【お知らせ】憑依転生者南雲ハジメの青春記録。 作:無気力キャルちゃんマン
あと天才美少女ハッカーのエミュに紛れ込んでくるのはこれ多分アコだな。
追記:生徒の名前を間違えていたので腹を切ります。
ブルーアーカイブの世界 第2章第7節
一之瀬*1に案内された部室を見上げて、俺の頭の中は疑問符で一杯に埋め尽くされていた。
「神秘事象解明部?」
「ヒマリちゃんが作ったんだって~」
特異現象捜査部じゃないのか? いや、そういえば特異現象捜査部はセミナーの会長調月リオの要請で出来たんだっけ? じゃあ今はまだないのか?
ダメだ。妹ほどしっかりやっていなかった弊害で碌なこと覚えてないぞ。大きな出来事なら大雑把に覚えてるんだが……。
まあ特異現象捜査部の前身の部活とでも思っておけばいいだろう。
「見てないで早く行こう!」
一之瀬も待ちきれない様子だしな。なんでそんなに楽しそうなのかわからんが。
俺は雑ノックからの扉即全開をかまし、緊張感の欠片もない気の抜けた顔で室内に入っていく。
「調月リオはおるか~」
「おるかーっ!」
何故か一之瀬が俺の言葉を真似しながら同じように入室するが、そんなに好かれるようなことしたか俺?
室内には一番近くの正面に調月リオ、その斜め後方に明星ヒマリが車椅子に座り、各務チヒロがその脇を固めていた。当たり前だが全員2年前とあって全身から幼さを感じさせる。
「――っ! ……私がセミナーの調月リオよ」
どこか怯えのある雰囲気を隠しながら、始めに口を開いたのは全身が黒い少女。
「南雲ハジメだ。…………なんでそんなに怯えてんだ?」
よくよく見れば明星ヒマリも各務チヒロも似たような雰囲気を醸し出している。
ミレニアムに来てから先ほどの美甘ネルとの一件以外は、そうおかしなことはしていないはずだが。
そんな俺の疑問に答えたのは車椅子の白い少女明星ヒマリ。
「当然でしょう。たった2週間程度でブラックマーケットを制圧し支配下に置いた人間など、たとえどれだけ警戒してもし足りないことはないでしょう?」
他の2人を見ても異論はないことから、同様の理由で警戒されているのか。となると、あらかじめ、この中で情報は共有されていると見ていいだろう。
まあスパイの類も放置しているし、緘口令もしているわけじゃないから、俺を知られていることに驚きはない。人間型の男性ってだけで目立つのに、この見た目だもんな*2。
なんか後ろの方から「えーっ! ハジメくんそんなスゴイことしてたんだーっ!?」ってワンコの声が聞こえるけど「ソウダネ」と頭を空っぽにして返答しておく。一之瀬と関わると俺の中のシリアスゲージが減っていく気がしたから仕方ないんや。これがアニマルセラピーってやつですか……?
軽く息を吐き気持ちを入れ替える。
「何より驚愕すべきは、暴虐に慣れているはずのキヴォトスのブラックマーケットにおいて、その統一を果たした手段が暴力だということです」
「……なるほど」
キヴォトスだと銃器をぶっ放しても所詮は喧嘩の延長線上のことだ。そりゃ現代日本に比べたら治安は悪いし怪我や死は身近なモノだろう。しかし生命を脅かす凶器で殺し合いをしている意識は誰も持ってはいないはずだ。
それに比べて俺は、あらゆる奴らを殺すつもりで殺し尽くしている。殺し慣れていると言っていい。こびり付いた死臭は臭いを発しなくとも、持つ者の威圧感に説得力を持たせる。
生徒や同類相手には怪我や損害で済むだろうというある意味の信用が、俺相手には少しも感じられなかったからあんなにビビってたわけか。
そんでもってこの女はそこらへんの背景を把握しているから、明星ヒマリにしてはまるで
…………考えてるよな? 考えてるだろうな。だって明星ヒマリだし*3。
「よくわかった。とりあえず暴力は振るわねえからもっとリラックスしな。そんなんじゃ本題に入れねえだろ?」
調月リオは少し驚いた風に眉を動かし、おそらく無意識に落としていた腰を元に戻した。
「……そう。これでいいかしら、本題に入りましょう」
その言葉とは裏腹に、全身に力を入れて警戒心を隠しもしない。
さっさと用件を聞いて追い返した方が合理的――ってところか?
