ミステリアスな糸目キャラに憧れたら如何にも怪しすぎる不審者になった 作:あーあ=あ
デウロと一緒にマジシャンの部屋に行き疲れからそのまま眠ってしまった次の日。
起きて直ぐデウロと一緒にマジシャンに謝り倒した。幾ら疲れているからといって人の部屋で熟睡するとかさ…!
スーツまで掛けてもらって…本当に紳士っているんだぁと一瞬思いつつも申し訳ない気持ちでいっぱいだった!椅子で眠るマジシャンをわざわざ起こしてまで謝ったことも!
表情からは分からないけど多分…怒ってた!
…二度寝します、と行って部屋に戻っていったから定かではない。ロコンとフォッコもマジシャンの後について行った。
その後AZさんにやんわりと怒られた。
追加でフラエッテにはガチめに怒られた。
本当にすみませんでした…だからあのヤバそうな技だけは撃たないでくださいお願いします。
……AZさん曰くフラエッテは…マジシャンに警戒してても恩を感じていて深く感謝している。昨晩食べ損ねたフラエッテお手製料理をマジシャンが食べてくれたことが嬉しかったらしい。
反面マジシャンに迷惑をかけたわたしとデウロには大変お怒りだったとのこと。マジシャンを揺すり起こす前まではマジシャンの寝顔を眺めていたとも……うん、目の保養にはなりそうな気が…ゲフンゲフン…。
…初めはお土産を取って帰る予定だったんだよ?でもデウロが色々気になったのか物色し始めてわたしはお土産で糖分が取れたからか眠気が加速して…ちょっとだけ横になっていいかなーって…。
フォッコを抱えてベッドに腰を下ろしたらふわっといい匂いが広がって瞬く間に背中を預けて天井を眺めていた。
かなしばりのように動かなくて…フォッコがお腹の上で丸まってじんわりと広がるように全身が温かくなって…。
意識がぼんやりして目蓋が重くなって…。
とてつもない安心感に包まれた。開いた窓からは心地よい風が流れ込んでくるの。
熱した体を程よく冷やしまた温かくなっていくの繰り返し。閉じかかった視界には動き回るデウロ。
目蓋が開閉する度コマ送りの様にデウロが動いていた。…それから……気がついたら目の前にデウロの寝顔。…ほんとその…少しでも動いたら唇が触れるくらいの至近距離だった。
…うん、同性だからマジシャンみたいに変に意識とかはしなかったけどね。
晩御飯は食べ損ねちゃったけどそれ以上に良い朝?だった。
……今思い返したら異性のベッドに許可なく眠ったことに対し罪悪感と…こうなんというか背徳感があったと言いますか、ね?
…ち、痴女じゃないし!軽い女でもないけど…!!…マチエールさんが無防備に寝ていた気持ちが…その、ほんのちょっぴり?…うん、わかった気がした。
なんて思い耽けながらエントランスの椅子に座りまったりしている。起きた時にはタウニーとピュールはもう居なくてさっきまでデウロとは色々とお話をしていたけど日課をこなすとかでお話の約束を取り付けると外に駆け出していったよ。
元気だなぁ。
うーん……どうしよっかなぁ。
「キュルルッ!!」
フラエッテどーしたの?
大きな声を出して…なにかを抱えている?
「フラエッテが慌てるとは珍しい。なにがあったというのだ?」
問い掛けるAZさんにフラエッテはその何かを渡す。…よく見えない…けど小物で…ポーチかな?多分…。
「…これはデウロの忘れ物だな。セイカ」
「あ、はーい」
椅子から立ち上がりAZさんとフラエッテの元へ。AZさんの手にはハンドメイドと思われる小さなポーチ。
「申し訳ないがこれをデウロに届けてくれないか」
「大丈夫ですよ」
暇だったし…暇なのかな?
