魔女ノイナイ魔女裁判   作:テラウラ

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プロローグ Part3

「えーと、シロ」

「ん~、なぁに~?」

「全部で、何人くらい集まってるの?」

 

私がそう尋ねると、シロは歩調を緩めながら、

少し後ろを歩く私の方に軽く振り返るような仕草をしつつ答えた。

 

「えーとね、10人以上はいたよ~」

「うーん……」

 

10人以上、という言葉が、少しだけずしりと胸の奥に沈んでいく。

 

部屋を出てからここへ来るまでの間、私とシロの部屋以外にも、

通路沿いにいくつものネームプレートが並んでいるのが目に入っていた。

もしこれが、案内状に書かれていた「皆様」とやらだとしたら、

そこそこな人数になるだろうとは思っていたが──。

 

そりゃ、そんなにいるよなぁ。

ということは、私は今10人以上の者を待たせている重役というわけだ。

集合場所に入った瞬間のことを想像すると、自然と気が重くなる。

 

しん、と静まり返った空間に私が足を踏み入れた次の瞬間、

そこにいる全員から同時に、

「ジロリ」、と視線を向けられる──。

 

そんな光景が、やけにはっきりと頭に浮かんだ。

 

そう勝手にネガティブ思考に陥っていたら、

前方から何やら複数の女の子の話し声が聞こえてくる。

そして次第にその声は大きくなっていく。

 

 

「ここだよ~」

 

シロがそう言って、少し先を指差す。

 

中央ホールへと足を踏み入れた瞬間、私は思わず目を瞬いた。

そこに広がっていたのは──、

先ほどまで私が頭の中で膨らませていた光景とは、まるで違うものだった。

 

 

「わたくしの口には少々合いませんでしたわ~。

 それと、パッケージとネーミングセンスもイマイチですわね」

「えっ、食べたの? あれ絶対毒とか入ってるって!」

「全然気付かなかった~。お菓子なんて置いてあったんだ~」

 

「すごーい! そんなのも作れるの!?」

「……うん。いっぱい練習したから」

 

「もう自由行動で良くない? なんか全然始まらないし」

「っていうか帰りたい……撮り溜めしたアニメ消化したい……」

 

「も、もしかして迷ってらっしゃるとか……?」

「いや、通路バーって行くだけやし、迷いようないって。

 ……あ、来た来た! お前ら、絶対二人で駄弁っとったやろ!」

 

 

私が呆気に取られていると、

シロが「ごめーん」と軽い調子で言いながらホールに入っていく。

 

ぴしっ、とこちらを指差しながら言葉を発す女の子の声につられて、

それまで思い思いに喋っていた数人が、こちらへ視線を向ける。

 

──一斉に集まる視線。

 

でも、想像していたような、刺すようなものじゃない。

 

少しの驚きだったり、興味だったり、

中には「やっと来た」という顔もあって、

妙に拍子抜けするほど、温度がばらばらだった。

 

 

「……えっと」

 

何か言おうとして、言葉が喉に引っかかる。

そんな私に助け船を出すように、シロが一歩前に出て、

 

「マキちゃんだよ~」

 

と、みんなに向かって声をかけた。

 

 

「……あ、どうも、波彪マキ、です……」

 

──あ、これ、あれだ。

子供が先生に連れられて、

「今日はみんなに新しいお友達を紹介しま~す」

なんて言われながら、教室の前に立たされるやつ。

 

そんな既視感に妙な羞恥心を覚えつつ、そこから続ける言葉を、

「よろしくお願いします」にするか

「遅れてごめんなさい」にするか。

どうにも決めきれず、口を開きかけたところで――

 

 

「よろしく!」

 

勢いのいい声が割り込んできた。

 

 

「ウチは田中(たなか)ナツミ!」

「え、ナミトラマキちゃん? って言うん?」

「いや、めっちゃええ名前やわ。特にトラのあたり」

「トラやで、トラ。いかつすぎるやろ」

「ウチ、名前覚えるん苦手な方やねんけど」

「これは無理やわ、絶対覚えてまうわ」

「ウチ、もう覚えたもん。ナミトラマキちゃん」

「はい、一発」

 

