ミステリアスな糸目キャラに憧れたら如何にも怪しすぎる不審者になった 作:あーあ=あ
「どうやら先客がいるみたいですね」
「にゃ」
ハンサムハウスの前で立ち止まる。
微かにだが声が聞こえた。…もしかしたら依頼を受けているのかもしれない。
あれから五年。ハンサムさんから引き継いだカルムくんから所長の座を引き継いでいる。調べて出てくるぐらいには有名な探偵。
ミアレの治安がどうであれ依頼は来るのだろう。ああ、カルムくんだがある地方で活躍していることだけは知っている。チャンピオンも降りているよ。
というかカロスリーグの人員がかなり変わっているらしく例えばズミさんは料理修行の旅に出ていたりパキラさんは前述の通り行方を眩ましていたり…チャンピオンの空席にカルネさんが腰を下ろすかと思えば女優業に専念していたりと面白いことになっているんだ。
ガンピさんとドラセナさんはまだ現役なのかな。……現役だろうなぁ。四天王とかチャンピオンは早々変わるものじゃないし。
自身から降りた場合は別として入れ替わりには厳しい審査がある。ポケモンリーグってのはそういうもの。
実力主義であり蹴落とし合い。それほどチャンピオンと四天王のポストはとても光栄であり偉大。……興味ないけどさ。
気ままに旅をしてるのが性に合ってるよ。
……足音が近づいてくる。建物の影に隠れ様子を伺う。
「…依頼……依頼かぁ」
出てきたのはセイカさんだった。
スマホロトムと睨めっこしている。依頼?…マチエールちゃんに依頼の手伝いでも頼まれたのかな?やっぱ忙しいのかぁ。
話し合いはまだ続いているみたいだし…予定を変更しよう。
「おやセイカさん。奇遇ですね」
偶然を装うようにぬるりと建物の影から出る。
「ひっ!?…あ……」
小さな悲鳴を上げ振り向きながら飛び退くセイカさん。ビビり過ぎじゃないかい?戦闘態勢みたいに構えてるけどなにもしないよ?
「私の顔になにか付いてますか?」
「あ、いや…なんでもないです」
うん、警戒が解けてない。
解けないなら仕方ない。ゴリ押そう。
「スマホロトムを見つめていましたがどうしたんです?」
「…マチエールさんに依頼の手伝いを頼まれまして」
やっぱり手伝いだった。…そうだね。時間潰しには丁度良いし打算的だが警戒を解いてくれるぐらいには好感度を稼ぎたい。
「お手伝い致しますよ」
「………は?」
セイカさんは目を点にして固まった。
だから手伝いだよ手伝い。正確には手伝いの手伝いってことになるんだろうけどね。
「…にゃ」
マスカーニャがセイカさんの顔をペタペタと触る。うわっ石像みたいに動かないやんけ。
「…は!?今なんて……柔らかいし良い匂い」
我に返ったセイカさんの顔にはマスカーニャの手のひらが張りついていた。ニャオハの時の名残なのか甘い果実みたいな匂いがするんだよね。
アロマセラピーにも利用できるらしいよ。取り敢えず落ち着いたし警戒も少し薄れているみたいだ。良かった良かった。
「お手伝い致しますよ。セイカさんはミアレに来てまだ日が浅いでしょう。これでも何度かミアレに足を運んでいるので軽い案内くらいはできます」
最後に来たの五年前だけど。
「……えっと…はい、お願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。セイカさんに危険が及ぶようなことは致しませんしさせません」
それじゃお手伝いを遂行し……マスカーニャ。
セイカさんの顔をペタペタするのはもう終わりにしなさい。これ以上は迷惑をかけ…セイカさん?セイカさんもセイカさんで気持ち良さそうに目を細めて…あ、もういいや。
「戻ってください」
「にゃっ!?」
「…あっ」
これじゃ依頼ができないでしょ。マスカーニャはマジックショーできたんだから今はボールの中で大人しくしといてね。…セイカさんも恨めしそうな顔をしない。
さっきはあれだけ警戒してたのに…なんだかなぁ。
★
わたしはマジシャンと一緒にマチエールさんの手伝いで依頼の解決に勤しんでいた。
「あ、見つけた!」
「あのヤミラミが持っていますね」
初めはメモワールさんの指輪を探しにドールビアン墓地へ。
「ヤミー!!」
「おやおや元気なヤミラミです。どうやらその結婚指輪にご執心の様子」
「それでも大切な指輪だから返して貰うよ。ポカブ!お願い!」
ヤミラミを倒し指輪を取り返してメモワールさんの所に……待って?結婚指輪なの?
