今日は第1層攻略会議のために僕とフィリアは円形劇場に来ていた。そこには40人近くのプレイヤーがおり、その中にはキリトさんやルナさん、レインさんもいた。キリトさんの隣には赤いフードを被った女の人がいた。キリトさんの新しい攻略仲間かな。
ランマル「ルナさん、レインさん。お久しぶりです。」
ルナ「久しぶりだね。ランマル、フィリア。」
レイン「ランマルさん、フィリアちゃん、プリヴィエート。」
ランマル「プリヴィエート?」
フィリア「日本語でこんにちわって意味だよ。」
ランマル「そうだったんですか。すいません、外国語に疎くて。」
レイン「こちらこそごめんなさい、つい母国語が出ちゃうんです。」
ランマル「いえいえ、大丈夫ですよ。後、ランマルくんって呼んでも大丈夫ですよ。」
レイン「わかりました、ランマルくん。」
僕はルナさんの隣に座り、フィリアはレインさんの隣に座る。
僕たちが座ると舞台の中心に青髪のイケメンがあがる。
ディアベル「はーい、そろそろ始めさせてもらいまーす。みんな、オレの呼びかけに応じてくれてありがとう。オレはディアベル。職業は、気持ち的に【ナイト】やってます!」
僕はそれを聞いて笑いそうになる。とりあえずディアベルさんが攻略組を引っ張る勇者様になると、僕は認識した。
ディアベル「今日、オレたちのパーティーが迷宮区の最上階でボス部屋を発見した。オレたちはボスを倒し、第二層に到達してこのデスゲームもいつかきっとクリアできるってはじまりの街のみんなに伝えなくちゃならない!それが今この場所にいるオレたち全員の責務なんだ!」
さすがディアベルさん、この人にならついて行きたいと思える。
ディアベル「それじゃ、さっそくだけど攻略会議を始めたいと思う。」
???「ちょお待てっんか!」
突然、トゲトゲ頭のおじさんが降りてきて舞台にあがる。
???「わいはキバオウってもんや。ボスと戦う前に言わしてもらいたいことがある。こん中に、今まで死んでいった2000人のプレイヤーにワビぃ入れんなあかん奴らがおるはずや。」
フィリア「え、もう2000人も……この先大丈夫かな……」
ランマル「僕がついてるから、心配しないで。」
フィリア「うん。」
ディアベル「キバオウさん、君の言う【奴ら】とはつまり……元ベータテスターの人たちのことかな?」
キバオウ「決まってるやないか!ベータ上がり共はなぁ、こんクソゲームが始まったその日にビギナーを見捨てて消えよった。奴らはウマい狩場やらボロいクエストを独り占めして、ジブンらだけぽんぽん強うなってその後もずっと知らんぷりや。こん中におるはずやで!ベータ上がりの奴らが!そいつらに土下座さして、貯め込んだ金やアイテムを差し出してもらわな共同戦線なんて、夢のまた夢や!」
ひどい……僕はキバオウって人には絶対ついて行きたくない。
隣のルナさんは……無表情で見ていた。その時の目はとても冷たいものだった。まるで嫉妬している人を見ているかのように。
ルナさんから視線を外すと、舞台に褐色肌の大男があがる。
エギル「オレの名前はエギルだ。あんたの言いたいことはつまり……元テスターが面倒を見なかったからビギナーがたくさん死んだ。その責任を取って謝罪と賠償をしろ。ということだな?」
キバオウ「そ、そうや。」
エギル「このモンスターの情報が載ったガイドブック、あんたも貰ったんだろ。道具屋で無料配布してるからな。」
キバオウ「もろたで、それが何や。」
エギル「配布していたのは元ベータテスターたちだ。しかし死んでいった2000人も元ベータテスターたちだ。その失敗を踏まえて、どうボスに挑むべきなのか、それがこの会議で討論されるとオレは思ってるんだがな。」
ディアベル「エギルさんの言う通り、今は前を見るべきだ。たとえ元テスターでも、いや、だからこそその戦力はボス攻略に必要なものなんだ。みんな、それぞれは思うところはあるだろうけど、今だけはこの第1層を攻略するために力を合わせてほしい。」
キバオウ「……ふん!ええわ、ここはあんさんに従うといたる。いずれ、白黒つけさしてもらうけどな!」
キバオウは舞台から降りる。僕は思わず、ホッと胸を撫で下ろす。
エギル「会議を中断して、すまなかったな。続けてくれナイトさん。」
ディアベル「ありがとう。エギルさん。よし、じゃあ攻略会議を再開しよう。まずはボスの情報だが、実は先ほどガイドブックの最新版が配布された。それによるとボスの名前はイルファング・ザ・コボルドロード。それと……」
ディアベルさんはボスの攻略方法とメンバーの振り分けを説明する。そして最後に明日、トールバーナの中央部の噴水前に集合ということを告げると攻略会議はお開きになった。
僕たちは舞台から降りたディアベルさんに声を掛ける。
ランマル「さすがです。ディアベルさん。乱入者が居ても、その人の話を聞いて、なおかつ会議をしっかり進める。頼りになります。」
ディアベル「いや、誰かが、場をしっかり進めなきゃいけないんだよ。オレは当たり前のことをしただけだよ。」
ランマル「僕はそれをできる自信がないので、すごいと思いました。」
ディアベル「ありがとう。明日のボス攻略、がんばろうな。」
ランマル「はい!」
