Ghost & Dash― 最速を継ぐ者 ―   作:Kataparuto

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ということでアンケート結果良好でしたので本編投稿となります
主役はカナタと……熱いハートを持ったあいつです

ただしリターンレサーズの冒頭を終えた状態としておりますのでちょっと丸くなってます。

それでは新しい戦いをどうぞお楽しみください

なおストーリーはすべて前作の
1/32の峠 ―Drift & Dash―
https://syosetu.org/novel/389894/

に準じていますのでよければそちら読んでからですとより楽しんでいただけます。



本編
Act.1 最速の系譜


世界的にバッテリー駆動のEV車が主流となり、絶滅危惧種となりつつある内燃機関で走る車へ送るレクイエムのようなレース。

それがMFG。

公道をコースとしたそれは瞬く間に人気を博し、世界中に中継されるような大きなイベントとなっていた。

そんなレースイベントへ挑むため、一人の19歳の青年が日本の地へと降り立った。

名は、カナタ。

カナタ・リヴィントン。イギリスと日本のハーフで、かの名門RDRSを首席で卒業した将来有望なドライバーだ。

慣れないながらも日本での生活を始めた彼は、今回挑戦するにあたって力を借りる人物と話をしていた。

 

「緒方さん、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくな。ただ、それなりの経歴の君には悪いんだけど、うちで用意できるクルマは今のMFGで戦う戦闘力はないようなものなんだ……」

「それは聞いてます。それでもMFGを体験させてもらえるだけハッピーです」

「OK!!そういうことならオレもできる限りのサポートをさせてもらうよ。それで……クルマはこいつだ」

「ワァオ……、GOOD、クールです」

 

 ガレージのシャッターが開けられたとき、カナタは目を見開く。

 そこにはヴィクトリーレッドに塗装されたトヨタ・86が鎮座していた。

 そのまぶしい紅に、かつて、世界グランプリで使っていた自分のマシンが呼び起こされる。

 その小さな共通点にカナタの胸が熱くなった。

 聞けばミッションはHパターンで3ペダル方式、ちょうどアカデミーの基本レイアウトであり、その操縦性にも何ら心配もなかった。

 これならMFGでの目的を果たすためにちょうど良いクルマだ。

その後出走登録などをこなし、日本にきてわずか6日後、とうとうカナタが出走する日が来た。

 カーナンバー86号車、トヨタ86らしい番号。

 緒方曰く、特に意味もないらしいがその符号の良さに実際乗ることになるカナタとしては気に入っていた。

 出場登録の事務所で世話になったMFG先輩の相場も何かと気をかけてもらったりしていると、ついに、カナタの出走となる。

 だが、その背後にもう1台、88号車、白いボディに青のストライプが入ったRX-8が出走を待機していることは誰も気にかけていなかった。

MFGは大きなイベントであり、やろうと思えば車1台で出場できるため予選ごとの新規チャレンジャーなど毎年たくさんいるからだ。

しかしその年の小田原パイクスピークは、異様な空気に包まれることになる。

 

MFGにはハイテクシステムが導入されている。

ドローンが主たるものだが、隠れたスパイスとして注目フラグというものがある。

これは予選タイムアタックにおいてAIに設定された要件を満たす走りをするドライバーがいればそのフラグが立ち、予選中継で中継されやすくなるというもの。

だが、これはMFGにおける唯一のレギュレーションであるグリップウェイトレシオというルール下で、その想定された最高の走りをしているということでもある。

このフラグを立てられるドライバーはほとんどいない、前年から参戦したミハイル・ベッケンバウアーが記憶に新しいがそれまではほとんどなかった。

だから、運営としても……2台も同時に注目フラグが立つことなど想定していなかったのだ。

 

『前代未聞です!!予選タイムアタックは時間差で複数台同時に走るため確かにこのようなことは起こりうるでしょう!!しかし、かつて注目フラグが2台も同時に発せられることがあったでしょうか!?いや、ない!!皆様!急遽広報用のサブチャンネルでも配信を開始しました!!メインが86号車!サブが88号車!!どちらの走りも見逃してはいけません!!』

 

実況が熱狂する、そしてその配信を見る人々も熱に浮かされ、その光景にくぎ付けになる。

カナタのセコンドを務める緒方もまたそれは一緒だった。

 

「嘘だろ……オレの86はこんな戦えるわけないんだ……」

 

