魔女ノイナイ魔女裁判   作:テラウラ

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生ける魔女の死 Part4

冬のエリアに差し掛かると、先ほどと同じ容赦ない冷風が顔を刺す。

だが、お昼ごはんを食べた直後で体に熱もあるおかげか、

さっきの寒さよりは幾分かマシに感じられた。

 

「二人とも、おそいでー!」

「てやてやー!」

「うわっ!」

 

私たちの姿を見るなり、ナツミが声を上げ、シロがいきなり雪玉を投げてくる。

慌てて首を傾げて避けると、雪玉は私のすぐ耳元をかすめて後ろの雪原へとボフッと吸い込まれていく。

 

「こらー! マキちゃん避けちゃだめ~! 遅れてきたペナルティだよー!」

 

いたずらっぽく笑うシロの手には、すでに次の雪玉が握られている。

 

ふとあたりを見回してみると、ナツミとシロとイリスの三人は、

それぞれ小さな雪の壁を盾にしながら、三すくみとなって雪合戦を繰り広げている。

 

少し離れたところでは、ミサとマリーが二人で身を寄せ合い、

せっせと雪だるまを作っているようだった。

マリーが小さな手で綺麗に丸めた雪玉を差し出すと、

ミサが嬉しそうにそれを受け取って大きな胴体の上に乗せている。

 

「はい隙ありー!」

「わわっ!?」

 

すると、私に向かって雪玉を手にじりじりと距離を詰めていたシロは、

逆にナツミから雪玉をぶつけられる。

 

「戦場でよそ見したらあかんで~!」

「油断しちゃった~」

 

ナツミは得意げに笑いながら次の雪玉を握る。

シロは笑いながら頭の雪を払う。

 

「ナツミさんっ!」

「うおっ!?」

 

すると今度はその隙を突いて、イリスが雪玉をナツミへ向かって投げる。

 

「あははは、イリスちゃんやったね、敵討ちだ~!」

「す、すみません! でも今なら当たると思いまして……!

 ナツミさんに当てるのは至難の業なので……!」

「やるなーイリスちゃん! 見た目と違て抜け目ないで~」

 

雪原に笑い声が響くその様子を見ていると、

ついさっきまで砂浜でしていた重たい話が嘘のようだった。

 

「リンリとハイジはいないのかしら?

 あの二人も冬のエリアに行くって言ったけれど」

 

私の後ろにいたノクスが三人に尋ねると、シロが小高い丘の上にあるラウンジを指差す。

 

「二人とも、あそこでまったりしてるよ~。

 ゲームとか食べ物、飲み物持ち込んで、私たちが遊ぶとこ見てるんだって!」

「リンリさんとハイジさん、

 『私たちは暖かいロッジのラウンジでぬくぬくと温かい飲み物でも飲みながらゲームでもして、

 窓の向こうで寒空の下で雪まみれになってバカみたいに遊んでるみんなを高みから見物して愉悦する』

 と仰ってました……!」

「えぇ……」

 

イリスがナツミの背後からひょこっと顔を出し、

記憶力の良さを発揮してリンリの言葉を完璧にトレースしてみせる。

あまりにもリンリらしすぎるド直球な言い草に、私は思わずドン引き声を漏らした。

 

視線を向けて目を凝らすと、ラウンジの窓から二人の姿が見える。

 

こちらの視線に気付いたリンリはマグカップ片手に優雅に手を振り、

ハイジはゲーム機らしきものを抱えながら、その隣でぬくぬくしていた。

遠く窓越しでも分かるくらい、至福の空間を満喫しているようだった。

 

「全く、あれのどこが"友達付き合い"やねん!」

「……あの二人らしいわね。じゃあ、私もラウンジで一緒させてもらおうかしら」

 

ノクスは極めて自然なトーンでそう言うと、

丘の上にあるラウンジへと続く長い階段に向けてすたすたと歩き出した。

 

(もしかして、分担してみんなの様子を見よう、ってことなのかな)

 

ラウンジ組と雪原組。

確かに分かれていた方が全員の様子は把握しやすい。

 

頭の中で一度そう納得しかけて──私はハッと足を止めた。

 

私は寒そうな雪原ではしゃぎ回るナツミたちを見た。

 

そして暖炉のあるラウンジで温かい飲み物を飲みながらゲームをしているリンリたちを見た。

 

さらにそのラウンジへ向かっているノクスを見た。

 

(……ん?)