メモワールさんに指輪を渡した時に教えてもらい結婚指輪だってことを知った。
なんで知っているのか聞いたら。
「指輪の内側にイニシャルが彫られていたのと依頼をするほど大切な物。…左手薬指に指輪の痕が残っていたのが決め手ですね」
普通依頼人の手とか見ないしどうやって指輪の内側を見たの…?後方でバトルを見てただけでバトルが終わった後はわたしがずっと持ってたのに……え、怖い。
探偵みたいな推理してるけど…忖度抜きですごいと思うけど見た目だけなら捕まる側だし…やっぱ怖いしちょっと…。
若干引きつつ一つ目の依頼を終え次の依頼は──
「ようやく本題です。アナタ!ワタシにピカチュウをください!」
「ええ…」
「どの地方でもピカチュウは人気ですねえ」
依頼人のエシャンさんにピカチュウを求められた。道具による進化に興味があって入手した道具がかみなりのいしで進化できるポケモンが欲しいとのことだった。ワイルドゾーン3に行きピカチュウを捕まえてポケモン交換。
交換後直ぐにエシャンさんはピカチュウにかみなりのいしを使いライチュウへと進化させた。
「ライチュウ……あー…まぁ大丈夫でしょう」
マジシャンの意味深な言葉に耳を傾けているとエシャンさんがポケモン図鑑を開いたみたいで。
「電気が溜まると攻撃的になりトレーナーを襲うかもしれない……」
凄い顔でわたしを見る。けど進化させたのはエシャンさんですよね?そこまでは面倒見れないですよ。というか分かってたなら教えてあげれば…流石にあの速度じゃ無理か。…なんか締まらない感じで二つ目の依頼が終わった。
「クロォス!!」
「よろしくねボワ」
ボワことヘラクロスが仲間になったところで次は三つ目で最後の依頼。それが──ー
「でっっっけぇ ホルビー!!!」
「お、大きいホルビー…?」
依頼人のトラヴェルさん曰く相棒のホルビーの倍以上はある規格外の大きさで両目がギラリと光っているらしい。
「……セイカさん。この依頼は私も前線に出させていただきます」
「え?」
「どうしました?」
「…なんでもないです」
てっきり後方傍観面してるだけだと思っていたのは心の中に閉まっておこう。
その大きなホルビーはワイルドゾーン外の路地裏にいるらしくてトラヴェルさんの案内の元その大きなホルビーと遭遇した。
「ボルル!!」
本当に大きかった。これってもしかして──
「
「やはり
……え?オヤブンポケモン?でも…ヌシポケモンは目は光ってなかった気がする。わたしの勘違いだった。
「ぬしポケモンをご存知なんですね」
「あ、えと……」
「ボルルーアァ!!」
「先にホルビーを対処しましょう。私はサポートに回ります。ブラ…いえルナトーンリフレクターを貼ってセイカさんのポケモンを守りなさい」
マジシャンが月の化身を思わせる隕石ポケモンルナトーンを繰り出しリフレクターを貼って盾のように前に出す。
「ポカブ!ホルビーの攻撃に気をつけながら戦うよ!」
わたしはポカブを繰り出しホルビーとの戦いが始まった。…苦戦することなく倒すことができた。ポカブに向けて放たれる攻撃をルナトーンが何回も受け続けてくれて安全に攻撃を入れ込むことができた。
まるでホルビーの動きを読んでいるみたいにポカブを守るルナトーン。…あれだけの猛攻を食らってもルナトーンはピンピンしていた。
わたしが戦わなくとも簡単に倒せたはずなのに攻撃は一切せずにサポートに徹してきた。この目で見たから分かる。…ポケモントレーナーとしての実力は本物。
それ故に底が見えないナニカに対するちょっとした恐怖と共に……本気で戦ってみたい。熱が滾る感覚を覚えた。最後の依頼も終えてハンサムハウスの帰り道。ホルビーと戦ったあとポカブがチャオブーに進化した。
お祝いに何か買ってあげよう。そんなことを考えていたら────
「失礼を承知に伺います。セイカさんあなたは何者ですか?」
ポケモン研究所で見た碧眼がわたしを真っ直ぐ見据えていた。
★
セイカさんのお手伝いを終えて気になったことが幾つか出てきた。一つ目はバトルセンスが非常に高いこと。それも天性の才ではなく長い年月をかけて養ってきた努力から得たものだ。
間合いから指示の的確さ。立ち回りも含めて初心者ではない。ミアレにオヤブンポケモンがいることに内心驚きサポートに回ったけど正直いらないと思うぐらいには強かった。
チャオブーに進化したがまだ成長途中でホルビー戦の際は指示に追いつけてない部分があったのは仕方がない。エンブオーに進化して実力を付けていけばチャンピオンクラスのトレーナーになってもおかしくない。……もうなっているのかもしれないね。