自分のクルマであるトヨタ86の戦闘力は、緒方自身よくわかっている。リッチマンズレギュレーションと揶揄されるような高馬力高級外車が有利と思われるMFGにおいて、日本車の200馬力そこそこのクルマで戦えるはずがないのだ。

だが、目の前でグングンと本戦出場となる15位へ迫っていく86に緒方は驚愕しかなかった。

 

「……カナタは俺たちが思ってる以上に規格外のドライバーなのかもしれない。だけど……それについていく白と青のRX-8も何者なんだ?」

 

一緒にセコンドブースへ入っていた相場も、そんなカナタに匹敵するRX-8のドライバーに注目し始めていた。

 

激走するカナタは背後からわずかな違和感を感じ取っていた。

15位を目指し、わき目もふらずに走り続けるなかで、ふと背中から感じる熱。

それが気になって緒方に聞いた。

 

「緒方さん、僕の後ろ……、タイムに誰かついてきていますか?」

『ん?あぁ、お前の後からタイムアタックを始めたRX-8がいる、タイム差はわずかだ。大丈夫か?』

「……ノープログレム。前とのタイム差に戻ってください、集中します……!」

 

カナタは背後から迫る、ほとばしる熱の正体に、かつて見た力強いドリフトの姿を重ねる。

つまり、彼がいる。

かつてあこがれたTRFビクトリーズのエース、星馬・豪が。

 

その後、カナタは奮闘したがマシンスペックの差が埋まっていたダウンヒルともかく、残りの平地でタイムを落とし、残念ながら16位という結果に終わった。

初挑戦かつ、非力な車でこのタイムの健闘は正直なところ偉業ともいえるもので、本戦への出場は逃したものの十分すぎる結果だった。

緒方も、相場もそれを称えカナタも素直にその称賛を受け取る。

そんな中、カナタよりタイムを上回り15位につけたRX-8が、カナタたちがいる駐車場へと入ってきた。

 

「ふぃー……兄貴に薦められてロータリーにしたけど……気に入ったぜ、俺とのフィーリングがばっちりだ。ぜってー表彰台まで連れてってやるからな」

 

うんうんと満足げにRX-8を眺める男、その姿を見たカナタは思わず駆け寄っていた。

 

「ゴウ・セイバ!!」

「ん?あいにく今はプライベートだ、サインはしな……、ってどっかで見た顔だな……」

 

駆け寄られた豪は怪訝な顔をする。このような若いドライバーに見覚えはなかったのだろう。

だがそれに臆さずカナタは豪に詰め寄る。

 

「あの……!WGPのエキシビジョンで戦った……!カナタです!」

「カナタ………」

 

頭にはてなを浮かべて考え込む豪、だがすぐに思い出したのか笑みを浮かべてガシガシとカナタの頭を撫でつけた。

 

「思い出した!!あのカナタか!!デカくなったなぁ!!!あんとき小学生だから……いまいくつだ?」

「19歳です……、うあっ……髪の毛が……」

「そうか!いやー、あれからレース続けてくれたんだな、俺はうれしいぜ!」

 

 乱暴になでつけられた髪の毛を軽くなおしながらカナタは改めて豪に向き合った。

 

「星馬さんもMFGに出場されたのですね」

「あぁ、今回初挑戦だ。F2で勝ったのはいいんだけどよ、F1のほうのシートがもめててよ。家族も増えたし、生活費稼ぐのにちまちま仕事なんてしてられねーし、オレはレースしかねーんだ。ってか豪でいいぜ、1回でも一緒に走ったら友達だろ」

「わぁお……!いいんですか!?」

「呼び方ぐらいで大げさな……、それで、お前は何位だったんだ?」

「16位です、ぎりぎりで届かなかったです」

「そりゃ残念だな、まぁあの86でそこまでやれりゃ十分だろ。……でも、86を選んだってことはお前、このMFGのレギュレーションに気づいてるだろ?」

「……今は何とも、ただ、僕の指導教官からは馬力のある車を求めてはいけない、必ず相手より低い馬力のクルマでMFGを戦えと言われました。チャレンジにしては厳しい条件ですが、走ってわかりました、そこに攻略法があると」

「へぇ……」

 

