元チート転生者のTS珍道中   作:有機栽培茶

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投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
できるだけ毎日投稿は心がけていますが書き溜めが切れてしまっているのでご容赦を……

追記:皆様のおかげでお気に入り100人達成できました!ありがとうございます!


#13 鬼ごっこ

 

「聞いてない………!」

 

 

 俺は魔導バイクをエンジンを限界まで酷使して必死こいて逃げ回る。俺たちを弄ぶ様に笑い声を上げながら追いかけてくる鋼鉄の巨人から。

 

 ──聞いてない聞いてない聞いてない!

 

 こんなの、想定外もいいところだ!

 アルベルトの時点で蜘蛛の子を散らすように逃げに徹するべきだった!第一隊長の時点でキツイってのに第二形態はドレイクの改造品。その時点でムリゲーにもほどがある。

 

 だというのに!

 

 

「レイちゃん!アレ何!?」

「だからなんで、私に聞く………!?知ってるけど!!」

 

 

 あれは魔導人形(ゴーレム)。その一種だろう。

 俺が見たのは旧文明の遺跡を守っていたオンボロだったが、アレはおそらく橘重工が鹵獲した魔導人形(ゴーレム)をリバースエンジニアリングして独自に作り上げた新型だろう。あんな、背中にもミサイルガン積みした殺意マシマシな機体は初めて見た。

 

 

「あはは!逃げてばっかじゃ意味ないんじゃなーい?アタシに見せてよ、レイちゃんのちょっといいところ~!」

「うるっ………さい!」

 

 

 飛来するミサイルの数は十を余裕で越え、撃ち落とせはすれど宙で炸裂したミサイルは背を焼き、狙いを外れたモノは周囲を破壊し破片をまき散らす。警備部隊も、こちらの傭兵も。敵味方を隔てずその嵐に巻き込まれ、戦場の混乱に巻き込まれてゆく。

 

 戦場のすべてを巻き込んだ鬼ごっこは鬼が死ぬか、俺たちが捕まるまで終わることはない。

 

 

「そんなこといわずにさぁ~」

 

「見せてよ。英雄の力ってやつをさ」

「っ!?」

 

 

 俺にとっても、こいつを殺さなければならない理由がたった今できてしまったのだから。

 

 

「なん、で……」

「レイ、レイ!前!」

「っ!ご、ごめん……!」

「しっかりしなさい!」

 

 

 この際あいつがなんで俺の正体を知っているのかはどうでもいい。考えてもわかるわけないし、聞いても馬鹿正直に答えてくれるわけがない。

 ……いや、答えてくれるかもしれないけどシアちゃんがいる前でそれを聞くのは悪手。

 

 俺が元英雄レイル・バーナードと知られるのはデメリットしかないからだ。

 

 ……せっかく新しい立場を築いたんだ。

 シアちゃんの妹分という立場を、そして役割を。

 過去のもう取り戻せないキャラクター像によって、今の俺という存在が危ぶまれるなんてあってはならないことだ。

 

 俺が英雄だと知っているものは殺さなければならない。俺が俺であるために。

 

 

「弱点とかないわけ!?」

「ある……!ある、けど……」

 

 

 魔導人形には明確な弱点が存在する。

 それは魔導人形の脳とも呼ぶべきコアだ。

 基本頭部に埋め込まれたそれは各部位に命令を下す重要な役割を担っている。そこを叩けば討伐可能という、遺物の中では対処が容易な雑魚的となっている。

 

 だがあれは橘重工が手がけた品だ。

 一般的な魔導人形と同じ場所にコアがあるとは限らないし、そもそもそのコアが一つだけとも限らない。魔導反応的に同様の術式を用いて稼働している様だが、それ以外の部位にどんな改造が施されているかわからない。

 

 最悪生体反応はあるため、搭乗者であるリュミエールを直接叩けば機能停止する可能性大だが……当然、彼女が乗り込んでいるコックピットは装甲でガッチガチに固められてる。生半可な攻撃じゃ通らないだろう。

 

 それこそやべー量の爆薬でコアの場所もコックピットの装甲も関係なしに全てをぶっ飛ばすしか────

 

