ミステリアスな糸目キャラに憧れたら如何にも怪しすぎる不審者になった   作:あーあ=あ

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第3話

 マスカーニャとマジックショーを約束した翌日。早朝からホテルZを出てミアレシティを歩き回っているとキッチンカーを見つけた。

 

 眼鏡をかけた男女が経営している。どこかで見た気がするんだけど気のせいだろう。んで隣に立つリザードン…強いなぁ。どちらのポケモンか知らないけど並のトレーナーでは無さそうだね。

 

 んー朝食には良い時間だしお邪魔させていただこうかな。プリズムタワーも良く見えるしお客もそこそこ居るみたい。ハズレではないだろう。

 

「失礼します」

 

「ん?客……!お前…!」

 

「?どうしま……!」

 

 女性が凄い顔でこっちを見てるしキッチンカーに入った男性も目を見開き警戒している。怪しまれるのは慣れてるけど…違う。この反応は…俺のことを知っている? 

 

「グゥ」

 

 おっとっと!リザードンが出てくるのは予想外。トレーナーの異変を察知し構えに来たんだろうけどこっちは朝食が食べたいだけなんだよね。

 

「……」

 

 ボールから飛び出しリザードンの前に立ち爪を出し構えるマスカーニャ。…そうなるよねえ。

 

 お客や通行人も異変に気付いたのかマスカーニャとリザードンに視線が集まっていく。

 

「どうしてお前が」

 

 どうしてと言われても客として来ただけなんだよ。うーん今更ながら…なんか既視感があると思ったらなるほどね。よく見たらキッチンカーのロゴにカラーリングもそうだ。

 

「朝食を取りにきただけですよ」

 

「はっ!どうだか!」

 

 いや本当に食べにきただけだから…諦めてもいいけどなんか癪だなぁ。こっちは一方的に知られているだけで悪感情を向けられているわけだし。

 

 …仕返しくらいはいいよね?いいよ!ありがとう! 

 自問自答して一触即発のマスカーニャとリザードンを通り過ぎ女性の横に立つ。

 

「ッ!」

 

 男性はカウンターに手をかけ乗り越えようするが遅い。リザードンも慌てて振り返ろうとするがマスカーニャが爪を立てて動けない。

 

「な、なんだよ」

 

「まだ()()()()が残っていたのは驚きですよ」

 

「ッ」

 

 女性の耳元に囁く。

 うん、フレア団だよね。正確にはフレア団の関係者。親族……多分、子供とかだろう。見た感じ二人とも若いし…モミジさんが特例でフレア団の殆どか逮捕されている訳でして。

 

 パキラさんみたいに逃げ仰せている者はそんなに居ないでしょ。…そいやクセロシキさんを売って逃げたんだよな。当時じゃカルムくんやハンサムさんではどうやっても捕まえることは不可能だったし仕方ないのか。

 

 どこでなにをしているんだろうねえ。

 

「まぁどうでもいいことです」

 

「……なにがいいたいんだ」

 

「そのままの意味ですが?」

 

 まんまフレア団が何しようと俺には関係ないってことなんだけど。それよりも飯が食いたい。

 

()()()()!大丈夫ですか!」

 

 男性が乗り越えて女性を庇うように前に立つ。鋭い目で睨んでいる。…女性の名前はグリーズさんね。

 

「これでは楽しい朝食はできそうにありませんね。またの機会にいたしましょう。それでは失礼します。グリーズさん…マスター。…行きますよ」

 

 取り敢えず仕返し完了です。

 

「にゃっ」

 

 構えを解いて隣に向かい直ぐに腕に抱きついたマスカーニャと共にその場から去った。…他のカフェを探そう。次は客として行きたいなぁ…コーヒーの良い匂いがした。あれは絶対に美味しいやつだ。

 

 タウニーさんとすれ違った気がするが気にせず近場のカフェに向かった。

 

 ★

 

「あれ?聞こえなかったのかな」

 

 朝起きて直ぐにタウニーと屋上探索と紐なしバンジーをしちょこっとワイルドゾーン2を見て回ってからタウニーの待つキッチンカーに向かう。

 

 スマホロトムの安全着地モードがあれど屋上から飛び降りるのは普通に怖かった。今後は絶対に控えようと思います。

 

