【お知らせ】憑依転生者南雲ハジメの青春記録。 作:無気力キャルちゃんマン
ブルーアーカイブの世界 第1章第10節
オルニス*1から覗く限り、多方向からの同時進行が始まっているらしい。さしずめサウスクラウド商会包囲網といったところか。
どうやら、急速に勢力を増した得体のしれない新参者を、圧倒的な数で封殺してしまうつもりのようだが、さもありなん。確実な情報を何一つ得られず、噂話程度の真偽不明な情報しか手に入らないなら、普通は手を変え品を変え時間を掛ける。
しかし2週間程度で自分たちに比肩するほどの大勢力となった相手には、時間を与えてしまえば手の付けられない強力な敵になってしまう可能性がある。
それなら、一時のプライドよりも連合を組み、何が出てきても押し切れる物量で捻り潰してしまえとなるのは、何らおかしいことではない。普通はそれで終わりだからな。
問題は、敵対した相手が普通じゃなかったというところか。
不良娘たちの訓練で使った広い空間のど真ん中で、俺は頭上に掲げた宝物庫を眩く光らせる。
出現したのは長方形の巨大な箱。見るものが見れば鉄道コンテナのようなそれに、自らの脚力を使って飛び乗る。
トントンとつま先でコンテナを蹴ると、俺の魔力を吸い取り、箱の隅々まで浸透させていく。
そうすると、エネルギーを得たアーティファクトがギミックを起動し、無数の扉が開くようにコンテナを変形させた。
さらに複数のオルニスの探知情報を同期させ、脳内マップに残存敵勢力を赤い光点として出力。数えるのも億劫になるほどの光点を多重分割した思考で手動ロックオンした。イメージは超○空要塞か機動○士 種あたりか。
設置式重コンテナ型アーティファクト、タウゼント・ヴェレン。
1024発の思念誘導式マイクロミサイルを内包した固定兵装アーティファクトだ。
いつだったか妹に触発されて俺が作った兵器だが、ぶっちゃけ数は多いけどファン○ルミサイルだよね。
アウトリガーを展開し、最終セーフティを解除する。
それじゃ、行ってらっしゃい。
「\カーニバルダヨ!!/」
☆
はじめに気付いたのは一人の女子生徒だった。
「ん? なんか飛んでないか?」
「えぇ? どこだよ?」
数年来の友達と受けた知らん商会の襲撃依頼だが、動員される人数を聞いていた彼女たちは、しょうがない事とはいえ余裕ぶっこいて油断していた。
それは仕方がない側面もあるだろう。2週間で大きく勢力図が塗り替わった今のブラックマーケットは、情報に聡い者でもなければ、いつも通りに見えてしまうものだ。これはハジメが徹底的に情報を制限している影響もある。
彼女たちは後に「相手がわかっていたらこんな依頼受けなかった」と零すほど、自分たちの情報不足を深く後悔することになる。
故に、その結果が変わることはなかった。
ドォーンッ!!
「ギャーッス!?」
最初にどこかから爆発音が響き、次いで花の乙女とは思えない酷い悲鳴が轟いた。誰かがいたずらで誤爆したと思っていた彼女たちだが、まとめ役の生徒が空を見上げて叫んだことでその認識は覆る。
「襲撃だーッ!!」
そんなバカなと軽くパニックになりながらも、長い傭兵生活で身に染みた警戒態勢を瞬時にとって襲撃者を探す。
だが襲撃してきた
「違うッ! 上だッ!」
反射的に見上げた頭上には、空を埋め尽くすほどの大量の小型ミサイルが、群れを成して襲い掛かってくる光景が存在した。
「えっ」とつぶやいたとき、すでにミサイルが額で花を咲かせる瞬間だった。
ドォーンッ!!
そうしてその生徒は意識を失った。
彼女は悪くないだろう。強いて言えば戦場で油断したことだが、ついさっきまでここはまだ戦場ではなかったのだ。誰だってそうなる。
これもすべてはどこかの魔王が、思念誘導式マイクロミサイル1024発なんて頭のおかしいモノを開発してしまったからだ。おまえおかしいよ。
同様の光景は、もはや至るところで勃発した。
迎撃しようとしたオートマタは、匠の機動で銃弾を回避したミサイルで弾け飛んだ。
耐久力に自信のある生徒は一発目の着弾をなんとか耐えたが、「あら、足りない? じゃあもう一発ね」とばかりに飛来したミサイルであえなく撃沈。
背中合わせで死角を無くした傭兵もいたが、弾切れまで物量で攻められて無事汚ねぇ花火となった。
そして爆発と狂騒のカーニバルは数十分に渡り続けられ、それが終わったころには、立っている戦力は100人にも満たなかった。地に落ち、血に塗れ、屍*2を晒している数は、その数倍じゃ利かない。足の踏み場もないほどと言えば、壮絶さは筆舌に尽くしがたい有様だ。
戦略上ではれっきとした全滅判定だが、彼女たちは傭兵で使われる側だ。襲撃で生き残った数が少ないので行きませんとはいかない。大きな勢力の依頼は金払いはいいが、舐めたことをした場合の報復が容易になされてしまう。逃げたとしてもブラックマーケットにいる限りは見つかる可能性が高いだろう。戸籍の無い不良生徒なんて、どの自治区に逃げても受け入れられることはない。やるしかないのだ。
這う這うの体で戦力を再編して*3、生き残った彼女たちは集合地点へ向かった。足取りは、とてもじゃなく軽快とは言い難かったが。
そうして辿り着いた集合場所には、すごい見覚えのある様相の待ち合わせ相手が!
