プライマーたちと魔法少女系地球侵略   作:鈴木颯手

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第四話「反撃の魔法少女」

 どういう訳なのかは分からないが魔法少女の総数のうち、実に半分近くが日本人の少女達だった。

 魔法少女になるためには異界ゲートを通じてやってきた異界の妖精がこの子だ! と見出した少女と合意の元、契約を結ぶ事で魔法少女になる事が出来るのだ。

 幸いにも、妖精たちの異界ゲートは通る時のみに出現するものであり、魔獣が通る者のように常時開きっぱなしではない。妖精たちは魔獣に襲われる地球人達に対抗する術を与えてくれているのだ。

 無論、それをして妖精たちに何のメリットがあるのかと言われれば妖精たちの世界は既に魔獣によって滅ぼされており、難民と化している為であった。それに加えて妖精たちも自分たちと似た境遇の地球人達を見捨てて置ける程薄情ではなかったためだ。

 そんなわけで魔獣たちと戦えるようになった魔法少女達だが残念ながら活動できる年数は限られていた。その期間はどんなに長くても30歳が限度とされていた。理由は未だ改名されていないが大人になればなるほど魔法少女として活躍するために必要な魔力が少なくなっていくためであるとされていた。

 そのため、既に最初の魔法少女たちは引退して自分たちなりの生活を歩んでいるわけだ。

 

 そして、魔法少女となった彼女たちは様々な魔法を使う事が出来る。とはいっても人それぞれ魔法の種類は違う。フロストベルのような氷属性、フレアハートのような火属性等基本的にそれらに特化する。

 故に魔法少女には後方支援しか出来ない者も攻撃しか出来ない者も存在するのだ。そんな中でアークルミナはどうか、と言われれば後者に分類される。

 

「はぁっ!!」

 

 その攻撃魔法は単純明快。高威力の光線を放つ。言ってしまえばそれだけであるがそれ故に強力な魔法だった。現に彼女が薙ぎ払うように放っただけで目の前に存在した蜘蛛型の巨大生物はほぼ全滅したのだから。

 彼女の光線は最低威力でさえ建物を一瞬で破壊できてしまう程に強力だった。そのために本来ならば複数人で対処しなければならない魔獣相手に一人で戦う事が出来る程だった。

 そしてこの光線は魔法少女の単発火力の中では最強に分類されており、アメリカ最強の魔法少女であるスター・ストライクにも威力面で言えば大幅に勝っているのだ。

 

「チャージに入るわ。次弾までは任せるわ」

「任せな! 行くよ皆!」

「「「「了解!」」」」

 

 しかし、その威力に比例してチャージ時間も長い。一度放てば基本的に次に放てるようになるまで1分から10分程がかかる。魔獣を一撃で仕留め切れなければ反撃は必至であり、そうならない為に彼女は一撃で仕留めるかバディを連れて戦いに挑んでいた。

 今回もそうであり、15人の魔法少女のうち、4人は彼女とチームを組んでいる魔法少女だった。

 

「いつも通り遠距離の敵はあたいが仕留める! メロディは支援!」

「はい!」

 

 アークルミナより年上で、姉御肌のインフェルノ・フェニックスが指示を出す。チームの司令塔の役目も果たす彼女の指示によってチームは最善の動きを見せ始めた。

 最初にインフェルノ・フェニックス自身が得意の爆炎魔法を発動し、その威力アップをメロディ・ハートに指示をした。オーケストラの指揮者のような姿をしたメロディはその指示に従い魔法を発動する。すると何処からともなくきれいな音色が流れ、インフェルノの回りに半透明の音符として現れた。

 これはメロディの魔法であり、音楽と共に仲間にバフの付与や回復を行う事が出来るものだった。これによりインフェルノの魔法は更に攻撃力を増し、それを思いっきり敵に向けて放つ。激しく燃え盛る火球が近くの敵に着弾し大爆発を引き起こした。彼女の爆炎の魔法とはここから命名されており、爆発する火球を生み出す事が出来るのだ。その威力は連発すればアークルミナを上回る事が出来る程だった。

 

「ブレードはゴールドと共に負傷者を後方に! サンクラウンに預けて来い!」

「了解!」

「分かりましたわ」

 

 次に指示を出されたのはブレード・オーキッドとゴールドリーフだ。ブレード・オーキッドは作業服にヘルメットと一見魔法少女には見えない姿をしているがこれでも日本で上位に位置する者だ。様々な武器を生成することが出来る彼女は本人の知識に武器の性能が依存するものの、製鉄会社の社長の娘として専門的な知識を有している事で魔法の力を十全に発揮する事が出来ていた。近接戦闘も強く、敵が接近してきた時に主に立ちむかう役目をしている。

