新・超A級小姓 アインクラッドを往く   作:渚カエデ

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いよいよ第1層攻略戦が始まります。


第4話 第1層フロアボス討伐戦

ランマル視点

 

 

 

2022年12月3日の夜。

僕とフィリア、ルナさん、レインさんは同じ宿屋に泊まることにした。

部屋分けは僕とルナさん、フィリアとレインさんという組み合わせになった。

まあ、ルナさんはあの見た目だけど内面は普通に男の人だと思うから、人見知りなレインさんとルナさんを同室にするのは良くないと思ったからね。

そんな訳だけどやっぱり幼なじみだからか、部屋分け終了から2時間後、フィリアは自身の部屋に僕を連れ込んで散々愚痴をこぼしてくる。

現実に戻れなくなったこと、異性が苦手な彼女が、頼まれたとはいえ街の男の人たちに素材を渡すミッションを受けてしまったことなど……

隣で座っていたレインさんはその様子を苦笑いしながら見ている。

フィリア「まったく……わざわざ異性避けのために髪染めたのになんでこんなに沢山、男の人と関わらなくちゃいけないの!?」

ランマル「まあまあ……一応僕も男の人、少し苦手だけどね。」

レイン「そうなんだ……私も男の人……というより人自体が少し苦手かも……」

フィリア「そうだよね。私もレインさんの気持ちわかるよ。」

ランマル「僕はこの見た目だから、男子の生徒に告白されたことも数回あるからね。僕の恋愛対象は女の子なのに……」

レイン「……君も大変だね。ランマルくん。」

ランマル「でもルナさんは別かな……容姿が女性的なところもそうだけど……なんというか、紳士的なオーラが感じられるんだよね。」

レイン「わかるよ。ルナくんは変なことしなさそうだし、なんか守ってくれそうな安心感を感じるよね。」

フィリア「確かに。ルナはいい人そうだし、男という感じがあんまりないよね。だから私はルナとパーティー組むのはいいと思ったよ。」

ランマル「良かった。という訳でそろそろ寝よう。明日は最初のボス戦だし、しっかり寝て生き残れるようにしよ!」

フィリア「そうだね。じゃあおやすみ。明日は頑張ろう。」

ランマル「おやすみなさい、フィリア、レインさん。」

レイン「おやすみなさい、ランマルくん。」

僕は自室に戻って就寝した。

 

 

 

翌朝、僕たちはトールバーナの広場に来ていた。もちろん理由はボス戦のパーティーに参加するためだ。

広場には既にたくさんのプレイヤーが集まっていた。

ざっと40数人は居るかな。

広場を歩いているとピンク髪の剣士に声をかけられた。

???「あ、キミもレイド戦に参加しに来たんだね。」

ランマル「はい。」

???「そうなんだ。ボクはアストルフォ。剣士やってま〜す。」

ランマル「アストルフォさんですか。僕はランマルです。カタナ使いをやっています。」

アストルフォ「カタナ使いか……いいね!渋くてカッコいい!」

ランマル「アストルフォさんもカッコいいですよ。」

アストルフォ「でしょでしょ。ボクは可愛さとカッコよさを両立させた剣士目指してるから。」

ランマル「そうなんですか。僕も立派なカタナ使いになれるように頑張ります!」

アストルフォ「そうだね!僕たち、互いに頑張ろう!」

ランマル「はい!」

僕はアストルフォさんとの話を終えると、先に進んでいたフィリアたちと合流する。

フィリア「ランマル。誰と話してたの?」

ランマル「アストルフォって人。剣士らしいよ。」

フィリア「そうなんだ。」

ランマル「うん。ちょっと遅れてごめん。」

フィリア「大丈夫だよ。まだディアベルさん来てなさそうだし。」

ランマル「良かった。」

フィリア「でも……次の大事な会議とかに遅れたら許さないからね。」

ランマル「わかったよ。フィリア」

それにしてもアストルフォさん……見た目も中身も陽キャという感じだな。僕はそこまで陽キャじゃないけど仲良くなれたらいいな。同類(男の娘)っぽいし。

そんなことを考えていると、われらがナイト。ディアベルさんがやってきた。

ディアベル「みんな、いきなりだけどありがとう!たった今、全パーティー44人が、1人も欠けずに集まった!!」

ディアベルさんが発言した直後、広場が歓声に包まれた。それに続いて滝のような拍手があがる。

僕たちも彼らに合わせて拍手をする。

一同を笑顔で見回してから、ディアベルさんは右拳を突き出し、更に叫んだ。

ディアベル「今だから言うけど、オレ、実は1人でも欠けたら今日は作戦を中止にしようと思ってた!でも……そんな心配、みんなへの侮辱だったな!オレ、すげー嬉しいよ……こんな、最高のレイドが組めて……。まあ、人数は上限にちょっと足りないけどさ!」

