元チート転生者のTS珍道中   作:有機栽培茶

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すみません、飲んで二日酔いで寝てました。


#18 壁へ

MISSION INFO

ステナグラード奪還

 

▪︎COMBAT ZONE:ステナグラード第二層

▪︎OBJECTIVE:拠点襲撃/設備破壊

▪︎REWARD:100,000UC

▪︎DETAIL

・警備部隊の殲滅。

・防衛設備の破壊。

 

 

▶︎SGLF指導者ジャスパー・ランフォード

 

 傭兵(ノーマッド)諸君。

 これより始まる作戦は、この都市の未来、ひいてはその命運を決する決戦である。

 ここに集いし諸君一人ひとりが、その歴史の分岐点に立っている。

 

 作戦を完遂した暁には、諸君の名は戦後、英雄として語り継がれることを、私はここに約束しよう。

 

 では作戦の内容を説明する。

 端的に言えば、諸君らの仕事は『足止め』だ。

 

 この私自らが率いる解放戦線本隊が、下層に存在する隠された侵入口より敵本陣──塔へ突入し『塔主』を捕縛する。

 

 その間、諸君らには我が妹レティシアと共に、塔へ向かう敵の増援を阻止してもらう。

 

 塔への正規侵入口である第二層の『門』、あるいはそこへ通じる昇降装置を制圧すれば、敵は塔へ侵入できなくなる。

 

 その地点を、諸君らに守ってもらいたい。

 

 塔主の身柄を確保できれば、勝敗は決する。

 敵を殲滅する必要はない。

 

 故に生き残れ。

 我々が勝利を掴み取るその瞬間まで、生き延びろ。

 

 生き残って共に、都市の夜明けを拝もうじゃないか。

 

 

────────────────────────

 

 

 

『レティシア、そちらの状況は』

「問題ないわ。警備部隊の連中も雑魚ばっか。そっちは?」

『問題ない。すでに配置についている。そちらが事を起こし次第行動を開始する』

「りょーかい。もう少しで目標地点に到達するわ。待ってなさい」

 

 

 複数の魔導バイクが入り組んだ都市を駆ける。

 町は燃え盛り、悲鳴と火の手が至る所から上がっていた。

 

 都市奪還作戦。

 解放戦線と現政府である塔との決戦が始まったのだ。

 

 

「レイ!そっちは無事!?」

「ん………!」

「問題ありませんよ」

「アンタには聞いてないわよ!」

 

 

 ハローステナグラード!

 いよいよ決戦だ。俺たちは以前同様に魔導バイクに跨り超スピードで都市をかけている。前世でも街中をここまでのスピードで走ったことはなかった。今なら真夜中にうるさくて仕方なかった珍走団共の気持ちも理解できそうだ………いや、無理か。

 

 都市は真夜中だというのに明るく、騒がしい。

 空ではヘリが舞い、地上では武装した人々が銃声を上げる。

 

 マフィアやノーマッド・グループ間の小競り合いなどとは比べ物にならないほどの大規模な戦争が今、都市では行われていた。

 

 

「………よくやる」

 

 

 ステナグラードは物騒な都市だったがここまでにぎやかな光景は俺も初めて見た。それも、魔物を相手にした戦いではなく人間同士の戦争で、だ。

 

 無論、その規模に比例して死者も増える。

 

 仲間が、昨日話したばかりの奴が物言わぬ肉塊として道に転がっていた。

 

 街中には敵味方関わらず死体の山が築かれ、それは今なお増え続けている。

 

 ……俺だって、すでに何人も殺している。

 

 

「大丈夫ですか?」

「……うん」

 

 

 少し、気持ち悪い。

 別に人殺しなんて何とも思わなかったはずなのに。

 

 これも身体の変化によるものか。

 

 ……もしくは英雄ではなく、ただの俺として人と関わり過ぎたからか。

 

 

「あと少しで目標地点よ!頑張って!」

「了解!」

 

 