 

「……レイちゃん。あれ、使えないかしら」

「アレ?あ………なる、ほど」

 

 

 彼女が指を向ける先を見て俺はニヤリと笑みを浮かべる。

 勝ち筋が見えた。

 

 

「じゃあ、運転……頼む」

「え?レイちゃんは?」

「作戦が、ある」

「………冗談でしょ?無茶がすぎる!」

「……大丈夫。私たちなら、可能」

 

 

 さあ、わからせてやろう。

 俺たちが追われるだけの獲物ではないということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減飽きてきちゃったんだけど〜?」

 

 

 リュミエールはつまらなそうに、不貞腐れたように言葉を溢す。しかしその瞳はモニター越しに逃げの一手を取り続ける少女達から逸らされることはなく、以前口元は弧を描いたままである。

 

 それはこの一方的な蹂躙からくる笑みではない。

 

 彼女は分かっていた。

 

 彼女の固有魔法【心眼】は触れたモノの全てを見通す。

 それは本来明かされない人の内心から、本人でさえも知りえない深層心理。そしてその人物が隠そうとする本性、正体まで。

 

 故に知っていた。

 英雄の正体を。

 その力が肉体の身に宿るものではないことを。

 

 英雄とはただ力を持つだけのモノへの呼称ではない。

 恐怖を打ち破るモノ。

 困難に立ち向かうモノ。

 

 不可能を可能とするモノ。

 

 それこそが英雄と呼ばれる存在だ。

 そうでなくては、ただの化け物。

 魔王とさほどかわりない。

 

 

「でも、レイっちは英雄なんでしょ」

 

 

 ならば己を倒して見せろ。

 

 

「な、なんだあれ!?」

「た、退避ーーー!!」

「た、たすけ────」

 

 

 英雄ならば、悪を打ち取れ。

 戦場に秩序無き混沌をもたらす魔王(アタシ)を打ち取って見せろ。

 

 

『リュミエール。仕事は済んだのなら早く帰投してください』

「え~……ローっちさぁ。今いいところなの見てわかんない?」

『知りません。計画外の行動はしないようにと言われているはずです』

「………前から思ってたけどホント真面目くんだよね~」

『ありがとうございます』

「褒めてないんだけど。あーはいはい。さっさと片して帰りますよ………っと?」

 

 

 せっかく面白かったのに空気をぶち壊された。

 英雄だと思ったレイは逃げ続けるばかり。

 期待外れだったのか。

 

 そう彼女が鬼ごっこをやめようとしたその時だった。

 

 

「いって……二―ちゃん!」

「レイちゃんは私だけの妹なのに!?」

 

 

 一機のドローンが逃げ続ける彼女たちから放たれた。

 

 

「何のつもり~?そんなの、今更意味ないっしょ」

 

 

 たかが旧式のドローン一機。脅威にはなりえない。

 余裕をもって機銃でそれを撃ち落とす。

 

 だが彼女たちの狙いはそれではなかった。

 

 

「まぶしっ!?閃光弾?嫌がらせしかできないわけ~~!?」

 

 

 一瞬にしてモニターが白に染まる。

 だがそれもほんの少しの間だけだ。橘重工の最新技術を詰め込んだこの機体にそんな小細工は通用しない。一瞬にして視界は回復する。

 

 

「は?レイっちは?」

 

 

 だが回復した視界に変わらず映る魔導バイクにレイの姿はなかった。

 

 どこに行った?

 彼女は立ち止まり視線を巡らせる。

 

 英雄がいないのなら、ソレにはもはや興味はない。

 ガキ一人追いかけまわすのに時間を使うほど彼女は暇ではなかった。

 

 

「こっちよ!」

 

 

 だが、その視線を遮るように、煙幕を尾とした弾丸が宙を舞う。

 

 

「信号弾?………へぇ。誘ってるわけ?」

『リュミエール?』

「いいよぉ?乗ってあげようじゃんか!」

『リュミエール!何を────

 

 

 騒音をまき散らす通信機をたたき切る。

 罠かどうかなんて知ったことじゃない。

 煽られたからには乗ってやる。

 売られた喧嘩は全部買う主義だ。

 

