Ghost & Dash― 最速を継ぐ者 ― 作:Kataparuto
とはいえです、まぁここの主役は彼ですのでね。
でもここに食いつく存在がいるというのがこの二次創作だと思っていますので……
ではお楽しみください
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ザ・ペニンシュラ真鶴。
下馬評は大いに荒れ果て、その予測は何の意味もなくなっていた。
2周目を終えたところで、カナタも、豪も予選の走行で見せたきらめきを失い、ずるずると集団にもまれている状態だ。
予選3位につけ、今度こそ表彰台に立つと期待された片桐カナタは現在8位。
そのライバルである星馬・豪もなぜかこれまでのレースで見せた力強い走りを失い11位。
2周目を終え、それでもレースそのものにはほとんど動きはない。
ただ、これはザ・ペニンシュラ真鶴のコース構造にも原因がある。
オーバーテイクポイントが極端に少ないため、順位変動がかなり少ないのだ。
豪の見立てではカナタは2速を何らかの理由で使えない、なので下道ゾーンへ入った後の180度ターンや、Tポイントコーナーと呼ばれるヘアピンで、立ち上がりの加速で完全に置いて行かれてしまい、そこを中心に抜かれている。
それ以外の3速や4速で走り切れるエリアなどではやりあえているがそれは何の慰めにもならない。
だが、豪もそれに対して何かリアクションをとれるというわけでもない。
失っているクルマとの信頼感において他者が入り混じるレースという状況では、クルマから要求される走りに対してうまく対応できなくなっていた。
今まで通りに走れば3位でも取れるのかもしれないが、予選でのミッドナイトトンネルを抜けたオー・ルージュでのあの横Gの収束力、まだ踏めると要求してくる恐怖が、いまだ豪の中で無視できない衝撃として残っている。
そのせいで豪も完全にペースを狂わされてしまい、今のポジションまで落ち込んでいる状況だ。
しかし、この状況に一番腹を立てているのは当然豪自身だ。
Jが現状の完璧に仕上げた今の相棒たるRX-8の要求する走りに応えてやれないビビりな自分に対してかなりのフラストレーションをためている。
目の前を走る5号車、アウディの大きな図体が余計に目障りですぐに視界から消し去りたいとも思っている。
だが、アウディの向こう側で奮戦する赤いクルマの姿を見る、その走りにかつて峠でバトルしたハチロクセイバーの姿が重なる。
あれには藤原拓海が体現した公道最速理論の遺伝子が脈々と受け継がれている。
Tポイントコーナーが迫る、ここでカナタは必ず順位を落としてくるだろう。
かつての恩師の教え子だ、どんな不調があるかわからないがこちらも本調子ではない、なら、サポートして少しでも上の順位で終えられるようにしてやった方がいいのか?
様々な考えが豪の中で浮かんでは消えていく。
それと同時にカナタの内面にも一つの変化が起こり始めていた。
一年間のブランクによって焦点のぼやけていた何かが次第にクリアな輪郭を持ち始めていく
母親を亡くしたことによるモチベーションの喪失
レースに背を向けてひきこもる弱い自分
自分探しの負のスパイラル、出口のない迷い
そういったもの達が追い詰められた心理状態の中で
剥がれ落ちて、浄化されていき
二つのものだけが最後に残された
一つ目は幼いころから習得し体に染みついたレーシングドライバーとしてのスキル
そして二つ目は、むき出しのピュアな闘争心 逆境の中で皮肉にもカナタ・リヴィントンは自らのピークを取り戻していたのだ。
そしてカナタの内面の変化にシンクロするように豪の心境もまた一つの境地へと至る。
思い出されるのは様々な困難を相棒のマグナムや仲間たちと攻略してきた自分の姿。
その姿は小学生の時の自分だった。
今更それに戻ることはできない。
豪が年齢を重ねるたびに背負うものが増えているからだ。
だが、その小学生の自分が歩んだ先に今の自分がいる。
何も変わっていない、すべての道は地続きだからだ。
そしてその姿の中に前を走る赤い86が加わり、そこへハチロクセイバーと藤原拓海の姿が加わる。
その瞬間、一陣の風が吹きぬけた。
目指すべき道は、そこにある。
Tポイントコーナー、市街地特有のT字路のヘアピンが迫る。
当たり前の立ち上がり能力が要求されるなんてことない場所だが、2速を使えないカナタにとってはオーバーテイクされるポイントだ。
後ろには5号車のアウディが迫る。
とびっきりの戦闘力を持ったクルマ、どう頑張っても抜かれる。
そう思った時だった。
カナタはとっさに2速を入れた。
痛くない。
そう思った瞬間に、体に染みついた本能がアクセルを踏みぬいた。
封印されていた2速が蘇り、86にまとわりついていた鎖がほどけ、後ろに迫るアウディに一歩も寄せ付けずにTポイントコーナーを抜けた。