 俺はシアちゃんではなく、アルベルトことアルマと共にバイクを走らせる。

 

 今回の仕事での俺たちの役目は敵の足止めだ。

 地上第二層に存在する『門』と呼ばれる塔への入り口を抑え、別口から塔へ侵入した本体の背後を守護する。

 

 解放戦線としての最後の戦いなだけあってかなり重要で、尚且つ難易度の高い仕事だ。

 

 都市を守る警備部隊の隊長格も残るは第二だけだ。

 だが幹部を倒したら雑魚敵も一緒に消滅するわけじゃ無い。隊長を失った他部隊の隊員はウジャウジャといる。元第一部隊の連中は塔内部の守護に回され、此処にいるのは有象無象の雑魚どもだけとはいえ………数がそろえば面倒だ。

 

 指導者様も随分と酷なことを言いやがる。

 実の妹であるシアちゃんがこっちにいるんだから使い潰すなんてことはないだろうが、人使いが随分と荒い。もしくは妹や俺達への信頼故か。

 

 ま、生きるためだ。

 それに無茶な仕事でも、此処まで来て逃げ出すわけにはいかないさ。

 

 

「魔導反応確認!正面、敵増援来るわよ!」

 

 

 だが懸念点が一つ。

 それは橘重工の連中だ。

 

 ここまで俺たちが相手にしてきたのは警備部隊の雑魚に、砲台やドローンといった都市の防衛設備程度。

 

 以前ベルガ魔導炉で見たような橘重工製の兵器が見られない。

 

 あのリュミエールがあそこで終わるわけがないのだ。笑いながら爆散するような気狂いが何も遺していないわけがない。

 

 ああいうのは大体何らかの置き土産をしているのがテンプレだ。

 

 

「ドブネズミ共を一掃しろ!塔主に反抗したことを後悔する間もなくその首をはねてやれ!」

 

 

 ───そんな考え事に思考を割かれたがためか。

 

 

「まずっ………!?」

 

 

 敵の銃口が正確に俺を捉えていたことに気が付くのに遅れたのは。

 

 

「【障壁】………!」

 

 

 拳銃の他に俺が使うことのできる魔導具、『障壁』の指輪を咄嗟に起動させる。

 

 効果は単純。

 その指輪をはめた腕を向けた15㎝程先に半透明の魔力で作られた壁を作り出す。サイズはバックラー程度で、しかも長時間生み出すことはできず、さらにあまり強い衝撃には耐えられない。

 

 

「っ………あっ」

 

 

 だが辛うじて銃弾程度は防ぐことは可能だったようだ。障壁は破壊されたもののソレを逸らすことに成功したらしく、放たれた凶弾は俺を貫くことはなかった。

 

 だがその衝撃はあまりに軽すぎる俺の体を吹き飛ばすに足るものであった。

 

 

「レイ様!?」

 

 

 魔導バイクから投げ出された俺は固いコンクリの地面に叩きつけられぼろ雑巾に────なることはなく、運よく増築された建物の一部であったのだろう。ボロボロに脆くなっていたトタン製の天井はクッションの役割を果たして崩壊する。

 

 そして俺は崩壊した建物に落っこちて………

 

 

「……やばい」

「誰かが落ちてきたぞ!?」

「味方か!?」

「違う!あの腕章、レジスタンスだ!」

「ガキだ!さっさと殺せ!」

 

 

 移動中であったらしい警備部隊の連中のど真ん中に、俺はいた。

 

 なぜ!?!?!?!?!

