Ghost & Dash― 最速を継ぐ者 ― 作:Kataparuto
ならやることはただ一つ!!
ご期待ください!!
MFGにはサマーバケーションがある。
観光シーズンに道路をふさぐわけにもいかないなどなど、様々な理由があるが、総じてこの2か月のバケーションで各チームが前半で出た課題を解決するというのが大まかな流れだ。
TTF(ツチヤチューニングファクトリー)とチーム片桐も同様で、真鶴で出た課題を解決し、残り2戦の本戦に向け最後の強化を行おうとしていた。
「んで、だ。そんなクッソ忙しい中わざわざ来てやってんだ、飯ぐらいおごれよ藤吉」
そう言われた三国藤吉、元TRFビクトリーズのメンバーで、今も日本代表チームのメインスポンサーを続けている三国財閥の御曹司は、嫌な顔をせずに豪にキーカードを手渡した。
「レースが終わったらうちの一番のスイートルームとディナーを用意してあるでゲス、もちろん帰るまでランドのアトラクションも全部無料でゲス!」
三国ランド、かのDの名がつく遊園地と肩を並べるほど巨大な複合レジャー施設だ。
ここの特徴はWGPにおける大会指定のGP規格に対応したミニ四駆サーキット、三国サーキットが常設されていることにある。
MFGが開催されるその裏で今年のWGPももちろん開催されておりこちらも大盛り上がりであった。
そんな中、星馬・豪と片桐カナタの二人に、MFG運営からとある打診があった。
その内容は、三国サーキットで開催されるWGPエキシビジョンマッチに解説として出席してほしいというものだった。
当初、この打診に対してはどちらも断るつもりであったが、お互いに相方が豪とカナタであると聞き、初めて出会ってレースをした場所でもあるので、そのノスタルジーから連絡を取り合うこともなく両者了承。
今のWGPの様子も見てみたいという好奇心ももちろんある。
今回のエキシビションの参加選手は現在の日本代表と、イギリス代表から選抜されている。
ちなみに土屋研究所はボディーやシャーシ用の空力パーツ供給元へ役割が変わっているので、現在は別の運営団体が日本チームを運営しているのでTRFはスポンサー用デカールに残るのみだ。
「なるほど、だからボクと豪さんだったんですね」
実況席に案内され、手元に渡された対戦表を見て納得したようにカナタが頷く。
日本とイギリス、国籍的に伝説の日本代表エースと、今を時めくイギリス国籍のMFGスーパールーキーとなれば呼ばれない理由がない。
「けー、お前とやりあったときの再現じゃねーか、藤吉も意地が悪いぜ」
かつてのエキシビションで豪とカナタは一度ミニ四駆で対戦しており、それもこの三国サーキットで。
藤吉のちょっとしたサプライズに悪態をつきながらも、楽しそうに笑いながら資料をめくっていく豪にふとカナタは思ったことを聞いてみた。
「まぁ意図はともかく、対戦カード自体は面白いですね。翼君はWGPには招致されていないんですか?」
そう、星馬豪の息子、翼のことだ。
カナタがこの間の江の島湾岸サーキットでのレースで実力を見た限りでは相当なものだった。
GPシステムに対してもVRレースなどの普及で自力で学習しているらしく、どのようなルールが来ても対応はできる実力はあるとカナタは思っていた。
しかしカナタの言葉に豪は首を横に振る。
「あいつはまだまだだからな。速いことは速いがチームレーシングを重視しすぎている。ある程度わがままを通して、単独でエースを張れるような奴が集まるのが国代表ってもんだろ?」
「ミニ四駆でしたらチームレーシングも大事だとは思いますが……そうですね、単独で走っていて負けたくないという闘争心は大事です」
豪の返しに、カナタは自分の意見を言った。
たしかに、チームレーシングで戦うのがWGPだがそれは各々がトップエースを張れるだけの実力があるからこそ足並みがそろうわけで、足並みをそろえるために走っていては1位になれない。
その、がむしゃらにトップを目指す闘争心というのは、MFGでも大事なものだ。
極限まで追い込まれた状況では最後にものをいうのは闘争心からくる気迫だ。
「まぁ心配しなくても、来年には出るだろうよ、俺が直々にミニ四駆を教えてやってんだから」
「それは楽しみですね、その時は観戦したいです」