 

まてまてまて。

畳みかけるように言われて、頭が追いつかない。

 

声の主を見ると、左右で結った二つのお団子ヘアが、動くたびに小さく揺れている。

そこに結ばれた鈴が、ちりん、と軽い音を立てていた。

 

「え、えっと……あ、ありがとう?」

「聞いてもーとる! あ、ちなナツミでええよ~」

 

大袈裟にコケるような仕草をした後、ナツミは手をひらひらさせながら言った。

そのあまりに軽い一連の動きのおかげか、少し緊張だけがほぐれた気がした。

 

 

「あ、あの~……」

 

控えめな声に私が顔を向けると、

さっきナツミと話していた、前を留めていない妙にだぼだぼの白衣を着た女の子が、

遠慮がちにこちらを見ていた。

 

腰より下まで流れる白い髪を揺らし、おずおずと一歩前に出る。

 

「自己紹介ですよね……? 私は蜜葉(みつば)イリスと申します。

 どうぞよろしくお願いします~」

「あ、こちらこそ、よろしく」

 

そう返すと、イリスはほっとしたように小さく息を吐いて、

ぺこりと丁寧に頭を下げる。

 

そして、遅れてきた私を気遣ってくれたのか、

 

「説明、まだ始まってませんから……セーフだと思います」

 

と、胸の前で小さく「せーふ」のポーズをしながら言った。

 

「ふふっ」

 

仕草があまりに控えめで、その小動物的な雰囲気に思わず口元が緩んだ。

 

 

すると、ナツミとイリスが話していた席に一番近かったグループがこちらに歩み寄って、

その中の一人が声を上げた。

 

「次はわたくしでよろしくて?」

 

凛とした立ち姿。

背は高く、私より頭ひとつ分ほども高い――おそらく170cmはある。

仕立ての良さそうな服装に、どこか余裕のある笑み。

肩口から流れる金髪は長く、歩くたびに揺れるその髪の間で、

耳元の高級そうなシルバーのフープイヤリングがきらりと光った。

 

「わたくし、紺剛(こんごう)ダイヤと申しますわ。

 お見知りおきあそばっ……」

 

一瞬、言葉が止まる。

 

「……お見知りおきあそばせせ?」

 

――そこで噛むのか。

 

「こ、このわたくしが、よりにもよって自己紹介で噛むなんて……!?」

「あはは、よろしく……」

 

なんだか顔面蒼白で白目にでもなりそうな彼女に私は挨拶を返す。

すると、「ところであなた!」彼女は言葉を続ける。

 

「三十分以上も遅刻するなんて、少々常識がなっていないのではなくて?」

 

ぐさり、と胸に刺さる。

 

「あ、えっと……すみません」

 

反射的に頭を下げかけた、そのとき。

 

 

「まーまー」

 

間の抜けた、のんびりした声が割って入った。

 

「遅刻なんて誰にでもあるって~。

 あたいもしょっちゅう遅刻するしね~」

 

そう言いながら、ひょこっと前に出てきたのは、

ダイヤとは対照的に、少し小柄で、全体的に気の抜けた雰囲気の女の子だった。

 

少しぼさっとしたオレンジ色の髪をした彼女は、

 

「あたいは天刻(てんごく)ヤヒメだよ~。よろしくね~」

 

そう言って、にへらっと笑った。

 

すると、それに続くように

 

「これ、多分呼び出しかけた方も何かしらミスってんじゃない?

 ずっと待機させられてるし。遅刻とか、寝坊とか」

 

と、隣の女の子が言った。

 

肩より少し長く伸びた紫の髪で、白を基調とした上着の下からは、

その髪と同じような色合いのワンピースが覗いている。

 

「私は(もがり)リンリ。よろしく。

 遅刻とか気にすんな気にすんな」

 

そう短く付け加えて小さく手を振った。

 

 

「あ、あなたたちねぇ……

 遅刻を正当化するような発言、少し軽率ではなくて?」

「え~?」

「誰にでもミスはあるでしょ」

「事実を述べているだけですわよ、こちらは!」

「お見知りおきあそばせせ?」

「せせ~?」

「ぐ、ぅっ……!?」

 

「あ、あはは……二人ともよろしく……」

 

私がひきつった笑いを浮かべながら言うと、

もう待てないと言った様子で

 

「はいはい! 次、マリーの番!