カナタの言葉に豪が目を細める。

MFGに隠された攻略法、今の高馬力のストップアンドゴーも早いことは速いが正解ではないことを、豪は持ち前のセンスで感じ取っていた。

その感覚的なところをカナタは理解していることに豪はうれしく思った。

そこでふと思いついたことを声に出そうと思ったその瞬間。

 

「おーい、父ちゃーん!!」

 

小学生らしい元気な声が遠くから聞こえてきた。

手を振って走ってくるのは豪の面影を残した少年……。

 

「ご、豪さん……その子は」

「おう、俺の息子だ、翼ってんだ」

「こんにちは!」

 

ひょいと担ぎ上げて肩に乗せる豪、翼は楽しそうにカナタにあいさつした。

 

「こんにちは、翼クン。驚きました、結婚されていたんですね」

「いや?してねぇぜ?こいつも本当に俺の子供かもわかんねーけど、まぁ、レースに関してはそっくりなところが多いから、多分そうだろ」

「えぇ……」

 

あっけらかんと言い放った豪の言葉にカナタは困惑したが、目の前の仲のよさそうな姿にすぐに大丈夫だと納得した。

よそよそしい家庭ではない、なんでも真正面からぶつかりあってる仲の良い親子なのだろう。

そんな笑顔の親子の後ろからもう一人人物が現れる。

 

「こいつらしいだろ?噂はいろいろ聞いてたけど、レースに戻ってきてくれてうれしいよカナタ君」

「星馬・烈さん!!」

 

そう言いながら手を差し出したのは、星馬・烈だった。

豪はレースの世界へ入っていったが、烈はそうではなかったため、カナタとしてもあのエキシビジョンレース以来の再会である。

 

「今回のタイムアタックの件、残念だったね、こいつがいなきゃ15位だったのに」

「おい、実の弟の活躍だぞ!?」

「いい大人になってんだ、後進に譲るのも役目だろ?」

「あほか!俺も現役バリバリだっつーの、レースのことなんだから手加減無用だろうが!」

「まぁ、それもそうだな。でも見事な走りだったよカナタ君、あのクルマでこの成績は本当に驚異的だ。レギュレーションのトリックについて肌で感じてるからこそ、この結果につながったんだと思う。今回は残念だったけど次回は絶対本戦に出れるとおもうから、期待してるよ」

「は、はい!」

 

冷静沈着なカナタも、目の前のレジェンドからこうも励まされてはのぼせてしまう。上ずった返事が精いっぱいだった。

 

「って、そうだった、烈兄貴もいるしちょっと相談なんだが、カナタ、お前俺と組まねぇか?」

「え?」

「なに、仲良しこよしで走るって話じゃねぇよ。コース攻略の情報交換とトレーニング相手になってくれって話だ、レースではライバルでいいぜ、そのほうが燃えるしな」

「なるほど、カナタ君とMFGの最大の謎に挑むってことか。いいね、僕も絡んでいいかい?」

「おう、烈兄貴がいれば百人力だ。どうだカナタ、俺と一緒にこのMFGの表彰台に立ってみねぇか?ま、俺が1位だろうけどな!」

 

 思いもよらない提案、だが、カナタはその提案に素直に受け取ることができなかった。

 理由はいくつかあった。

 一つは緒方と相談しなければならいこと、いくらなんでもクルマは緒方名義であるし、真剣にサポートしてくれている彼を差し置いて決定するわけにはいかない。

 もう一つは、MFGへ挑戦する目的。

 父親を捜すために日本に来たカナタにとって、MFGはそのための広報手段だった。

 ここで活躍し配信に名前を載せることで父親がそれを見て気づいてくれることを期待しているものだ。

 むろん豪と、烈の提案に乗っかり上位に食い込めばより効果はあるだろう。

 だが、そのレースへのひたむきな姿勢に私情を持ち込むことが失礼になるとカナタは思っていた。

 確かにレースは楽しい、久々に走り、後方からの豪のタイムでの追い上げは現役のころの闘争心を呼び起こそうとしてきた。

 しかし、カナタ自身として、まだレースに本格的に向き合う気になれていなかったのだ。

だから……。

 

「ご、ごめんなさい、今はまだ……わかりません」

「……そうか、でもいつでも言ってきてね、僕も豪も、MFGの謎には挑戦してみたいんだよ。かつてのコーチの、いや、公道最速理論の回答がここに示されてるみたいだからね」

 