調月リオの内心なんて興味ないからいいけどよ。
「……まあいいか。俺は調月リオをスカウトしにきた」
数秒ほど時が止まって。
「――――正気なの? 他校の生徒会役員をスカウト?」
私混乱してますって顔の年相応な少女がそこにはいた。
「そんなことできるわけないよッ!?」
静かに事の成り行きを見守っていた各務チヒロが声を荒げる*4。
何故だが室内の空気も困惑が見て取れるほど強くなってきた。
そんなに変なこと言ったか?
コホンとかわいらしく仕切り直しを入れた明星ヒマリは、鋭い目付きでこちらを見つめてくる。
「そういう事でしたか……入学間もないセミナー生徒を自分色に染め上げスパイに仕立てるつもりですね?」
「えっ、違うけど」
「えっ?」
「えっ?」
『…………』
何とも言えない空気が広がっていく。
「で、ではリオの能力を買っているのですね」
まあ、そういうことになるか。事務能力と代行を任せる能力を買いに来たとも言えるしな。エンジニアとしての腕は正直要らないけどあった方がお得感あるし*5。
「そうなるな」
肯定したことで自尊心を持ち直した明星ヒマリの渾身のドヤ顔が炸裂する。
「そしてソフト面において、この天才清楚系病弱美少女ハッカーの助力を求めて来たと」
「いらない」
「えっ?」
「いらない」
『…………』
アラクネあるし。ハッキングは間に合ってます。
「要ら……ない……? 性格の悪いリオ*6が求められながら私は要らないと……?」
愕然。そう表情に描かれた車椅子の少女は俯きながらぶつぶつと零す。
お隣の各務チヒロさんが痛ましいものを見る目をしていますよ?
キッと視線を俺にぶつけてきた自称天才清楚系病弱美少女ハッカーは、今度は怒りが湧いてきたようで前のめりに口を開いた。
「どうしてそこの壊滅的デザインセンスクリエイターをスカウトして、このキヴォトスのあらゆる情報を観測できる天才美少女ハッカーをスカウトしないのですか? 正気ですか?」
「えぇ……」
さっきまで他校の生徒会役員をスカウトなんてありえないって困惑してたやろがい……。
調月リオに負けたように思えて我慢ならなかったのか?
もうなんか面倒臭くなってきた。
最初から
口の止まらない明星ヒマリを横目に宝物庫からアラクネを2体召喚し、調月リオと明星ヒマリの傍に潜ませる。
「ヒマリは置いておいて、私はミレニアム以外に行くつもりは――」
プスッ
「――な……い……?」
突然全身の力が抜けたように倒れ込む調月リオを片腕で抱き留める。
「リオ……?」
「なにが……?」
事態の急変に2人とも警戒よりも混乱が勝っているように見える。
仕方がないことだろう。威勢よく啖呵を切ろうとした友人が目の前で意識を失っては。
なお一之瀬は少し離れていたのでバッチリ見られている。気にしないが。
「これは――眠くなって気持ち良くなるお薬だ」
『――――』
絶句といった有様の明星ヒマリと各務チヒロ。
「い、いやいやいや! それ絶対にダメな薬だよね!?」
再起動したのは各務チヒロが早かったか。
「後遺症はないから大丈夫だ」
「気にしているのはそこじゃないよ!? いや気になるけど!」
「――そうです。重要なのはそこではありません」
その言葉の中に抗いがたい凄みを感じて、ツッコミしていた各務チヒロは口を閉ざした。
静かになった空間で明星ヒマリは目元をキリっとさせ、強い意志を込めた眼差しでこちらを射抜いた。
「怪しげな薬でリオを眠らせ、何を――」
プスッ
「――す……る……?」
焼き直しのように意識を失う明星ヒマリ。
「ヒマリッ!? ヒマリィィィィッッ!?」