 マリーはね、空丸(そらまる)マリーって言うの! マキちゃん、よろしくね!」

 

と、その中でもひときわ幼い雰囲気の子が、元気よく挨拶をした。

 

紺色の髪は肩に触れるくらいの長さで、左右で軽く結ばれている。

結び目には、小さな黄色いリボン。

それが動くたびにふわりと揺れて、本人の元気さをそのまま映しているかのようだった。

 

「うん、よろしくね」

 

思わず、幼い子に話しかけるような声になる。

するとマリーはにっこり笑って、

 

「でね、この子がミサちゃん!」

 

そう言って、近くにいた女の子を

「じゃーん!」とでも言いそうな仕草で紹介する。

 

 

「……鈴月(すずつき)ミサ」

 

椅子に座ったまま、彼女はちらりとこちらを見て、

それだけを呟くように言った。

 

マリーほどではないが、少し小柄で、

首元には水色のマフラーが巻かれている。

季節外れにも見えるのに、不思議と違和感はない。

 

何やら真剣に机で作業のようなものをしているが──。

 

(ガラス細工……、いや、"氷"?)

 

 

私がつい目を凝らしていると、後ろから声がかかる。

 

「ねえマキちゃん、私の声、ちょっと向こうの人たちには聞こえてなかったみたいだから、自己紹介しに行こっか」

 

そう言って、シロが私の顔を覗き込んだ。

 

「大丈夫? 一人で行ける?

 それとも、一緒に行く?」

 

私の保護者か、と突っ込みそうになる。

 

「大丈夫……」

 

たぶん……。

 

自分で言っておいて、正直なところあまり自信がない。

だけど、大丈夫と言ってしまった手前、

「やっぱり一緒に来て」なんて情けないことは言えないので、

私は一度深呼吸してから、少し遠くで話してる二人組の方へと一人歩いて行った。

 

二人だけで話しているところに割って入るのは、正直かなり気が引ける。

それが初対面なら猶更だ。

タイミングを窺いながら、

私は探りを入れるように声をかけた。

 

 

「あ、あの~?」

「んぁ……え、誰?」

 

即答だった。

まぁそれはそうだ。「誰?」だよな……。

 

「えっと……さっき来た、波彪マキ、です」

「あ、もしかしてホテルの人……?

 もうおうちかえりたいんだけど……?」

 

そう言うと、もう片方の女の子が言った。

 

「……いや、これ、普通に遅れてきた人じゃね?」

 

すると、とてつもなく帰りたそうな女の子が、

私の足元から頭のてっぺんまで、じーっと見上げてくる。

 

「……あ、そっか。ゴメン。

 てっきり説明係かと思って……」

 

と言いながら目に見えてしゅんと萎れた。

 

「いえ、大丈夫です……。

 今、自己紹介して回ってて。

 良かったら、お二人の名前、聞いてもいいですか?」

 

「遅れてきた人」の言葉に少し引け目を感じ、

気付けば私は自然と丁寧な口調になっていた。

 

 

「……あたしは一ノ目(いちのめ)ハイジ」

 

帰りたそうな女の子が、気だるげに名乗る。

ボルドーの髪の毛を、左右二つの黒いリボンで束ねている。

黒いニーハイに、首元にも細い黒のチョーカー。

いわゆる“地雷系”っぽいタイプの服装だ。

 

 

「言って……

『お集りのみなさま

 ようこそお越しくださいました。

 では解散でーす! おつした!』って誰か言って……」

「私ならキレるけどねそれ」

 

ずぅーんと分かりやすく落ち込むハイジに、

 