 

しれっと、寒い場所で遊んでる面々の監視の方を押し付けられた気がする。

 

「ちょっとノクス!?ずるい、自分だけぬくぬく空間に避難する気でしょ!」

 

私が慌てて声を上げると、階段に差し掛かるところでノクスがぴたりと足を止めて振り返った。

 

「そ、それは違うわ」

 

あからさまに目を泳がせて声を上ずらせる。

完全に図星であった。

 

私は無言でじっとノクスを見つめる。

 

「……」

 

「違うわよマキ。私はラウンジをもう一度よく調べたいだけ。

 それに、丘の上にあるあそこからなら冬のエリア全体がよく見渡せるわ。

 これぞまさに、効率的な定点観測というものよ」

 

「じゃあ何でそんなに早足なの?」

 

「寒さのせいよ。とにかく、上の方は私に任せて……

 マキは下でしっかり『調査』して頂戴ね。……それじゃ!」

 

それだけ一気にまくしたてると、ノクスは私の追及から逃げるように階段を駆け上がっていった。

飼い猫を追いかける探偵も斯くやと思わせるほどの軽快なフットワークだ。

そんなに急ぐとツルっといくぞ。

 

「あーっ、ノクスちゃん逃げたー!」

「さすが、撤退の判断が早いわぁ。……っていうことは、マキちゃん」

 

シロの叫び声に続いて、ナツミがニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら、雪玉を両手に持って迫ってくる。

いつの間にか、イリスもその背後でぎこちない投球フォームを構えていた。

 

「ノクスちゃんの分の遅刻ペナルティも、全部マキちゃんに受けてもらうで!」

「は、はいっ……! 行きますよ、マキさん!」

「わわ、待って、タンマタンマ! せっかく4人いるんだしせめて2vs2にしない!?」

 

何故か流れで1vs3になりそうな不条理きわまりない構図を、どうにか平均化させようと試みる。

 

「ふむ~、2vs2かぁ。一理あるね!」

 

私の提案に、シロが手に持っていた雪玉をこちらに投げながら乗ってきた。

ポフッと私の足元で弾けた雪玉は、どうやら賛成のサインらしい。

 

「なるほど~ええな! ほな、チーム分けはどうする?」

「じゃんけんで決めましょう!」

 

ナツミも雪玉を手の中で転がしながら頷くと、イリスがぱっと手を挙げた。

 

「おっ、平和的やな」

「そうだね~!」

 

なんとか公正な勝負に持ち込むことに成功し、グーとパーで分かれた結果はというと──。

 

「あ、マキさん、私と同じですね」

 

イリスが少し嬉しそうにこちらを見る。

 

「シロちゃんとウチvsマキちゃんとイリスちゃんやな!」

「よーし、ナツミちゃんよろしくねー! 一緒にマキちゃんをやっつけよう!」

「なんで私だけなんだよ!?」

 

私は思わず全力でツッコミを入れた。

ナツミとシロは早くも悪巧みをするように顔を見合わせ、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。

 

「ほな、ルールは1人2回雪玉に当たったらアウトのライフ2制。

 アウトになった子は味方のサポートだけ可能、どうや?」

「オッケー!」

「了解です!」

 

シロとイリスが元気よく答える。

 

「よっしゃ! 遅刻してきたペナルティの分も入ってるからな~! 覚悟しいや~マキちゃん!」

「マ、マキさん、あちらの裏へ避難しましょう! 私が雪玉を作ります!」

 

イリスが私の袖をきゅっと引っ張り、近くの倉庫を指差した。

 

「うん、お願いイリス!」

 

私たちは慌てて倉庫の裏へ滑り込む。

 

イリスは素早く雪をかき集め、ぎゅっ、ぎゅっと丸め始めた。

普段はどこか頼りなげな彼女だけれど、こういう時の集中力はさすがだ。

私も負けじと雪玉を量産していく。

 

「マキさん、こちらに積んでおきますね」

「助かる!」

 

気付けば倉庫の陰には雪玉がずらりと並び始めていた。

 

「なんかそれっぽくなってきたな……」

「こ、これでしばらく戦えます!」

 

イリスが小さくガッツポーズをする。

 

私はその中の一つを手に取り、影から顔を出したその時だった。

 

「うっ!?」

 

雪玉が顔の横を掠めて飛んでいく。

 

「あーおしいー!」

 

視線を飛ばすと、倉庫のすぐそこまで距離を詰めていたシロが悔しそうにしていた。

どうやら私たちが顔を出すのを今か今かと待っていたらしい。

 

すると、私の後ろから慌ててイリスが出てきて、

投げ終わりの姿勢のまま油断していたシロに向けて雪玉を投げる。

 

ボフッ!

