元チート転生者のTS珍道中   作:有機栽培茶

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#14 友達は大切に

 

「見てたぜ嬢ちゃん達!」

「無事だったのね。第五は?」

「対処済みでっせ!捕虜も数人確保してますぜ」

 

 

 第五部隊は壊滅。第一隊長も、乱入してきた橘重工のリュミエールも倒した。

 

 ……思ったけど、これ橘重工を敵に回すことにならない?さ、先に襲ってきたのあっちだし?もうリュミエールちゃんはあそこで燃え尽きてるだろうし?後の祭りか……。

 

 まあ、なんとかなるだろ。

 

 

「よし!みんな頑張ったわね!」

 

 

 作戦は大成功。

 

 正確に言えばここの発電施設を停止させるところまでが任務だが、ここまで来れば終わったも同然だ。占領の維持は後発組がやってくれるらしいからな。仕事は終わりだ。

 

 

「よし、じゃあ魔導炉停止させに行くわよ」

「あ……アルベルトの壊したタワー……魔導炉じゃなかったんだ」

「警備部隊が警備対象壊してどうするのよ」

 

 

 それもそうだ。

 

 

「あ……私は、やることあるから、先行ってて」

「そう?護衛はいる?」

「ん、大丈夫」

 

 

 俺はそう言ってバイクを降り、走り去っていく彼女達を見送った。

 

 

「っとと……」

 

 

 ようやく地に足をつけれたからかふらつくな。

 少し無理をしすぎた。逃げる為とはいえ、腰に紐を括り付けて半ば凧揚げみたいに吊り上げられたのはキツかった。死ぬかと思った。ちょっと髪も焦げちゃったしな。

 

 

「確か……この辺り」

 

 

 俺はすっかり荒れ果てた施設内を瓦礫を避けながらヨタヨタと歩き回る。結構立派な施設だったんだけどな。こうやって破壊されていくんだ………ああ、人は愚かなものです。特にお前ら。

 

 

「ん、あれかな」

 

 

 そうしてようやく目的のモノを見つけた俺は静かに足音を殺してソレに近づく。

 

 

「……りえない………ません!この私が………どに……!」

 

 

 雑音の混じった聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

 

「あ、ああ……!目が……目は、ダメだ……!くそ……くそっ……!私の信仰が……光が……!!全てあの憎き神敵のせいです……!邪悪で醜悪極まりない害獣が……!」

「………元気そう、だね。アルベルト」

 

 

 そこにいたのは想像した通りの人物だった。

 下半身はいつかの俺のように失われ、左腕はかろうじて原型を保っている程度。右半身は吹き飛んだのかほとんどグチャグチャだ。顔だって半分吹き飛んでる。かろうじて残った目玉も取れかけで、酷い有様と言える。

 

 だがソレはグロテスクというよりも、一部の層の人に刺さりそうな見た目をしていた。言うなれば……そう、メカバレだ。

 

 なにせこんな状態になってまで一般的な人間は生きられない。サイボーグだってそうだ。脳みそまでは義体化できないからな。

 

 

「き、貴様……!何をしにきたのですか!」

「酷い有様」

「貴様のせいでな……!」

「うん。いいザマ」

「……ふん、トドメを刺しにきたのですか?だったら残念でしたね。私はアンドロイド。このボディが機能を停止したとしても、バックアップは塔にあります。私を殺すことなど不可能なのですよ!」

「ふーん」

 

 

 警備部隊第一隊長アルベルト・ヴィンターハイムはアンドロイドだったのだ。彼の呼び名に『不死身の第一隊長』なんてものがあるのも、全てこのカラクリのおかげ。

 

 ………なーんて事はない。

 こいつは人間だ。赤い血が通っていた時期もちゃんとある、真っ当な人間だ。“元”がつくが。

 

 

「害獣が、無駄なんですよ。いくら貴様らが足掻こうが、無意味なんです。貴様らは死ぬ。そのように運命付けられているのですよ」

「へー」

「英雄の庇護下に入り、彼を祭り上げ、私欲のために利用しようとした時点で貴方達の死は確定していたのです。抵抗は全て意味をなさな………貴様、何をしている?」

「みて、わからない?」

 

 

 俺は流れるように吐き出される煽りセリフを無視し、手に持ったナイフで彼の残った衣服を切り裂き、人工皮膚が焼かれ明らかになった機械の体にソレを突き立てる。

 

 

「腹いせですか?無駄だとわかっていながら……随分と無様ですね。いい気味ですよ」

「ふん、ふん」

「無駄ですよ。この私の体は企業連の最新技術を取り入れた一品もの。そのようなナマクラでは傷ひとつつきません。無駄だとわかっていながら諦めないとは、途方もない頭の悪さですね。いい加減諦めたらどうです?」