 一方のゴールドリーフも金色のドレス姿とこちらも魔法少女には見えない出で立ちだが強力な防御結界を張る事が出来る守りに長けた魔法少女である。衣装に関しては本人が名家の出である事が関係しているだろう。何しろ魔法少女の服は本人の資質と最も最適と思っている事が合わさって反映されるのだから。実際、インフェルノ・フェニックスの衣装もジャケットにズボンといういでたちなのだから。

 

「動けそう?」

「私はなんとか……。でも、雪乃ちゃんが……!」

「ならフロストベルさんはブレードさんがお願いします。フレアハートさんは私が付き添います」

「分かった」

 

 力ではブレード・オーキッドが上である為に瞬時に役割を決めると二人は怪我したフロストベルとフレアハートを連れて後方へと撤退を開始した。

 それを援護するようにアークルミナのチーム以外の魔法少女達も援護を開始した。

 

「はぁっ!」

 

 アークルミナと同じ四天王の一人であるルミナススピアは貫通が付与された光の槍を生み出すとそれを蜘蛛型の巨大生物に射出する。その数4本。直線的に飛ぶ槍は勢いを落とす事なく巨大生物を次々と屠っていき、大量の屍を生み出した。

 

「とりゃぁぁっ!!!」

 

 もう一人の四天王であるグリーンエッジも同様に鋭い斬撃型の風魔法で周囲の巨大生物を次々と切り裂いていく。日本最強の魔法少女の名は伊達ではなく、この3人の活躍だけでも敵を圧倒し始めていた。

 

「四天王に後れを取るわけにはいかないわ!」

 

 一方で、四天王以外の魔法少女も奮戦していた。炎属性魔法を使用するヴォルケーノは確実に1体1体蜘蛛を駆除していき防衛に貢献していた。

 

「……参る!」

 

 甲冑姿という一風変わった姿の魔法少女であるムーンジェイドも刀を振るっては飛ぶ斬撃をお見舞いし、蜘蛛を次々と切り裂いていた。他の魔法少女も四天王に劣らない活躍を見せ、防衛戦を維持するどころか投下された怪物の大半を駆除する事に成功していた。

 

「すごい……! あっという間にあの数を……!」

「私達も頑張れるって事だよ!」

 

 回復に特化した魔法少女であるサンクラウンの治療を後方で受けていたフロストベルとフレアハートは彼女たちの活躍を見て驚愕していた。5年前に異界ゲートが破壊されて以来大規模な魔獣との戦いは行われる事は無くなっていた。それ故に魔法少女がたくさん集まる事で起こる戦闘を本当の意味では理解していなかったのだ。

 

「でもこれならここは守る事が出来る……!」

 

 フロストベルはかみしめるようにそう呟いた。実際、この場においてプライマーの敗北は決定的だった。既に地上の巨大生物は駆逐されており、テレポーションシップから投下される蜘蛛にも攻撃が向かい、地上に降り立つ前に駆除される始末であった。

 

「あ、逃げてく……」

「それもそうだろう。こうなってしまえば奴等に出来る事は無いからな」

 

 テレポーションシップはこれ以上の投下は無意味と判断したのかハッチを閉じると向きを変えて海の方へと向かっていった。それが意味することはただ一つ。魔法少女が勝利をつかんだという事である。世界各地でアースイーターの浸食とテレポーションシップによる巨大生物の投下が行われている中で日本は国土を守り切ったのである。

 

「っしゃぁぁっ!! あたい達の勝利だぁぁっ!!!」

 

 インフェルノ・フェニックスが歓喜の声を上げている。他の魔法少女もそれに応じる事はなかったが同様の事を思っているようで満足気に逃げていくテレポーションシップを見送っていた。

 

 フロストベルはそんな様子を見てかすかな希望を抱いていた。敵は強大だが人類はまだ負けていない、と。きっと勝利できると。そのためにももっと力を付けなければとフロストベルは決意を新たにした。

 

 

 

 

 

 しかし、そんな彼女の希望は呆気なく打ち砕かれる事となった。

 テレポーションシップはそのままウラジオストクを襲撃。アースイーターと共にロシア沿岸部をずたずたに破壊すると同時に札幌上空にもアースイーターが飛来した。

 加えて、北海道各地にテレポーションシップと同様に転送装置を備えた塔、テレポーションアンカーが投下され、稚内市防衛戦から僅か一月で北海道は巨大生物の楽園と化し、北海道からの完全撤退を決断せざるを得ない状況に追い込まれる事になる。

 そして、これ以降テレポーションアンカーが世界各地に投下され、アースイーターがない場所も巨大生物の脅威を受けるようになるのだった。

 

 人類はまた一歩滅亡の道を歩んでいたのだった。

 





【挿絵表示】

2056年の地図

この作戦に参加している魔法少女たちは上位に位置する程強い者ばかりです。簡単に言えばストームチームが勢ぞろいしたくらい強いです。ただの蜘蛛では相手になりませんでした。
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