 

「きゃっ!?あははは!」

 

イリスの手から放たれた雪玉はシロの肩に当たり、見事な雪のフラワーを咲かせた。

 

「よし、ナイス、イリス!」

「あ、当たりました……! やりました、マキさん!」

 

イリスがぱっと表情を明るくする。

 

「やるやんイリスちゃん! でもウチの肩は──」

 

ナツミが感心したように声を上げながら、大きく振りかぶる。

 

「強いでー!」

 

すると、かなりの速さで雪玉が一直線に飛んでくる。

 

「はふっ!?」

 

そして、見事イリスの頭へとヒットした。

 

「ナツミちゃん、すごーい!」

 

シロが肩の雪を払いながら、ナツミの見事なリベンジに目を輝かせる。

 

「うぅ……マキさん、すみません。完全に油断してしまいました……」

「大丈夫大丈夫、ここからここから!」

 

私は量産された雪玉を手に、当面の強敵になるであろうナツミへと照準を定めた──。

 

「体のどこかにあたってくれー!!」

 

シロがそう言いながら、楽しそうに出鱈目に雪玉を投げ続ける。

しかし、意外にもその数撃ちゃ当たる作戦は功を奏し、

どこから飛んでくるか読めない放物線に翻弄されて、私はあっさりと1被弾。

さらに続けて、倉庫の陰からバックアップしようとしたイリスも1被弾し、イリスはアウトとなってしまった。

 

「あ、あぅぅ……後はお任せします……」

「うん、イリスはサポートお願い!」

 

私はイリスの作った雪玉を全弾発射する勢いで決死の思いでナツミに一発当てる。

 

「うおっ!」

 

そしてシロの弾切れに合わせてシロにも雪玉を命中させる。

 

「あー、アウトになっちゃった!」

 

これで私とナツミの一騎打ちということになった。

 

「イリス! こういうときのナツミは十中八九……」

「な、なるほど……! 分かりました!」

 

私はイリスに指示を飛ばし、ナツミを引き付ける。

 

「マキちゃん、逃げてばっかやと勝てんでー!」

 

想定していた場所までナツミを誘導させ、いざ狙いを定めようとすると、

アウトとなったシロがナツミの盾となり、私の前に立ちはだかる。

 

「私の屍を越えてゆけー!」

「屍が動き回るな! 当てづらいだろ!」

「アウトになってもサポート可だもーん!」

 

シロは左右へぴょこぴょこ動き回りながら、完全に人間の盾になっていた。

 

(けど……イリスも位置につけた!)

 

シロの屍ブロックに紛れて、私の視線はその後方を捉えていた。

イリスが雪を静かに踏みしめながら、ナツミの完璧な死角へと忍び寄っているのが見える。

 

「シロちゃんナイスー! よっしゃ、ほないっちょ決めたろか……!」

 

ナツミは不敵に笑い、雪玉を構えた。

 

(来る──! ナツミは絶対に、魔法を使おうとするはず……!)

 

そして──

 

まさに私の読み通り、ナツミが自身の【時間停止】の魔法を発動しようとした、その刹那。

 

「……え?」

 

ナツミの動きが、魔法ではなく物理的にピタリと止まった。

 

「な、なんで止まらんの──!?」

 

ぴょこぴょこ動き続けるシロを見てか、驚愕して目を見開くナツミ。

すると、はっと何かに気付き、ナツミは首を後ろに向ける。

 

そこにはおずおずと顔を出したイリスの姿があった。

その手はしっかりとナツミの背中に触れている。

 

「ナツミさん、ごめんなさい! サポート有りなら……私の【魔法無効化】も有効です!」

「な──」

 

完全に想定外の不意打ちを食らい、ナツミの体に決定的な隙が生まれる。

 

「もらったぁぁぁーー!!」

 

シロの脇から覗いたナツミの胸元めがけて、私は手の中の雪玉を全力で投げ放った。

綺麗な直線を描いて飛んでいった白い塊は、無防備なナツミに、ボフッ!!と音を立ててクリーンヒットする。

 

そう、私はさっき倉庫の陰で、イリスに

「ナツミの後ろにこっそり回り込んで、もしナツミが魔法を使おうとしたら無効化して」

と耳打ちしていたのだ。

 

こういう勝負事になると、ナツミは絶対に魔法を使ってでも勝ちに来る。

 

「うあああ! ウチの必殺技が不発に終わるやなんてーーー!?」

 

勢いあまって、ナツミは雪原へとひっくり返った。

 

「やった……勝ったぁ!」

「マキさん、やりましたね!」

 

イリスが嬉しそうに駆け寄ってきて、私たちはパチンと小気味よいハイタッチを交わした。

 

「うぅ、まさかイリスちゃんに後ろを取られてるなんて思わんやん……! 完全に見落としてたわぁ」

「あはは! ナツミちゃん、もったいぶらずに魔法使えば良かったのに~」

「ほんまやで、なんか既視感あるわぁもったいぶって失敗すんのぉ……」

 

雪まみれになりながら悔しがるナツミを、シロが笑いながら引き起こす。

ナツミは「冷たっ!」と言いながら髪についた雪を払い、どこか清々しそうな笑顔を浮かべていた。

 

「はぁ……楽しかった~!」

 

シロはみんなを見つめながら、噛みしめるように声を発した。

確かに、私やイリスに吶喊してくるシロは、まるで無邪気な子供のように楽しそうだった。

 

「……あ! そろそろ良い頃合いですね……!」

 

するとイリスは何かを思い出したようにポンと手を叩き、

少し離れたところにある、1メートル少しくらいの高さまで積まれた雪の所へと駆け寄る。

 

