろ見てるのよ?」

 

「えっ? いや、それは……」

 

「ちょっと火蓮ちゃん! 流石に失礼過ぎるって!」

 

「風花は黙ってて! どうなのよ? あんた、変なこと考えてるんじゃないでしょうね!?」

 

 俺との距離を詰め、不審な態度の理由を問い質してくる火蓮。

 少し考えた後、俺は気になっていたことを確かめるついでの言い訳を口にした。

 

「……立花さんが事件に巻き込まれたことをどこで知ったんだろうな、と思って」

 

「え……?」

 

「魔人が事件を起こしてから、まだそんなに時間は経ってない。それなのに、どうして立花さんが事件に巻き込まれたってこの子たちは知ってるんだろうなって、不思議に思ったんだ」

 

「……言われてみりゃあそうだな。お前たち、どこで俺が現場に居合わせたって知ったんだ?」

 

「え、ええっと……」

 

「それ、は……」

 

 俺と立花さんに問い詰められた途端、風花だけでなく先ほどまであんなに勢いがあった火蓮までしどろもどろな態度を見せ始めた。

 明らかに動揺している彼女たちの様子に抱いていたもう一つの疑念を確信へと変える中、狼狽していた二人が言う。

 

「ね、ネットニュースで見たのよ! 魔人が暴れたら、すぐに報道されるでしょ!?」

 

「そ、そうそう! 写真にマスターっぽい人が写ってたから、もしかしてと思って……!」

 

「ふ~ん、そうなのか。まあ、今は何でもSNSとかで拡散される時代だしな」

 

 立花さんは二人の言葉に納得していたが、あれは多分嘘だ。

 この二人はあの時、現場にいた。だから立花さんが事件に巻き込まれたことを知っていたのだ。

 

 そして、彼が無事かどうかを確認する前に現場から立ち去ることになってしまったから、急いでこの店に立花さんの安否を確かめに来た。

 つまり、この二人の正体は……魔人と戦っていた二人組の魔法少女、ブライトフレアとブライトウイング。

 俺がブライトウインドの姿を見た時、風花の姿が重なって見えたのは、幻でも何でもなかった。

 直感的に……俺は、妹の存在を感知していたんだ。

 

(確固たる証拠があるわけじゃない。だが、間違いない……)

 

 妹は、正義の魔法少女として魔人と戦っている。

 そして俺は、複雑な事情の果てに魔人としての力を得てしまった。

 

『なんか厄介なことになっちまったな、相棒』

 

 頭の中で響いたアモンの言葉に、俺は同意することしかできなかった。

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