「チケットもらったら誘ってやるよ、お前もいたほうが翼も喜ぶからな」
「えぇ、ぜひ!」
そうこうしているうちにレースが始まる。
日本代表はレーサーの特性を最大限に生かせるレーサーごとに作られたワンオフモデル。
対してイギリス代表はチーム統一マシンのチューニングモデルだ。
「相変わらず日本代表は個人特化仕様なんですね」
突っ走る日本代表のマシンを見ながらカナタがつぶやいた、マイクはOFFだ。
「んだな、まぁコスト面とかメンテナンス性が最悪にはなるが、ハマれば強いのは俺たちが証明したからな。伝統ってやつだろ」
それに合わせて豪が応えた。
そう、日本代表は初代日本代表のTRFビクトリーズが全員異なるマシンを使ったという戦い方を踏襲している。
むろんこれまでに諸外国と同じ統一マシンを試したこともあるのだが、軒並み成績が落ちたため、わずか数レースのみでTRF式へと戻されている。
理由は単純で日本代表選出はグレードジャパンカップの成績によるものであり、特に日本の子供たちは安価ですぐに始められ、日本各地にサーキットが作られているミニ四駆と距離感が近く、自分のマシンを育ててきているため、いきなり別のマシンを渡されてもその実力を発揮できないというものだ。
悪く言うと子供っぽくプロレーサーではない理由だが、ずっと使ってきたマシンをGP化するからこそマシンとレーサーの一体感が高まり、その強さは驚異的なものとなる。
相手チームからしても、それぞれのマシンの長所と短所が異なるため、コース環境一つとってもその組み合わせが膨大になるため、データ解析の面でも時間稼ぎができるのだ。
そうこうしているうちにレースは終わり、勝敗は日本代表が僅差で勝利となった。
「いやー、わりぃな日本が勝っちゃって」
「いえ、メンタリティは最近大分日本寄りになっているので……ボクもどちらかというとうれしいです」
仕事も終わったと豪とカナタが実況ブースを出たところでとある人物が二人を呼び止めた。
「二人とも待ってくれ」
その声に振り替えると、豪がパッと表情を明るくした。
「リョウじゃねぇか!」
そこにいたのは鷹羽リョウ、星馬・豪と共にTRFビクトリーズで戦った仲間だった。
現在は運送業をしている傍ら、全国のミニ四駆サーキットに現れては初心者レーサーにミニ四駆のイロハを教えて回っているそうだ。
そのおかげと、初代TRFビクトリーズのメンバーという肩書もあり、何と今年からWGP日本代表コーチとなっていた。
「勝ってよかったな!」
「あぁ、正直ひやひやしたがな」
親しげに話しをする豪とリョウを見て、カナタは先ほどのレースを見ていた中で抱えていた違和感がストンと落ちた。
日本代表の走りの中にわずかだが藤原イズムを感じていたのだが、藤原先生がコーチをした人物が走りを指導する立場にいるのであれば納得である。
ふと豪の後ろにいたカナタの存在に気付いたリョウが握手を求めてきた。
「片桐カナタだな? 俺は鷹羽リョウ、今の日本代表のコーチをやらせてもらっている。MFGでの走りは見させてもらってるが、コーチを思い出すいい走りだな」
「あ、ありがとうございます! あのTRFビクトリーズのリョウさんと会えるなんて、光栄です!」
そういいながら差し出された手をカナタは握り返し、目の前の人物を見つめる。
意志が強い、そうカナタは思った。
あくまで印象だがどっしりと大きな山のようで、彼にコーチしてもらえるのであれば相当な安心感があるだろう。
「んで、わざわざ挨拶だけか?」
「いや、ちょっとした提案というか、スポンサー様のご意向でな」
豪に言われたリョウが顎で示した先には、藤吉が立っていた。
何かろくでもないことを思いついたのだろう、満面の笑顔である。
「豪君、カナタ君、ちょっと顔を貸してほしいでゲス」
ってことですよ。
さて対戦カードは決まった、使うマシンは果たして!?
次回ご期待ください
リョウの登場と役割はいかがでしたか?
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良い!
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ダメ!