 キッチンカーの前にはタウニーが反対方向を見続けていてわたしもその視線を追う。

 

「……あ」

 

 怪しい…マジシャンが隣にポケモンを連れて歩いていた。…仮面を被り人型に近い猫みたいなポケモン。

 

()()()()()()だ珍しい。パルデア地方にしか生息していないはず。お土産から様々な地方を旅していたのは分かっていたけど……凄い似合ってた。

 

「…あ、こっちこっち!」

 

 わたしに気がついたタウニーが手を振っている。タウニーのところまで歩いてマジシャンの方を見るともういなくなっていた。

 

「ここがおすすめのキッチンカー。その名もヌーヴォカフェ」

 

 紹介されたカフェを見る。赤と橙のカラーリングのキッチンカーで付近には椅子とテーブル。お客さんも数人いる…けど何やら騒がしい。

 

 女性の店員さんの顔色が悪く、その店員さんを男性の店員さんが介抱していて傍ではリザードンが不安げな顔で見下ろしていた。

 

「大丈夫?」

 

 タウニーが声をかける。

 

「…ああ、大丈夫だ」

 

「無理はいけません。おれが見とくので休んでください」

 

 大丈夫と手を上げる女性に反し男性は重く見ているのか休憩を勧めリザードンも頷く。

 

「…わかった」

 

 ゆっくりフラフラとキッチンカーの裏へ消えていく女性を見送る。後を追いリザードンも消えていき一部始終が終わると男性はタウニーとわたしに視線を向けた。

 

「失礼いたしました。少々トラブルが発生しまして」

 

「大丈夫だけど…マスターどうしたの?あの店員さんが青ざめるって相当のことじゃない?」

 

 おすすめというだけありタウニーは知ってるみたいだった。…見た目だけなら強気なイメージがあるというか…。

 

「それは…」

 

 言い淀むマスター。

 そういえばさっきマジシャンを見たけど…。

 

「もしかしてあのマジシャンのことだったり…わっ!」

 

「アイツのことを知ってるんですか!」

 

 マスターの細い目が開眼しグッと詰め寄られる。…糸目なのにマジシャンに比べて全然怪しくない。感情を露わにした表情を見て再認識する。…あのマジシャンがヤバいということを。

 

「知ってるも何もお客さんだし」

 

「…なんで今になってこの街に」

 

 わたしの代わりに答えてくれたタウニーを見て顔を歪ませるマスター。どう見てもあのマジシャンの知り合いだよね…。

 

 良い感情は抱いていない。寧ろこれは…。

 

「マスターはマジシャンのこと知ってるの?」

 

「……少し。これだけは言っておきます。アイツには気をつけてください」

 

 とても少しには見えないけど追求する気は起きなかった。…AZさんがいった触れてはいけない。あの時の顔とよく似ているから。

 

「AZさんも言ってたけどそんなにヤバいの?」

 

「…いえるのはここまでです。ご注文は如何なさいますか」

 

 開いた目が細くなり注文をとるマスター。

 タウニーはひのこローストを頼み、わたしはもえつきローストを頼んだ。あ、ランクアップのお祝いにと奢ってくれた。ゴチになります。

 

 AZさんとヌーヴォカフェのマスターはあのマジシャンに対して警戒していた。…AZさんは五年前に助けられた。マスターは分からないけど…多分、五年前に……憶測に過ぎない。

 

 あのマジシャンについて詳しい人はいないのかな。五年前にもミアレに住んでいて…今も住み続けている人。

 

 ……あ、いた。…マチエールさんだ。

 ミアレで探偵をしていて五年前にも住んでいる。AZさんとも知り合いだし…マジシャンのことも確実に知っている。

 

 もえつきローストを飲みながらタウニーに提案をしようとした時にクエーサー社のマスカットさんがやってきて軽い会話をする。

 

 会話を終えて去るマスカットさんを見送りもえつきローストを飲み干し椅子から立ち上がる。…気になって選んだけど滅茶苦茶苦かった。今度はひのこロースト…モーモーミルクにしよ。

 

「色々とあったけどそれじゃ本題!あたしの用事につきあって」

 

「用事?」

 

 わたしはマチエールさんに会いたいんだけど…場所を知らないや。仕方ないからタウニーの用事を終わらせてからマチエールさんの居場所を教えてもらおう。

 

「マチエールさんの事務所ハンサムハウスに行くからついてきて!」

 

 …ん?…!?マチエールさんに会うの?ちょっと待って!なんで急に走り出すの!?一緒に行く選択肢はないの!?しかもちょっと足が早い…! 