「あれ、イリス、それ何?」

 

私が首を傾げながら後を追うと、イリスは自慢げに胸を張り、うずたかく盛られた白い山を指差した。

 

「かまくらです! まずはこうやって雪を積んで放置して、雪同士を結着させてから掘るんですよー」

 

イリスは雪のそばに置いてあったスコップを手に取ると、

慣れた手つきでザクッと雪の山へ突き立てて中を掘り始めた。

 

「へぇー、ただ雪を積み上げるだけじゃなくて、一回寝かせるのがコツなのか」

「はい。こうしてしばらく置いておくことで、

 自重と寒さで雪がギュッと固まって、掘っても崩れにくくなるんです。

 かまくらが出来上がったら、中でコーヒーを沸かしていただこうかと!」

 

イリスが嬉しそうにスコップを動かすたび、

固まった雪がサクサクと小気味よい音を立てて削られていく。

 

「あ、イリスちゃんが言うてたかまくら、もう時間なん?

 ほな、一旦イリスちゃんは一抜けか~」

「むーん、もうちょっとイリスちゃんとも遊びたかったよ~」

「ご、ごめんなさい! 一度、かまくらの中でコーヒーを飲んでみたいな~と思っていまして……!」

 

残念そうなナツミとシロに、イリスは律儀に一度掘る手を止めて、ぺこりと頭を下げてから謝った。

そして申し訳なさそうにしつつも、その瞳には遠足前の子供のようなワクワクとした輝きが宿っていた。

彼女は再びスコップで、楽しそうにザク、ザクと雪の山を掘り進め始める。

 

「じゃあ雪合戦はこれくらいにして、私は倉庫で何か遊べるものがないか見てみよっかな~」

「おっ、ええな! ソリとかスキーとかスケート靴もあったしな!」

 

シロの声に嬉しそうにナツミは賛同する。

 

「マキちゃんも一緒に見よ!」

「あ、うん。それも良いんだけど……」

 

私はふと視線を横へ巡らせた。

少し離れたところで、もくもくと作業を続けているミサとマリーの姿が目の端に入る。

一応、二人の様子も見ておいた方が良いだろう。

 

「ちょっと二人にも声かけて来るね」

 

そう言いながら、どうやら二体目の雪だるま作成に取り掛かっている二人の元へと私は歩いていく。

キュッ、キュッと雪を踏みしめる私の背中に、シロの元気な声が追いかけてきた。

 

「うん、分かった~!」

 

背後ではナツミとシロが楽しげに笑い合いながら、木造の倉庫へと向かっていく気配がする。

 

二人の近くまで歩いていくと、雪玉を転がしているマリーとは別に、

ミサが完成間近の雪だるまの前で、氷のアクセサリーらしきものを作っているのが見えた。

 

「あ、ミサ。その氷のアクセサリー、最後の飾りつけ?」

 

声をかけると、ミサは小さくマフラーを揺らしてこちらを向いた。

その手元では、彼女の【凍結】の魔法によって生み出された繊細な氷の結晶が、

冬の淡い光を浴びてきらきらと輝いている。

雪だるまの頭に載せるための、氷のリングか何かを作ろうとしているみたいだ。

 

「うん。雪だるまに載せようと思って。……でも、なかなか上手くできなくて」

 

ミサは少し困ったように眉をひそめ、手元で小さくひび割れてしまった氷のアクセサリーを見つめた。

リング自体は綺麗に出来ているが、デザインとしてあしらわれているうさぎが崩れてしまっている。

 

「あ、それ……」

「いつも練習してるやつ。でも、ずっと作ってるのに……。

 三匹のうさぎが目標なのに、二匹目で壊れちゃって……」

 

ミサは悲しげに、二匹目のうさぎの耳のあたりから無残に亀裂が入ってしまった氷のリングを見つめる。

前までは、あと少しで三匹目に手が届きそうなくらい、もっと安定して形を保てていたはずだったのに……。

 

「……大丈夫。ミサならいつかきっと作れるよ」

「……」

 

私の励ましに、ミサはぴたりと冷気の放出を止めた。

 

「……それ、ヤヒメからずっと言ってもらってた、セリフ……」

「……あ……、ごめん……」

 

私は思わず口をつぐむ。

 

「……ううん、大丈夫」

 

ミサはそっと視線を伏せ、手の中の壊れた氷のリングをぎゅっと握りしめた。

氷のリングが、小さな音を立ててさらに細かく砕けていく。

 

ヤヒメの名前が出た瞬間、二人の間に、しんとした沈黙が降りてきた。

私の何気ない一言が、ミサの胸の奥にある一番痛い傷に触れてしまったのだと気づき、ズキリと胸が痛む。

 

「失敗するたびにね、

 『いつか絶対に三匹のうさぎのリングを見せてあげる』って……ヤヒメに言ってたんだ」

「……そっか」

 