「てかもう普通に解散で良くない? 私ちょっとホテル探検したい。

 それかさ、私たち以外誰も客いないしホテル中で鬼ごっこしない? 鬼ごっこ!」

 

野球帽を被り、白いシャツを着崩した格好の女の子が呑気にハイジに笑いかけた。

黒い髪をポニーテールで束ねており、手首には黒いブレスレットが見える。

 

「えーと、マキちゃん、だっけ?」

「あ、はい」

「私は地獄谷(じごくだに)ポム。

 良かったら一緒に行かない?」

「あ、まだ全員に自己紹介が終わってないので……」

「あ、そうなんだ。あと何人?」

「えーと……」

 

ホールの入口からここまでの様子を思い返しながら、

私は一度、後ろを振り向いて確かめた。

 

あの子にもした。あの子にも、した。

……うん、自己紹介し忘れている人はいないはずだ。

 

そう判断してから、今度はホールの奥の方へ視線をやる。

 

少し距離を置くように、

それぞれまばらに座っている三人の姿が目に入った。

 

互いに会話をするでもなく、

かといって孤立しているようにも見えない。

ただ、まだこちらに混ざっていないだけ、という感じだ。

 

「あと三人、かな?」

「お、もうちょっとじゃん。じゃあ終わったらこっちも三人で探検しよ!」

 

と、ポムは私とハイジの方を見ながら言った。

 

「え゛っ、もしかしてあたしも入ってんのそれぇ……?」

「当たり前じゃん。結構色々な部屋あったし超楽しみー」

「……行ぎたくないっ!!

 あたしは一緒に連れてかないで!!!」

「行きたいと、言えェ!!!」

 

ポムがハイジの髪の結び目をぐりぐり回しながら言う。

 

「い゛だ゛い゛っ゛!!!」

「よし」

 

「あっ、じゃあ私はこれで……」

 

ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を尻目に、私はそそくさとその場を離れた……。

 

 

(次、次……)

 

そう自分に言い聞かせながら、ホールの奥に視線を向ける。

 

椅子に腰掛け、静かに周りを見ている人物が目に入った。

というより、状況を観察している――そんな印象だった。

 

さっきまでが騒がしかったせいか、

彼女の周囲だけ、薄い膜が張られているように感じるほど静かだった。

 

 

「あの……」

 

声をかけると、彼女はゆっくりと視線をこちらに向ける。

 

こげ茶色のベレー帽の下から、鋭い眼差しが覗く。

それに合わせて、灰色の長い髪の毛がかすかに揺れた。

 

「波彪マキ、です」

灰村(はいむら)ノクス。よろしく」

 

被せるでもなく、遮るでもなく、必要な言葉だけが返ってくる。

 

……そして、それ以降。

 

 

……………………。

 

 

(……あ、自己紹介終わり?)

 

沈黙に包まれる。

まさに必要最小限、といった感じ。

 

「気まずい」というより、

余計なものが削ぎ落とされたような空気だった。

 

(ま、まぁ、別に無視されたとかじゃないし)

これも全然「自己紹介」だよな、と思いつつ、私は視線を切り替える。

 

 

そして、ノクスから少し離れたところに一人で座っている女の子に声をかけた。

ホールの端──みんなの輪から、わざと外れたような位置。

 

遠目で見ると、全体的に黒く、ゴスロリチックな格好をしている女の子。

 

数歩、距離を詰めたその時。

彼女はこちらが声をかけるよりも先に、いち早く私に気づいた。

気のせいか、肩がわずかに強張り、警戒しているようにも見える。

 

何か誤解されてるようなので、これ以上身構えさせないように、

私は早めに要件を伝える。

 

「あ、自己紹介をしたくて……波彪マキです」

「あ、ああ、うん、自己紹介だよね」

 

「僕は影津(かげつ)アテナ。よろしく!」

 

ただの自己紹介だと分かったからか、

さっきまでの警戒が嘘みたいに、少し快活な声が返ってきた。

 

「ちょっとあんまり人が多いの慣れていなくてさ」

「あー……私もです」

「まぁ、慣れの問題だし。そのうちどうにかなると思うから」

 