…あとはぬしポケモンを知っていたこと。もしかしてアローラ出身なのか?と思ったけどヌシポケモンの可能性がある。
だとしたらパルデア出身…アカデミーがあるからぶっちゃけ出身は当てにならないね。
アカデミーの元生徒の可能性はある。
手持ちもチャオブーとヘラクロス以外に確認はできていない。俺が言えた義理じゃないがセイカさんの素性が全く分からない。
不気味とか一切思わないけど興味が湧いた。
俺の言葉に足を止め見つめているセイカさん。
「……ただの観光客ですよ」
教えるつもりはないってことね。当然の返答だ。……ならば交渉する他ない。
「取引をしませんか?」
「取引?」
「私に聞きたいことがあれば仰ってください。なんでも答えましょう」
驚きながら考え込むセイカさん。隠すような事は基本ない。例え手持ちの内訳が知られようと困ることはない。
「わかりました。出身地はどこですか?」
取引は成立して…出身地ね。
「カントー地方のシオンタウンです」
「……ご年齢は」
「20から30の間ですね」
「……手持ちを見せて貰っても大丈夫ですか?」
「どうぞご自由に」
手持ちの入ったボール付きのベルトを外してセイカさんに渡す。
受け取り順番に見ていくセイカさんは4番目辺りから顔を顰めていき最後にはポカーンと口を開けベルトを返してくれた。
「どうでしたか?」
「これは
「ボールに入っているのならポケモンではないですか?」
流石に知らなかったみたいだね。可能性の一つは消えたってことで。あ、心の整理がついてない顔だ。心做しか見て後悔をしてそう。…それは自己責任です。
「……最後に一つだけ聞かせてください」
「どうぞ」
「貴方は敵ですか?それとも味方…ですか?」
堂々と味方、と口に出していってもいいんだけど。……正直にいっても信用されないだろう。でも正直にゲロります。
「味方です。正確にはセイカさん貴方の味方ではあります」
「……というと」
「セイカさんのお友達やお知り合いの味方とは限らないことです」
「……なるほど」
納得はしてくれているかな。さてと今度は俺の番だよね。
「改めましてセイカさん。貴方は──」
「あ!いたいた!セイカ…とマジシャン?」
聞き覚えのある声に振り向けば手を振りながらタウニーさんがこちらに駆け出していた。
あータイミングが悪過ぎるなぁ。セイカさんをチラリと見れば顔を取り繕いタウニーさんに向けて手を振っている。
ふむ…仕方ないか。
この場面で話さないということは…タウニーさんに聞かれたくないってこと。無理に聞き出す必要はない。
「タウニーさんどうも。私はこれで失礼…したいところですがマチエールちゃ…マチエールさんに顔を合わせようと思っていたのでご一緒させていただきましょう」
本来の目的はマチエールちゃんの顔とニャスパーのもこおを見ること。五年も経っているしもしかしたらニャオニクスに進化してたりして。
「マチエールさんの知り合い…そっかAZさんとも知り合いだからおかしくないね。マチエールさんにマジシャンのことを聞いたの忘れてた」
……ん?俺のことをマチエールちゃんに聞いた?セイカさんの顔を見る。
「…………」
凄い目が泳いでらっしゃる。
これはまんまとやられたね。セイカさんはマチエールちゃんから得た情報の擦り合わせをしたかったのか。
嘘を吐くか吐かないか。
ただ今回は嘘を言っていない。結果良きとしますか。
「まぁいいでしょう。私の素性を知られた所での話ですし」
本当にね。
セイカさんは見逃そう。
だが──
マチエールちゃんは別だよね?
セイカさんとタウニーさんと共にハンサムハウスへ。扉を開けて中に入る二人に続き──
「二人ともおかえりな…ぁ…!」
「んにゃ!」
久しぶりの顔を拝む。
五年の時は少女を大人の女性にするのは十分過ぎた。……服装はうん、ノーコメントで。もこおは変わらずもこおだね。
マチエールちゃんは俺を見るとぱぁと花を咲かせたような笑顔を向け立ち上がりとてとてとやってくる。
目の前にはマチエールの顔。ゆっくりと手を伸ばす。抵抗はない…ただ待ち侘びたと言いたげな視線を向けていた。
「お久しぶりですマチエールさん」
「はい!お久しぶりです!お兄さ」
伸ばした手でマチエールちゃんの頬を摘んでわりと強めに引っ張った。
セイカさんとタウニーさんが固まりマチエールちゃんはに”ゃー!?と声を上げているが気にせず。
「ふにゃ!」
「もこおさんも元気そうで良かったです」
笑顔でもこおと挨拶を交わした。
実際こんな不審者とサブクエチュートリアルやったら警戒しますよね