 

 

「あわ、あわわわわわわわ」

「え、隊長………ほんとにやります?」

「いいからやれ!殺されたいのか!?」

 

 

 運が悪いにもほどがある。

 俺は相手が混乱しているうちに拳銃を取り出し抵抗を試みるも、即座に腕を叩かれソレを手放してしまう。

 

 

「っ!わるいな嬢ちゃん、恨むならあんたらのリーダーを恨んでくれ」

 

 

 向けられた銃口は漆黒で、機械的な殺意は俺のトラウマを正確に貫いた。

 

 歯をかみしめ、子供を殺すという罪悪感を抑え込もうとしているのであろうこの警備部隊の青年はきっといい奴なんだろう。

 

 だというのに……そいつの顔に、あの時の第六部隊のカスの顔が、あのとき俺を殺そうとしたアルベルトのゴミを見るような目が思い浮かぶ。

 

 腰が抜けて動けない。

 

 

「っあ………」

 

 

 死ぬ。

 そう恐怖を覚えたその時、己の頭上に月光が差し込んだ。

 

 

「無事ですか!?」

 

 

 必死さが滲み出るアルマの声に、俺は思わず銃口から目を逸らしてしまう。

 

 俺を助けに来てくれたんだろう。

 月光を背に舞い降りてきた彼女の姿は、息をのむほど美しく感じられた。

 

 それこそ周囲の怒号に、視界の端に映った、先ほどの青年が額に穴を開け死ぬ様も、頬にかかった返り血の生暖かさも何もかもどうでも良くなるほどに。

 

 

「……よかった。貴方が生きていてくれて」

 

 

 ────トゥンク

 

 

「少しの間そこで待っていてください。すぐに片付けます」

 

 

 そして俺は気づく。

 気づいてしまう。

 

 この胸の違和感に。

 

 

「貴方は、必ず私が守りますから」

 

 

 目が、離せない。

 

 彼女の、俺を安心させようと無理して浮かべた笑顔から。彼女が敵に立ち向かうその姿から。返り血に塗れ、嗤う彼女の横顔から。

 

 まさか。

 

 まさかまさかまさか………!

 

 

「これが、恋………!?」

「ふぅ………お待たせしましたレイ様」

「ひゃい!?」

 

 

 俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「あと少しよ!グラヅェフ、全員いるわよね!?」

「問題ねぇ!ノラとコウィンが負傷したが全員生きてる!」

「上出来よ!」

 

 

 その後無事シアちゃんたちに合流した俺たちは作戦を継続。そして眼前に立ち塞がる巨大すぎる壁と、共に天を貫く塔の足元に到達していた。

 

 

「あとは昇降装置で『門』までいけば……」

 

 

 人々は壁を見上げる。

 そこにあるのは人類を守り続けてきた巨大な壁と、自分たちを苦しめてきた支配者達が巣食う塔。

 

 

 そして、相も変わらず曇天な空に輝く数多の()()

 

 

「………は?」

 

 

 それらは敵味方関係なしに都市を破壊し降り注ぐ。

 俺はこの現象を……否、『魔法』を知っている。

 

 

「『星降り』の魔女………!」

 

 

 『星降りの魔女』リュミエ・ステラ

 傭兵(ノーマッド)は組する陣営を選ばない。

 住処を持たず、どこにも所属せず。

 彷徨い続ける放浪者(ノーマッド)

 それ故にノーマッド。

 

 今日の味方は明日の敵。

 昨日の敵は今日の味方。

 

 少女は金を求め、今日も杖を振るう。

 

 




【リュミエ・ステラ】
傭兵(ノーマッド)
『星降り』の二つ名を冠する魔法使い(コード・トーカー)
二つ名を所有するのは亜神に魔王に英雄、そして魔法使い(コード・トーカー)のみであり、その事実が彼女達魔法使い(コード・トーカー)の脅威度を示している。

ステナグラード事変直前に都市を訪れ、警備部隊第一隊長にドレイク討伐の同行者として雇われる。以降都市を離れることは選ばず、塔側の傭兵として雇われ続ける。

彼女の情報は少なく出身国も不明。
【流星】の魔法を使用する魔法使い(コード・トーカー)として名を馳せていた。同行者として3名の少女を連れているが、戦闘には参加させず、保護しているものと予測される。その3名は外見が瓜二つであり姉妹と推測されるが、ステラとは目の色以外一致せず血縁関係では無いと思われる。
 
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