 

「煽ったんならさぁ!?ちゃんとアタシを楽しませてよねぇ!?」

「レイちゃんも無茶を言う………!」

 

 

 魔導バイクは縦横無尽に施設内を駆け抜ける。

 飛び交う銃弾に、迫りくるミサイルの雨、降り注ぐ瓦礫。そのすべてを避けてレティシアは駆け抜ける。

 

 その速度は先ほどまでとは比にならずかなりの機動力を誇る魔導人形に乗る彼女が本気で走っても追いつけぬほど。

 

 

「はぁ!?なに?今まで手を抜いてたってわけ?」

「レイちゃんが風圧に殺されちゃうからね!」

「配慮!?アタシを前にして!?マジむかつくんですけど!」

 

 

 ミサイルも機銃も当たらない。

 だが魔導バイクには存在せず、魔導人形には存在する利点があった。

 

 それは────道筋を問わないということ。

 

 

「はぁぁ!?」

「勝てるわけないんだよねぇ!!アンタ程度の雑魚がアタシにさぁ!」

 

 

 あらゆる障害物をその身一つで破壊しながら突き進む。レティシアがどんなに速く走ろうが障害物を避けなければならない以上、最短距離で突き進むリュミエールに追いつかれるのは時間の問題。

 

 勝負あったも同然だ。

 鬼ごっこは自らの勝利で終わる。

 彼女はそう確信し────

 

 ────ミスに気付く。

 

 レイは何処に行った?

 

 わかっていたはずだ。

 彼女の正体が英雄であると。

 

 ソレは恐怖を打ち破るモノ。

 ソレは困難に立ち向かうモノ。

 

 不可能を、可能とするモノ。

 

 英雄が逃げることなど、ありはしないと。

 

 

「まさか───」

「そのまさか」

 

 

 とんっ

 

 リュミエールは気づく。

 自身の頭上に何者かが着地した音に。

 

 

「あはっ!やっぱ来た!でも残念!不意打ちしたつもりだろうけど、無駄足ご苦労様。そこからどうするわけ?近づけたってアンタにはアタシを殺す手段はない!」

「そう」

 

「だったら、道具を使えばいい」

 

 

 彼女は気づく。

 自らの周囲を囲む円柱状の建造物群。

 その壁面に描かれた危険物を示す記号を。

 

 

「っ!それは………!」

「発電のために貯蔵された、高濃度フラメル粒子」

 

 

 ソレは非常に不安定な物質だ。

 術式を介して現実を歪め、そして自らの姿形でさえも自在に変化させてしまう不安定極まりない万能物質。それは密度が高まるにつれその効力を発揮し、尚且つその危険性を高めると同時にある現象を発生させやすくなる。

 

 それは、爆発。

 

 

「これだけあれば、貴方の装甲も意味はない」

「だったら逃げれば────

「それもさせない」

 

 

 機体内が一瞬にして暗闇に包まれる。

 

 

「なんで!?」

「魔導人形の制御を奪った………!一瞬だけだけど………生物じゃないなら、可能!」

「調子に乗っちゃってさぁ………!そんな一瞬で何ができるってわけ!このままじゃ貴方も巻き込まれ………」

 

「問題ない」

 

 

 モニターが回復する。

 そこに映るレイの姿はすでに遠く、全速力で駆け抜ける魔導バイクと縄で体をつないだ彼女は苦しそうな顔をして宙を舞いながらも、此方に中指を立てて嗤っていた。

 

 

「ああ、やっぱレイっちは、英雄だ………!」

 

 

 周囲を囲むタンクは赤熱し、光り輝く。

 

 

「ィヒハハハハハ!!!アーハハハハハッ!!!!」

 

 

 鉄の巨人は爆炎の中、最後まで笑っていた。

 

 

 

『ベルガ魔導炉襲撃』

MISSION COMPLETE

 




【橘重工製魔導人形フラットヘッド】
発掘品である魔導人形を現代の技術で再現した一品。
術式に干渉されやすい点や、有人式である点など、オリジナルの遺物と比べれば劣る点はあるものの兵器としては十分すぎる性能を誇る。
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