はらはらはらはら祓えオラァ!!! 作:ニセテンドン4DS
一級術師、禪院
初めは、14歳の時だった筈。
その頃の私は所謂中二病に首元まで沈没した状態、脳の中では母校にテロリストが乱入してくるかと思えば数秒後には巨大ロボットが轟音を上げながら変形している。趣味といえば休日にアニメを見漁って、ブラウン管の中にある理想の世界に夢を抱いていた。思い返せば、超典型的なアニメオタクと言える。
あれは中学の体育祭だったか。
足は速い方だったがそれでも学校一番などでは無く、クラスの戦力のうち一人に数えられるかどうかだったと覚えている。
全員リレー。あそこの場にある特有の熱気の中、バトンが私の右手に触れて、それを合図に駆け出した。順位は2位、一位は自分の速度次第では追い抜かせそうな距離。
願った。足よ、届いてくれ。私の妄想癖までもが動き出し、ひたすらに走り続けるイメージが脳内に浮かび上がる。
速度が上がっていく。脳内にはイメージが浮かび続け、それも加速し始めた。前の走者との距離がどんどん、どんどん縮まって、遂には私が抜き去った。
多幸感のままに走り抜いてバトンを次へ繋ぎ、トラックから逸れようとした時。突然身体が石像のように剛直した。その間、1秒。
私を見る同級生の怪奇と困惑を浮かべた目が、その時はひたすらに嫌だった。私にも、何が起きているのか分からなかったのだから。
後で知った事だが、その時のタイムは100mを6秒24。明らかなる人間からの逸脱行為が、私を
「面倒そうなのが出たもんだ……」
ある人里離れた田舎に、人攫いをする呪霊が出た可能性があると報告。それの確認の為に出向いて来た所、本当に出ていた。自分が目の前で相まみえているのだから、これ以上の説明などもはや必要ないだろう。
『*❆♙☞ԙ〃…』
相手の呪霊は古風な女子生徒用の制服を着た見た目、しかし顔に当たる部分には暗闇が広がっている。表情も何も見えないではないか。
『℡♗彡|Ђ』
訳の分からぬ鳴き声と共に、腕がぎゅんと伸び、それがこちらに向かってくる。
「さて、どう祓うか…」
伸びた腕が私に触れる迄の間に、まずは回避行動をコマ打ち。0.5秒前まで居た場所に呪霊の腕が突っ込んで行って、巻き起こる風と、後ろに生えた木が薙ぎ倒される音がした。
(まずは速度)
そのまま縦横様々な動きを考えつつ、私は速度を稼いでいく。
私の術式【投射呪法】は、基本的に速度こそ強さ。まず速度を稼いであげなければ、勝負にすらならない。速度なくして力なし、力なくして呪術師なし。
(左、斜め右、前!)
速度が上乗せされ、草地を踏み込む足にも力が乗ってくる。黒い背広が風を切り、変速機の値を増やしていくかのような速さが身体に与えられていく。
あちらの呪霊が攻撃を当てようと腕を伸ばした所で、そこに私は既にいない。ただ空振りの音が辺りに響くだけだ。速度勝負では明らかな勝利をもぎ取っている。これが一芸なのだから、そうそう負けては居られないが。
(ここ!)
空振り攻撃の後隙を狙って、私は駆け出す。狙いは懐に、一直線。ここまでの速度を手に入れたならば、一発与えられれば後は勝利したも同然。
しかし。
『ぐゑゑゑゑゑ……』
晒していた筈の後隙に、私の方向へ私の見ている方とは逆の片腕が向かってくるのが見えた。
(ッ、ブラフか!)
但し、そう簡単に私とて負ける訳には行かんのだ!常に、24コマ目に当たる動作には仕込みがある。重心を傾ける事で、物理法則に縛られるこの術式の中でも最大限に緊急回避の可能域を広げておいてある。
ほぼ直角方向に右へとズレ、3コマ目にはまた進行方向を前へと持っていく。
「いくら呪霊でも、女は殴りたくないんだけどなァ!!」
これは私への戒めだ。17年間、人生の半分以上にも渡って男尊女卑の塊のような家と関わっている私への。
「祓え、オラァ!!」
ぐっと呪力を込めた右ストレートが、呪霊の脇腹の辺りに突き刺さった。予め作られた動きが再生されていき、殴打の動きという点が一つ一つ繋がっていく。
「祓えオラァ!祓えオラ!祓えオラァ!!祓えオラァァァッ!!」
【投写呪法】。それは基本、己の視界をキャンバスに、24分の1秒ごとに動きを設定、再生していく。しかし、それは普通に使った場合である。
例えば。
同じ動きをひたすらに繰り返す場合はどうだろうか?頭で構成するべきは、その動き一つだけ。ループ再生のようにそれを頭の中で反復していけば、24コマという枷を飛び越え、物理法則が許す限りまで加速ができる。私の見つけた、自分の身体に貯めた速度を全て殴打に利用する技。身体の殆どに貯まっていた分の速度を殺す代わりに、この術式で最大の火力を引き出す方法だ。
「祓えオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ!!」
何処かのジョ○ョで見たラッシュ攻撃の如く、無数の拳が相手にぶつかり、衝撃を与える。打撃音が辺り一面、無数に鳴り響き、相手の身体と言える部分に凹みすら作った。
「祓えオラ!祓えオラ!はらはらはらはら……」
幾千の打撃の中、呪力と打撃がぶつかり合い、そして混ざりあったその瞬間。
空間が歪み、呪力が黒く光った。その威力は、通常の2.5乗とも言われる。
黒 閃
「祓えオラァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーッッ!!」
「やはり、この件は呪霊由来でしたね。原因の呪霊は祓いました、安心してください」
事が終わった後、携帯電話からここまで同行してくれた補助監督の方に電話をかけた。少し離れまで探索しに来た物だし、何よりも自分の無事は伝えなくてはなるまい。
「…すいません、剛義さん。さっき、そっちの方角から物凄い雄叫びが……」
「うん?」
「いや、なんか、もう。凄い、声が……」
「……あぁ。なるほど。それは…
私、これが癖なんですよ」
「……………こわ。」
・オリ主
呪術の他に魔法も使えるらしい。それを弄られては涙を流す日々
・補助監督さん
女性。この後車の中で死ぬ程気まずくなる。