氷上の剣士   作:Kod

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またまた勢いで書いてしまいました

表現とか上手く伝わらないかもしれませんが、よろしくお願いします


Score 0 剣の天才

 

 

 

 人生とは短く、儚いもの

 

 それは大人になるに連れて感じてくるものだった

 

 

 

 

 夏、暑苦しい季節。ミンミンと蝉が鬱陶しく鳴いている。エアコンもなく古い扇風機しか回っていない道場の中に、一人の男がいた。周囲には誰もおらず、男が竹刀を素振りしている音のみが聞こえる。着ている剣道着と袴には、滝のように汗が染み込んでいた

 

 

???「フゥ~フゥ~…………ハッ!ハッ!」

 

 

 道場の隅にある戸棚には数々の大会で優勝者の証である優勝トロフィー、表彰状、そして金メダルが飾られていた

 

 その中で特に新しい物、それは世界剣道選手権で優勝した時のトロフィーとメダル。文字通りこの男は、世界中の強者達が集う大会に日本代表の男子個人選手として選出された人間だった

 

 

???「フゥ~…………ハァ~、ちょっと休憩するか」

 

 

 首もとの汗をタオルで拭き、水筒に入ってるスポーツドリンクを飲む。飲みながらふと視線が戸棚の方を向いた

    

 

 

???「……………」

 

 

 無言で数々のメダルやトロフィーを流し目で見る

 

 左端にあるのは小学生時に始めて出場した大会で、初優勝した金メダル。一番右端には世界大会で優勝した時の金メダル。その間にあるものは全てが金メダルや『優勝』と表記されている賞状とトロフィー

 

 

 次は何の大会に出よう………あ、もう自分は世界一になったのだから、どの大会に出場したとしても自分が勝つ。勝ってしまう………………いや、そう考えるのは傲慢だ

 

 

 今この瞬間にも、新しい命が生まれ自分を越える程の才能を持つ者が現れる………筈だ

 

 

???「継国縁壱に近付くことが出来たかな……」

 

 

 自分が剣道を始めたきっかけ、それは『鬼滅の刃』だった

 

 

 小学生の時に映画館で観た剣士達の美しい剣技に憧れた。特に作中最強であり、生まれてから死ぬまで一度も負けることのなかった史上最強の鬼殺隊剣士、継国縁壱。その人のようになりたかった

 

 

 とても子供じみた理由だったが、自分はどうしても鬼滅の刃に出てくる剣技を、『呼吸』を表現したいと思った。だからひたすらに練習を重ねた。幸い、自分には才能も持ち合わせていたため誰よりも強くなれた

 

 

 それこそ、本当に継国縁壱のように誰も並び立つ者がいなくなるくらいに

 

 だがそうなっても、世界一になっても……継国縁壱や竈門炭治郎のような呼吸は出来なかった

 

 

 分かってはいた…………鬼滅の刃とは漫画の中の世界、現実では無理なのだ。この世界では………

 

 

 でも、綺麗だった。どうしようもなく、憧れたのだ。あの強さに、美しい剣を……自分でも

 

 

???「…………」

 

 

 立ち上がり、バッグの中に入っているノートを開く。そこには漫画やアニメ、公式ファンブックから呼吸法や剣術についてのことがぎっちりと書いている。小学生の時から書き続けてきたノートである

 

 

 自分は再び竹刀を持ち、構えを取った

 

 

???「(全集中……)」

 

 肺に沢山空気を取り入れ、勢いよく掘り下げた

 

 

???「(日の呼吸……壱ノ型 円舞!!)」

 

 

 違う。やっぱり違う。これではただ上から下に振っただけだ

 

 

 弐ノ型 碧羅の天  参ノ型 烈日紅鏡

 

 肆ノ型 灼骨炎陽  伍ノ型 陽華突

 

 

???「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」

 

 

 何回やっても自分のイメージしたものとは違った

 

 

???「ここまでやってきたのに……10年経っても出来ないか……」

 

 

 自分の名前は皇創破。ついこの間、世界一の剣士になった20歳。この剣道道場の先生だ

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 道場を後にし、気晴らしに外へ散歩に出る

 

 

 今日、道場に通っている生徒達は休みだ。前だったらひたすらに竹刀か木刀を握って呼吸の練習を行っていたが、それももう諦めかけていた

 

 

 いい加減子供じみた理想を諦めなければならない、鏡を見て良い大人になった自分を見てそう思ったからだ

 

 これからはあの道場で剣道の先生として、しっかりと子供達の育成に励もうと思っていた。さっきまでいた道場は自分が小さい頃から通いつめていた場所でもあり、思い出深い場所

 

 

創破「今日はいつにも増して暑いな。あそこで一休みするか」

 

 

 近くの公園のベンチに座る。暇潰しにポケットに入ってるスマホを取り出し、ネットニュースを見る

 

 

創破「そう言えば今、日本でオリンピックやってる最中なんだっけ……」

 

 ニュース記事のトップを飾っていたのは、東京オリンピック。そして日本選手がフィギュアスケート男子シングルと女子シングルで金メダルを獲ったという記事

 

 しかも男子に至っては歴代最高得点を叩き出したという偉業を成し遂げたのだ。日本の力を世界に見せ付けたみたいな内容の記事だった

 

 

創破「オリンピック………剣道はないんだよな」

 

 

 剣道は世界大会はあるが、オリンピック競技には含まれていない。オリンピック競技になることで剣道の礼節重んじる精神が欠いてしまう、勝敗を決める『一本』の判定が難しい等の理由から除外されていた

 