「あー、ひょっとしてそっちも?」
「……ということはあんたらもか」
どうやらそうらしい。
集合してくる傭兵たちは、程度の差こそあれ、どこも全滅判定されていそうな感じばかり。これで万全の状態の相手を襲撃するとか無理じゃね? という、何とも言えない空気が漂ってきた辺りで、誰かが言った。
「なんかいるぞ?」
さっきもこんなんあったな……勘弁してくれ……。言葉には出さなかったが、この場にいる者たちの表情は雄弁にその内心を語っていた。
言い出しっぺの視線の先、輪郭すら霞む遠方から歩いてくるのは人型だった。
その人影は時間を経るごとに存在感を増し、傭兵たちの視線を釘付けにしていく。
その人影は高身長だった。抜きん出ているわけではないが、並び立つものが存在しないと錯覚させるほどに。
その人影は左腕が義手だった。金属質の腕は頼りなさなんてなく、あらゆる困難を文字通り粉砕する力強さを感じさせるほどに。
その人影は白髪だった。色素の抜けた髪は儚さを感じさせるはずが、むしろ活力の漲るアスリートを彷彿とさせるほどに。
その人影は眼帯をしていた。隻眼の瞳を鋭く変化させ、敵を無情に見定めようとしている。
その人影は――男だった。キヴォトスでは存在しない。人間の男性*4。
「お、おとこ……?」
その男は――南雲ハジメは、ざわつく傭兵たちを見渡して、にやけた口を開いた。
「ここらで手打ちにするつもりはあるか?」
普通なら即答で否を突きつけるふざけた要求も、現在では答えることが出来ない。なぜなら高度な判断をできる現場指揮官がこの場にはいないからだ。さきほどの襲撃で現場指揮官含め、偉そうなやつは狙ったかのように戦闘不能になった。もちろんハジメの策略通りである。
だからしばらくの後、ホログラムで偉い奴が出てくるのも当たり前のことだろう。
「……こんなガキの男に好き放題やられたのか」
オートマタの男は不愉快そうにつぶやいて、ハジメを睨みつけた。
そう反応される心当たりしかないハジメは肩をすくめ、時間がおしいと本題を切り出す。
「で、どうするよおたく」
「ありえんな」
今度は即答され、少し驚いた。
被害だってシャレになってないだろうに、あちらは是が非でもサウスクラウド商会を潰したいらしい。良いようにされてばっかりだからいいとこなしかと思ったが、判断力は悪くないようだ。
まあ、
「じゃあ――――死ね」
宝物庫から現れ出でるは、回転式六砲身×六という化け物ガトリングレールガン メツェライ・デザストル。全長三メートルのミサイル&ロケットランチャー アグニ・オルカン。
傭兵たちが戦闘態勢を取る前に、魔力を伴った威圧を広範囲に放つ。
全力ではないから数秒動きを止めるのが関の山だが、ハジメにはそれで充分だった。
ヴォッッ!!
と、そんな空気そのものが破裂するような異音を響かせ、一瞬で薬莢のスコールを発生させたメツェライ・デザストル*5は、射線上の一切を尽く薙ぎ払い、生徒もオートマタも獣人も等しく塵芥に変える。
一方、アグニ・オルカンは静かな立ち上がりを見せ、300発のペンシルミサイルと60発の大型ミサイルはオレンジの火線を引きながら、それぞれ標的を蹂躙すべく四方八方へと散開していき、ほぼ同時に着弾――大爆発を引き起こしていた。
これによりたった数秒で残存戦力の5割が消失。
「――――」
肉の体なら顎が外れそうなほど唖然としているホログラムのオートマタに、ハジメはいっそ陽気な雰囲気で言葉をぶつける。
「すぐに片づけて行くからな。そこで待ってろよ」
本編に入れるかわからない一口メモ。
南雲ハジメ
携行火器より設置火器や大型の兵装をよく作る人。小型化もいいけど時代を逆行するような大型化もロマン。作中のマイクロミサイルはペンシルミサイルよりデカい。おそらく原作のハジメがやらないことも嬉々としてやりがち。それはネタ方面も例外ではない。
双子の妹Uさん
兄は錬成師ではないからしょうがないとはいえ、ギミック無視の大雑把な開発物には苦言を呈したい。それはそれとして大型化も良いよね……な状態。兄がメインで身に着けるアーティファクトのほとんどが自分製であることに仄暗い喜びを見出している。
不良娘たち
お留守番中。こんな一大事に力を合わせなくてどうすんだ! 状態だったが、ボスが俺一人でも十分だろと軽い雰囲気だったので気勢を削がれた。あとで見させてもらった映像には、ほとんどなにもせずにブラックマーケットを火の海に変えるボスの姿が……。これ私たちってなんでいるんだろうな……とへこんだ。