予定を作ろうと思えば作れるけど…予定を作る余裕があるってことは暇だよね。
「ありがとう。折角の機会だ。彼女とゆっくりと話すといい。…おなじエムゼット団としてどんな人物か知っておくもの大事だろう」
それはそう。
しかも同じベッドで寝た仲間だし!…なんか卑猥な感じになった気がする。
おかしいなぁ。…しっかり眠れたはずなのに…馬鹿になってる?…あの夢も見なかったし久しぶりかもしれない…マトモな睡眠をしたのって…。だから…気が抜けたのかも…。
「デウロならベール5番地にいるはずだ。そこでポケモン勝負をすることでお互い分かり合えると良いな」
「そうですね……ん?」
なんかサラッとデウロとバトルをする流れになっている気が……。行けば分かるかな…。
「キュル」
「えっと…いってきます!」
「うむ、いってらっしゃい」
デウロの忘れ物を受け取りAZさんとフラエッテに見送られホテルZを飛び出した。
ベール5番地の広場でヒトデマンとトレーニングをしているデウロを見つけて忘れ物を渡すと感謝され流れで身の上話を聞くことになった。
前日のマジシャンとのやり取りで気づいていたけどホウエン地方出身らしく憧れのダンサーいてダンススクールに通うためにカロス地方にやってきたんだって。
思わずすごいね!と口に出すぐらいには…羨ましかった。だってわたしは……。
…でもルームシェアしていた友人が事務所のオーディションを受かって…デウロはスカラシップでミアレに来ているから。
スカラシップとは学校でいう特特生や特定の分野において優れた才能を持つ生徒を応援する制度。…学費免除や…返済義務の無い奨学金みたいもの。多分、デウロの場合は後者。
それほどデウロのダンスの才能はずば抜けている事になる。でも…いい事ばかりじゃない。当たり前だけど……結果が伴わなければ…。
…地元に帰るのも難しいよね。
学校…か。
あーあ…嫌なこと思い出しちゃったな。
ルームシェアってことは生活費は友達と二人で払ってたってことになる。友達が退去してからはデウロが全部負担しなきゃいけない。
そんな時に駅前でタウニーから声をかけられて…あとはわたしと大体同じ流れらしい。…AZさんやタウニーに恩返しがしたい、か。
デウロ、良い子だよね。
……わたしと大違いだよ。
デウロの後ろ姿を眺めつつしんみりしていると急に振り返って……。
「そうだ。いきなりだけどお願いしてもいいかな?」
「……んぇ?」
遅れてマヌケな声を晒すわたし。
「ヒトデマンもあたしもいつもと違う動きをすることでステップがキレキレになりそうだし」
う、うううん?
あれ…この感じって……。
「セイカ。ポケモン勝負させてよ」
バトルだよねー。…うん、お互いのことを分かり合うためにポケモンバトルをする。
…遅かれ早かれわたし自身のことを話す時がくる。今はまだ…難しいけど…その代わりポケモンバトルで……。
……1番初めに…マジシャンに伝える。
…取り引きしたし…約束は守らないと。
「いいよ。ポケモンバトル、やろ」
初めての戦いだね。一緒に頑張ろう…ケロマツ。
☆
…ううん。今、何時……?