 カナタのやんわりとした否定に烈は笑顔で答えてくれた。

 豪も特に気にしている風もなく、次のレースを応援してくれと言い残して彼らは駐車場を後にした。

 遠巻きで見ていた緒方と相場にF2レーサーとの関係を問いただされて、もみくちゃにされているうちにカナタの心にあったわずかなしこりは消えていた。

 しかし、天は彼の気持ちとは裏腹に、そのチャンスを与えるのである。

 そう、違反者が出たことでカナタの順位が繰り上がり、まさかの本戦出場が決定したのである。

 転がり込んできた本戦出場の切符に、カナタは覚悟を決める。

今挑める86の限界を出し切り、やれることをやってみようと。

 

 

――本戦の日

 

 

豪は見知った顔を見かけて声をかけていた。

 

「おうカナタ!運がよかったな!」

「ゴウさん……!はい、まさかの本戦にトライすることになりました、よろしくお願いします」

 

 それはドライバーズミューティングも終わり、86に乗ろうとしていたカナタだった。

 相変わらず礼儀正しく返したカナタと軽く握手をし、誇るように宣言する。

 

「おう、まぁ俺が前にいるんだ、抜かせやしねーけどな」

「エキシビションを思い出します。借りを返す……のは難しいかもしれませんが、いいレースをしたいです」

「お?意外に弱気だな?」

 

 豪自身、実をいうと予選は限界まで詰めていない。

本戦に出られるタイムを出すことと、コースの下見を兼ねたトライだったからだ。

 車両のスペック限界はあるものの、少なくとも豪はこの時点で1位を取りに行くつもりでいる。

 いや、取れなかったとしてもそれぐらいの気概でなければいけないと思っていた。

 だが、豪にも気がかりがあった、それがこのカナタである。

 レース業界へ身を置いた豪の耳にもこのカナタのすごさは遠くイギリスから漏れ聞こえてきていた。

 いつかF1にも出場するような天才ドライバーだろうという認識もあったが、今目の前にいる彼はどうだ。

 確かに速いは速いが、かつてのエキシビジョンで魅せたあの負けん気、闘志が薄い。

 先ほど誘いを断ったのも、そこに原因がありそうだと豪は思った。

 だが、あえてそれを指摘はしない、幸い自分が前だ、カナタも別に無難に終えるつもりはないだろう、あんなろくなチューニングもされていない86でこのタイムに食いついているのがその証拠だ。

 なら、目を覚ませてやるのはレースでの走りだろう。

 

「そいじゃ、レースでな。言っとくけど俺は容赦しないぜ?」

「はい、僕もむざむざ負ける気はありません、グッドラック」

 

カナタからの激励を受けながら豪は自分のRX-8へ乗り込む。

 準備をしているとセコンドブースの烈から無線が届いた。

 

『豪、聞こえるか?RX-8はどうだ?』

 

 当面の生活費とドライバーとしてのカンを鈍らせないようにMFGに挑戦する豪に、白をベースに青のストライプを入れられたRX-8を勧めてきたのは豪の兄、烈だった。

 烈自身になにか確信があったわけではないが、自分たちのコーチ、藤原拓海がその身をもって表現してきた公道最速理論への到達には、まずは真似るところ、要素を取り入れることだと思いFRのRX-8を勧めた。

 トヨタ86にするのもよかったのだが、彼らにとってあの名前を冠するものは特別すぎておいそれと乗れなかった。

 

「ロータリーエンジンのふけあがりは文句ねぇ、バランスもいいし、走ってて楽しいぜ。ネットじゃ散々な言われようだが、日常使いじゃそりゃ不満も出るわな。こいつは、走るためのクルマだ」

『とはいえ、前身のRX-7よりもパワーが出ないからな、うまく乗りこなしてくれ。とりあえず上位に食い込んで改造資金を分捕ってこい』

「おっけー、任せとけ。っと、そうだ翼いるか?」

 

 レーシンググローブをはめ、進みだした各車両の隊列へと加わる。

 

『なに?とーちゃん?』

「とりあえず今日はぶっちぎってくるからな、晩飯は焼肉だ!」

『やったー!!ふがいない走り見せないでよ!』

「いうじゃねーか、任せとけ!」

 

 自分に似て言いたいことを言う翼が腹いっぱいご飯を食べる姿を思い浮かべ、豪はハンドルを握りなおした。

 バックミラーに移る赤い86、どこまでやれるか、どこまでついてくるか。

 少なくとも、カナタがそのまま15位で終えるとは一切思っていなかった。

 

『改めて説明しますとMFGは隊列最後尾のクルマがゲートをくぐった瞬間レースがスタートします、この1台1台がゲートを抜けていく、この緊張感は口から心臓が飛び出してしまいそうなほどです!』

 

実況の声が大音量スピーカー越しに聞こえてくる中、豪は有料道路のゲートをくぐる、自分の後ろ、カナタの86がくぐった瞬間スタートだ……!