「ふん………あ、ここ」

「ああ、そうでしたね。貴方は頭にカビの生えた……まて、貴様何をしている?」

 

 

 ガンガンと乱暴にナイフを突きつけていると、ガリっとソレがハマる溝が見つかった。

 

 ここだ。

 

 

「ま、待ちなさい。待て!やめろ!」

「ここを、こうして……ご開帳〜」

 

 

 そこにナイフを突き立てたままテコの原理で無理やりこじ開ける。どうも衝撃で少し歪んでいたのだろう、開きづらかったがなんとか俺の力でも頑張れば開けられた。やはりテコの力は偉大だ。

 

 

「うん……やっぱ、綺麗」

「……なぜだ。なぜ知っている……!?」

 

 

 そこにあったのは血液のような赤を宿した美しい結晶だった。ゾッとするほど美しく、どう見ても無機物であるというのに生きているかのようにも見えるその赤き結晶は、機械の体の中で一際光り輝いていた。

 

 これこそ彼の本体。

 塔が彼に施した『祝福』の正体。

 

 生きた人間の魂を塔に伝わる旧文明の遺物に吸収させ、擬似的な不死の戦士を作り出す。それこそ塔が第一隊長になった彼に塔が施した施術であり、『祝福』なのだ。

 

 ん〜〜ダークファンタジ〜。

 TS以前にアルベルトから直接聞いた情報ではあるが、やっぱ人権とかない感じ〜?警備隊長まで成り上がってもない感じ〜?んーブラック!

 

 

「き、貴様……何者だ……!?」

「ん、ツルツル」

「やめろ!私に触るな!」

 

 

 こんな体じゃ美味しいご飯も食べられないし、性的欲求も満たせない。睡眠は取らなくていいのかもだけど、辛そーだよねー。退屈すぎて俺だったら死んじゃいそう。ああ、でも機械の体を通してそういうのは感じられるのか。なら大丈夫か。

 

 でもさぁ。

 

 

「これ、外したら……どうなるんだろうね」

「っ!だ、だめだ!」

 

 

 味覚も視覚も嗅覚も触覚も聴覚も。ソレを感じるための体を失って仕舞えば受け取ることができない。

 

 昔これを見せてもらった時ふざけてとったことがあったっけ。あの時は可哀想なことをした。取り外したらガクンって死体みたいになっちゃって、慌てて付け直したらゼーハーゼーハーしててさ。顔面蒼白でやばかった。

 

 何も感じられないってのは相当辛いらしい。

 

 確か前世でもそんな部屋があったっけ。

 あれは音を反響させなくするだかって部屋だった気がするが、人間ってのは五感のうちどれかを狂わせたり急に取り上げられたりすると精神的にキツいらしい。下手すると精神に異常をきたして発狂しかねないって話だ。

 

 

「土下座」

「……は?」

「土下座、して。私の足、舐めて」

「何をふざけたことを……!」

「そうすれば、許すよ?」

「は?」

「わかんない?」

 

 

 私は管につながったままの結晶を撫でながら笑いかける。

 

 

「これ、捨ててもいいんだよ」

「っ!!!」

 

 

 ようやく彼もわかったらしい。

 かろうじて残った左半分の顔がひどく引き攣っている。

 

 

「何も聞こえず、何も見えず、何も感じられない……私は経験したことないけど……ソレって、すごく辛いんじゃない?」

「……ふざ、けるな」

「それもいつ終わるかわからない……もしかしたら、このまま何百年も、見つからないような山奥に、捨てられるかもしれない……」

「やめろ……」

「そんな虚無を、過ごすことになる、かも、しれない」

「やめろ!!!」

 

 

 ああ、鏡を見なくてもわかる。

 今の俺は、多分とてもいい笑顔で笑っている。

 

 

「嫌だったら、ほら。足を舐めたら?」

「っ!!」

「土下座して……足を舐めて……私に、忠誠を誓うの。塔じゃなくて、私に……」

「ふざ……っけるな……!ふざけるなよゴミムシが……!!!」

 

 

 へぇ。折れないんだ。

 

 

「害獣に……!英雄を侮辱した貴様に……!この私が忠誠を誓うだと!?ふざけるのも大概にしろよ蛆虫が……!私は死んでも信仰を曲げる事はない!!!貴様の様な咎人に忠誠を誓うくらいならば自害した方がマシだ!!!!」

「そう、じゃあしょうがない」

「っ!ま、まて、やめ────

 

「じゃあね」

 

 

 私は彼の言葉を遮るようにその結晶を胴体から無理やり引き剥がした。

 

 アルベルト・ヴィンターハイムだったものはもう動かない。死んではいないのだろう。彼は私の手の中にいるのだから。

 

 アレはもうただのスクラップだ。

 

 

「ふふ……」

 