笑う人、口笛を吹き鳴らす人、同じように右手を突き出す人。

レイドメンバーのテンションは今、最高潮に達した。

僕の隣にいる3人はあまりのテンションにタジタジだったけど……

フィリア「ランマル、テンション上がりすぎだよ。」

ランマル「えー。だってデスゲームに高いリーダーシップを持つ勇者様が現れたんだよ。テンション上がっちゃうのも仕方ないじゃん。」

フィリア「……そういうところは意外と年相応なのね。」

フィリアは少し苦笑い気味だった。

その一方、ルナさんは冷静な表情でディアベルさんを見ていた。

まあ、レイドメンバーのほとんどがこんなテンションになっていると、ダンジョン内やボス戦で調子にのっちゃってピンチになる人も出ると思うから、こういう時はルナさんみたいな冷静な人も必要だよね。

みんながひとしきり(わめ)いたところで、ディアベルさんはようやく両手を掲げて歓声を抑えた。

ディアベル「みんな……もう、オレから言うことはたった一つだ!」

右手を左腰に走らせ、銀色の長剣を音高く抜きはなち彼は言う。

ディアベル「……勝とうぜ!!」

彼からのメッセージを聞いたパーティーメンバーの歓声は、今日聞いた音の中で1番大きく感じた。

 

 

 

僕らレイドパーティーは今、迷宮区に向かっているはずなのに、メンバー各人の雰囲気はまるで遠足に参加している学生のようだった。まあ……時々左右の森からモンスターが襲ってくるけど、今回のレイドパーティーのメンバーは皆、腕自慢の精鋭たちだ。モンスターはあっさり蹴散らされていく。

でも迷宮区のモンスター……特に今回のボス【イルファング・ザ・コボルドロード】との戦いでは、今のような浮かれたテンションでは危険だろう。

僕たち4人は浮かれることなく、改めて気を引き締めることにした。

 

 

 

12月4日の午前11時、迷宮区に到着。

その1時間半後に僕たちは迷宮区タワーの最上階まで到達した。

途中、長槍(スピア)斧槍(ハルバード)といった長モノ装備者が大半を占めるF隊とG隊が、通路の横道から奇襲をかけてくる片手剣持ちのコボルドに襲われることはあったが、奇跡的に他の部隊含めて死者はゼロだった。

しかし、このSAOでは混戦中に武器が他プレイヤーに当たっても、ダメージはないし、犯罪者(オレンジ)になることもないが、障害物接触扱いで通常攻撃もソードスキルも停止してしまう。

長モノ装備者は片手剣装備者などと比べて、他プレイヤーへの接触リスクが高い分、近接タイプのモンスターから奇襲されるとパーティー全体がピンチになりやすい。

しかし、今は有能なリーダーであるディアベルさんがついている。彼は的確にメンバーへ指示を出し、モンスターへの攻撃を部隊のリーダー1人に任せることで、メンバー同士の接触による攻撃中断をなくしている。

少しリスクはあるけど、いい采配だと思う。僕もいつかディアベルさんみたいな有能な指揮官になりたいな。

 

 

 

道中の壁には、恐ろしげな獣頭(じゅうとう)人身の怪物がレリーフされている。その怪物……コボルドは他のMMOだと雑魚中の雑魚だったけど、ここSAOでは侮りがたい強敵だ。その理由はコボルドの剣技にある。

コボルドは剣や斧など様々な武器を使いこなし、ソードスキルまで使うモンスター種だ。

通常攻撃を遥かに上回るスピード、威力、そして命中補正を付与された【剣技(ソードスキル)】は、たとえ最初等技でも無防備状態でクリティカルに喰らうとHPゲージのほとんどを削られる。

ランマル「ルナさん、レインさん、フィリア、聞いてくれますか?」

フィリア「何?」

ルナ「どうしたの?ランマル」

ランマル「【イルファング・ザ・コボルドロード】の取り巻き【ルインコボルド・センチネル】は、雑魚敵ながら充分に強敵です。頭と胴体のほとんどを金属鎧でがっちり防御していて、簡単に倒せるようなモンスターではありません。」

ルナ「鎧が空いている喉元を狙えば、簡単だと思うよ。」

ランマル「はい。今、この4人の中で1番俊敏な僕が喉元を狙うので、ルナさん、レインさん、フィリアは奴の武器を跳ね上げさせてください。その隙に僕が攻撃します。大丈夫そうですか?」

ルナ「大丈夫だよ。」

フィリア「うん。」

レイン「いいよ。ランマルくん、頑張ってね。」

ランマル「はい!」

僕がボスの取り巻きモンスターに対する戦法を話し終えると、そこはボス部屋の前だった。

扉の前には7つのレイドパーティーが綺麗に並んでいる。

ディアベルさんは銀の長剣を高々と掲げると、大きく一度頷く。他のメンバーも同じように、それぞれの武器をかざし、頷き返す。

彼は左手を大扉の中央に当てて

ディアベル「行くぞ!」

短くひと言だけ叫び、思い切り押し開ける。

 

 

 

 

