ミステリアスな糸目キャラに憧れたら如何にも怪しすぎる不審者になった 作:あーあ=あ
「久しぶりだな」
「キュル♪」
AZさんの経営するホテルZで紅茶を楽しんでいると買い物帰りだろうか両手に袋を抱えたAZさんと彼に寄り添うように舞うフラエッテさんが帰ってきた。
その間にポケモン研究所で出会ったセイカさんが来て、ここに滞在していることを知ったりと色々あったけど割愛する。
「お久しぶりでございます。…
カップを置いて立ち上がり、二人の前に片膝をついた。深い意味はない。五年前のムーブのせいでそう呼ばざるを得ない状況を作り出した俺の落ち度デース。
AZさんは困った顔をしフラエッテさんは王女と呼ばれ嬉しそうにクルクルと回る。
「……もう王ではない」
「今も昔も私にとっては王ですので」
返事はない。無言のまま沈黙が襲う。
タウニーさんとセイカさんはZAロワイヤルという行事の為に外出している。
夜になるとバトルゾーンと呼ばれる赤いホロがランダムで生成されその中でポケモンバトルをする。ランク制度をとっており勝ち続けてランクをあげていくんだと。
騒音や破壊、破損トラブル発生しないの?ワイルドゾーンと同じなら建物が飲み込まれると思うんだけど……この五年で物騒になってない?
面白そうではあるけど参加するつもりはない。うっかり破壊しそうなんだよね。下手すれば更地になる。
で…この沈黙は破りたい。
そうだそうだお土産を忘れていた。
「こちら献上品でございます。どうかお受け取りください」
懐からいかりまんじゅう、フエンせんべい、もりのヨウカン。…最後にニビあられの箱を乗せ、計四段積みされたお土産をAZさんに渡す。
「色んな地方を旅していたのだな」
受け取り微笑むAZさん。あの時よりも笑顔が柔らかくなっている。…本当に良かった。
「ええ、とても有意義な時間でした」
「キュルン♪」
「王女、ポフィンが御座いますが召し上がりますか?」
「キュルルン♪」
顔を綻ばせ左右に揺れるフラエッテさん。
その動きは食べるってことだね。また懐から包装されたポフィンを取り出しフラエッテさんに渡す。片手でしっかりと受け取りご機嫌なフラエッテさん。
懐に関しては種も仕掛けもございません。この世界特有の現象なのでお気になさらず。
「……あれから五年か」
「時が経つのは早いですね」
お土産で分かるだろうけどカントーやジョウトを中心で活動していた。ポケモンバトルはあまりしてないが相変わらず強者揃いで凄かったよ。見てるだけでも楽しかった。
「君のおかげで今のわたしがある。…感謝する」
「それは違いますよ。王ご自身の努力の賜物です」
「……わたしは過ちを犯した」
あー…うーん。
「確かに過ちを犯してしまった。でもそれは王女を愛していたからです。誰よりも…世界よりも。その愛に偽りはないでしょう。それを好ましく思います。もし私が最愛なる者を奪われたら……王よりも
といってもそんな人は生涯できるとは思えないしブラッキー達は…そういうビジョンが見えない。世辞抜きで強いからね…なんて軽口を叩きつつ笑みを向ける。
「…ッ……」
「……キュ…」
あれ? …反応がイマイチな気が……。
AZさんとフラエッテさんは顔をこわばらせていた。……冗談なんだけどなぁ…。
「素敵なホテルですね」
「……わたしもそう思う」
「折角の機会です。チェックインをお願いします。滞在期間は未定ですので…これぐらいでどうでしょうか」
懐からお金をポンと出す。
どれぐらいかは知らないけど高級ホテルなら一ヶ月は泊まれると思う。
これでも収入源はある。
こう見えてマジシャンを生業としているんだ。ごめん見た目通りでした…手品は前世今世込みで趣味だったのもあって中々様になっていると思うよ。
マジシャン適正が高いポケモンが手持ちにいるから助手をやってもらったりしている。…ある意味奇跡的な出会いだったよね。
ただ嫉妬深い所が難点で…歯止めが利かなくなったら大変だなって。その時は腹を括る。
「…承知した。こちらが鍵になる」
「ありがとうございます。私は先に休ませていただきます。王と王女…良い夢、を」
シルクハットを脱ぎ一礼。
エレベーターへ向かい中に入った。
…部屋の番号は703号室。
AZさんが気を利かせてくれたのかな。
★
バトルゾーンで戦いチャレンジチケットを入手しそのまま流れ…タウニーに半ば強制的にランク戦をさせられた気がするけど何とか勝つことができてランクもYになり帰り道。
MZ団のメンバーに助けて貰いなんとか慣れた…気がする。同時に賞金メダルも貰えてバトルゾーン終了後にお金に換金されスマホロトムにチャージされるらしい。
帰る前にミアレシティで探偵をしているマチエールさんをタウニーに紹介してもらって…あ、デウロとピュール忘れてない…?