『こ、こちら緒方!!何やってんだバカ!二速に入れただろ!?』
「カナタよりオガタさんへ、痛みを感じなくなりました……」
正直この時カナタも自分自身に起こっていることは何も理解できておらず、戸惑いも当然あった。
だが、不思議とナビシートのほうから伝わってくる暖かい力、それが左腕を包み込み、そのおかげで痛みが嘘のように消えていた。
その力の正体はわからない、だが――。
「オガタさん、今からリベンジを始めます!今まで僕を抜いていったクルマたちをすべて抜き返さなきゃこのレースは終われない!!OVER!!!」
あっけに取られて動きが鈍っていたアウディのスキを付き豪もアウディをオーバーテイクし、目の前の赤いクルマを見据えた。
締めきった車内のはずなのにボディを流れる風を感じる。
ようやく、豪とRX-8の一体化が果たされたのだ。
ボディにまっすぐ走る蒼いライン、その一閃をきらめかせるべく豪の感覚が究極まで研ぎ澄まされる。
これほどの状態なら相手も極上でなければいけない。
「烈兄貴、今から言うことをブース越しでカナタへ伝達してくれ」
豪からの伝言の内容に烈は頭を抱える、ただでさえトラブルでナイーブな状況でこれを伝えるのか……。
だが、片桐カナタの本当の実力を見るなら今だ、ならあえて悪役の汚名をかぶろう。
『カナタ、烈さんからだ、変わるぞ』
緒方からの通信にカナタは驚く。
単純な状態の心配であれば無視するつもりでいたが、まさか烈が通信相手になるとは思わずカナタは前を見据えたまま内心驚いていた。
『カナタくん、烈だ、豪からの伝言だ』
ヘッドセットのスピーカーからは烈の落ち着いた声がカナタへ届く。
一呼吸おいて烈が続けた。
『藤原コーチの名前に泥を塗るつもりならサッサとクルマを降りろ、今更本気出しても俺が後ろからぶち抜いてやる、嫌なら1位になるんだな。Over』
明らかな煽り文、もしかしてこちらの不調の原因を見抜いたうえでの心配するような内容かと思えば……。
カナタの中で何かがキレる。自分だけならともかく、藤原先生のことまで持ち出してきた。
「上等です……!!付いてこい……!!!豪さん……!」
完全なピークを取り戻した片桐カナタの研ぎ澄まされた感覚に熱が加わる。
その熱は86の真っ赤なヴィクトリーレッドと合わさりまるで炎を纏う弾丸のようにクルマを加速させた。
その動きに合わせ、豪もまたアクセルを踏みぬく。
「っていっても俺もこれ以上不甲斐ない姿を見せるわけにはいかねーんだよ!」
『13号車の背後に赤い弾丸と蒼い閃光!!86号車と88号車が来ているぅ!!!先行する86号車は7秒以上の差がついていたはずなのですが……、半島区間から内陸区間後半でこの二台が一気に差を詰めてしまっているぅ!!!』
まずはダブルトンネル入り口、カナタが13号車のNSXへ仕掛ける。
トンネル内でのオーバーテイクからホワイトアウト区間であっさりと前へ出る。
『あぁっと!!86号車があっさり13号車を抜きさ……いや88号車も抜いたぁ!!!一切容赦がない!!どうして曲がれる!どうしてそこで攻めれるのか!!』
その動きに合わせてぴたりと真後ろにつけた豪も13号車をパスし、第二トンネルへ突入し視界が奪われる中、豪はヘッドライトを消した。
この動きにカナタはRX-8の動きを完全に見失ってしまう。
その隙に豪は86をオーバーテイクしカナタの前へ出る。
『な、なんだ!?星馬・豪選手のRX-8のヘッドライトが消えている!?トラブルか!?』
『なるほど、そういえば星馬・豪も藤原の教え子でしたね、あれは藤原の十八番のブラインドアタックですね。ヘッドライトを消すことでこういう暗闇の中で位置をわからなくしてアタックを悟らせないというテクニックです』
『とはいえですよ、解説の秋山さん!!前が見えないのに、どうして走れるんですか!?』
『わかりません、予測ですが先行車のヘッドライトからイメージをもらってそれで走らせているのではないでしょうか?まぁ、星馬・豪選手は芦ノ湖GTでも片桐カナタより速く霧の中を走っているので視界不良という条件では相当強い何かがあるのでしょう』
二つ目のトンネル、ミッドナイトトンネルを抜けた先、オー・ルージュで6号車を射程にとらえる。
豪はそのまま6号車のアウトから例の右コーナーでオーバーテイクを狙う。
横Gがクルマたちに襲い掛かり、コーナー頂点での下りへ道が変わる。
ストンとGが抜ける感触だが、ここで走る誰よりも早くRX-8はグリップが回復、横Gの収束も速くすぐさま加速体制へ入る。
これにより6号車はあっさりパス、自分の後ろにつけていたカナタも置き去りに前へ出ていく。
だが、豪自身ここの攻めにまだ余裕がある、理想とする領域まで踏み込めていない。
――くそ、まだいけるか……!