ボス部屋はかなり広かった。ここは奥に向かって延びる長方形の空間だ。左右の幅はおよそ20メートル、扉から奥まで100メートルかな。

ここ、アインクラッドのボス部屋は戦闘が開始されても大扉は閉まらない。敗色濃厚となった場合、全滅を待たずに逃走することも可能だ。

しかし、ボスに背中を向けて走ると、後ろから長射程ソードスキルを喰らって行動遅延(デイレイ)、最悪の場合、行動不能(スタン)になる可能性が高くなる。

という訳で後ろに下がるときには、体をボスに向けたまま後退するほうがいいが、その状況になるとこの100メートルがとてつもなく長く感じる。瞬間的なテレポートができる【転移結晶】を使えば楽かもしれないけど結晶はかなり高価で、そんなホイホイ使えるような代物ではない。

そんなことを考えてると、暗闇に沈んでいたボス部屋の左右に飾られている松明(たいまつ)がボッと音を立てて燃え上がる。松明が灯す明かりは次々と奥に向かって延びていく。

最深部に設けられた、粗暴かつ巨大な玉座に座っている何者かのシルエットも剥がされる。そこにいたのはもちろん……この層のボス【イルファング・ザ・コボルドロード】だ。

ディアベルさんは高く掲げたままの長剣を、さっと前に振り下ろす。それを合図に、総勢44名からなるボスモンスター攻略部隊は盛大な(とき)の声を上げつつ一気に大部屋へと雪崩込んだ。

 

 

 

まず最前列で突進したのは、鉄板じみたヒーターシールドを掲げる戦槌(ハンマー)使いと、彼に率いられるA隊だ。その左斜め後方を、斧使いのエギルさんらが率いるB隊が追う。右には、ディアベルさんと彼の仲間5人によるC隊と、長身の両手剣使いがリーダーの僕らD隊。更に後方を、キバオウ率いる遊撃(ゆうげき)用E隊、長柄武器(ポールアーム)装備のF隊、G隊が3パーティーで並走する。そして後ろにはキリトさんと赤いフードの女の人がいた。

A隊リーダーと玉座との距離が20メートルを切ると、それまで微動だにしなかったコボルドロードが猛然と跳んだ。空中でぐるりと一回転し、地響きとともに着地。オオカミを思わせる顎をいっぱいに開き、吠える。

コボルドロード「グルルラアアアアッ!!」

獣人の王【イルファング・ザ・コボルドロード】は青灰色の毛皮をまとった、2メートルを軽く超えるたくましい体軀(たいく)で、血に飢えた赤金色に爛々(らんらん)と輝く隻眼(せきがん)。右手に骨を削って作った斧、左手には革を貼り合わせたバックラーを携え、腰の後ろには差し渡し1メートル半をあろうという湾刀(タルワール)を差している。

まさに最初のボスにふさわしい外見だ。

そんなコボルドロードは、右手の骨斧(こつぷ)を高々と振りかざすと、A隊リーダーに向けて力任せに叩きつける。分厚いヒーターシールドがそれを受け止め、眩いライトエフェクトと強烈な衝撃音が広間を揺らす。

その音が合図だったかのように、左右の壁の高い所にいくつも開いた穴から、3匹の重武装モンスター【ルインコボルド・センチネル】らが飛び降りてくる。

キバオウ率いるE隊と、それを支援するG隊が3匹に飛びかかる。

こうして、12月4日午後12時40分、ついに最初の対ボスモンスター戦闘が開始された。

【イルファング】のHPゲージは4段。3段目までは右手の斧と左手の盾を武器に戦うが、4段目に突入するとそれらを捨て、腰のタルワールを抜く。そこで攻撃パターンががらっと変わるのが最大の難関だけど、アルゴさんの攻略本にはその要素もしっかり載っていた。

最初の骨斧はもちろん、タルワールに切り替わってから放たれるソードスキルの種類と対処法は昨日の会議できっちり確認済みだ。

僕たちD隊は【スイッチ】を駆使して、攻撃担当を交代しながらセンチネルやコボルドロードにダメージを与えていく。

今のところ、パーティー全体の平均HP残量も8割あたりで安定している。僕はこのまま全員無事で終わるように祈った。

 

 

 

コボルドロードの最初のHPゲージが消える。残りはあと3つ。最前列でディアベルさんが「2本目!」と叫び、壁の穴から追加の【センチネル】が飛び降りてくる。

後ろではキリトさんと赤フードの人が次々とセンチネルを蹴散らしていく。

すごい……流れるようにセンチネルと戦って撃破する所は、まるでアクション物の映画を見ているようで爽快感を感じる。

僕も彼らみたいに頑張らないと。

途中からキバオウがキリトさんに何かを言っているようだが、好きになれない人物であるキバオウの発言を今、頭に入れるのはストレスの元だ。無視するしかない。

 

 

 