 

創破「フィギュアスケート、か………」

 

 

 ネット記事に載っているニュース動画を再生した

 

 日本代表選手のスケートを見る。会場全体に曲が流れている中、ジャンプを決め、色々な振り付けを決め、最後は会場中から万雷の拍手と歓声が響き渡る

 

 

 その選手のコーチらしき人と一緒に得点が発表された瞬間、その2人は互いに涙を流し、喜び、抱き締め合っていた。種目が違っても金メダルが首から下げられた瞬間の気持ちはよく分かる

 

 一番になれたという証明

 今までこれを手に入れるためにやってきた努力が形となって自分の手の中に来たということが、とても嬉しいのだ

 

 

 尤も自分は獲りすぎてしまい、その嬉しさも次第に薄れてしまったのだが………

 

創破「…………」

 

 自分は日本選手以外のスケート選手の動画も見る。見ていく

 氷の上で綺麗に踊る人達を……見て気付いた

 

 

創破「(スケートだったら……もしかしたら、鬼滅の刃の呼吸を再現出来るんじゃないか?)」

 

 剣は持っていなくても、フィギュアスケートは身体全体を使って滑る競技。呼吸と組み合わせてみれば、もしかしたら自分の納得出来るものになるんじゃないか

 

 

創破「(たしかこの近くにスケートリンクがあった筈……物は試しだ)」

 

 

 スケート……ちょっとやってみよう。そう思い、ベンチから立ち上がった

 

 

 暫く歩いてようやくスケートリンクらしき建物が見えて来た時だった

 

 スケート靴を持った小学生3年生ぐらいの女の子が横断歩道を渡ろうとしている時、車の信号は赤になっているのにスピードを一向に落とさないトラックがいた

 

 自分は頭で考えるより、先に身体が動いた

 火事場の馬鹿力というのか、この時の自分は『雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃』並の速さで走ったのだと思う

 何とか車とぶつかる前にたどり着けた。だがもうすぐそこまでトラックが迫ってきている。ここで一緒に歩道側まで連れ出すには時間がない

 だからといってこの子を歩道側へ投げてしまえば助かったとしても怪我を負うかもしれない。最悪この子が、スケートを出来なくなってしまうような大怪我を………

 

 

創破「(だったら……こうするしかない)」

 

 

 少女の身体全体を包み込むように抱きかかえた

 

 自分がこの子のクッションになるのだ

 そうすればこの子は大した怪我を負うことはないだろう。少し服が汚れてしまったり、見たくもない物を見せてしまうかもしれないが、許してくれ

 

 君はまだ、この年で死ぬような子じゃないんだ。それだったら………20年分生きた自分が先に死ぬのが良いだろう

 

 

 

 

 あ~やばいな。死ぬってこんな感じなんだな。背中が焼かれてるみたいに痛い。脚も腕の骨も折れてる絶対

 こりゃあ、呼吸する余裕もないな

 

 

 生徒の皆、師範、父さん、母さん、ごめん。先に逝く、ここまで育ててくれてありがとう

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

???「貴方は先程死にました」

 

創破「まぁ、そうですよね」

 

???「あら、大して驚かないんですね?」

 

創破「大体予想はしていましたので」

 

???「それでは、私の正体にも薄々気付いていますよね?」

 

創破「………神さま?」

 

???「ピンポーン、正解です。正確には女神ですけどね」

 

 

 車にはねられて死んだと思った矢先、気が付いたらこの雲の上みたいな空間にいた。そして目の前に、神様らしき女性が、いや女神がいた

 

 

女神「女神ですよ、本物の」

 

創破「ナチュラルに心読まないでください」

 

女神「でも、分かったでしょ?私が女神であるということが」

 

創破「十分分かりました。それでその、何で俺は女神様と会っているのでしょう?」

 

女神「じ・つ・は……貴方を転生させようと思ったからです」

 

 

 女神様の話によれば、俺の行動に感銘を受けたという

 

 ここ数百年の間、あそこまで誰かを助けるために死をも恐れずに行動した若者は久しぶりに見たのだと

 

 

女神「このまま天国に送ってしまうのは勿体ないと思い、私は貴方を違う世界に転生させ、無念の残らない人生を送って欲しいと思ったのです」

 

創破「あの、俺が助けたあの娘は……どうなったんですか?」

 

女神「安心して下さい。貴方が身を挺して守ったお陰で無傷ですよ」

 

創破「そうですか………良かった」

 

女神「……何か要望はありますか?」

 

創破「要望?」

 

女神「そうです。どんな世界に行きたいとか、どんな才能を持ちたいとか……何でもおっしゃって下さい」

 

創破「良いんですか?」

 

女神「はい!貴方はそれ程のことを行ったのですから!」

 

創破「それじゃあ、フィギュアスケートが出来る世界に転生させてくれませんか?」

 

女神「フィギュアスケートが出来る世界にですね、分かりました。あとは?」

 

創破「それだけで良いです」

 

女神「えっ、それだけ?他にも色々と出来ちゃうんですよ?」

 

創破「いえ、本当に良いんです」

 

女神「(………嘘は言ってないみたい)分かりました。それじゃあ私の方で転生しても直ぐにまた死なないように色々と調整しておきますね」

 

創破「あ、ありがとうございます、女神様」

 

女神「どういたしまして、それじゃあいってらっしゃい!」

 

 

 その言葉を聞いた後、俺はまた意識を失っていった

 

 

 

女神「フフッ、少しおまけもしておきましたよ。皇創破さん、貴方の第二の人生に幸あらんことを」

 






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