ミステリアスな糸目キャラに憧れたら如何にも怪しすぎる不審者になった 作:あーあ=あ
肩と首……膝の上が痛い。
ソファで座ったまま寝たらそうなるけどマチエールちゃんが膝を枕代わりにしていたのは予想外。
マチエールちゃんが起きるまで動けなかったわけで…しかもお昼過ぎまでグッスリだった。……疲れてたんだろうねえ。
不法侵入だけどセイカさんとタウニーさんが来てくれたから会話で暇を潰すことができてよかったよ。
会話の合間にタウニーさんがマチエールちゃんの寝顔をスマホロトムで撮っていたことはスルーした。
セイカさんは呆れながら注意をしていたがタウニーさん曰くこんなマチエールちゃんを見るのが初めてだったので記念に…とかいってたよ、うん。
マチエールちゃんは凄腕の探偵で人々との交流も広くミアレには無くてはならない存在。メガシンカを扱うことができるポケモントレーナーで実力はトップクラスと自分のように誇らしげにタウニーさんが教えてくれたよ。
メガシンカかぁ。懐かしい…メガジュペッタを使ったのを最後に全く使っていない。今はジュペッタが手持ちにいない。
カロスに来るまでは一緒だったけど手持ちの変更でお留守番。シオンタウンの居心地が良かったみたいでね。
サマヨール達と仲良く過ごしていることだろう。
セイカさんはマチエールちゃんの積もりに積もった依頼を消化するために街を奔走しタウニーさんは予定があるとかで離脱。
俺もホテルZに帰るためにハンサムハウスを後にしようと思ったらマチエールちゃんに再度呼び止められてしまった。話したいことがあるんだとか。…一度は断ったよ?…ただ寂しそうな顔をするんだよね。
同時にもこおからマチエールちゃんの心の内をこれでもかと捩じ込まれるんです。うーん…マジでカルムくんやハンサムさんみたいに何かした記憶ないんだけどなぁ。
なんとかしてカルムくんかハンサムさん連れてきた方が良きか?カルムくんの居場所と連絡先は知ってるしハンサムさんは…多分アローラ地方でしょ?確証はないけど。
セイカさんとタウニーさんは笑顔で見送ったのにこの対応と温度差よ。明日は雨が降りそうだなぁ…ヌメイルがヌメルゴンに進化できるね。良かったね。
ソファに座って色々と諦めつつ何やら準備をしているマチエールちゃんを眺める。
足元には資料が落ちており机には積まれた資料。ハンサムさんの時も思ったけど掃除しないのかい?
大切な資料なんだし仕分けした方が良い気がする。個人差はあれど掃除をすると集中できるし心に余裕もできるし。
見ていて俺が落ち着かなかったり。
様子を見て掃除させて貰うのもありかも。
「お兄さんお待たせ」
マチエールちゃんが駆け寄る。もこおは椅子に座っているからお留守番かな。
「話したいこととはなんでしょうか?」
「その前についてきて欲しい所があるの」
……あ、これ面倒な案件かもしれない。
マチエールちゃんの真剣な表情を見て思う。
正直お断りしたい。けど聞くのはタダ…か。
「わかりました。案内をお願いします」
「うん!それじゃ案内するね」
スッキリ顔のマチエールちゃんと共にハンサムハウスを出た。マチエールちゃんを前にし目的地へ向かう…ことはなく隣同士で歩く。
「そういえばZAロワイヤルには参加しないの?お兄さんの実力なら招待状が届いていると思うけど」
ZAロワイヤル…あーミアレ最強を決める奴?
「届きましたが削除しましたよ」
「え!?どうして…!」
「興味が湧かなかったので」
カロス最強を決めるなら腕試しで参加したかもしれない。そしたらカルムくんも来るだろうし白熱したバトルができただろうね。
「そうなんだ」
「マチエールさんは参加なさっているのですか?」
「あたしは探偵業が忙しくて」
そうだった。セイカさんが依頼の一部を肩代わりするぐらいの業務があってZAロワイヤルの参加はできないか。
結構歩いたけどここは……。
視界にはプリズムタワー程ではないが立派なビルが。入口の両脇には何故かデデンネが立っていた。
もしかして門番の役割を受け持っている?