しばらくすると、ついにボスの長大な4段HPゲージが最後の1本に突入する。

3本目のゲージを削ったポールウェポン部隊のF・G隊が後退し、代わりに全回復を終えたC隊がボスに向かって突進していく。

コボルドロード「ウグルゥオオオオオオオーー!」

【イルファング・ザ・コボルドロード】がひときわ猛々(たけだけ)しい雄叫びを放つ。同時に壁の穴から最後の【ルインコボルド・センチネル】が3匹飛び出してくる。

事前情報どおり、コボルドロードは骨斧と革盾を同時に投げ捨てる。そして背中から巨大な湾刀(タルワール)を抜く……と僕は思っていた。

しかし、コボルドロードが抜いたのは……なんと細長い野太刀だった。

キリト「だ……ダメだ、下がれ!!全力で後ろに跳べーーッ!!」

キリトさんが叫ぶ。だが、その声はボスが始動させたソードスキルのサウンドエフェクトにかき消される。

ヤツは床を揺るがせながら、垂直に跳ぶ。空中で体をギリリと捻り、武器に威力を溜める。落下と同時に蓄積されたパワーが、深紅の輝きに形を変えて竜巻の如く放たれる。

コボルドロードのソードスキルによって、僕の視界左に表示されるディアベルさんたちC隊のHP平均値ゲージが、一気に5割を下回ってイエローに染まる。

フィリア「なんなのよ!あのソードスキル!」

ランマル「わからないけど、とりあえずボスが跳ねたら、そいつの落下予測地点から離れて!」

フィリアの叫びに答える。僕だってこれは想定外だ。

あの技は一撃でHPを半分以上持っていく。絶対に喰らったらダメだ。しかも技を喰らったC隊メンバーは全員スタンしてしまった。

誰かが助けに行かないと……しかしここにいる人たちは僕含め、誰も動こうとはしなかった。

事前に綿密(めんみつ)極まる作戦会議をしていたこと。ここまで楽勝ムードが続いていたこと。そして、頼るべきリーダーのディアベルさんが一撃で打ち倒されてしまったこと。

それらの理由が合わさって、C隊以外の全員の体を縛った。

奇妙な静寂のなか、コボルドロードが超大技を出した後の長めの硬直から回復してしまった。

コボルドロード「ウグルオッ!!」

獣人王が吠え、両手で握った野太刀を床すれすれの軌道から高く斬り上げる。狙われたのは……正面に倒れたディアベルさんだ。

薄赤い光の円弧(アーク)に引っかけられたかのように、銀色の金属鎧を着込んだ体が高く宙に浮く。ダメージはそれほど大きくはなかったようだが、コボルドロードの動きは未だに止まらない。

狼に似た巨大な口が、ニヤリと獰猛(どうもう)に笑う。

ディアベルさんは空中で長剣を振りかぶり、反撃のソードスキルを撃とうとした。しかし彼の剣はエフェクトを纏わず、ただ空しく宙で踊るだけだった。

レイン「ルナくん、どうしてディアベルさんのソードスキルが発動しないの?」

ルナ「あの動きはソードスキルの開始モーションには今のところ、存在しない。多分、ディアベルは空中で使えるソードスキルを持ってないようだ。」

そうなんだ……ってコボルドロードがまたソードスキルを使おうとしているよ。

ヤツは空中で剣を振り回しているディアベルさんを目にも止まらない早さで、上から下へと切り裂く。そして最後に一拍(いっぱく)溜めての突き。

騎士(ディアベルさん)の体は三連続の攻撃を喰らって、20メートル近くも吹き飛ばされる。

彼のHPゲージは既に全体が真っ赤に染まり、右端から急速に減り始めていた。

ディアベルさんが吹き飛ばされた場所の近くに居たキリトさんが彼に駆け寄る。僕も彼の元へ駆けつけたいが、今はそんな余裕がない。

少しするとディアベルさんのHPゲージはゼロになり、彼の体は青いガラスの欠片となり、そのまま四散した

 

 

 

「うわああああ!」

ボス部屋に叫び声と悲鳴が響く。

レイドメンバーのほぼ全員が、己の武器を(すが)るように握りしめ、両眼を見開いている。

ボスモンスターが事前情報と違う武器とスキルを使う上に、リーダーが真っ先に死亡したことで攻略隊は一気に混乱の渦に包み込まれた。

フィリア「ランマル、ルナ、レイン!早く逃げよ!」

ルナ「無理だ!出口に向かって走ると後ろからソードスキルを喰らう!後ろへ後退してもヤツのまだ隠されているスキルで攻撃されて、じわじわとHPを削られるかもしれないぞ!」

フィリア「じゃあどうすればいいのよ!」

ルナ「俺も考えてる!とりあえず防御しながらヤツとの距離を取れ!」

フィリア「わかったわよ!」

僕らはルナさんの指示に従って、獣人王との距離を取る。

近くではキバオウが膝をついている。

キバオウ「……何で……何でや……。ディアベルはん、リーダーのあんたが、何で最初に……。」

コボルドロードの猛攻が続く中、項垂れていたキバオウをキリトさんが掴み、無理矢理引っ張り上げる。

キリト「へたってる場合か!」

キバオウ「……な……なんやと?」

キリト「E隊リーダーのあんたが腑抜けてたら、仲間が死ぬぞ!いいか、センチネルはまだ追加で湧く可能性が……いや、きっと湧く。そいつらの処理はあんたがするんだ!」

キバオウ「……なら、ジブンはどうすんねん。1人とっとと逃げようちゅうんか!?」

キリト「そんな訳あるか。決まってるだろ……」

キリトさんは右手のアニールブレードをがしゃりと鳴らし、キバオウに言う。

キリト「ボスのLA(ラストアタック)取りに行くんだよ」

 