『一閃!!まさに居合切り!!青いストライプが、88号車が!!その斬撃を残し行ってしまう!!』
『いやー、鋭い走りでした。6号車の柳田君、885号車にも同じように抜かれていますからね、衝撃として残っていることでしょう』
『赤い弾丸と蒼い閃光、その二色が絡み合うようにポジションを上げていく!!』
――さすがに細かいコーナリングの精度が俺よりうまい……!コーチから直接ドライビングを教えてもらってるだけはあるぜ……!
先行して180度ターンを終え半島区画へ突っ込んでいく豪の真後ろ、86がわずかずつ距離を詰めてくる。
豪自体は十分に速い、先行車とのタイムもかなりの速度で縮まっている。
だが、片桐カナタはコーナー1つ1つが豪より速い。
これは藤原拓海からミニ四駆を通じてその精神を継承した豪と違い、直接ドライビングテクニックを教わっているカナタとの違いだ。
気づけば次は3号車のウラカンが迫る。
しかしオーバーテイクポイントがほとんどないとされる半島区画、二車線道路で繰り広げられる状況でどう抜くのか、配信映像も実況も固唾を飲む。
せっついていた豪が3号車の後ろでスキを窺っている瞬間、コーナーの入り始めで片桐カナタがするりと横へ入り込む。
横へ入り込まれたことで3号車は次のコーナーへの位置づくりができなくなりガクリとペースが落ちる。
――んだとぉ!?
驚愕する豪をよそにカナタが今度は前へ出る。
その走りには今までのカナタからは感じられなかった闘争心があふれていた。
『ま、前に出るぅ!!片桐カナタが一気にポジションを上げて6位!!』
『神がかっていましたね……、このようにするりと入るような走りは相当な技術と感覚に裏打ちされています。コーナーでアウト側とはいえスキを作るドライバーなんていません、旋回に入るときにようやく外側にスペースが生まれるわけですがそのわずかなタイミングで車が入れる隙間を彼は狙うわけです、この見切りはまさに侍のそれであり、先ほどの豪選手の居合切りに匹敵します。英国人の片桐カナタにその侍の一閃を感じるのは不思議なものですが、だからこそ、今後の星馬豪との打ち合いに期待してしまいます』
ここまで行って秋山はスキール音を立てながらコーナーを高速クリアしていく86の姿に言葉を重ねた。
『とはいえ、ここまでのハイペース、タイヤが最後まで持つとも思えないのが悔しいところです』
『さぁ言っている間に赤い弾丸が半島の森の中のダウンヒルを驚愕のスピードで駆け下りてきた!4位グループの1号車と885号車に迫る!!』
『しっかり88号車もついてきていますね、藤原拓海イズムというか峠の下りの強さはあの二台は折り紙付きでしょう』
目の前に迫る885号車と1号車、そしてその先は幅が狭い2車線のアンバランスコーナーと呼ばれる場所だ。
最初は登り、4台が連なる状況。ここはあくまで次のダウンヒル前の前哨戦、ここで仕掛けるやつはいない。
そして下りに入った瞬間カナタが先ほど見せた一閃で885号車を抜きにかかる。
接触ギリギリ、横を走るタイヤの音が聞こえるほどの近接戦闘。
避ける先もない885号車は現状のラインを維持するのが精いっぱいであり、カナタはその状況で近接戦闘をやり遂げ885号車をパス。
カナタはここで豪を置き去りにした。
豪もカナタに続こうとするが、詰まる。
スペースがない、仕方なく一瞬待つ。
だが、ペースは落とすつもりはなかった。
目の前を走る885号車をじりじりと追い立てていく。
『っは!?申し訳ありません、話すことが仕事のわたくしが思わず息をのんで黙り込んでしまいました……!秋山さん、何とか解説をお願いします』
『壮絶なオーバーテイクでしたね……、最も狭いところで86号車がねじ込んでいきました、おかげで885号車がはじき出されていきましたが、ラインは残っているにかかわらず金縛りにあってしまい動けなくなりました。これはエスケープゾーンのない公道だけに潜む魔物とでもいうのでしょう、あれに晒されたら早々やりあえるドライバーはいないでしょう』
その後二個目の180度ターンゾーンで1号車をパスしたカナタは先へと進んでいく。
そんな中、豪は手間取り885号車と1号車の後塵を拝する状況である。
――まだだ。オー・ルージュがある
そんな豪が見据えるのはオー・ルージュ。
まだ100%で行けていない領域。
だが。
今度は、踏む。
ということで決着は待て、次回っ
もはや語ることはないです……
今期はここのアニメ化本気で震えましたね、2速復活はあっさりでしたがその後のレース展開側に演出振りまくりで本当にワクワクしました。
ではまた次回よろしくお願いします
星馬・豪の復活、どうでしたか?
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良かった
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パンチが弱い!