【お知らせ】憑依転生者南雲ハジメの青春記録。   作:無気力キャルちゃんマン

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まだ一般通過生徒

 ブルーアーカイブの世界 第2章第5節

 

 通りがかった生徒に明星ヒマリの居場所を聞きながらミレニアムをぶらついていると、俺の感覚器が強烈な敵意を感じ取った。

 

 この世界に来てから1番の強い意志を叩き付けられて身体に活力が漲る。

 

「おい」

 

 振り返るとそこにいたのは記憶のままの美甘ネルだった。メイド服ではないようだが、制服を着崩した女子高生そのものの姿でこちらを睨みつけている。すでに両手に愛銃を携え、いつでも抜き放てるよう意識が体の隅々まで行き渡っていた。

 

「俺に何か用か?」

 

 美甘ネルの後ろには、これまた制服姿の一之瀬アスナの陰が見える。

 

 なんとなく用件はわかるが俺は()()トラブルを起こす気はなかったので、一縷の望みを賭けて友好的に話しかけてみた。

 

「リオの言ってた侵入者ってのはお前だろ?」

 

 ダメでした。

 

 そりゃこれだけ臨戦態勢取ってますってバシバシ敵意ぶつけられたら、どれだけ鈍感な奴でも戦闘は避けられないって思うだろうよ。

 

 相手が確信している以上、無駄な問答をするつもりはない。

 

「ああ」

 

 それが開戦の合図になった。

 

 美甘ネルの両手のSMGが火を噴き、同時にこちらとの間合いを詰めようと廊下を駆ける。

 

 俺はドンナーを抜き放ち、刹那の間に6射の銃弾を放つ。瞬く間の連射によって6発の銃声が1発の間延びした銃声に聞こえるそれ。ありふれ原作において神速のクイックドロウと称されたものだ。

 

 ()()の弾丸は美甘ネルの放った銃弾にぶつかり、軌道を変えた銃弾がまた別の銃弾を弾き、それが幾重も連鎖していく。両者の間の空中で、無数の火花が踊り狂った。

 

「んなっ⁉」

 

 さすが美甘ネルといったところか。まだ1年生の段階なのに、自らの放った弾丸が直進を許されず狂わされていく様をしっかりと視認できたらしい。しかし経験豊富な3年生ではないが故に、目の前の事象が信じられず、数瞬ほどの隙を晒してしまった。

 

 それは()()()にとっては致命的だ。

 

 クイックドロウの最後に放った弾丸が、空中の銃弾に弾かれ、美甘ネルの踏み出しかけた足を刈り取る。

 

「――そだろっ!?」

 

 重心が崩れれば、支える足が使えない体は、ゆっくりと重力に従い降下していく。

 

 このまま膝をつかせても良いんだが、これだけじゃ美甘ネルは認めないよな?

 

 パシュ!

 

 ――という空気の抜ける音を響かせて、義手の内手首から細いワイヤ―が取り付けられたアンカーが飛び出した。それを巧みに操り、前のめりで倒れる小柄な体を支えるように*1、倒れ行く美甘ネルをグルグル巻きに縛り上げる。

 

「……なんのつもりだ」

 

 プラーンとなった美甘ネルはブスーッとした顔で問いを投げ捨てる。

 

 負けて悔しいとか、碌に相手にならずに惨めとか、助けられたことには感謝しとくとか、でも助け方が酷過ぎるとか。

 

 表情から察するに、その胸中は複雑怪奇に満ちているようだった。

 

 でもまあ、とりあえず――

 

「ビリっとしとくか」

「……は?」

 

 俺はやさしく〝纏雷〟を発動させた。

 

 

 

 

 ブルーアーカイブの世界 第2章第6節

 

 声も漏らさずに気絶した美甘ネルの拘束を解き脇に抱える*2

 

 そうしているとそろりそろりと一之瀬アスナが近付いてきた。

 

「スゴいね〜貴方。ネルちゃん*3をほとんど何もさせずに無力化しちゃうなんて」

 

 言葉の上ではらしいセリフを吐くが、その顔には驚愕と困惑を張り付けて、どこか無理をした様子を見せている。

 

 まあ、俺が敵対者に気遣いなんてするはずもなく、感じ取った違和感を放り投げて相手に向き直った。

 

「お前は戦わなくていいのか?」

 

 すると一之瀬アスナは眉を下げて苦笑するようにつぶやいた。

 

「ん~、なんか貴方とは戦っちゃいけない気がする」

 

 なるほど。一之瀬アスナといえば運と勘みたいなところがあるから、そういう反応をするのはわからなくもない。

 

 ただ、コイツって趣味が襲撃とか、戦闘が好きとかってかなり好戦的な奴じゃなかったか?

 

 それを上回るほど勘が警鐘を鳴らしたってことなんだろうか?