 

 

キリトさんはボスに向かって走り出す。その横に赤フードの女性が並走する。

ボスと至近距離で戦う前衛部隊の平均HPは全て半分を下回っており、リーダーを失ったC隊に至っては2割を切っていた。完全に恐慌して逃げ惑うだけのプレイヤーもおり、このままでは数十秒のうちに隊列が崩壊する。2人はそれを防ぐために前に出たようだ。

そんな中、赤フードの女性はツード付きケープを邪魔そうに掴み、一気に体から引き剥がす。

ついにベールを脱いだ彼女の素顔は、栗色のロングヘアをはためかす美女だった。

長い髪をなびかせて疾駆する彼女は、まるで闇の底に突如現れた一筋の流星のようだった。これには恐慌の極みに落ちていたプレイヤーたちすら、彼女の美しさに眼を奪われて沈黙していた。

その静寂を逃すかといわんばかりに、キリトさんは大声で叫ぶ。

キリト「全員、出口方向に10歩下がれ!ボスを囲まなければ、範囲攻撃は来ない!!」

その言葉で冷静さを取り戻したプレイヤーたちは、彼の言う通り、後方に下がる。

それとすれ違いにキリトさんと栗色の彼女はボスに向かって突撃する。

キリト「アスナ、手順はセンチネルと同じだ!……行くぞ!!」

アスナ「解った!」

彼らの前方では、コボルドロードが両手で握っていた野太刀から左手を離し、左の腰だめに構えようとしている。

させるかといわんばかりにキリトさんはソードスキルを始動させる。

右手の剣をヤツと同じく左腰に据え、体を転倒寸前まで前に倒す。

キリトさんは地を這うような低さから、右足を全力で踏み切る。全身が薄青い光に包まれ、ボスとの距離10メートルを瞬時に駆け抜ける。

あれは片手剣基本突進技【レイジスパイク】だ。

同時にボスが構えた野太刀がぎらりと緑色に輝き、視認不可能な速度で斬り払われる。

キリト「う……おおッ!!」

ヤツの咆哮とともに、キリトさんが左から突き上げた剣の軌道と、イルファングの野太刀の軌道が交差する。

甲高い金属音とともに大量の火花が弾け、1人と1体は互いの剣技を相殺させて2メートル以上もノックバックする。

その隙を栗色の彼女……いや、アスナさんが見事に捉える。

アスナ「セアアッ!!」

短く鋭い気勢に乗せて放たれたレイピア基本技【リニアー】は、獣人王の右腹を深々と打ち抜いた。ヤツの4段目のHPゲージが、わずかに、しかし確かな幅で減少する。

キリト「……次、来るぞ!」

技後硬直(ポストモーション)から回復したキリトさんが叫ぶ。

イルファングの刃が、くるりと半円を描いて動き、真下に回る。ソードスキルを使おうとしたキリトさんは剣を引き戻したが、剣でのガードも衝撃を完全に吸収できなかったことで、彼の動きは止まる。

アスナ「あっ……!!」

アスナさんが小さく叫んだ時には、キリトさんの真下から跳ね上がってきた野太刀が、彼の体を正面から捉えていた。

彼は野太刀による攻撃でそのまま吹き飛ばされてしまう。幸い、膝を突きながらも彼はなんとか戦えそうだ。

彼と入れ違いにアスナさんが突っ込む。獣人王はそれに対して、ディアベルさんを殺したあの三連撃技で迎撃しようとしていた。

エギル「ぬ……おおおッ!!」

ソードスキルを使おうとしていたイルファングに、巨大な両手斧が緑色の光芒(こうぼう)を引きながら撃ち込まれる。あれは……両手斧系ソードスキル【ワールウインド】

野太刀の初撃と、旋風のように回転する両手斧が激突する。それはボス部屋全体が震えるほどのインパクトを起こし、さすがの獣人王も大きく後方にノックバックする。

しかし攻撃者は両足を踏ん張り、1メートルほど下がっただけで留まる。

その攻撃者は……褐色の肌と魁偉(かいい)な容貌を持つB隊リーダー、エギルさんだった。

エギルさんは床にひざまずいたままのキリトさんを肩越しに見ながら、声をかける。

エギル「あんたがPOT飲み終えるまで、俺たちが支える。ダメージディーラーにいつまでも(タンク)やられちゃ、立場ないからな」

キリト「……すまん、頼む」

キリトさんはPOTもとい回復ポーションを飲む。

前進してきたのはエギルさんだけではなく、彼の仲間たるB隊をメインに数名、傷が浅かった人たちが回復を終えて復帰したのだ。

ランマル「ルナさん、レインさん、フィリア!回復ポーションを飲みましょう!飲み終えたらB隊に続いて前進しましょう!!」

フィリア「わかった!」

ルナ・レイン「「了解!」」

僕らも回復を終え、その中に混ざる。

キリト「ボスを後ろまで囲むと全方位攻撃が来るぞ!技の軌道は俺が言うから、正面の奴が受けてくれ!無理にソードスキルで相殺しなくても、盾や武器できっちり守れば大ダメージは食わない!」