 

 見失わないようにタウニーを追いかけた。

 待って…実はわたし……体力、あんまない…。

 

 ★

 

「美味しいですね」

 

 フレア団のコーヒーとはまた違う風味に酸味が効いていて良い。コーヒーのお供にサンドイッチを頼んだ時はやらかしたと思ったがこれまた合うんだよねえ。

 

「……ニャ」

 

「キャー!」

 

 すぐ側にはマスカーニャと人集り。

 …絶賛マジック中です。一人の少女が食事中のマスカーニャに手を振ったことがはじまり。

 

 お得意の瞬間移動マジックで手に持ったサンドイッチを少女の手の中に移動させた。ファンサービスのつもりだったんだろうけど少女は黄色い悲鳴を上げて大興奮。周りも見ていたのか瞬く間に囲まれた。

 

 俺がいてもお構いなしで動画の撮影や写真を撮る許可を確認される。…集団心理だね。

 

 一人だと怖いけどみんなでいたら恐怖が薄れるみたいな感じの。…マスカーニャも満更でもないみたいだし食事中は好きにさせよう。

 

 それにマジックショーが実現できている。

 食後に広場でマジックショーをしようと思っていたなら手間が省けたしラッキーと考えよう。

 

 食事中にスマホロトムで調べてわかったことだけどミアレシティにはシトロンくんとユリーカちゃんもいないらしい。ある地方で活躍中だとか…なんならすれ違いをしていたみたいなんだよね。

 

 知り合いで唯一残っているのはマチエールちゃんだけだった。今はハンサムハウスの所長をしておりベテランの探偵として活躍中。トレーナーの腕も中々だとか…成長したんだなぁ。

 

 行先はハンサムハウスで決まりだね。

 マチエールちゃんの顔を見たら一度ミアレを離れてもいいかもしれないね。

 

 久しぶりのカロス地方。

 ミアレシティだけに留めるのは勿体ない。

 五年の年月でカロスがどれだけ変わったのか見るもの悪くないだろう。…ん?メールを受信した?誰かに教えた記憶ないんですけどね。

 

「ふむ」

 

 内容はミアレシティの中で最強のトレーナーを決めるための戦いZAロワイヤルが開催されている。最高のランク:Aになれば最強の称号と名誉。…叶う範囲で望みを叶えられる。

 

 参加の意思があるなら添付されたファイルを実行しアプリをダウンロード、ね。

 

「はぁ…茶番に興味はありません」

 

 メールをゴミ箱に落とし続けて削除した。

 ミアレシティの中で最強を決めてどうするんだって…カロス中ならまだしもミアレ内だろ?狭過ぎる。…世界は広い。井の中の蛙大海を知らずってやつよ。

 

 あと叶う範囲も嫌らしい。ZAロワイヤル開催者の匙加減だろこれ。…ぶっちゃけ…うん、しょぼいというか。俺自身…叶えようと思えばなんでも叶えられる…からな。正直初めから魅力は感じていない。

 

 ブラッキーお気に入りのセイカさんが参加していることを除けば特にない。…ブラッキーは好き嫌いが激しい。嫌いな人の方が多いかもしれないのに自分から寄って撫でられに行くなんて早々ないよ。

 

 過去だと二人かな。一人はカルムくんでもう一人…は誰だったけ。普通に忘れたわ。五年で脳が衰えてるかもしれない。…もう若くないもんな。

 

 しかしこのZAロワイヤル。裏がありそうなんだよな。フレア団と同じく何をしようとしてるかは知らないし巻き込まれなきゃいい。…ご馳走様でした。

 

「マスカーニャ行きますよ」

 

「にゃっ!」

 

 マジックを中断し一目散に戻ってきて満面な笑みで定位置にしがみついた。…名残惜しそうな顔をする人々に一礼しハンサムハウスへ向かった。

 

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