 

「それじゃあとりあえずコイツを受け取れ」

「わわ、投げちゃダメだよ? ……うん、ありがとね」

 

 近寄ってきた一之瀬アスナに、脇に抱えた美甘ネルを手渡す。

 

 戦うつもりがないならこれで用は終わっただろう。美甘ネルの言葉からこの襲撃は調月リオの指示らしいし、威力偵察の類だと思えば一々気が立つほどのことでもないしな。

 

「うーん……?」

「……なんだよ」

 

 かと思えば彼女は手渡された姿勢のまま、穴が開くほどに俺を見つめてくる。彼女自身も困惑を隠せない様子で、おそらくは混乱している胸中をありのまま言葉にした。

 

「不思議……貴女とは仲良くした方が良いって感じと仲良くしたらダメって感じがするんだよね」

 

 んん? つまり勘では相反する指令が同時に頭に浮かんでいるってことか? 一之瀬アスナにとって両方が利益足り得て、両方とも不利益を被る可能性がある。ということ……だよな?

 

「どうしたらいいかな?」

 

 不安げに尋ねてくるが、俺の答えは決まっている。

 

「そんなもん俺が知るか」

 

 南雲ハジメとして産まれたときから()()生き方は俺自身の()()で定めてきた。

 

 自分の選択の先を想像して不安になる気持ちも、誰かに責任を肩代わりしてほしいと思う弱さも理解できる。だが身内でもない他人の選択の責任なんて負えるか。

 

 それに人間は案外、どんな形であれ確固たる意志ってものを持っているものだ。

 

「勝手に自分で決めりゃいいだろ……」

 

 今は初めての経験で混乱しているだけだ。時間経てば慣れるだろ。人間って慣れる生き物らしいからな。

 

「なるほど……」

 

 なにが? なるほどってなる要素あったか? 適当に言った言葉を真に受けるなよ?

 

 一之瀬アスナは太陽のように燦々と輝く笑顔を浮かべると、ただでさえ近い距離をさらに縮めてきた。

 

「じゃあ仲良くしようね!」

 

 ……なにがじゃあなのか皆目見当もつかないが、当の俺は「うおっまぶしっ」となって目を腕で覆い隠していたので反応はできなかった。

 

 なお咄嗟に腕を目元に動かしたため認識阻害アーティファクトは廊下の隅に飛んで行ったことをここに報告しておく。

 

「あー! 何か変だと思ったら男の人だったんだー!」

 

 一之瀬アスナのテンションがさらに一段階上がった。俺は凡ミスをしてしまいテンションが一段階下がった。

 

 その後は、大型犬の耳と尻尾が幻視できるような状態の一之瀬アスナに延々と付き纏われ、結局そのまま調月リオの居場所まで案内されるのであった。*4

 

 …………ところで美甘ネルは保健室なりに連れて行かなくていいのか?*5

*1
ハジメ主観

*2
ハジメは双子の妹から女の子にはやさしくしなきゃダメといった薫陶を受けている。なお……。

*3
C&Cはまだ作られていない

*4
道中、一之瀬アスナがしつこく名前を聞いてきたため、ハジメは渋々名前を教えた

*5
ハジメが気を使ったためほとんど怪我はない。一之瀬アスナはそのことを見抜いていたので治療の必要はないと判断した




 本編に入れるかわからない一口メモ。

 南雲ハジメ
 母親と妹の影響で少女漫画的シチュエーションのヒーローの行動をよくやらされていた人。おそらく妹の存在で女の子には比較的やさしくなっており、ありふれ原作の南雲ハジメと差異の大きい部分。ただし奈落落ちした後はやっぱり雑になっている。具体的に女の子を運ぶとき――
 原作ハジメ→アーティファクトで運ぶ。
 今作ハジメ→自らの体で運ぶ(ただしお米様だっこか脇に抱える)
――ぐらいの違い。なお敵対した者には容赦しない模様。

 固有魔法〝纏雷〟
 ビリっとしたら手持ちの弾薬に影響出るんじゃないか? でもレールガンとかで上手く使ってるし問題ないのか? おそらくハジメの弾薬が特別に対策されているか、固有魔法だからビリっとさせる相手を細かく取捨選択できるんだろう。たぶん。今作は後者ってことで。

 美甘ネル(2年後とあまり変わらない姿)
 原作開始時と比べると経験不足が目立つ。しかしポテンシャルと戦闘能力自体はキヴォトスにおいて高水準。(身体以外は)これからも成長を続けている。チート野郎と出会って明確な目標ができた。ぜってぇアイツぶっ殺す!

 一之瀬アスナ(髪もタッパもまだそこまでない姿)
 さすがのアスナの神秘もハジメ相手にはバグった。――というわけではない。実は南雲ハジメの肉体にはある秘密がある。〝それ〟とキヴォトスの生徒はある意味致命的に相性が悪い。そのためアスナの神秘の意識的な部分は良縁だと判定を下したが、無意識的な部分がハジメを全力で警戒している。とはいえ本人はハジメと仲良くすることを決めちゃったのでこれからどうなるかは誰にもわからない。
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