床に倒れる前に近寄り、調月リオとは反対側の肩に担ぐ。ちょっと動くのに邪魔だからついでに調月リオを脇に抱えた。
「じゃあコイツら借りてくから」
「許すわけないでしょッ!!」
まあそれはそう。
ツッコミしながらも各務チヒロは淀みなく愛銃を構えた。
眼前で友人たちが誘拐されそうになっては、そうするのも当たり前だろう。
なので俺は出発前に作っていた代替案を提示することにした。
「まあ待て。ちゃんと代わりを作ってきた」
「か、代わり……? 作ってきた……?」*7
宝物庫から取り出したるは黒と白の2体の人形。
等身大調月リオ人形と明星ヒマリ人形だ*8。
「これは2人の人形……? それより今のどこから……?」
細かいことは気にすんな。
「わあ! リオちゃんとヒマリちゃんの人形だね!」
おう一之瀬いたのか*9。
美甘ネルを抱えたままテンションが上がる一之瀬。というか美甘ネルはいつまで寝てるんだ?
それに特に反応はせず、宝物庫から外に出した2体の人形に魔力を与えて起動していく。
謎に包まれた魔法の人形のヴェールが今剥がされる!
「ピッー! ミレニアムサイエンススクール、セミナーノ調月リオヨ。最モ合理的ナ答エヲ、提示シテアゲル」
「ピッー! 神秘事象解明部ノ部長……。ミレニアム最高ノ天才清楚系病弱美少女ハッカーノ明星ヒマリト申シマス。フフッ、ヨロシクオ願イシマスネ」
「あからさまにロボットッ!!」
不満でもあったのだろうか?
「コイツらは凄いぞ。腕部に6門のガトリングを装備。脚部に100発のペンシルミサイルを格納し、胴体には各種グレネードを取り揃えてある。注目すべきは目の部分でここには小型化した――」
「そういうことじゃないッ!!」
なんだと? 武装面に不安があったわけじゃないのか?
「どう見てもロボットじゃない! すぐにバレるよ! あなたはミレニアムと戦争でもしたいのッ!?」
なんだそんなことか。
当然俺だってそんな面倒臭いことをするつもりはない。すでに対策済みだ。
「大丈夫だ、問題ない。事情を知らない奴には認識阻害されるように作ってあるからな」
「に、認識阻害? そんなことできるわけが――」
そのときノックの音が響き渡り、各務チヒロは口を閉ざした。
調月リオと明星ヒマリが眠っている以上、今の部屋の主は各務チヒロのはずだが、その主が許可を出すよりも先に一之瀬が「入っていいよー」と告げてしまった。
「ちょっ、まっ」
慌てる各務チヒロ。開けられる扉。知らん生徒に見られる2体の人形。
「……調月さん、時間になってもいらっしゃらないので探しましたよ。……あら? 明星さん車椅子に座ってなくていいんですか?」
人形たちを調月リオと明星ヒマリだと思って普通に話しかける生徒!
「なんでよッ!?」
各務チヒロはもう言いたいことがありすぎてパニックになっていた。
「ビックリしました。どうかしましたか各務さん?」
「ありえないよね!? あなたがなにかした――」
いっぱいいっぱいになって入室した生徒を無視し、各務チヒロの視線は原因の男の方へ。
だが、そこには誰もいないのである。
誰も! いないのである!!*10
「――――」
ついには脳が真っ白になり、呆然としてしまう。
ただせめてこれだけは言いたかった。
「早く帰してねッ!?」
キミ締めのセリフそれでいいのか?
年内に投稿するため急いで書きあげましたので「本編に入れるかわからない一口メモ。」は休止します。もしかしたら後で書くかもしれません。そのときは最新話の前書きにてお知らせします。
ちょっとカロリー高まってきたんで次の話で下げたいです。