ベッドから起き上がる。真っ暗な室内の中、電気を付けて窓を見る。
太陽は消え去り月と夜空が広がっていた。
「……寝過ぎましたね」
真夜中に起きるとは思わなかったよ。
これでも朝起きて夜寝るように心掛けてるから…んー…二度寝、は難しそうだね。
頭が冴えて寝れる気がしない。
両脇に眠るお狐さん。…そっとベッドから降りてスーツを羽織りシルクハットを被る。
「……いい夢を」
足音を立てないように部屋を出た。
そのままエレベーターに乗りエントランスまで降りる。…誰もいない。流石に眠っているよね。
…カウンターのランプを除き全てが消灯済み。薄暗いエントランスを歩きホテルZを後にする。
朝まで頑張って起きよう。その前にお腹が空いたね。この時間帯に営業している店があるといいんだけど…。
真っ直ぐ歩き続けサウスサイドストリートに出た。…あ、意外と人もいれば店も開いている。どうしてかと思考を巡らせたが直ぐ答えにたどり着くことができた。
「ZAロワイヤル、ですか」
確かにZAロワイヤルがあるなら需要はある。
視界の中を歩いている大半がポケモントレーナーだろう。
戦闘音が聞こえてくる。
すぐ近くにバトルゾーンが出現しているみたいだね。
……見えた。ふーん…ポケモンの生息園を囲っている緑色のホロと対して変わらないのか。見た感じは出入口のゲートからしか出入りはできない、と。
バトルゾーンに向かっていくポケモントレーナー達を眺める。その中にセイカさんは見えなかった。今日は参加してないのか…それとももう戦っているのか。
「…」
サウスサイドストリートを歩いていく。
ミアレ駅前、タクシー広場を通り過ぎ真夜中の喧騒に潜み足を止めることはしない。
……うーん見つからない。
この辺りにレストランはなかったけか。
「スマホロトム。近辺のレストランを調べてください」
音声認識を受け付けたスマホロトムが懐から飛び出しマップを映してくれる。…あったあった。…名前はレストラン・ド・フツー。
カロス地方の料理を手軽に楽しめる一ツ星レストラン。一ツ星でも十分に誇っていいと思う。…俺の手料理よりも美味しいだろう。
目的地は決まった。…丁度見えてきた。
ホロの看板の店名も一致する。扉に手をかけてゆっくりと押し開けていく。
入ってすぐ右にカウンター。中央にはバトルコートがあり囲うようにテーブル席が陳列していた。
「え?マジシャン…?」
バトルコートにはセイカさんと男性が立っていた。セイカさんの前にはゲコガシラ、男性の前には戦闘不能になったヤナッキー。
『おめでとうございます!それではランクアップ処理を行います』
…ランクアップ戦というのをやっていたのか。内容からWからVに上がったみたいだね。…贔屓目に見ても並のポケモントレーナーより強いよね。
「ランクアップおめでとうございます」
「ふぇ?…あ、はい。ありがとうございます。どうしてマジシャンは此処に……」
「晩御飯を食べ損ねてしまいましたので外食をと思いまして」
「……あ……ごめんなさい」
え?なんでそんな目を伏せて申し訳なさそうな顔をす…当事者ならそう捉えても仕方ないよね。意地悪したくていったわけじゃないよ。
「お気にならさないでください。この時間に外に出ることは滅多にありませんので良い機会になりました」
「…あ、それなら…良かったです」
ほんまにね。早寝早起きが基本で仕事や私情が絡まなければ夜更かしすることは滅多にない。故郷がシオンタウンで子供の頃から夜になると幽霊に襲われるなんて言われてたし。
出てくるからなぁ。ゴーストタイプじゃなくてガチのゴーストが。慣れればなんてことないけどさ。
…折角セイカさんと出会ったことだし前日のお礼とランクアップのお祝いも兼ねて食事に誘うのはどうだろうか。
好感度という下心はある。それ込みでも食事は誰かと一緒に食べた方が美味しく感じられるからね。少なくとも俺はそっち寄り。見た目に似合わずと言われるけど中身は子供のままなので。
「セイカさん」
「あ、はい」
「もしよろしければご一緒にどうでしょうか?」
「……いいんですか?」
お、意外と乗り気みたいだ。
悩む様な仕草をするが無意識にお腹に手を当てていて鼻をぴくぴくと鳴らしていた。
…こんな美味しそうな匂いが広がる場所でバトルをしていたんだ。お腹が空いてもおかしくはない。
「もちろんです。前日のお礼とランクアップのお祝いとして私が全て負担いたします。ああ、そうでした。一応料理もできますのでセイカさんがご希望でしたらお作りすることも──」
「手料理ッ!!!」
「……」
手料理と聞き興奮した様子で前のめりで聞き返してきた。…それはもう息が当たるくらい。……半分ぐらいは冗談のつもりだったんだけど…あっ。
「…ぁ……」
クークーと可愛らしく鳴るセイカさんのお腹。お腹を見下ろし我に返ったのか顔を上げる頃には首から耳まで茹で上がったかのように顔を赤くさせていた。
…若干目も潤んでいるけど大丈夫かい?