ミサは手のひらをそっと開き、細切れになった氷の破片を雪の上に落とした。

白い雪原に混じった透明な塊は、まるでこぼれ落ちた涙のようだった。

 

「ミサちゃん、出来たよ」

 

すると、雪だるまを転がしていたマリーがこちらに向かって声をかけてくる。

大きな雪玉を一生懸命に転がしてきたらしく、小さな手袋を真っ白に染めている。

 

「……うん、大きさもちょうどいい感じ」

 

ミサはひとつ深く息を吸い込むと、いつもマリーに向ける物静かで優しい笑みを顔に浮かべた。

 

「これなら、さっき作った体の上にぴったり載りそう」

「本当!?じゃあ、よいしょ、って載せるの、手伝って!」

「いいよ。……マキ、一緒に頼める?」

「うん、もちろん」

 

マリーは声を弾ませながら、あらかじめ置いてあった頭用の雪玉を転がしてくる。

 

「せーの……」

 

私とミサは、ゆっくりと頭用の雪玉を持ち上げた。

 

マリーも小さな手で下から支えるようにして、息を合わせて、

すでに完成していた一回り大きな土台の雪玉の上へとそれを重ねる。

コッ……、と軽い音を立てて二つの雪玉が綺麗に重なり、新しい二頭身の雪だるまが姿を現した。

 

「上手くできたね! ミサちゃん、マキちゃん、ありがとう!」

 

マリーがぱっと顔を輝かせる。

ミサと二人で遊んでいるうちに、マリーはいつもの調子を取り戻したようだった。

 

木の枝や石でひとしきり表情を作ったあと、私たちは満足げに雪だるまを眺めた。

 

すると、ふとミサが再び雪をかき集めているマリーを見て言った。

 

「そうだ、マリー。この冬のエリアでなら、雪降らせられるんじゃない?」

 

すると、マリーはその手を止めて、伏し目がちに言った。

 

「……マリーね、もう天気変えるの止める」

 

ぽつりと漏らしたその言葉に、ミサは目を見開く。

 

「止める、って……なんで……? マリー、雪を降らせるのが夢じゃなかったの?」

「……もう、いいの。マリーが天気変えちゃうとね、よくないことが起こっちゃうから」

 

マリーは手袋にこびりついた雪をじっと見つめたまま、小さな肩をきゅっとすくめた。

 

「……」

 

その言葉に、私とミサは思わず目を伏せた。

 

マリーはずっと気にしていたのだろう。

自分の魔法が利用されたことを。

自分が知らないところで、ヤヒメの死に繋がってしまったかもしれないことを。

 

「……マリー。それは違う。

 あれは絶対に、マリーのせいなんかじゃない」

 

私は顔を上げて、しっかりマリーを見据えて言った。

 

「……マリー。魔法はね、誰かを悲しませるためのものじゃない。

 その魔法で、私たちは何度も救われてきたんだよ」

 

私の言葉にミサも続く。

 

「マリーの魔法は、みんなを助けるためにあるんだよ」

「……」

 

私とミサの言葉を聞いても、マリーは目を伏せたままだった。

 

「……だから、そんなことで夢を諦めちゃダメ。

 ……いっぱい練習して、ふわふわの雪を降らせるんでしょ?」

 

ミサが優しく語りかける。

 

だが──

 

「……もう、やなの。誰かが死んじゃうくらいなら……夢なんて、叶わないままでいい」

 

その声は──

 

マリーのような小さな子が発するには、あまりにも諦観に満ちた声だった。

 

「ミサちゃんの言う通りなんだ。マリーね、ずっと、雪を降らせてみたかったの。

 いつかみんなに見せたかった。すごいねって言ってほしかった。

 そのためにも、頑張って……たくさん、たくさん天気を変える練習もしようと思った」

 

その言葉に、胸が締め付けられる。

それはきっと、本当にただそれだけだったのだ。

誰かを困らせたいわけでも、利用されたいわけでもない。

 

マリーはただ、自分の魔法でみんなを喜ばせたかったのだ。

 

「でも……

 マリーが頑張ったことが、誰かを傷付けるのに使われるなら……。

 そんなの、もう頑張りたくないよ」

 

ぽろぽろとマリーの大きな瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。

その雫は、さっきミサが落とした氷の破片よりもずっと熱く、痛々しかった。

 

「…………」

 

私もミサも……かける言葉はすぐには見つからなかった。

 

マリーの小さな胸の中で、純粋な"夢"と、

自分の知らないところで蠢く"悪意"が……最悪の形で結びついてしまっていた。

 

魔法を利用されたことで、ヤヒメが死んでしまった。

この小さな子がその罪悪感を一身に背負う必要なんて、どこにもないはずなのに。

 

冬の冷たい風だけが、静かに雪原を吹き抜けていく。

 

──しばらくして。

 

私はゆっくりと口を開いた。

 

「無理に頑張らなくていいよ」

「……え?」

 

その言葉が意外だったのか、マリーが目を瞬かせる。

 

