貴方はヴァスタール様を信じますか?   作:LW

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元々原作から同じ世界観ですが、
本作は天冥のコンキスタと、クロス要素有になります。


01 ロランの婚約

「婚約、ですか?」

 

兄上。セドリック陛下に呼び出されて、執務室に向かう。

其処で「ローランドに一つ仕事を頼みたい」と、

そう切り出されたのが、私の婚約話だった。

 

「ローランドはその年で結婚はおろか、

 婚約者さえ居ないからな?」

 

「兄上」

 

「冗談だ。そう怒るな」

 

確かに私は未婚で、婚約者も居ない。

それでも私とて王族だ。

いつか国の為に相応しい相手を、

指名されるのだろうと、覚悟はしていた。

 

だがこの改革で忙しい時期に、婚約とは意外ではある。

それに兄上は「仕事」だと、そう仰っていた。

 

「それで、御相手はどなたですか?」

 

「アムレシィの、ルクレツィア・リヴォルタ卿だ」

 

当然の事ながら、面識は有る。

リヴォルタ卿個人を評価するなら、

まずは容姿。美しさを評価しない者は居ないだろう。

 

次に主要都市アムレシィを、統治するに相応しい見識と価値観。

隣国と接する難しい土地だが、上手く治めている。

ラキメルのエアハルト卿とは異なり、

民に施しでは無く、機会を与えようとした事も印象深い。

だがどちらにしても、優秀な領主である事に変わりは無い。

 

「詰り婚約とは名目上の話であり、

 アムレシィを、リヴォルタ卿を監視下に置け。と?」

 

「言ってしまえばそうだ。

 知っての通り、アムレシィはネフィール王国に近い。

 ミケルティ王国内でありながら、ヴァスタール教の影響も強い」

 

ネフィール王国の国教たるヴァスタール教は、

戦いを是とする。

生きる事は戦いであり、強きを肯定する教義だ。

 

生きる事は戦い。それは私も否定しない。

だが戦いは、生き方は其々なのだと私は思っている。

戦闘を生業とする者だけが、戦っているのでは無い。

田畑を耕す者が、商いを行う者が、

子を育てる者が戦っている。皆が其々のやり方で戦っているのだ。

 

ヴァスタール教は、戦う事自体が評価され易い。

故にネフィール王国とは、競い合い争い合う事も多く、

戦争に発展する事も珍しく無かった。

 

「そしてこの改革の最中だ。

 自由奔放な猫に、鈴を付けたい。頼まれてくれるな?」

 

「其処まで言われては、断れません」

 

それにしても、猫か。

鈴は私だとしても、リヴォルタ卿が猫。と言うのは無い。

どう考えても、女豹と言う表現の方が似合う方だ。

だがどうやら迂闊にも、顔に出てしまったらしい。

 

「そう悪く思ってくれるな。

 我とて政略結婚だが、妻も子供も愛している。

 結婚してから妻を愛する事など、珍しくも無い」

 

 

「ナルセス」

 

「はっ、此処に」

 

自室に戻る。

アムレシィまでの旅支度は、護衛の者が手配してくれる。

私が用意するのは、別の物になる。

 

今まで私は、婚約者の一人とて作らなかった。

目立つ事が危険だった。

新たな派閥が生まれる事が危険だった。

本気になれる相手が居なかった。

理由などいくらでも有る。

だが、圧倒的に経験が足りないのも事実。

此処は頼れる臣下の意見を、訊くべきだろう。

 

「まがりなりにも、婚約者との初めての顔合わせだ。

 何かプレゼントを持参しようと思う」

 

「はい。大変宜しいかと」

 

「だが突然の婚約で、時間が無い。

 手持ちの宝飾品を贈ろうと思う」

 

いくつか手持ちの宝飾品を並べる。

多忙な領主の仕事でお疲れだろうから、ヒールリングか。

暗殺を警戒して、護身用に即死無効の首飾りはどうか?

