ミステリアスな糸目キャラに憧れたら如何にも怪しすぎる不審者になった   作:あーあ=あ

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第9話

 ランク戦は順調でXからWに上がった。

 依頼もマジシャンが解決してくれて早めに帰り仮眠も取れたからコンディションは抜群。

 

 筋肉痛はまだ残っていて体の節々が痛かったりする。…ムチを打ってホテルZへ朝帰り。

 

「こんっ!」

 

「キャンキャン!」

 

 ……お狐様たちが喧嘩をしていた。

 

「お、落ち着いて〜」

 

 マジシャンが昨日捕まえた?フォッコ。

 あとはロコンとあたふたさせているデウロ。

 

 AZさんとフラエッテはいないみたい。

 

 ロコンはミアレだと見ないポケモン。…おかしくはないと思う。マジシャンいわく預かっているらしいし。

 

 当人達は本気なんだろうなぁ。……うーん、じゃれ合っているようにしか見えない。

 

 技を撃った形跡は無いしお利口さんだよね。外野からすれば微笑ましい光景。

 

 なのにデウロの慌てようが…そのおかしくて……ふふっ。自然と頬が緩んでいく。

 

「ど、どうしよ……あ!セイカ!」

 

「ただいまデウロ。…何をしてるの?」

 

 気付いたデウロに見られる前に顔を引き締め即応対。話を聞くにデウロはマジシャンにフォッコとロコンを頼まれたらしいです。

 

 マジシャンと出会ったんだ。寧ろ同じホテルに泊まっているのに出会わない方が珍しい。AZさんの言葉もあったし仕方な…デウロはマジシャンの客室に凸ろうとしてたから関係ないや。

 

 このままだと会話ができないのでわたしがフォッコをデウロがロコンを抱えて椅子に座る。

 

 暴れたり抵抗はなく大人しくされるがままだった。…お互いに睨み合っているのを除けば大丈夫…なのかな?

 

「それで……マジシャンは?」

 

「ん?知らないよ」

 

「……え?」

 

 ポケモンを任されているんだからどこに行くかぐらいはちゃんと聞いとかないと。何かあった時に困っちゃうし連絡先とかも──

 

 そういえばアドレス交換をしていない。

 あれだけ濃い出会いと出来事があったのに。

 

 身の上話を聞かせて貰ったけどマジシャン個人の事じゃなくて故郷の話であんまり知らない。

 

 わたしの素性を話す約束もそのまま……。

 

 …頼んでみる?いや、でも…それはなんか、ね?距離感が近過ぎるっていうか味方って言ってくれたけど仲が良い訳じゃないしデウロ達と違って友達…って間柄でもない。

 

 それにわたしから聞くのは…その、違うじゃん?それじゃまるでわたしが……思い出さない!!

 

 ……マチエールさんなら知ってるかな。

 今度こっそり教えて貰っ…た所でそれはそれで…ああー…もう!……落ち着かないと。

 

 子供じゃないんだし普通に聞けばいい。

 別にアドレス交換するのだって普通のことでしょ?何を難しく考える必要があるの?

 

 これで終わり!

 ……AZさんとフラエッテが朝から居ないのは珍しい。まだ自室で眠っているのかな?

 

「落ち着いたしマジシャンさんに電話しちゃうよう」

 

 は?

 腕の中のロコンを撫でるデウロのスマホロトムがコール音を鳴らす。

 

『デウロさんですか?どうなさいました?』

 

「こんっ♪」

 

 スマホロトムに顔をのぞき込ませるロコン。あ、待って!落ち着いてフォッコ!…今はダメ!帰ってきたら沢山甘えられるんだから我慢してお願い!

 

 腕の中で暴れもがくフォッコをなんとか抑えている目の前で心做しか嬉しそうなデウロと尻尾が荒ぶり顔を綻ばせたロコン。

 

「その…手に余っちゃいまして」

 

 髪を弄りながらロコンに視線を落とす。

 マジシャンの様子は分からない。…でもマジシャンのことだし怒ったりしないんだろうなぁ…。

 

『…そういうことですか。大丈夫ですよ。こちらこそ無理をいってしまい申し訳ございません』

 

 ……ほら。

 

「あ、謝らないでください!あの!その……あたしが舞い上がっちゃって…勢いで引き受けちゃったというか」

 

 ……デウロ?