そう言うとアテナは、薄いピンク色の長い髪の毛をいじりながら、視線を下に落とした。

……どうやら、それ以上話を広げるつもりはないらしい。

 

私も、どちらかといえばぐいぐい距離を詰めるタイプではないので、

ここはアテナの気持ちを汲み取って、

会話もそこそこに自己紹介を終わらせることにした。

 

 

(そして、最後は──)

 

ノクスとアテナから、更に離れた位置にいる子に歩み寄る。

 

腰まで伸びる濃い緑の髪をした彼女は、ベージュの長いドレスに身を包み、

耳には赤いイヤリングをしており、どこか大人っぽい印象を受けた。

 

近づいてみて初めて気づいたが、彼女の机の上には、

黒いノートのようなものが置かれていた。

装飾のない、質素な表紙。

彼女の両手はその上に、静かに添えられている。

 

(……書き物、かな)

 

そう思いながら、挨拶しようと口を開きかけた、その瞬間――

 

「私がトリ、で良いのかしら?」

 

先手を打たれた。

思わず、胸の奥が小さく跳ねる。

 

彼女はふっと口元を緩めていて、どこか余裕がある雰囲気だった。

 

「えっと……たぶん」

 

私が言うと、彼女は「そう」と小さく頷き、

なまめかしさを孕んだ笑みを浮かべた。

 

贄熊(にえぐま)ライトよ。これからよろしくお願いするわね」

「波彪マキ、です。よろしくお願いします」

 

つい敬語になってしまう。

 

「ふふ……。そんなに畏まらなくていいのよ。

 気軽に"ライトちゃん"とでも呼んでちょうだい♪」

「あ、あはは……」

 

思わず、曖昧な笑いで誤魔化す。

 

(ちゃん付けは、ちょっとハードル高い……)

 

私の反応を見て、ライトは楽しそうに目を細めた。

 

「無理に、とは言わないわ。

 ただ……距離は近い方が、何かと"便利"でしょう?」

 

便利、という言い方が引っかかる。

親しみよりも、計算が先に立っている気がした。

 

「……そうですね」

 

曖昧に頷くと、ライトはそれ以上踏み込まず、黒いノートに視線を落とす。

 

私の返事のそれっきりで、この場の会話は静かに終わった。

 

 

私は一歩下がって、

改めてホール全体を見渡す。

 

名前も、顔も、ひと通りは把握できた。

少なくとも、表向きの自己紹介はこれで完了だ。

 

……でも、これからどうなるんだ?

話を聞いた限りでは、まだ重要な説明とやらが始まってはいないみたいだけど……。

私が腕時計を見ると、時刻はすでに15:00を回っていた。

 

 

 

 

その直後――

 

 

まるで、私が自己紹介を終えるタイミングを見計らっていたように、

ホールの天井付近から、不気味な雑音が流れ出した。

 

「……?」

 

マイクの接触不良のような、ぶつ、ぶつ、というノイズ音──。

同時に、ホールで会話に興じていた少女たちの声がぴたりと止んだ。

 

やがて、ノイズの向こう側から、

はっきりとした音声が割り込んでくる。

 

『――えー……』

 

『大変長らくお待たせ致しました。

 ホールにお集まりの皆さま。

 恐れ入りますが、ホール入口をご覧ください』

 

 

少女たちの視線は、一斉に入口へと向かった。

 

開け放たれた扉の向こう。

外から差し込む光を背にして、三つの影が立っている。

 

私が目を凝らして見てみると──。

 

先頭にいるのは、一羽の黒い鳥。

ずんぐりとした体に、頭には頭巾のような布を被っている。

 

その背後には、巨大な影が二つ。

全身を黒衣に包み、顔は白い仮面で覆われたナニカ。

 

一目で分かる。

――普通じゃない。

ホールに満ちていた空気が、

ゆっくりと、凍り付いていくのが分かった。

 

 

 

 

「あっ……人がいっぱい……。

 えっと、改めまして……この島で管理を任されている

 かわいい九官鳥、カンチョーと申します……」

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