タウニー……はもう入ってるし。
呆れつつ続いてホテルZに入る。
疲れた顔をしたAZさんとフラエッテ。
タウニーが心配そうにしていて……。
「ただいまだよ」
「タウニー……帰るなら一声かけてくださいよ」
遅れて2人も戻ってきた。
「AZさん大丈夫?」
「顔色が優れないようですが」
2人もAZさんの異変に気づいたみたい。
…そういえばあの人がいない。あ、カウンターにお土産っぽいのが積まれている。
これってポケモン研究所で見た覚え……。
「あー!フエンせんべいだ!…いかりまんじゅうにニビあられ…もりのヨウカンもある!」
お土産を見つけたデウロがいち早く反応した。…大興奮のデウロ。待って先にAZさんとフラエッテ…。
「わたしは大丈夫だ」
「キュルル」
「よかった!そういえばあのマジシャンの人は」
そうそう。それが一番気になってた。
「マジシャン…?」
「客人がいたんですか?」
デウロとピュールは知らないよね。見た目だけなら怪し過ぎて何かしらの事件の黒幕といっていいぐらいの人。…マジシャンだったんだ。
それならあの服装も頷ける。
寧ろマジシャンじゃなきゃもうなんだって話だよ。
「彼は客室にいる、が──」
「だったらみんなお腹を空かせているだろうしマジシャンの方にもご馳走を」
「
「キュルル」
真剣な表情でAZさんはいった。
フラエッテも頷いている。
わたしも含めて皆が黙った。
「このお土産は彼からだ。好きに食べていいからわたしは先に休ませてもらうよ」
「キュルル」
優しい笑みに変わり自室へと消えていく。
……わたしは黙ってられずに。
「あの…あの人は何者なんですか?」
聞いた。
AZさんが立ち止まる。
「……わからない。だが、五年前に彼に助けられ今のわたしがある」
「…キュル」
……AZさんとフラエッテの恩人…?
それと五年前って……。
3人を見る。何か知ってそうだけど…聞ける雰囲気じゃない。…なんか変な空気になっちゃった。
AZさんとフラエッテを見送りホッと息を吐く。まだ続く沈黙の中でタウニーがパチンと手を叩いてお土産の話をする。
デウロがやけに詳しかったけど…ホウエン地方出身なんだ。フエンせんべいはホウエン地方にあるフエンタウンの名物でシンプルな醤油味が美味しくて人気らしい。
他のお土産も食べたことがあるらしくてカントー地方ニビシティ名物のニビあられ、ジョウト地方チョウジタウン名物のいかりまんじゅう、シンオウ地方ハクタイシティ名物のもりのヨウカンのことを詳しく教えてくれた。
途中でタウニーは料理をしに行き、その間デウロはあの人が気になったのか泊まっている部屋まで行こうとしたのでわたしとピュールで止めた。
ちょっとくらいはいいじゃん。とデウロは言ったけど…AZさんのあの言葉。…わたしは少し胸騒ぎがした。
それに…五年前のことや…あの人がここにきた理由。
当たり前だけど何も知らない。AZさんとフラエッテの知り合い、恩人ってことぐらいしか。
もちろんわたしは赤の他人だし部外者だろう。それでも……知っておかないといけない…そんな気がした。
★
「……参りましたね」
フラエッテさんに嫉妬するのは予想外だって。
客室に入って直ぐにボールから飛び出したマスカーニャにマウントを取られてしまった。
「ニャァ」
むくれた顔で見下ろすマスカーニャ。
ニャオハの時はまだ人懐っこいくらいだったのにニャローテ辺りから様子がおかしくなったよね。
分かってはいたけどさ。そんなに嫉妬深いとは思わないじゃん。…ワイルドゾーンでブラッキーを選んだのも含めて爆発したんだろう…ははは、こうなったら仕方ない。
「わかりましたよ。明日マジックショーをしましょうマスカーニャ」
「!…にゃぁ! 」
変化の如く嬉しそうな顔をして抱きつくマスカーニャ。…他の手持ちには助手は務まらないし精々ピエロ役に…はいはい、わかったから顔を擦り付けないで。
こうなったらテコでも動かない。
大人しくマスカーニャにされるがまま俺は眠りについた。
AZさんやフラエッテにも恩人だけど得体の知れない存在と認識されてます()セイカさんは糸目に対して確変警戒してます()