 

「えっと…故郷の話を楽しく話したことはなかったし…来てからも来るまでにも色々あったり……今は楽しいけど…寂しかったので……」

 

 ………………。

 マジシャン以前の問題だった。

 

 ……デウロのことはそう。

 タウニーにピュール、AZさんにフラエッテ。

 マチエールさんのことも…何一つ知らないんだ。

 

『私もですよ。…またお話に花を咲かせましょう』

 

「……はい!」

 

 自然の笑顔。

 

 …うん、当たり前じゃん。

 ミアレに来て一週間も経ってないんだよ?親交も深めていないのにパーソナルスペースに踏み込む勇気なんて持ち合わせてない。

 

 偶然マジシャンとデウロが会話をして仲良くなっていただけ。よその街で生まれ故郷の話ができれば嬉しいよね。

 

 マジシャンはわたしの故郷を知ってるかな。…知ってそうだなぁ。

 

『お礼になるか分かりませんが私が借りている客室に残りのお土産がございますのでご自由にお取りください』

 

「え!?いいんですか!?ありがとうございます!!」

 

「こんっ!」

 

『鍵は開けてあります。ロコンもう少しだけデウロさんと待っていてください。あと…デウロさんの向かい側にいるフォッコも拗ねないでください。()()()()()と一緒に待っていてくださいね』

 

 マジシャンの部屋。本人同意なら入っても大丈夫……ん?いまわたしのこと言ってた?

 

「え?なんでわかったんですか?」

 

 代わりに聞いてくれる。

 

『デウロさんの膝の上にはロコン。残りのフォッコを放って置くなどデウロさんがするはずもありません。考えられるのはデウロさんの他に誰かが存在しフォッコを見てくれている。王と女王は外出中です。タウニーさんとピュールさんもご予定で出ています。としたらZAロワイヤル明けで帰ってきているであろうセイカさんぐらいしか私には心当たりがありません』

 

「……わぁ…探偵みたい」

 

 またまた代弁をしてくれる。

 名探偵だと言われても謙遜ない。

 

 マチエールさんより探偵らしいというか。

 マチエールさんはどちらかというと探偵よりも何でも屋みたいな…。

 

 でも見た目を脳が否定する。

 

『…真似事に過ぎませんがお褒めいただき光栄です。これで失礼します』

 

「あ、はい。ありがとうございました」

 

 通話は終了した。

 はぁ…と息を吐きロコンを撫でる。マジシャンを見れて満足気な顔を晒すロコン。

 

 先程の険悪の雰囲気は消え去っていた。

 腕の中のフォッコもマジシャンの声を聞いたからか喉を鳴らし落ち着かせている。

 

「凄い人だよねえ」

 

「そうだね」

 

 それだけは頷くことしかできない。

 …それを代償に胡散臭い雰囲気を漂わせているんだろう。

 

 神は二物を与えず…なんて……。

 

「それじゃマジシャンの部屋に行こ!」

 

「こんっ♪」

 

「こぬっ♪」

 

 デウロの掛け声に元気よく返事をするロコンとフォッコ。

 

「セイカも!」

 

「あ、うん」

 

 立ち上がりエレベーターに向かうデウロの後に続いた。…今更ながらZAロワイヤル明けで疲れていて体はクタクタ。

 

 ……ちょっと眠い。

 フォッコもふかふかで温かいし湯たんぽみたいに……。

 

 ☆

 

 デウロさんとの通話を終える。

 ロコンとフォッコがいたらゆっくりミアレ美術館を回ることはできなかっただろうしデウロさんには感謝しかない。

 

 偶然鉢合わせて自己紹介ついでに世間話をしたらまさかのホウエン出身で盛り上がってさ。わざわざお土産のお礼までしてくれて。

 

 良い子だった。

 プロダンサーに憧れダンススクールに入るために奨学金制度を使いミアレまでやってきた行動力は素晴らしい。

 

 元はシェアルームに住んでいたがルームシェアをしていた友人が事務所のオーディションに合格し退去した。

 

 そうなると1人で2人分の家賃を賄うことになってしまい懐が厳しく途方にくれていたところをタウニーさんに誘われてホテルZに下宿させてもらい代わりにMZ団に加入したと教えてもらったよ。

 

 どの分野にもいえるけどプロになれる者はひと握り。デウロさんには頑張って欲しいね。

 

「……ふむ」

 

 改めてミアレ美術館へと入る。

 5年前は入ったことがなかったなぁ。

 

 1階はカロスの芸術がメインとなっている。カロス地方で初めてメガシンカ現象を起こしたと言われているルカリオ。マスタータワーにあるメガルカリオ像のレプリカや幻のポケモンであるディアンシーの肖像画。

 

 …ミュウが描かれていたのは驚いた。

 時の権力者が己の素晴らしさを世に広めるために幻のポケモンのミュウを描き加えさせたと。

 

 …古き時代からミュウは有名だったみたいだね。……なんというか。本人が見たらどんな反応をするのやら。

 

 他にも興味深い絵画が展示されていて所々に登場する海外のアーティストが少しだけ気になった。

 

 ひと通り見終え2階へと上がる。

 どうやら2階では企画展をやっているらしい。

 

 ……()()()()()ね。

 まさかカロスでヒスイを思い出すことになるなんて思いもしなかったよ。

 

「懐かしいですね」

 

 ショーケースに展示された調査隊員の制服。

 ギンガ団初代団長の着物に鎧。…古代ヒスイ…シンオウ人の正装まで。

 

 シンオウを代表する伝説のポケモン。

 ディアルガとパルキアを模した石像。…ヒスイ文字まである。…クレセリアも描かれているね。

 