「頑張りたくないときは、頑張らなくていいんだ。

 夢を、一回お休みしたっていいんだよ。

 マリーがそうやって自分を責めて、苦しくなっちゃうなら……

 今は天気を変えることなんて、全部忘れちゃっていい」

 

マリーは涙をためた大きな瞳を上げ、じっと私の顔を見つめた。

 

「だけどね」

 

私はマリーの手を少しだけ強く握りしめる。

 

「いつか、ちょっとずつ変えていこう。マリーの心が少しずつ元気になって、またお空を見上げて……

 『綺麗だな』って思えるようになったら……

 その時、本当にちょっとずつでいいから、また一緒に考えよう?」

「マキ……」

 

ミサがそっと呟き、私の言葉をなぞるようにマリーの背中にそっと手を添えた。

 

「……うん。マキの言う通り。今は何もしなくていいよ、

 マリー。誰もマリーを責めたりしない。……私も、ずっとここにいるから」

 

二人の言葉がじわじわと染み渡ったのか、マリーは鼻をぐずらせながらこくりと小さく頷いた。

その張り詰めていた頑なな拒絶は、雪が解けるように少しずつ和らいでいく。

 

「……あ、でも……みんなが脱水症状になるくらいの深刻な水不足が起こったら、

 その時は流石に雨を降らせてね」

 

ミサが冗談めかして言う。

いつもは物静かで感情をあまり表に出さない彼女が、

マリーの心を和らげるために不器用ながらも精一杯に紡いだユーモアだった。

 

「……ふふ……うん。その時は、マリーが降らせてあげる!」

 

マリーはまだ涙の残る顔に、ようやくいつもの無邪気な笑顔を取り戻し、私たちは少しほっとする。

 

「おーーーい! ミサちゃーん!!」

 

その時、タイミングを見計らったかのようにナツミの突き抜けるような大声が響いてきた。

手を振りながら、シロと一緒にこちらに駆け寄ってくる。

 

「ミサちゃん、お願い事あんねんけど!」

「無理」

「いやなんでや!?まだ何も言うてへんやん!」

 

ミサの音速の拒絶を、ナツミが音速のツッコミで返す。

ガクッと肩を落としながらも、すぐに気を取り直して本題を切り出した。

 

「サッカーボールサイズの丸い氷作って欲しいんやけど!」

「……何に使うの?」

 

怪訝そうな顔を向けるミサに、シロが補足する。

 

「倉庫で、滑り止め用のゴム靴見つけて!

 それ履いて、スケートリンクで"氷サッカー"したいの!」

「氷サッカーってなんだよ……」

「氷の球を蹴るサッカー!」

「まんまじゃん……」

 

私が思わず声を漏らす。

わざわざツルツルの氷の上で、それも氷の球でサッカーをしようなんて、発想が突飛すぎる。

 

「普通のボールでやれば?」

 

ミサがもっともな疑問を投げかける。

 

「いやー、でも取りに戻るの面倒くさいし、サッカーボールも消耗品やし……。

 氷やったら気にせず遠慮なくやれるし、普通のサッカーと違てなんかおもろそうやし!」

「それに、氷のボールなら蹴るたびにシャキーン! って滑って、超高速の試合展開になると思うんだよね!」

 

シロも楽しそうに足元で架空のボールを蹴るジェスチャーをしてみせる。

 

「スケートリンクなんかでやったら、絶対転びまくるだろ」

「アイスホッケー用の防具あったから、それ付けてやれば……!」

 

いや、そこはもう素直にアイスホッケーをしろよ、と心の中でツッコミを入れる。

 

「……なんか楽しそう。マリーもやってみたい」

 

マリーがぽつりと呟く。

 

「おっ!」

 

ナツミとシロの目が同時に輝いた。

 

「はい参加者一名追加ー!」

「マリーちゃんもやろやろ!」

 

二人はそう言いながら、ミサの方へと期待を孕んだ目線を投げかけた。

 

「……ミサちゃんも」

 

そして、二人と一緒にマリーもミサを見つめる。

 

すると……そのマリーの様子に、ミサの口元がわずかに優しく綻んだ。

 

「……分かった。みんな怪我だけはしないようにね」

 

そう言いながら、ミサは両手から放たれる冷気でゆっくりと氷の塊を生成し始める。

氷塊は瞬く間に均整の取れた球体へと姿を変え、五角形と六角形が組み合わさった模様へと削り出されていった。

 

「うわ、ちゃんと模様まで入ってる! ミサちゃんすご!」

「はえー、凝っとるな~!」

 

狂いなく模様が刻み込まれた氷のボールを回し見ながら、二人は驚く。

 

「……パズルは得意だから」

 

ミサは少し照れくさそうに言った。

 

「ありがとうミサちゃん! よーし、じゃあみんなまずは倉庫へ行こ!