固まった動かなくなったセイカさんの肩に触れる。
「◎△$♪×¥●&%#!?」
声にならない言葉を叫び飛び退いた。
…お、おう。体をキツく抱きしめて深呼吸をしている。…数十秒深呼吸をしたセイカさんが小さくため息を吐いた。
「大丈夫ですか?なにやら体調が優れないようですが…」
顔の赤みは引いているから熱とかはないんだろうけど心配だよ。ZAロワイヤルにマチエールちゃんの依頼の手伝い。疲れが溜まっているんだろうね。
依頼は手伝った方が良いかもしれない。
「大丈夫、です。…自分が如何に慣れてないことが嫌という程に分かっただけなので…」
…は、はぁ……?
「そうですか。これ以上はお店のご迷惑になりますので外に出ましょう。大変失礼致しました」
「…すみませんでした」
セイカさんの隣を歩きレストラン・ド・フツーを後にする。うーん何を作ろうか。軽く摘めるものがいいかな。帰りに食材を買わないとか。それかAZさんにお願して……ん?
スマホロトムコール音が響く。…俺のではないね。
「…あ、ちょっと失礼します」
セイカさんのスマホロトムが飛び出し横向きになる。映し出された画面には──
『セイカ!』
マチエールちゃんの顔、と。
「へ?」
『いまその辺にあたしの追いかけているポケモンがいるってホン…お兄さん!?え?なんで!?…セイカと一緒に…いるの……?』
…ん?さっきまでの切羽詰まった顔と違って…ジメッとした顔はなんでしょうか?ほらセイカさんもびっくりしてるよ。
それよりも聞きたいことがひとつできた。
「偶然出会いましてね。…マチエールさんが追いかけているポケモンとは…」
「ゼドッ!」
特徴的な鳴き声。振り向けば犬に近い体格を持つポケモンが鎮座していた。
……あーなるほどね。最後に見たのはあの時以来かな。その姿を見るのは初めてだけどさ。
「このポケモンは」
セイカさんが口を開く。
初めて見るみたいだね。
「あのポケモンはジガルデ10%と呼ばれています」
「…ジガルデ?…10%……?」
『…は!?やっぱりジガルデなんだ!!…え?なんでお兄さんは10%のことを知って…それよりも2人とも目を離さないで!あたしたちも向かうから!』
通話が切れる。
……あーこれ面倒な案件だ。
お腹空いてるし直ぐに帰りたい。けど…。
セイカさんを見る。…何が起きているのか分かってないよね。それはそう。
ジガルデもなんか走り出したし。
しかも一定の距離を保っている。…誘導しているのか……はぁ仕方ない。
「あとを追いましょうか」
「…んぇ?あ、はい!」
「ことが済みましたら手料理を振る舞わせていただきます。それまでは少々我慢を致しましょう」
「!…はい!お願いします!」
元気になったセイカさんと共にジガルデの後を追いかけていく。
…たどり着いた場所はとある建物の前。ホッと息を吐く俺の隣には座り込み肩で息をするセイカさん。ジガルデさん走らせすぎだよ。
当の本人は建物の屋上を見つめている。
走らせるだけ走らせて放置はダメでしょう。
「セイカさん」
肩を貸す、まではなさそうだ。
だから手を差し伸べた。
「はぁ…はぁ…ひぃ…ありがとうございます」
差し出した手に手を重ねた所で力を入れて引き上げ無理やり立ち上がらせた。
「セドッ!」
ジガルデが鳴き声を上げる。
「え?…え?…え、え?」
セイカさんが戸惑うのもわかる気がする。
急に突っ込んできたらね。攻撃する意思はないと脳が理解して体は情景反射でセイカさんの腕を掴み引き寄せ抱きしめながら身構える。
ジガルデにぶつかる寸前に一瞬目を閉じたら屋上にいて目の前には様子のおかしいアブソル。…腕の中ではレストラン・ド・フツーの時とは比にならない程に赤く染りトサキントのように口をぱくぱくとさせたセイカさんがいた。
……どうしてこうなった?