 手作りのモンスターボールも全種類展示されていた。…現代まで残っていたの?だとしたら凄まじい耐久性を誇っている。

 

 そして何より…。

 

 ラベン博士のスケッチ。

 今の今まで表舞台に上がることがなかったからてっきり消失したと思っていた。

 

 シンオウ地方の民家の蔵から当時の写本の一部が発見された。そのおかげでポケモン図鑑に関する研究が進んだとか。

 

 その手の界隈は大騒ぎだっただろう。

 スケッチの正確さに添えられた文章から伝わる文才などラベン博士の功績は近年再評されている。

 

 亡き後に評価される……まるで──

 …また図鑑を完成させたのはラベン博士ではなくどこからともなく現れた15歳の若者だったと伝わっている…ね。

 

 ………彼/彼女は──

 俺には関係ないこと、か。

 

 そういえばノボリさんは無事に帰ることができたらしい。少し前にバトルサブウェイのマルチトレインが再開されたとニュースに流れていた。

 

 展示資料にはノボリさんが指南していたと思われる記述があり最後には帰る時が来ましたと言い残し姿を消したと記録にある。

 

 機会があれば行って聞いてみるのもありかもね。バトルサブウェイにも参加しよう。

 

 ジムリーダーや四天王にも劣らぬ実力者揃い。……白熱したバトルができるだろう。

 

 ふぅ…帰りに何か食べて帰る。

 のはデウロさんとセイカさんに申し訳ないか…っと!

 

「っ…失礼しました」

 

 余所見をしていたらぶつかってしまった。

 

「こちらこそ申し訳ございません。お怪我はありませんか?」

 

「大丈夫です…っ!」

 

 帽子を深く被り顔は影に隠れて見えない。

 長身で大きなリュックを背負っている。

 

 艶のある金髪はシンオウ地方のチャンピオンを思い出す。シロナさんは元気にしてるかな。

 

「クレセリア。他にも珍しいポケモンをお持ちのようですね」

 

 男性はベルトに付いたモンスターボールに視線を向けていた。

 

「……色々ありまして。では」

 

 シルクハットを押さえて一礼。

 ミアレ美術館を出た。去り際も視線を感じた。

 

 ……いや、まさかね。

 空を見ると日が沈みかけている。

 

 長居したなぁ。

 帰路につきホテルZへ。

 

 AZさんがお出迎え。フラエッテさんは晩御飯の支度をしているらしい。

 デウロさんとセイカさんが居ない。

 

 ロコンとフォッコに凸られる覚悟はしていたんだけど拍子抜け。

 

 AZさんに2人のことを尋ねたら帰ってきた時にはいなかったとのこと。

 

 外出しててもおかしくない。

 鍵を受け取り客室へ向かう。…ドアが少し開いている。

 

 ……あー…なるほどねー。

 ドアを開けて中に入る。

 

 部屋の奥へと歩きベッドを見た。

 

「…すぅ……」

 

「……んゆぅ」

 

 眠っていた。2人の間にはロコンとフォッコが気持ち良さそうに寝息を立てている。

 

 共に眠るほど仲が進展したようでして。

 テーブルには開封されたお土産。窓は開かれ冷たい風が入り込んでいる。

 

 起こすのは野暮…かぁ。窓を閉める。

 シルクハットを置きスーツを脱いで2人にかけた。

 

「……良い夢を」

 

 電気を消して部屋を出る。

 AZさんとフラエッテさんに説明しないとなぁ。椅子で寝るのも悪くない。

 

 エントランスに戻りAZさんに説明。

 

「…そ、そうか。すまない」

 

 呆れつつ申し訳なさそうにするAZさん。

 おてんば娘達に振り回されて疲れちゃったんだろうね。おかげでゆっくりできたしこれぐらいは許容範囲。

 

「私は大丈夫です。椅子をお借りしますね」

 

「もちろんだ。もう少しでフラエッテの料理ができあがる。良かったら食べて上げて欲しい」

 

 夕飯のお誘い。

 丁度良かった。適当に外食しようと思っていたところ。

 

「是非ともご相伴に預からせていただきます」

 

「ありがとう。フラエッテも喜ぶだろう」

 

 椅子に座りAZさんと雑談をしつつタウニーさんとピュールさんが戻ってきたタイミングでフラエッテさんの料理を頂いた。とても美味しかった。

 

 タウニーさんとピュールさんは2人がいないことに不思議がっていたがAZさんの説明を聞いて…タウニーさんは苦笑いを、ピュールさんは…心底呆れていた。

 

 全員が部屋に戻り静かになったエントランスで椅子の上で一夜を明かした。後日、顔面蒼白の2人が土下座する勢いで謝り倒してきたのを必死に止めた。

 

 寝起きでちょっとイラっとした。

 けど、まぁ……。

 

「こんっ♪」

 

「こぬっ♪」

 

 ロコンとフォッコが仲良くなってたから良しとしよう。

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