 ミサちゃんの言う通り、安全第一だよ~」

 

シロが元気よく倉庫へと駆けて行き、私たちもそれに続いて行った。

 

防具をしっかりと着込み、氷のボールを抱えて私たちは天然のスケートリンクへと向かった。

そこで私はふとあたりを見回す。

 

「……あれ? イリスは?」

「あっちでぬくぬくしてるよ~」

 

私の声に、シロが少し離れたところにあるかまくらを指差す。

どうやらかまくらの工事は無事完了したらしく、あらかじめ持ってきていたのか、

かまくらの中で暖房グッズと共に楽しそうにコーヒーを作っている。

 

「イリスちゃんも丘の上のラウンジ部の仲間入りやな……」

「コーヒー片手にサッカー観戦……」

 

ナツミとシロが、若干の羨ましさが混ざった声を漏らす。

寒空の下で完全防具に身を包み、これからツルツルの氷の上で泥臭くボールを追いかけようとしている私たちとはあまりにも対照的だった。

 

──数分後、リンクの上ではおよそお上品なウインタースポーツとはかけ離れたカオスな試合が幕を開けていた。

 

「シロちゃん、ここや! パス、パスーーー!」

「任せて! ……って、うあああ!?止まら! ない!!」

 

摩擦を忘れた氷のボールは、シロの予言通り蹴るたびにシャキーンと鋭い音を立てて爆走する。

ドリブルをしようにも、少しの蹴り出しでボールは勢い余って前へとつるつると滑っていく。

それを追うナツミやシロは、滑り止めのゴム靴を履いているにもかかわらず、勢い余って派手にツルっといっていた。

防具のおかげで怪我の心配はないようだが、その無様な転がりっぷりに笑い声が響き渡る。

 

「マリーちゃん、今や! いけえええ!」

「うんっ! えいっ!」

 

ナツミから綺麗に転がってきたボールを、マリーが小さな足で力いっぱい蹴り出す。

キン、と高い音を立てて滑っていったボールは、ゴール代わりのコーンの間を見事にすり抜けた。

 

「やったー! ゴール!!」

「わあ、マリーちゃんナイスシュート!」

 

大はしゃぎする彼女たちの姿を、私はミサと並んで眺めていた。

 

「……賑やかだね」

 

ミサがぽつりと呟く。

その横顔はただただ穏やかだった。

 

「うん。でも、マリーの笑顔が戻って本当によかった」

 

私の言葉に、ミサは静かに頷いた。

 

その後の、寒さを忘れるほどに白熱した氷サッカーの試合を眺めていたのは、

かまくらの中で温かいコーヒーを淹れているイリスと、

この凍てつく冬のエリアを見下ろす丘の上のラウンジでぬくぬくしている三人と──

 

あの寄り添うような、二頭身の雪だるまだった。

 

 

「あぁ……体中に……いや、五臓六腑に染み渡ってくゥ……。

 ……これは、温かい部屋におった人には到底辿り着けん境地や……」

 

ジャグジーの湯に浸かりながら、ナツミは天にも昇るような声色で声を漏らす。

 

冬のエリアで遊んだあと、私、シロ、ナツミ、リンリ、ハイジの五人は、

晩ごはんの前に汗を流すために大浴場にいた。

 

……二人ほど、汗はかいてない気もするけど。

 

「なんかあんたたち、途中からおかしな遊びしてなかった? 何やってたのよあれ……」

 

呆れ声で長い髪を後ろへまとめながら、リンリもゆっくりと湯へ足を入れる。

 

「何って……最先端のウインタースポーツ、氷サッカーや」

「滑るリンクの上でわたわた踊ってたじゃん。

 スポーツと云うよりは舞、舞踊だな。しかし何故氷を……?」

 

ナツミの対角線上で湯に浸かっていたハイジが首を傾げる。

 

「なんやァ? てめェ……」

 

ナツミがキレた!

 

「誰が踊っとった言うねん!」

「いや、見たまんまだけど……ほとんどすっ転んでたじゃん」

「あれは路面状況の確認や! 怪我したらあかんからな!」

 

ナツミが半ば開き直ったかのように居直る。

 

「上からじゃただのドタバタコメディにしか見えなかったわ……。

 現にシロなんて、最後の方はボールじゃなくて自分が氷の上をずっと滑ってたじゃない」

 

リンリが肩まで湯に浸かりながら冷静にツッコミを入れる。

 

「あはは! あれはね、摩擦係数の限界に挑んでたの!」

 

隣のジャグジーにいたシロが笑いながら髪をかき上げた。

 

私は心地よい湯の熱に身を委ねながら、シロの笑う声にぼーっと耳を傾ける。

 

(……少しだけ観察もしたけど、結局、特に怪しい人物とかはいなかったな)

 

それもそうか、とふと思う。

流石にみんなが遊んでいる衆人環視の中で、わざわざ怪しい素振りを見せる人間はいないだろう。

 

(……誰も見ていない深夜とか、こっそり見回りでもしてみようかな)

 