なんでデデンネなんだろう。ちょっと…かなり分からない。
「ここだよお兄さん」
「このロゴは……クエーサー社ですか」
有名な外資系企業。
カロス発祥の企業ではない筈。…進出していたんだね。
「紹介したい人がいるの」
直ぐにでも引き返したくなってきた。
……理由つけてセイカさんと依頼巡りをすれば良かった。……後悔先に立たず。
仕事の依頼なら喜んで引き受けよう。
礫ほどの希望を抱えクエーサー社に入った。
★
「ひぃ…はぁ…はぁ……ふぅ…」
動悸が凄い。足がぷるぷると震え視界も薄暗いし寒気もする。
でも……これでなんとか…記録更新…した。
「だ、大丈夫か」
「け、けろ」
へたり込むわたしに駆け寄るトーベさんとケロマツ。
だ、大丈夫じゃないです。…心臓が破裂しそう。
首を横に振りダメってことを伝える。
トーベさんとケロマツは…あー…みたいな顔をして目を逸らした。
チャオブーとボワを出してもいい?
初めは変わった依頼だなって…思った。
…人類のスピードを見せてくれだもん。
高難易度アスレチックは聞いてない。
しかも時間制限ありで3ステージ。
何回梯子を昇り降りして、何回綱渡りをして、何回飛んだんだろう。
ただでさえ怖いのに手が滑り落ちかけたり…足を踏み外して落ちかけたり…距離感を見誤って落ちかけたり。
何回やり直したんだろう。
…考えるだけで…あはっ…あはは……。
辞めるにも辞められる雰囲気じゃなかった。トーベさんは喧しいし煽るし…ケロマツもゴール地点で待ってるんだもん。
それでもやった…!やり遂げた…。
……もう二度とアスレチックはしない。心にそう決めた。
「あー…足場アスレチックを通じてキミとケロマツにキズナができただろう」
「け…けろ」
少なくともアスレチックに対するなにかはできたと思います。
…心臓が痛い。…深呼吸…深呼吸……。
「このケロマツを仲間にしたらどうだ…?」
「…けろり」
傍に寄り不安げなケロマツ。
ちょっと待って…もう少しで落ち着くから。
……よし、落ち着いた。
「よろしくねケロマツ」
「けろりっ」
…んっしょっと。今日はもう帰ろう。
シャワーを浴びてベッドに飛び込もう。
「よいものを見させて貰ったぜ。超速クリアのご褒美だ。…悪かった、気をつけて帰ってくれよ」
はい…そうします。
トーベさんから報酬を受け取り震える足でケロマツと一緒にホテルZに帰った。
★
「マチエールさん。お待ちしておりました。この方は例の……」
大柄で屈強な男性のお出迎えです。
一点を除いてサングラスや服装からボディーガード…ではないか。…警戒心が浅すぎる。
見掛け倒しでは無さそうだけどね。
「はい、お兄さ」
「要件をお聞きしたいのですが」
マチエールちゃんには悪いけど口を挟むね。
「いきなりお呼びしてしまい申し訳ございません。貴方にお願いがございましてマチエールさんを頼らせて」
それは分かってるし謝罪もいらないのよ。
「私が欲しい言葉は要件の内容です」
「お、お兄さん…!」
「マチエールさんにはいったと思いますが私にはやることが残っています。時間は有限です」
嘘も方便、ぶっちゃけ無限です。
うぐっと口を噤むマチエールちゃん。
あー膝の上を枕にグッスリ眠っていたことを気にして…ごめん。
「…そう、ですね。わかりました」
男性が口を開く。…自己紹介?名前はマスカットさんで社長秘書をしているのね。
クエーサー社はポケモンと人のキズナをより深める為にミアレシティの都市再開発を進めている、と。
…都市再開発。3年前には始まっていたの?
流石にカントーまで情報は入って来ないか。
こっちはこっちでその時期はゴタゴタしてたしなぁ。……ああ、ZAロワイヤルの主催もクエーサー社が務めているんだね。
それで本題は……協力して欲しい?
ん?ZAロワイヤルはAZさんの提案?暴走メガシンカ?……ZAロワイヤル自体が強いメガシンカ使いを集め戦力を増やすことを目的としている?
マチエールちゃんも調査をしているのね。だから他の依頼が滞っているのか。…要するにミアレの危機ってこと。
……情報量が多くないですかね?