或いは、希少性の高いマルウェンの指輪も悪く無い。

 

「どう思う、ナルセス?」

 

「………」

 

珍しいな。

ナルセスが長考に入っている。返事が返ってこない。

ナルセスなら、直ぐに答えてくれるものと思っていたのだが。

 

「リヴォルタ卿も領主貴族ですから、

 既にヒールリングや、

 即死無効の首飾りは所有しているかと。

 此処はマルウェンの指輪を持参するのが、妥当と思われます」

 

「そうか、流石はナルセスだ」

 

だが流石はナルセス。答えは返って来た。

プレゼントはナルセスの意見を採用して、

マルウェンの指輪で良いだろう。

 

「だがナルセス。

 より希少性の高いマルウェンの首輪も有る。

 此方はどう思う?」

 

「………」

 

再びナルセスが長考に入る。

今日は珍しい日だ。二度も続けて、ナルセスが長考に入るとは。

 

「今回は初めての贈り物です。

 マルウェンの指輪に留めて置くのが、宜しいかと。

 それに首輪は、

 隷属や拘束などのメッセージだと、取られかねません」

 

「そうなのか?

 ナルセスは物知りだな」

 

やはりプレゼントは、マルウェンの指輪で良いようだ。

そうしてプレゼントが決まった処で、ドアがノックされた。

 

「ローランド兄様。いらっしゃいますか?」

 

「ヴィオ」

 

入室を許可すると、

やはり姿を見せたのは、

上の妹のヴィオレットと、護衛を務めるルフィナだった。

 

「ローランド兄様が、婚約されると聞きました」

 

「耳が早いな。その通りだ」

 

「宜しいのですか?」

 

ヴィオが悲し気に、整った美しい顔を歪める。

優しい子だ。だがそれには及ばない。

 

「私も王族だ。

 国の為に生きる覚悟は出来ている」

 

「………」

 

「それに、

 心に決めた者が居る訳では無いからね」

 

そう告げても、ヴィオの顔が晴れる事は無い。

想いを遂げた相手と結ばれたい。

そう思っている自分が、後ろめたいのだろうか。

 

「セテアが、羨ましい」

 

「セテアか」

 

下の妹、セテア。

セテアは城の中で過ごしていた筈だが、

いつの間にかマルクと接点を持って、

実母のセルマと逢瀬を繰り返していた。

実母との再会の機会を用意したマルクに、

セテアは惚れ込んでいる。

 

「アレは無理に引き剥がしたら、

 城を飛び出しそうだ」

 

 

舗装されてまだ日も浅いだろう石畳を、

装甲馬車と、其の護衛の騎士団が駆ける。

 

王都サンタリアを発って、アムレシィへ向かう経路。

普段なら最短ルートを選ぶ処だが、

今回はルテール海岸を経由する、北の迂回ルートを選択。

 

この北の迂回ルートは、

アムレシィが新規開拓した新しいルートだ。

今回は視察を兼ねたルート選択となる。

 

「何事だ?」

 

ルテール海岸に近づくと、それに気付く。

私は射手だ。視力には自信が有る。

 

盗賊らしき身なりの集団が、争っているようだ。

相手はナーゲリザードと、メアイーグの群。

半魚人の亜人である。

 

争いは盗賊らしき集団の方が優勢で、

亜人達を包囲して、討ち取っているようだ。

亜人側は防戦一方で、此処から逆転の目は薄いだろう。

 

「如何なさいますか?」

 

さて、どうするか?

あの盗賊らしき集団は、実は料師か冒険者。と言う線も有る。

この場合、ただ獲物を狩っているだけ。と言う状況になる。

幸い彼等が優勢だ。助けに入る必要は無いだろう。

 

「あの盗賊団を討つ」

 

「亜人に手を貸すのですか!?」

 

「勘違いするな。

 盗賊団を討つ。それだけだ」

 

あの盗賊団。覚えが有る。

指名手配中の者達で、確か滅露団(メガロダン)と言ったか。

人攫いや人身売買を生業とする、性質の悪い輩だ。

 

「制圧射撃ッ!!」

 