「「おう!!」」

野太く響いた男たちの声に、気のせいか苛立ちの混じるコボルドロードの雄叫びが重なる。

キバオウ率いるE隊と、ポールアーム装備のG隊が、4匹のルインコボルド・センチネルを相手に戦う。

前方と後方のあいだでは、C隊の生存者を始めとする深手を負ったレイドメンバーたちがポーションを飲んで回復待ちをしていた。【回復結晶(ヒーリング・クリスタル)】があれば回復待ちの時間が無くなるけど、今は誰も持っていないようだ。

僕たちは彼らが復帰するまでの時間稼ぎを担う。

回復から戻ってきたキリトさんは、ボスの動きを読みながら「右水平斬り!」や「左斬り降ろし!」と大声で叫んでいる。

エギルさんらはキリトさんの指示どおり、相殺には挑まず、盾や大型武器でガードに徹し続ける。

彼らは元々タンク型構成のプレイヤーたちなので、防御力もHP量も高いが、それでもボスの放つソードスキルをゼロダメージに抑えるのは不可能で、ソードスキルをガードするたびにHPゲージがじわじわと減っていく。

そんな彼らの間を軽やかに、舞うように動くアスナさんがボスの硬直の隙に、渾身の【リニアー】を叩き込む。もちろんそれを繰り返し続けているとボスからのヘイトがアスナさん1人に集中してしまうので、タンク係の6人が【威嚇(ハウル)】などのヘイトスキルを使用しターゲットを取り続ける。

 

 

 

エギルさんらとアスナさんの連携が始まってから5分後……

ついにボスのHPが残り3割を下回り、最後のゲージが赤く染まる。

その瞬間、一瞬気が緩んだのか、タンク役の1人が脚をもつれさせた。よりにもよって、彼がよろめいた場所はイルファングの真後ろだった。

キリト「……早く動け!」

キリトさんが反射的に叫んだが、間に合わなかったようだ。

ボスは【取り囲まれ状態】を感知し、ひときわ獰猛に吠えた。

ヤツは巨体を沈め、全身のバネを使って高く垂直ジャンプをする。その軌道上で、野太刀と己の肉体を、ひとつのゼンマイででもあるかのようにギリギリと巻き絞っていく。

つまり……全方位攻撃が来る!マズイ!

そんな中、ある人物が飛び出してきた。

ルナ「うおおお!!」

なんとルナさんが飛び出してきたのだ。

彼は左足で思い切り床を蹴りつけて、大ジャンプをする。

そのまま彼はソードスキルを発動し、剣技発動寸前のコボルドロードの左腰を捉えた。

重く鋭い斬撃音が響き、クリティカルヒット特有のライトエフェクトがコボルドロードの腰を照らす。

次の瞬間、コボルドロードの巨体は空中でぐらりと傾き、必殺の竜巻を生まぬまま床へと叩き付けられた。

コボルドロード「ぐるうっ!」

喚き、立ち上がろうと手足をばたつかせる。人型モンスター特有のバッドステータス【転倒(タンブル)】状態。

ルナさんはなんとか倒れることなく着地に成功した。

キリト「全員、全力攻撃!!囲んでいい!!」

「「お……オオオオオ!!」」

キリトさんが全員に叫ぶ。それに同調するかのようにエギルさんらタンクチームも叫ぶ。

レイドメンバーらはコボルドロードをぐるりと取り囲み、縦斬り系ソードスキルを同時に発動させる。色とりどりの光に包まれた斧、メイス、ハンマーたちが、巨体に降り注ぐ。爆発めいた光と音が炸裂し、イルファングのHPゲージが、がりがりと削り取られる。

技後硬直から回復したエギルさんらが、次のスキルの予備動作に入る。同時にコボルドロードはもがくのをやめ、立ち上がるべく上体を起こした。

キリト「……間に合わないか!!」

キリトさんは押し殺すような声で叫ぶと、アスナさんに向かって声を張り上げた。

キリト「アスナ、最後の【リニアー】、一緒に頼む!!」

アスナ「了解!!」

その直後、ボスが雄叫びとともに体を起こしてしまった。ヤツは滑らかに垂直ジャンプのモーションに入る。

キリト「行っ……けえッ!!」

キリトさんは絶叫すると、アスナさんと同時に地を蹴って大ジャンプをする。

アスナさんが渾身の【リニアー】をボスの左脇腹に撃ち込んだ。

それに続いて、キリトさんが剣に青い光芒を纏わせながら、コボルドロードの右肩口から腹までを斬り裂いた。

そのすぐあと、彼は剣を跳ね上げさせて、先の斬撃と合わせてV字の軌跡を描きながら、ボスの左肩口から剣を抜く。

ついにHPがゼロになった巨体な獣人王は、後方へとよろめきながら顔を天井へと向けて、細高く吼える。

両手が緩み、野太刀が床に転がる。

直後、アインクラッドの最初のフロアボス【イルファング・ザ・コボルドロード】は、その体を幾千万の硝子片へと変えて盛大に四散する。

 