せっかちしたのは俺だけど叩き込み過ぎだよ。
内容は理解した。理解した上でいうけど。
「お断りします」
「え?」
「…何故ですか?」
暴走メガシンカには対抗するにはメガシンカが必要でなんしょう?……無くても行けそうな気がするけど。
「私はメガシンカ使いではありませんからね」
ほんまそれ。ジュペッタがいるにはいるよ?実力もお墨付きで。ただメガシンカ使いと言われれば…微妙だよね。
「でもジュペッタが」
「手持ちは変わっていますのでジュペッタはいません」
「メガシンカできるポケモンはお持ちですか?」
食い下がるね。
うん、見せた方が早い。
「手持ちにはいませんよ。お見せしましょう」
ベルトを外し手持ちを見せる。
「このポケモン…!?」
「これは……」
……あ、2人とも食い入るように見ている。
セイカさんと同じで後半の手持ちを。…もしかしてマチエールちゃん知ってる?…マスカットさんも。
マチエールちゃんは探偵でマスカットさんは大企業の社長秘書。…知っててもおかしくないか。
「いかがでしょうか」
「メガシンカできるポケモンはいないみたいですね」
「…うん」
納得してくれたみたいでなによりです。
一応メガシンカに対抗できる手段を持っていることは内緒にしとこ。
……ミアレで使えるか分からないし。
しかし暴走メガシンカねえ。大変な時期に来てしまったみたいだ。
ミアレの中だけってのが幸いだろうね。
5年前はカロスを丸々消し飛ばすかもしれなかった。
ただ規模は小さくとも危機は危機、か。
「申し訳ありませんが私ではお役に立てないようです。実力者が現れることを願っています」
セイカさんみたいな有望株がいるし大丈夫だろう。わざわざ出しゃばる必要はない。
外へ向けて足を進める。
「…待ってください!」
マスカットさんに呼び止められた。…話すことはないと思うんだけどなぁ。
「まだなにか?」
「……別件でお願いがありまして」
んー?…別件?
マチエールちゃんの反応から何も知らないみたいだし個人的なお願いね。
「なんでしょう」
「写真を撮らせていただけませんか?」
写真?……写真?
写真なんて撮ってどうす……。
あーそういうことかな。
「構いませんよ。
「……その…
娘さんがいるんだね。
…職場で私情を含むってことはとても愛情を込めているんだろう。
頭のミミロルとヤンチャムを模したアクセサリーも娘さん関連かもしれない。娘さんからのプレゼントだったりして。
「そういうことでしたら。この場に出しても構いませんか?」
「はい」
「ありがとうございます。クレセリア」
ベルトからクレセリアの入ったボールを取り出し真上に投げる。ボールが開き光を放ちながら頭上をヒラヒラと舞い降りてくるクレセリア。
その場の全員が釘付けになるほどの美しさを放っていた。
「この方が貴方の写真を撮りたいようです」
「ルルゥァ」
頷くとマスカットさんの前に立つ。
ご自由にと言わんばかりに動きを止めた。
「…あ、では失礼して」
マスカットさんからスマホロトムが飛び出しパシャパシャと撮っていく。…遠くから写真を撮る人がいるけど…まぁいいか。
「やっぱりクレセリア綺麗だよね」
マチエールちゃんは見た事あるよね。ちょこちょこバトルに出していたし。
シャッター音が鳴り止みマスカットさんの元へ戻るスマホロトム。確認を終えるとマスカットさんはサングラス越しに満足そうな笑みを浮かべていた。
「ありがとうございます!娘に見せるのが楽しみです」
「それは良かったです」
クレセリアも嬉しそう。
……そうだ、これも……。
「よろしければこちらを受け取ってください」
懐から取り出しマスカットさんに差し出す。
それは三日月を思わせる金色の羽根。
「…こ、これは」
「
あれ?マスカットさんが固まっちゃった。
マチエールちゃんもそんな顔をしてどしたん?
「こ、こんな貴重なものを……!」
へーみかづきのはねって貴重なんだ。
悪夢を取り払う効力があるのは知ってる。あとは…クレセリアに出会えるかもしれない…かな?
「協力できないお詫びということで。クレセリアも構いませんね?」
「ルナァン」
頷き返すと横に立つ。
持っていても使い道はないからね。
「…な、なんとお礼を申し上げればよいのか。…答えが見つかりません」
おずおずと受け取り大事そうに抱える。
「お気になさらず。要件は以上でよろしいですか?」
「は、はい!…本当にありがとうございます!」
「私はこれで失礼いたします。クレセリア行きますよ」
深々とお辞儀をするマスカットさんとマチエールちゃんに一礼しクレセリアと共にクエーサー社を後にした。
出た後に気づいた。
クレセリアを出しっぱなしにしていたことを。
あっという間に人が集まった。
はぁ……どうしたの
違う。…プリズムタワーの
……一応警戒だけはしておこう。
んー…シャッター音がうるさい。
クレセリアをボールを戻して歩き出す。見世物ではないのでそんな顔されても困るよ今日はオフです。…目立つし囲まれるから迂闊に出すもんじゃないな。
これじゃ他の2体を出したらどうなる事やら。お腹空いたからご飯食べに行こう。
早くセイカさんランクFまで行けるといいなーと思います