 

 なんというか、不思議な気分だ。

 仮にも友人だった人間の命が、こんなにも小さくて、しかも俺の手の中にある。不思議と気分がいい。おそらく良くない感情ではあるのだろうけれど、今はそれは享受しよう。

 

 彼が俺の提案を断ったのだから、仕方がないのだ。

 

 ああ、もちろん殺さない。

 脅し文句で言ったように捨てることもない。

 大切な友達なんだ。大切にしないとな。

 

 それに彼は俺がこの世界に生まれて初めてできた友達なんだ、殺すわけがない。そんな事は絶対にあり得ない。英雄として君臨していた俺に対等に接してくれた大切な、たった1人の友人なんだから。

 

 ただ、ほんの少しだけ痛い目に遭って反省してもらうだけだ。

 

 

「……そう言えば、英雄って、誰のことだろ」

 

 

 確か現在の塔主は無法地帯だった都市の統治を行ったすごい人、なんてプロパガンダ染みた話もあったっけか?興味がなかったから知らなかったが……。

 

 そんな俺の小さな疑問は、施設の破壊に成功したらしきレティシア達の歓声によって雪景色の中溶けて消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───暗い。

 

 何も見えない。

 何も聞こえない。

 

 何も感じられない。

 

 

「っあ……はぁっ……はぁっ……!」

 

 

 暗闇の中、あの日の光景が鮮明に蘇る。

 真っ暗な暗闇の中、何もできずキャビネットの中で震えて隠れ続けることしかできなかったあの日の思い出がはっきりと。

 

 

「あ、あああああぁぁぁぁ…………」

 

 

 父が殺され、母が殺され、何もできず。

 鬼は唯一姿の見えない自分を探し続ける。

 

 息を殺して隠れ続ける事しかできなかったあの夜の出来事。

 

 

「いやだ……いやだ、いやだいやだいやだ」

 

 

 怖くてたまらない。

 あるはずのない体の震えが止まらない。

 

 いつまで続くのだろうか。

 あの夜のように、助けは来るのだろうか。

 

 

「……捨てたのか……?まさか、そんな、ばかな」

 

 

 何時間経ったのかもわからない。

 数日かもしれないし、数分かもしれない。

 

 ただ彼の精神が限界に近かったのは確かだった。

 

 

「……ほん、とうに……?」

 

 

 恐怖の中、最悪の想定が頭をよぎる。

 

 

「いや、いやだ!それだけはいやだ!ここから出して!助けて!誰か!ここはいやだ!ここだけはいやだ!だれか!」

 

 

 彼は泣き叫ぶ。

 恥も外聞も捨ててまるで幼子のように。

 あの日の、何もできなかった頃のように。

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 

 それは次第に謝罪の言葉へと変わる。

 誰に向けたものかもわからず、それを聞いている人がいるかもわからずただひたすらに唱え続ける。そうすれば助けが来ると信じて。

 

 信仰もプライドも投げ捨てて、自分に負い目があるからと信じ、それを謝罪すればここから出してもらえるかもしれないと信じ込んで。

 

 そうでもしないと、正気を保てないから。

 

 果たしてこれが正気かどうかも怪しいながらも、彼は神に縋るように唱え続けた。

 

 

 ───そしてその願いが通じたのだろうか。

 

 

「っあ………」

 

 

 彼は声を聞いた。

 否、声ではない。それが映像であったかもしれない。触感であったかもしれない。味であったのかもしれない。

 

 彼が見たのは記憶だった。

 誰かの記憶の断片。

 

 彼が魂のみと呼べるような特異な状態にあったからだろうか。彼が封じ込められている遺物の効果なのだろうか。それともただの狂気の末に見た幻覚であったのだろうか。

 

 もしくは、()()が彼に与えた罰の答えだったのかもしれない。

 

 

「あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 彼は理解した。してしまった。

 その記憶の持ち主を。

 そして自らが犯した取り返しのつかない大罪を。

 

 

「咎人は、私だった」

 

 

 彼は深い絶望の中、闇に沈んでいった。




【神核】
塔の以前の支配者、ランフォード家の時代より代々伝わってきた旧文明の遺物。その遺物の物理的耐性は凄まじく傷一つつくことはない。
人一人の魂を封じ込めることが可能であり、その施術を行った場合、被験者は不死性を得ることとなる。それは被験者の本来の寿命まで続き、その期間を終えた後魂は消滅、遺物は元の状態へと戻る。
それを用いて現塔主はレイルに次ぐ英雄を生み出そうと考えるも、得るのは不死性のみであり戦闘力や魔法、体の再生能力まで得られるわけではないため失敗に終わった。

旧塔主は不死性ではなく、この遺物に魂を捧げることに注視していたようだが、その目的は現塔主には伝わっていない。
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