 

 

ボスが消滅すると同時に、後方に残っていたセンチネルも儚く四散する。

壁に掲げられた松明も、暗いオレンジから、明るいイエローへと色彩を変える。ボス部屋を覆っていた薄闇が一気に吹き払われ、どこからか涼しい風が吹いて激戦よ予熱を押し流していく。

ランマル「はぁ……はぁ……終わりましたね。」

ルナ「そうだね。みんな」

フィリア「一時はどうなるかと思ったよ。でもルナとあの2人のおかげでなんとかなったね……」

レイン「ルナくん……かっこよかったよ。」

それを聞いたルナさんは少し照れくさそうに笑う。

僕たちが片膝立ちで回復待機姿勢を取っていると、視界にメッセージが流れる。

獲得経験値。分配されたコルの額。そして……獲得アイテム。

同じものを見たその場の全員が、ようやく顔に表情を取り戻す。一瞬の溜めのあと、盛大な歓声が弾けた。

テンションが最高潮に達しているレイドメンバーの中で1人、キリトさんに向かって大きな人影が声をかけた。そう、あれはエギルさんだ。

エギル「……見事な指揮だったぞ。そしてそれ以上に見事な剣技だった。コングラチュレーション、この勝利はあんたのものだ」

エギルさんは途中の英単語を、それこそ見事な発音で言ってのけた後、ニッと太い笑みを浮かべた。

エギルさんが突き出した巨体な拳に、キリトさんが拳を合わせようとした瞬間……

「……なんでだよ!!」

突然、何者かの叫び声が当たりに響いた。その声には悲しみが混じっているように感じた。

その人物は軽鎧姿のシミター使いの男性……リンドさんだ。

キリト「見殺し……?」

リンド「そうだろ!!だって……だってアンタは、ボスの使う技を知ってたじゃないか!!アンタが最初からあの情報を伝えてれば、ディアベルさんは死なずに済んだんだ!!」

リンドさんの血を吐くような叫びに、残りのレイドメンバーたちがざわめく。

「そういえばそうだよな……」

「なんで……?攻略本にも書いてなかったのに……」

その声は周囲に拡散していく。

そんな中、E隊メンバーの1人がキリトさんの近くまで走り、彼を指さす。

「オレ……オレ知ってる!!こいつは、元ベータテスターだ!!だから、ボスの攻撃パターンとか、旨いクエストとか狩場とか、全部知ってるんだ!!知ってて隠してるんだ!!」

その言葉を聞いたリンドさんは何も言わなかった。その代わり、彼はキリトさんに向けてよりいっそうの憎しみを込めたかのような表情をキリトさんに向ける。

その流れを遮ろうと、エギルさんらとタンク役を務めた1人のメイス使いが発言をする。

「でもさ、昨日配布された攻略本に、ボスの攻撃パターンはベータ時代の情報だ、って書いてあったろ?彼が本当に元テスターなら、むしろ知識はあの攻略本と同じなんじゃないのか?」

「そ、それは……」

押し黙ったE隊メンバーの代わりに、リンドさんは憎悪溢れるひと言を口にした。

リンド「あの攻略本が、ウソだったんだ。アルゴって情報屋がウソを売りつけたんだ。あいつだって元ベータテスターなんだから、タダで本当のことなんか教えるわけなかったんだ。」

ああ、もうこの場の空気が悪くなっていくよ。

ルナさんなんか少し顔色悪くなってるし……

そんななか、今まで我慢していたエギルさんとアスナさん、そしてアストルフォさんが同時に口を開く。

エギル「おい、お前……」

アスナ「あなたね……」

アストルフォ「ねぇ……キミたちそれが……」

しかし、彼らの発言をキリトさんが両手の微妙な動きで静止させた。

彼は一歩前に出て、ふてぶてしい表情でリンドさんの顔を冷ややかに眺める。

キリト「元ベータテスター、だって?……俺を、あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」

リンド「な……なんだと……?」

キリト「いいか、よく思い出せよ。SAOのCBT(クローズドベータテスト)はとんでもない倍率の抽選だったんだぜ。受かった1000人のうち、本物のMMOゲーマーが何人いたと思う。ほとんどはレベリングのやりかたも知らない初心者(ニュービー)だったよ。今のあんたらのほうがまだしもマシさ。でも、俺はあんな奴らとは違う。」