全員が深い眠りに落ち、ホテルが静まり返る丑三つ時。

その時こそ、誰かが動き出す絶好のタイミングのはずだ。

深夜の廊下、あるいは誰も近づかないはずの倉庫や事務室。

昼間には見えなかった僅かな綻びや、誰かの不穏な足音が聞こえてくるかもしれない。

 

「……ふぅ」

 

私は小さく息を吐く。

 

とはいえ、こちらもそう易々と怪しい動きは出来ない。

隠しカメラもあると公言されている手前、急に深夜に見回りでもしようものなら

「自分はこの中の誰かを疑っている」と相手に見せつけているようなものだ。

 

極めて自然に、こっそりと観察を続けるしかない。

 

例えば、深夜に喉が渇いて休憩室に飲み物を取りに行くついで、だとか。

少し寝付けなくて庭園に外の空気を吸いに行く、だとか。

 

あくまで偶然そこに居合わせた風を装いながら、内通者を見つけ出さなければならない。

そして、内通者を突き止めたその先に……何か脱出の糸口も見えるかもしれない。

 

「マキちゃん、顔赤いで~? ぼーっとしてたらのぼせるで~」

 

ナツミの声に、はっと我に返る。

 

「あ、うん。体温まってきたらお腹空いてきちゃって……」

「あー、なんかそれ分かる気がする! 晩ごはん、お鍋とかあるかなあ?」

 

シロが無邪気に小首を傾げる。

 

「あったかいお鍋あったら最高やねぇ。水炊きとか、てっちりとか、カニすきとか!」

 

ナツミが早くも脳内でメニューを組み立てているのか、嬉しそうに声を上げる。

 

「鍋だったらきのこたっぷりのヤツが良いわね~」

 

リンリもそれに釣られる。

 

「あたしは肉」

「分かる」

「いや、全員分かるやろそれ」

 

ハイジに即答した私に対してすかさずナツミはツッコミを入れる。

 

「そういえばもう結構な時間じゃない?」

 

リンリが壁の時計へ目を向ける。

 

「あ、ほんまや。夢見心地でつい長湯してもうた。

 ──よっしゃ! 飯や!」

 

ナツミが勢いよく立ち上がり、ばしゃあ、と水飛沫が上がる。

 

「わ、こら! 湯船では大人しくしなさい!」

 

ナツミの横にいたリンリに飛沫がかかり、眉を吊り上げる。

 

「もう上がるんやも~ん」

「そういう問題じゃないでしょ!」

「ふ~、あたしもそろそろ上がろ。お先~」

 

続いてハイジがざばあと豪快に湯船から上がる。

 

「あーもー!」

 

リンリが顔にかかった雫を忌々しそうに拭いながら憤慨しているが、

ナツミはどこ吹く風ですでに足早に脱衣所へと向かっている。

 

「私たちも行こっか。マキちゃん、お鍋あるといいね~」

「うん、そうだね。個人的には……すき焼きの気分?」

「おおー」

 

シロと他愛ない話をしながら、私たちは湯から上がる。

脱衣所へ向かうみんなの賑やかな足音と楽しげな話し声が、湯殿に心地よく反響していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ! 第三篇できたでー!

 これは大爆笑間違いなしやろなぁ……」

 

「……あのー、その本、もう置くの止めてもらうことって出来ます?

 いちいち詰められるの、私なんですが……。

 あと何ですかその口調」

 

「いや、テンション上がっちゃって。

 置くの止めろって? せっかく書いたのに? この!?私が!?」

 

「それのせいで魔女のあなたを突き止められたら、それこそ本末転倒でしょう」

 

「いや、今回はさ、後はもう私が何をしなくても、()()()()()()()()()()()()から。

 おかげでかなりステルス出来そうだしバレっこないよ。本は置きますが」

 

「……一応、念のため隠しカメラの映像も共有します?」

 

「……は? 

 それって、この私に周りの雑魚共の様子をビクビク伺いながら過ごせってこと?

 アリンコと戯れるのに、わざわざ防護服着ろって?」

 

「いえ、そういうわけでは……」

 

「私がいちいちそんな監視業務をしてるとこ、想像出来る?」

 

「出来ませんね」

 

「でしょ? それに、私だけが隠しカメラであらゆる答えを知ってたら面白くないじゃん。

 どんなサプライズがあったとしても、予め答えが知らされてるなんて興醒めも良いとこだよ。

 私もみんなと同じ、公平な条件でコロシアイ楽園生活に臨まないと」

 

「こうして運営側と会話してるのは不公平じゃないんですかね?」

 

「む?」

 

「それに……あなただけが全員の魔法の詳細を知ってるのは公平じゃないですよね?」

 

「……むむ?」

 

「そもそも、魔女のあなたが参加してる時点で不公平ですよね?」

 

「……」

 

「……」

 

「……あかん、執筆で疲れて眠くなってきた! 夜も遅いしもう寝るわ! ほな!」

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