目の前を飛ぶドローンのシグナルがブルーへ。

豪はそれに合わせてアクセルを一気に踏み込む。

EV主体となった昨今ではレース場でしか聞くことのできない内燃機関の咆哮。

力強い振動が豪の背中を蹴り飛ばすような衝撃でマシンを一気に加速させた。

 

――とはいえだ。

 

豪は意外にも冷静だった、前へ出ると宣言したもののまだそのタイミングではない。

今回の小田原パイクスピークは前半は登り、高馬力の他出場者たちならともかく、自分のRX-8ではここいらは丁寧に走ってタイムを維持するしかない。

後ろのカナタも同様らしく、まだ仕掛ける気はないようだ。

つまり、ポイントは下り。

カナタのタイムが劇的に伸びたのもそこからだ。

豪としてもいまだ非力なこのRX-8でやりあうにはそこしかないと踏んでいる。

だが、予選とは違う、限界のぎりぎりまでラインを詰めるつもりでいる。

そうこうしているうちに前半の登り区間が終わる。

 

「さぁ……ついてこいカナタ!」

 

レストハウスを横目ダウンヒルへ入るとともに、豪はアクセルを踏みぬいた。

ここから先一切緩めるつもりはない。

 

「さて……!」

 

 意外な話だが、星馬・豪というドライバーは、その走行の8割を感が占めていると自認していた。

さしものプロレースに入ったころこっぴどく負けてからはある程度の理論や定石を覚えたものだが、それを備えてなお自身が走るべきラインを感で決めている。

時に外すこともあるが、その間は大体あたり、その走行ラインは誰もが予測不能と表現されるものだった。

そしてそのラインは今目の前で繰り広げられている。

 

『区間タイム更新!!予選から続いて注目フラグが立ちっぱなしだぁぁぁっぁ!!88号車、RX-8!!星馬・豪!!F2の覇者が大暴れだぁ!!』

 

ダウンヒルに限って、1位のベッケンバウアーよりも早いタイムをたたき出す豪、中継を見ている人々からは信じられない速度でコーナーへ飛び込んでいくので、毎回悲鳴が上がるほどだ。

時にグリップを生かしたコーナリング、時にわざと滑らせてドリフトまがいで連続コーナーの最終姿勢を整えるための下準備と定石と非常識を織り交ぜたドライビング。

だが、その走りについてくる人物がいた、それが片桐・カナタだ。

 

「へぇ……!やるじゃねーか……!」

 

豪は先ほどまでのカナタの覇気から今の走りについてこられるとは思っていなかった。

だが、その予想に反してカナタは豪の走りについてきていた。

それはたぶん、自分の走りに感化されたのだろう、そう踏んだ豪はもう1段階、攻め込むための走りのギアを上げた。

 

『もう、中継映像を直視できません!!88号車はなぜそれで走れるのか!?ガードレールにほぼ接触しているような事故ぎりぎりのコーナリング!だが、無傷!!その後ろの86号車も同じ!!まったく一緒のラインで小田原パイクスピークが攻略されていくぅ!!』

 

熱狂に包まれる実況、あっけにとられる解説、息をのむ視聴者。

だが、かつてプロジェクトDにかかわったことのある走り屋たちだけが違った。

 

来るべき時が来た。

 

そして二週目へ突入する。

 




ということで本戦決着は待て次回となります。
前作ありきですので、よければそちら読んでいただけると豪や烈のレッツ&ゴーの登場人物とMFGやイニシャルDのキャラクターとのかかわりがわかりますのでお勧めです!

今回も短期連載予定ですが、どうぞよろしくお願いします

もう一人の主役は豪でよかった?

  • ハイ
  • イイエ
  • ビクトリーズの出番がほしい!
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