キリトさんは作ったような冷笑を浮かべながら、言う。

キリト「俺はベータテスト中に、他の誰も到達できなかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知ってたのは、ずっと上の層でカタナを使うMobと散々戦ったからだ。他にも色々知ってるぜ、アルゴなんか問題にならないくらいな。」

リンド「……なんだよ、それ……」 

リンドさんの困惑が入ったセリフの直後、先ほどのE隊メンバーが、かすれ声で言う。

「そんなの……ベータテスターどころじゃねえじゃんか……もうチートだろ、チーターだろそんなの!」

すると周囲から、そうだ、チーターだ、ベータのチーターだ、という声が幾つも湧き上がる。それらを聞いたキリトさんはにやりと笑いながら言う。

キリト「……【ビーター】、いい呼び方だなそれ。」

彼はこの場にいる全員をぐるりと見回しながら、はっきりとした声で告げる。

キリト「そうだ、俺は【ビーター】だ。これからは、元テスター如きと一緒にしないでくれ。」

彼はそう言い終えると、メニューウインドウを開き、自身の装備フィギュアに指を走らせる。

操作が終わると、彼の体を小さな光が包みこむ。

光が消えると、彼のダークグレーの革コートの代わりに、艶のある漆黒のコートが現れる。

その黒いロングコートをばさりと翻し、彼はボス部屋の奥にある小さな扉へと向き直る。

キリト「2層の転移門は、俺が有効化(アクティベート)しといてやる。この上の出口から主街区まで少しフィールドを歩くから、ついてくるなら初見のMobに殺される覚悟しとけよ。」

歩き出そうとする彼をエギルさん、アスナさん、アストルフォさんが見つめている。

彼は歩を進め、主なき玉座のすぐ後ろに設けられた、第2層へと繋がる扉を押し開けた。

キリトさんが扉の向こうへ消えると、エギルさんがアスナさんに言う。

エギル「アスナ、アイツに言ってくれないか。第2層のボス攻略も一緒にやろうと。」

続いてキバオウがアスナさんに近づいて言う。

キバオウ「わいからもひと言伝いといてくれ……今日は助けてもろたけど、ジブンはあいつのことを認められん。わいは、わいのやり方でクリアを目指す……っと。」

2人からの伝言を聞いたアスナさんは

アスナ「わかりました。では、私は彼を追いかけますので……失礼いたしました。」

そう言うとアスナさんは扉の向こうへと消えていく。

 

 

 

レイドメンバーが次々とボス部屋を出ていった結果、ここに残ったのは僕、ルナさん、レインさん、フィリア……そしてアストルフォさんだけだった。

アストルフォ「ねえ、そこの金髪のキミ。」

ルナ「俺かな。」

アストルフォ「そうだよ。そういえばキミ……さっきのベータテスターへの糾弾の時に顔が青ざめていたよね?もしかして……キミもベータテスター?」

レイン「ちょっと!こんな時に……」

ルナさんがレインさんを静止させる。彼は一呼吸置いて言う。

ルナ「そうだよ。俺は元ベータテスター。と言ってもキリトと比べたら弱いけど。」

ランマル「そうだったんですか……」

ルナ「まあ、ホントはあの時に俺も正体を明かしておけば、キリトだけにヘイトが集中することはなかったけど……」

彼はそう言うと少し項垂れる。

さっき彼の顔色が悪かったのは、彼も元ベータテスターだったからか。

この場の空気は再び重くなってしまったが、その沈黙をアストルフォさんが破る。

アストルフォ「でも、キミ……けっこう勇気あるよね。」

ルナ「え?」

アストルフォ「だってさ、ボスの真後ろで転んじゃった人をキミは救ったじゃん。しかもボスがソードスキルの構えに入った時に。」

ルナ「あれは……体が勝手に動いただけだ。」

アストルフォ「うんん、キミはその人が転んだ時にすぐボスの挙動を確認してマズイと思って飛び出したんでしょ。それに……このタイミングでベータテスターであることを認めるなんてスゴイよ。ボク……そういう人尊敬しちゃうよ。」

アストルフォさんの言葉には皮肉も嫌味もない。ただ自分が感じたことをそのまま伝えている。

彼のような裏表ない人と出会えてよかった。

ランマル「僕もルナさんが飛び出した時にはびっくりしちゃったけど、僕はルナさんの味方ですよ。」

フィリア「ランマルとアストルフォの言う通りだよ。ルナはこの中で1番勇気があると思うよ。」

レイン「私もフィリアと同じかな。あんな状況で人助けのために動けるなんて……私はできないかな。ホント、かっこいいよ、ルナくん。」

アストルフォ「そう!ここにいるみんなはキミの味方だよ!」

ルナさんは少し眼をうるませながら言う。

ルナ「あ、ありがとう。みんな」

ルナさんが眼を擦ると、そのまま第2層へと続く扉を見据える。

ルナ「じゃあ行こうか、第2層へ。」

ルナ以外の全員「「おおお!!」」

 

 

 

 

 

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