ディアベル「ところで……攻略直前で悪いんだが、君たちを見込んで、頼みたいことがあるんだ。」
ランマル「なんでしょうか。」
ディアベル「あれを聞いて、何人かのメンバーが手持ちの武器に不安があるって申告してきたんだ。みんな、レベルは十分に高いんだけどな。そこで手が空いているメンバーには武器素材の調達を頼んで回っているんだ。」
ルナ「ボス攻略ですからね。準備はどれだけ念入りにしても、しすぎってことはないですから。」
ディアベル「それにボス攻略に自信が持てるぐらいしっかりした武器なら第二層でも十分に通用するからね。そういう訳で君たちにはホルンカの森のスレート・ボアが落とす武器素材を入手してもらいたい。」
ランマル「はい!」
ディアベル「いい返事だ。目的の素材である溶けかけた金属片は5個ぐらいあれば十分だ。」
ランマル「わかりました。フィリア、ルナさん、レインさん。行きましょう!」
ルナ「わかった。」
フィリア「了解。」
レイン「うん。」
僕たちはホルンカの森に向かう。
ディアベル「ご苦労さま!みんなのおかげで素材がそろったよ。これで準備は完璧だな。」
ランマル「ディアベルさんのお役に立てて、うれしいです。」
ディアベル「ランマルさんとフィリアさんとレインさん。疲れているところ、悪いけど、あと一つ頼みたいことがあるんだ。」
ランマル「なんでしょうか?」
ディアベル「集めた素材を町の宿にいるみんなに届けてくれないか?」
ランマル・フィリア・レイン「「「わかりました。」」」
ディアベル「ルナさんはここに残ってくれ。明日のことで、ちょっと相談があってね。」
ランマル「わ、わかりました。」
僕たちはルナさんを置いて町へ向かう。
ルナSide
ディアベル「さて……ルナさん。君にひとつ聞きたいことがある。」
ルナ「何ですか。もしかして……ベータテスターの話ですか?」
ディアベル「そうだ。君は元ベータテスターだな?」
ルナ「どこでそれを知ったのですか?」
ディアベル「情報源は明かせない。と、言いたいが、種も仕掛けもないよ。実は俺も元ベータテスターなんだ。ベータテスト中に君と同じ装備の少年を見たことがあるんだ。」
ルナ「そういうことですか。」
ディアベル「これはここだけの話にしてくれ。」
ルナ「わかりました。」
ディアベル「ありがとう。当時のオレは名前も、見た目も、プレイスタイルも違う。だけど……第二層より上の景色を見てきた。それが……オレなんだよ。攻略会議でキバオウが話したことは正しいよ。デスゲームが始まったとき、オレは……本当なら、他のみんなを助けるべきだった。モンスターとの戦い方も、儲けの大きいクエストも知っていたんだからな。でもオレは、1万人全員の命を守りきれない。誰か一人を助けている間に他の誰かが死んでしまうかもしれない。その時オレは、失った命に責任を持てるのか?……そう思ったら言えなかった。オレを元テスターだとは知らない仲間たちに『オレは勘がいいから』と嘘をついてうまくレベルが上がるように、誘導することしか……」
ルナ「……俺も同じ気持ちです。もっと勇気を持って周りの人に手を差し伸べることができていたら……その分、ディアベルさんは攻略組のまとめ役をしているから……俺より遥かに人助けができていますよ。」
ディアベル「そう言ってもらえるのはありがたいよ。だけど、仲間を騙していたことには変わりない。そして今は、あの時に手を差し出せなかった……この世界に残っているプレイヤー全員を騙そうとしてるんだ。だがオレはこの世界に必要なことをしている。そう、信じてるんだ。バラバラに戦っているトッププレイヤーをまとめ上げ、この層を、そして次の層を……いつか第百層を突破するリーダーになる。」
ルナ「全部の層を突破して、リーダーの役割を終えたらどうしますか?」
ディアベル「……え?全部って、百層の攻略を終えたらってことかい?」
ルナ「そうです。何かしたいことはありますか?」
ディアベル「それはずいぶんと先の話だろうな。だけど……そうだな。実はさ……ナイトだなんて自称してるけど、オレの名前、ディアベルはイタリア語の方言で《悪魔》って意味なんだ。名前に合うアバターを時間をかけて選んで、攻略会議にいたエギルさんよりもずっとおっかない、厳つい顔にしてんたんだぜ。それがオレの《SAO》における真の姿……って訳だ。全部終わったら、青髪のナイトとは全然違うディアベルにふさわしい見た目のキャラを作って暴れまわってやるさ。」
ルナ「その時は一緒に暴れましょう。きっと楽しいですよ。」
ディアベル「ははは。そりゃいいな!クリア後のご褒美だと思って楽しみにしてるよ。さて、明日からのオレはまた青髪のナイトだ。第百層までついてきてくれ!……なんてな。オレの話はこれで終わりだ。聞いてくれてありがとう。」
ルナ「こちらこそ、面白い話でしたよ。」
俺とディアベルが話を終えると、向こうからランマルたちが戻ってくる。
ランマル「ディアベルさん!全員に配り終わりました。みんな、やる気十分でした。」
ディアベル「手間をかけさせて、悪かったね。こっちの話もちょうど終わったところだ。」
こうして第一層攻略戦の準備が進んでいく。
ここからは命をかけた本当の戦いだ。気を引き締めよう。