開戦の狼煙が上がる。

手にした魔弓ゼオから放たれる矢の雨が、滅露団を襲う。

それだけで滅露団は壊走してしまう。

其処へナルセス率いる護衛の騎士団が、

壊走する滅露団に、止めを刺して制圧して行く。

圧勝だった。これは蹂躙であり、戦いと呼べる物では無かった。

 

「ありがとう。

 と言う事で、良い?」

 

「剣を下せ」

 

戦いですら無かった蹂躙は終り、残されたのは亜人の群。

防御陣形を敷いていた亜人達が陣を解く。

解かれた陣の中から現れたのは、二人の精霊。

 

「私はセイレンのレイン。

 この子は、ヴュリテュンのヴュリン」

 

一人は水精の貴人。

美しい人型を保っていて、人語も介している。

一目で上位種だと窺わせられた。

セイレンだと言うのも、嘘偽り無いだろう。

 

「………」

 

ならば、もう一人がヴュリテュン。

何と言うか、独特のフォルムだ。

敢て言うなら、タンクと呼ばれる装甲馬車に似ている。

鱗の装甲に覆われた蒼のタンク。

其のタンクの上面に、何故か人型の頭が生えていた。

 

ユミル部族国の戦乙女の滝に、

レニア・ヌイと言う精霊が棲息していたが、

確かヴュリテュンは、其の中位精霊だった筈だ。

ミケルティ王国の周辺では、

セイレン共々、遭遇する機会の無い種族である。

 

 

此処からは、用語解説になります。

↓以下参照です。

 

ヴァスタール教

生きる事は戦いであり、強くあれ~的な教義。

教義の内容は予想以上に真面で、

種族差別などが無いのも、評価ポイントとなる。

しかし強いヤツが正義。強ければ何をしても許される。

と解釈し易く、拡大解釈祭りも開催し易い。

 

仮にヴァスタール教の信徒と揉め事を起こしたら、

決闘で雌雄を決して、勝った方の主張を通す。

と言うルール(偏見)が有りそう。

 

マルウェンの指輪

経験値獲得量↑のアクセサリー。

控えメンバー御用達の装備アイテムの一つ。

但し出番は初回のみ。周回に入ると、

魂の狩人からドロップ出来る。しかもノーマル。

レアドロップの首輪を人数分揃える内に、

指輪はカンストしてもおかしく無い。

 

ナーゲリザードとメアイーグ

ルテール海岸に棲息する半魚人の亜人。

特にメアイーグは、

百千御用達のフールティアスを、レアドロップする善い獲物。

 

本作では素潜りで、

海底の採掘ポイントを掘って、金属素材をゲット!

独自の金属加工技術で腕輪を製作。と言う設定。

 

滅露団(メガロダン)

モブ盗賊団。オリキャラ。

数を頼りにした集団戦法(リンチ)なら、

一般的な亜人も狩れる程度の実力。

名前の元ネタは、大古の海の支配者。

 

セイレン(レイン)

百千には登場しない水精系の精霊。モブのオリキャラ。

百千には登場しないので、事実上天冥のクロスキャラとなる。

 

セイレンは優秀なヒーラーであり、削り役の狙撃手。

特に超射程水弾は凶悪で、其の最大射程は9を誇る。

この脅威で盛り上がるのが、二章のラストバトル。

登場する魔王の側近(中ボス)を、

アウトレンジから削って封殺可能。爽快です。

 

ヴュリテュン(ヴュリン)

百千には登場しない氷精、または雪精の類。モブのオリキャラ。

此方も事実上、天冥からのクロスキャラ。

但し上位種のレニア・ヌイは、戦乙女の滝で出現する。

 

ヴュリテュンを語るなら、独特の外見は外せない。

どう見ても戦車。

精霊なのにキャタピラまで搭載。止めは人型の(女の)頭。

案外チョウチンアンコウ的な、コンセプトなのかもしれない。

しかしこのシュールさが、ヴュリテュンの魅力である。




セイレンは可愛い♪
ヴュリテュンは面白過ぎる☆
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