マネモブに2ドル99セントをプレゼントするよ! 作:バキッバキッ我が名はーー
ごめーん書き切れなかった
倉庫から見つけ出したビデオデッキを前にして、思わずため息が漏れた。
うっすらと積もっていた灰色の埃を払い落として電源を繋ぐ。重苦しい金属音と共にカセットを差し込む。数十秒の沈黙の後、画面は砂嵐のようなノイズを吐き出し、やがてモノクロの映像が映り始めた。
画面に現れたのはスーツに身を包んだ男。
背景は真っ黒で、いかにも古いCMのセットだ。
『You are about to see the most incredible doll ever invented.
——
男は芝居がかった手つきでカメラを指差す。
『And she is the first truly intelligent doll in the world.
A little girl talk to her,POPPY gives her answers.
She is the first doll actually able to have a conversation with a child.』
少し間を置いてから、男性は笑みを浮かべる。
『Hard to believe?…just watch.』
『POPPY Playtime!!』
画面が切り替わり、子供達の明るい掛け声と共に赤い髪をツインテールにした人形が映った。
高めの女性の声で紹介されている『ポピー』とやらは紐を引っ張ると録音された声を出せる
真の知性が云々と説明してハードルをぶち上げた後にいざ見ると肩透かしを超えた肩透かし。
この時代では画期的な部類に入るはずだったが、プレイタイム社がいかなる技術を駆使しようと未来の時代を生きていた現代っ子相手にその凄さが通じることは基本ないんだ、悔しいだろうが仕方ないんだ。
……こんなもの見続けても時間の無駄っスね、忌避のない意見って奴っス
「それでも文句があるんならいつでも喧嘩上等っスよ」と続ける「ネオ・プロレスラー」の姿が脳裏に
続いて流れて来たコマーシャル(工場見学には費用が必要なんや その数…500億)をBGMにしながら、VHSと一緒に届いた手紙に手を伸ばした。
だが、その瞬間。
スピーカーから流れる陽気な音楽は不協和音へと変貌し、ノイズと共に謎のカットが映り込み始めた。
人形の頭部
床に転がる目玉
そして、巨大な花の壁画
慌てて一時停止を連打したのは仕方ない本当に仕方ない。
おそらく場所は工場の中だろうか。じっと目を凝らすと、壁画の周囲にある幾つかの小さな物体が上から垂れた紐によってぶら下がっているのが分かる。格子状の足場は花の中心…ではなく、そう見えるドアへと真っ直ぐに伸びていた。
「……」
嫌な汗が背中を伝う。
更なる情報を求めて、ペーパーナイフで手紙の封を開けた。
広げると、拙い字で何やら書いてある。
————
EVERYONE THINKS THE STAFF
DISAPPEARED 10 YEARS AGO
WER'E STILL HERE.
FIND THE FLOWER
————
手紙とVHSを送ってきた相手の目的になんとなく予想が着いた。
十中八九、かつて“プレイタイム社”の従業員だった叔父を呼び戻す為だろう。
“プレイタイム社”
先程のVTRで紹介されていた、史上初の知性を持つ人形を謳った「ポピー」を初めとして世代毎に数々のヒット商品を生み出していたらしいのだが…。
曰く、スマイリングクリッターズというグループに所属していたが、発売直後からニュースに取り上げられるほど異常な苦情が寄せられ、遂には存在そのものが消されたキャラクターがいた。
曰く、積極的に喧伝していた子供向けの工場ツアーの途中で行方不明となる子供が出た。
曰く、孤児院を経営し始めたらしいが行方の知れない子供達がいる。
曰く、曰く、曰く。
挙げ句には創立者の屋敷の敷地内から無惨な子供の遺体が見つかる……と、探せば探すだけ子供に関する後ろ暗い話題が出てくる悪名高い会社
過去形である。
知り合いの記者ップに相談したところ、10年前に従業員の大量失踪事件で世間を酷く騒がせた後は倒産したのか定かではないがめっきり見なくなったらしい。
VHSから流れるCMでしきりに見学を促されていたおもちゃ工場は、とっくの昔に閉鎖されていたのだ。
「………」
再び手紙を広げる。
さて、酔った叔父の愚痴話に必ずと言っていいほど登場するフルコンタクトクソ会社が、今更閉鎖した工場に叔父を呼び出して何をするつもりだろうか。
ホワンホワンホワーン
「はうっ」(叔父貴バリバリ文字)
「さっさとテーザー銃でしとめればよかったぜ」(プレイタイム社のコメント)
…でしょうね(未来予知書き文字)
それか潰れず細々と続いてはいるものの、人手不足の為元従業員に片っ端から送りつけているのか。
正直に言えば、こんな気持ち悪い物なんて「はいっ見る価値のないクズ確定ブッ廃棄します」したいのが本音だ。だが身内宛に届いた荷物を勝手に捨てるのも憚られる。
だからこそ自分がやれるのは、叔父が仕事から帰って来たら手紙を見せ、言葉の限りを尽くし行かないよう言い含めることだけだ。
怒らないでくださいね、落ち目のパワハラクソ会社に元社員だったとはいえ今は家庭もある叔父貴を行かせるようなことする訳ないじゃないですか。
でもこのお変クセットムカつくなぁ。殴りてぇなぁ…ぶっ廃棄してやりてぇなぁ
…
……
……よし 疲れたし企画を変更して眠ろう。休日=神 いつ寝ても許されるんや
「オヤスミーッ」と声を挙げ、ふかふかのソファに身を預けた。
◇◇◇
頬を刺すような冷たさと鼻を突く湿った臭いで意識が浮上する。
重い瞼を押し上げると、視界に飛び込んできたのはひび割れたカラフルなタイルの床だった。
「なにっ」
状況を確かめる為、強張った身体を無理矢理起こすと風圧で埃が舞った。硬い床に寝転んでいた上にいきなり動かしたからか身体が拒絶反応を起こし、痛みに思わず顔を顰める。辺りを見渡せば、ところどころ塗装が剥げている柱が目に入った。プレイタイム社について調べた際に出てきた「ハギーワギー」に似たキャラクターが描かれている壁にはかすれた文字で『Welcome』と記され、上の窓から差し込む月光に青白く照らされていた。
…出口はすぐ後ろにあった。思い切り引っ張ったものの手応えはなく、重厚な扉は固く閉ざされている。
気付けば、半ば無意識に自分の腕をさすっていた。
何故自分がここにいるのか、直前の記憶が霧に包まれたように曖昧だ。今すぐにでも「うえーっ こ…怖いよーっ」と蹲りたい気分だが、なんとか耐えた。転生者だったから耐えられたがゲンチ・ミンだったら耐えられずぶ…無様すぎる醜態を晒していただろう。
そしてマネモブは「奥の手」を使うべく目を瞑った。
良い子の皆は家族宛の荷物を勝手に見るなよ
まずいことになる可能性は60%もあるんだからな
マネモブの性別って…まさか…
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普通に男よね
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もちろん女 極限まで女
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マネキン・モブに性別などあるか?
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結果だけ見て去る…ワシ師匠だ
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別にィ…犬はとっとと更新しろよ